脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

その終戦は警鐘を鳴らす・・・

2007年12月29日 | 脚で語る天皇杯


 何とも言葉にし難い最悪の終戦を迎えてしまった。今日エコパにて行われた天皇杯準決勝、対峙した広島は今季リーグ最終戦で戦ったそのチームとは違っていた。そう形容するのならばG大阪も同じことだろう。ただ、それが前者はポジティブに、そして後者はネガティブに成長曲線を描がれる結果がスコアに反映されてしまった。非常に対照的な明暗が両者に分かれていたのは言うまでもない。

 まず、あと1勝で天皇杯のタイトルに王手という気概はG大阪からは見られなかった。前半開始早々1分経たないうちに広島の佐藤寿人に裏を取られ失点。おそらく最終ライン及びGK藤ヶ谷までもがオフサイドと認識したのだろうか、プレーが止まった一瞬の隙を突かれた。この不運な“思いこみ”による失点をこの日のチームは何よりも重く受け止めてしまったのだろう。前半はそれ以降全く機能しないサッカーを露呈してしまった。
 試合後のコメントで西野監督は「パスの出所に対してのプレス」そして「人ではなくボールに対するアプローチ」にある程度の手応えを感じていたが、それならばもっと決定機は演出できたはず。それが機能していたとしてもまず、FWがほとんど前を向かせてもらえず、全くといっていいほど仕事をさせてもらえなかったのは致命的だった。これは徹底的にバレーをマークした広島の槙野と播戸に前を向かせなかった盛田、そしてストヤノフを称賛すべきだ。特に相手の執拗なマークに苦しんでは、プレーを繋げられなかった播戸は積極性に欠け、失格に近い出来を披露してしまう。それに加えて前述のボールへのアプローチもできていたとは言えない。セカンドボールの大半を広島のバイタルエリアで拾われ、そこからのアプローチしか実践できなかった。
 こうなれば、ポゼッションを握った段階で不用意なカウンターを受けることは想定すべきなのだが、今日のG大阪にはそれが意識できていなかった。特にアウトサイドのアプローチの緩さを危惧してダイヤモンド型に配置された中盤は、深いエリアで再三に渡ってボールロストを繰り返しては広島にチャンスを提供してしまう。自然と広島に流れが傾くのは必至であった。

 攻守の切り替えにおいても拙い場面は多々見受けられた。スピードのない緩慢なビルドアップ。そして息の合わないアタッキングサードでのパス交換。シュートで終わることができなかったのは自然の成り行きだ。前半のうちに追い付けなかったツケが主導権を握りながらも、柏木までもが全力で守備にその労を惜しまないほど守備的になった広島を崩せない後半に回ってきた。効果的に点を取られては、その度に前がかりになる状況が生まれ、またカウンターで失点を食らう。最悪な負のスパイラルがこの日のG大阪を襲った。

 苦言を呈するべきはG大阪の不出来だけではない。この日レフェリングを務めた家本氏の判定基準も実に曖昧であった。流すのか止めるのか、そして明らかに遅いその判断はゲームをコントロールしていたとは言い難い。しかし、レフェリーが実に的確なレフェリングをこなしたところでこの日のG大阪は完敗を喫していたのかもしれない。

 誰もが信じていた2年連続の元旦決勝進出。シジクレイのお別れモードでその試合後の雰囲気はあやふやになってしまった感があるが、ここ数試合の広島の流れが良いとは言え、この日のG大阪は実に不甲斐なく収獲のない試合をしてしまった。この陣容とこの戦い方の限界が確かに見えたし、選手たちの精神面での持久力の無さも実感できた。ACLを戦う来季のスタートはもうすぐ1ヶ月を挟んで始まる。誰もが危機感を持って、ゼロからのスタートを切らなければ早い段階でタイトルの灯は消えゆくだろう。まだはっきりされていないが、来季から加わる新戦力が命綱となるならば、この試合は今季の最終戦となったと共に最高の警鐘を鳴らしたともいえる一戦であった。

 最後に、實好、シジクレイ本当にお疲れ様!そして数々の歓喜をありがとう!