脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

順当な初戦 ~UEFA チャンピオンズリーグ~

2007年09月20日 | 脚で語る欧州・海外


 順当な幕開けといっていいだろう。UEFAチャンピオンズリーグが開幕し、初戦のグループAからDの8試合が行われた。中村俊輔のセルティックがシャフタール・ドネツクに完敗を喫したが、これも個人的には順当な展開と思っている。近年ウクライナリーグのレベルは高い。同じくチャンピオンズリーグを戦うディナモ・キエフと併せてこの2チームは台風の目になるかもしれない。14億円で加入したルカッレリが早速大事な初戦で仕事をやってのけた。超攻撃スタイルを貫くルチェスク監督のフットボールはセルティックにグループステージ突破の壁の高さを知らしめたに違いない。ミランと並んで強豪の揃うグループであることを中村も改めて噛みしめたはずである。
 マルセイユはシセが終了間際にゴールを決め、大舞台での実績が皆無の自身のキャリアのおさらばを告げようとしている。ナスリを中心に充実した中盤はアルジェリア代表のジアニが加入した影響は大きい。初戦を勝利したからと安堵の様相は禁物だ。同組リバプールとポルトはドローに終わっている。このリバプールもリーセの欠場が響いたか、守備面でバタつき、右サイドのペナントが退場処分を食らう始末で勝利を得ることができなかった。リーグも含めてベニテスにはもう失敗は許されない。グループステージは突破が当然。アンフィールドでこんな試合は許されないだろう。このカードもポルトの底力を考慮すれば必然の結果かもしれない。この日の得点ははL.ゴンサレスのPKのみに終わったが、エースカレスマが必ず爆発するはずだ。

 さて、グループBをバレンシア、ローゼンボリ、シャルケと戦うブルーズだが、正直厄介なグループであるのは否めない。初戦をローゼンボリと戦ったブルーズは、ノルウェー王者に前半1点のビハインドを背負う。後半シェフチェンコがゴールを決めるものの、それ以外の場面でこの日はとことんツキに見放された。2トップをシェバと組んだカルーが決定機を決められずに点差を広げることができずにドローで試合は終わってしまう。個人的には今季調子のいいライト=フィリップスをもう少し早く起用してたたみかけたかったところだ。
 とにかくドログバの前に甘んじるべきではないシェバの得点は好材料である。しかしながら10月8日の次戦はバレンシア。油断はできない。アレックス、テリーを中心にまずは欧州屈指のストライカーであるビジャを抑えるところから入りたい。

 とにもかくにも世界最強の戦いが幕を開けた。そんなに簡単に勝たせてはくれない。

日本のチャンピオンズリーグをいち早くレビュー

2007年09月19日 | 脚で語る地域リーグ


 今夜未明から欧州ではUEFAチャンピオンズリーグがその幕を開ける。欧州覇者をかけた各国強豪クラブの華々しい戦いがこれから長きに渡って繰り広げられるのだ。フットボールファンなら誰もが注目するこの大会。しかしながら日本も負けてはいない。この日本国内にもチャンピンズリーグと呼ぶに相応しい立派な全国覇者をかけた戦いが存在する。それが全国地域リーグ決勝大会だ。

 その名の通り、全国の各地域の社会人リーグの覇者もしくはそれに準ずるチームが出場するこの大会は勝ち抜けばJFLへのステップアップを手にできる。昨年はご存じの通り東北リーグの覇者TDKサッカー部と東海リーグの覇者であるFC岐阜が激戦の末にJFL参入を決めた。今年は現時点でまだ全ての地域リーグが全日程を消化できたわけではないので、その決勝大会への切符を掴んだチームは8チームのみ。ここに全国社会人大会枠を含めた残り6チームが出揃い、JFLを目指した戦いが幕を開けるのである。
 現在、決勝大会の切符を掴んだ各地域の強豪チームは下記の通り。

