脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

奈良のフットボリスタ ~奈良にプロクラブを~⑩

2007年12月18日 | 脚で語る奈良のサッカー


 関西府県リーグ決勝大会が現在行われている。奈良県リーグからはポルベニルカシハラと郡山JSTの2チームがこの大会に駒を進めているが、ポルベニルカシハラは2日に行われた初戦の久御山FC戦、そして続く9日のエストレラ津田SC戦に敗れてしまう。郡山JSTは9日に行われたBIWAKO.S.C.ROSAGEに敗れ、15日には報国エンジニアリングに2-2の末PK戦で敗戦。結局両チーム共に1勝もできぬままに大会を後にすることになった。

 1勝もできなかった奈良の両チーム。この現実は非常にシビアに受け止めねばならない。つまり他府県とのレベルの差は明らかであり、されど府県リーグではあるが、ここから昇格の切符を掴まねば印象的にも「草サッカー」の枠から脱することはできないと考えるべきだ。
 アルテリーヴォ和歌山を有する和歌山県にJリーグクラブを作る動きが出てきた今年、完全にこの奈良県は関西圏内において、また全国的にもその波から取り残される形となった。事実奈良県でのサッカー熱は小中高生の育成という面ではまだ活発であり、「熱を帯びている」とかろうじて言えるのかもしれないが、肝心の1種のカテゴリーでこの有様では前途多難であることは明らかである。

 連載9回の項でも述べた通り、県1部リーグを戦う都南クラブを母体として来年から具体的な活動を進めていこうという動きはあるが、今回はやはりそれよりもさらに上に位置する高田FCにもその期待を込めたいと思う。

 先日、来季より関西1部リーグに昇格する高田FCよりチーム愛称の募集が始まった。具体的に目標をJFL昇格に据えて、来季から本格的に取り組むという姿勢を表明している。筆者も来季は高田FCに関してさらに注目していきたいと思っているが、やはり県内でもその歴史の長いクラブ、そして組織的なクラブ作りという面で一日の長があるこの高田FCがどこまで本気でJを狙うかという点で少し懐疑的になるのは正直なところだ。当面の目標はJFLであるが、クラブだけでなくサポートするファンもその動きには不可欠。そういう意味でも現在進めている「愛称募集」はいい機会だと思う。

 そういった目標設定において懐疑的にならざるを得ない理由としては、奈良の県民性としてサッカーだけに関わらず、保守的な面が顕著であることが挙げられる。これは解決策を見つけろといっても非常に難しい問題であり、京都と大阪のベッドタウン化が著しい奈良に巣食う一種の病原体のようなもの。ワクチンや特効薬たるものがサッカーをはじめとするスポーツにおいてそれに値しないのが実情だ。
 
 最初から頂上の到達を目指すのは難しい。まず目指すべきは一合目。つまり来季から少しでも奈良のサッカーを盛り上げたい、奈良からJリーグクラブを生み出したいと思う方は生の試合を観に足を運ぼう。スカパー!では絶対に観ることのできないドラマがそこにはある。一人の力では非常に非力なのは確か。しかし、それが何人ものコミュニティになれば、少しずつ何かが変わるはずだ。

 突破できない府県リーグ決勝大会の壁、そして関西1部からJFLを目指す高田FCの新たな姿勢、県リーグから挑戦していこうとする都南クラブ。素材は充分だ。これに彩りを加えるのは我々サッカーを愛する人間の愛情と情熱。何ともキレイごとでしか表現できないが、これが全て。皆で奈良のサッカーを少しでも上に押し上げていこうではないか。