①ノルブリッツ北海道 (北海道リーグ優勝)
②グルージャ盛岡 (東北リーグ1位)
③FC町田ゼルビア (関東リーグ優勝)
④松本山雅FC (北信越リーグ優勝)
⑤静岡FC (東海リーグ優勝)
⑥矢崎バレンテ (東海リーグ2位)
⑦バンディオンセ神戸 (関西リーグ優勝)
⑧ファジアーノ岡山 (中国リーグ優勝)

 この8チーム中唯一ファジアーノ岡山は地域リーグに所属するクラブながらJリーグ準加盟を果たしている。この大会を勝ち上がれば、来季のJFLでの成績いかんでは最短で1年でのJ2参入が可能となる。強い、とにかく強い。地域リーグのレベルを超えている。今季の得失点差はなんと14試合で74。元Jリーガーの弦巻や重光、池松ら多数揃えた実力派の岡山はエースのジェフェルソンを中心に中国リーグを無敗で突破。昨年決勝ラウンドまで進みながら惜しくも敗れた借りを返したいところだ。地元の期待も膨らむ一方で、今年はJFL参入を最も期待できるチームだ。
 ノルブリッツ北海道もラスト1節を残し無敗で北海道リーグを消化している。エース岡戸を中心とした北の国から唯一の参加チームながら、昨年は1次ラウンドで1勝もできずに終わった。今年こそその真価は問われるところ。
 グルージャ盛岡は東北リーグからの参戦。こちらも4節を残しながら現在リーグを無敗で独走する。かつて市原(当時)でプレーした吉田監督の下、菅原、金澤らJリーグを経験した選手も多数集まる北の雄。昨年のTDKに続きたいところだ。
 関東リーグから参戦のFC町田ゼルビアはダークホースになるだろう。今季は昨年決勝大会に進んだルミノッソ狭山とY.S.C.C.が揃ってリーグで足踏みしたため、1敗を守りきり優勝を果たした。経験豊富な竹中穣や酒井のFW陣と谷川、杉本といったJを経験している選手たちがその原動力となる。昨年は関東勢が不甲斐無かっただけに町田には大いに期待したいところだ。
 北信越リーグは混戦模様を呈したが、AC長野パルセイロとの激しいデッドヒートを制したのは松本山雅FC。すっかり老けた辛島監督が往年のガンバサポには懐かしい限りだが、ブレーメンでもプレー経験のある土橋、エースの白尾を軸に攻撃陣の層は厚い。まだ歴史の浅いチームながら好成績も期待できるだろう。
 昨年は全国社会人枠で出場した静岡FC。接戦を制することができず昨年の大会は苦杯を味わったが、今季は奮起したいところ、数々の名選手を生みだした名門静岡の看板を汚すわけにはいかない。その静岡FCと共にたった1敗で東海リーグを2位に着け、今年の決勝の切符を掴んだ矢崎バレンテは静岡有数の大企業である矢崎グループ矢崎計器島田のチームである。昨年は岐阜、静岡の2強に追い付けず悔しい思いをした。東海リーグでは抜群の強さを発揮できた今年だが、この強豪揃いの決勝大会でどこまで戦えるかが注目である。
 
 正直、ファジアーノ岡山の対抗馬に挙げたいのは、関西リーグを制したバンディオンセ神戸。FC Mi-Oびわこkusatsuと覇権を争ったが、今年は関西はB神戸の独壇場。安定した強さを持つこのチームはガンバとの練習試合を積極的にこなしたりとチームのレベルアップに余念がない。昨年は3-5と岡山に大敗を喫した。今年は1次ラウンドからダッシュをかけたい。Jを経験したベテランから若手の実力派が揃うこのチームは間違いなく波に乗れば強さを発揮できるはず。リーグも早くに全日程を終了したため、今は全国社会人大会とこの決勝大会に焦点を絞る。その余裕の調整も好成績に是非とも繋げたい。

 上記以外でまだ6チームが出揃う決勝大会。四国リーグはヴォルティス徳島・アマチュアとカマタマーレ讃岐の熾烈な争いが続き、九州リーグは勝ち点差2以内に上位3チームがひしめく混戦模様。昨年決勝ラウンドまで進んだVファーレン長崎が今年は危機に立たされている。ニューウェーブ北九州あたりが勝ち抜けるとまた面白くなるはずだ。

 日本のアマチュアチャンピオンズリーグ。この大会は11月下旬から12月初旬にかけて開催される。是非、国内主義の方はチェックしてもらいたい。それだけで、国内サッカーはJリーグだけでなくさらにアマチュアにまで虜になるはずだ。
 絶対保証する。
 

ヤマハまでに押すべきリセットボタン

2007年09月18日 | 脚で語るJリーグ


 しかし、どうして中断後最初の一戦はこうも悪いのか。さすがに昨日の横浜FM戦は言葉を失う散々な出来であった。逆に今日のサテライトVSC大阪戦はサブ組が爆発し6-1の大勝を収めただけに、トップの無様な試合はこのサテライトのゲームの印象をより引き立てるものになったのは言うまでもない。

 昨日の戦犯は誰か?という問いがあるならば、その答えは一人に絞られるわけではないが、間違いなく代表組の3人はは筆頭に挙げられるであろう。全体を通して動きは鈍く、チームの停滞の引き金となった。欧州遠征でゲームに出場していない橋本も体調不良が顕著であったというから、西野監督は完全に橋本に見切りをつけるタイミングを誤ったといっていい。そして特にここで断言しておきたいのは加地は日本最高の右SBではないということである。
 昨日のゲーム、横浜FMはガンバのサイド攻撃に全く脅威を感じていなかった。左の安田は田中隼に完全に封じられ、右の加地も攻撃参加時の積極性に全く欠けていた。守備ではまだ献身的であった加地であったが、アタッキングゾーンではその存在は横浜FM守備陣に消された。逆にわざと中央に攻撃のウエイトを固めさせられ、CBの栗原と那須を軸にシャットアウトする展開に持ち込まれた。ここまで中央突破を誘発させられ、封じられれば成す術はない。攻撃の選択肢の一つとして武器にすべきサイド攻撃が機能しないのであれば必然的にこの流れで敗北を喫するのは目に見えている。

 今季わずかながらアシスト数が昨年のゼロから成長した加地であるが、そのクロスの精度は依然目を覆いたくなるものばかり。直接的な起点とはもはや言い難い。こうなれば中盤の二川と遠藤にブレーキがかかれば、手詰まりにて万事休すである。バレーの突破力もそれを生かすボールが出てこなければ、一人での突破は技術的に劣る彼では難しいため、充てにすることはできない。そもバレーがボールを持った時にいち早くフォローに回るべき選手が少なかったことも昨日のゲームでは敗因の一つである。

 前日の練習ではセットプレーの確認練習以外、代表組の3人がボールを蹴ることはほとんど無かった。グラウンドを軽いジョグで流すだけの3人にトップコンディションが果たして期待できるだろうか。シジクレイだけが大きなコーチングの声を出すだけで、選手たちからの気持ちは今ひとつ感じられなかった。
 そんな事も考えれば、今日活躍したサブ組はカンフル剤として次節磐田戦でキーになってくるのではないだろうか。中盤の起点となってボールを適材適所に散らした横谷、自在にポジショニングを変えてはムービングサッカーを体現した前田、持ち味であるドリブルからの流れるようなスルーパスを随所に見せた寺田、そしてセットプレー時には大きな得点力を発揮した青木。これらのバックアップ陣を試す機会は大いにあって然るべきである。いくらトップとサテライトの実力差がまだあったとしても、昨日のようなゲームをやってくれるならば一度全てをぶち壊すことも一つだ。

 23日のヤマハスタジアム。勝ち慣れた万博とは程遠いこの悪魔の地で、全ての悪循環を払拭しなければならない。ヤマハスタジアムのイメージとともに。
 そうでなければ、もうチャンピオンの座は遠くなるばかりだ。

天皇杯レビュー 1回戦 天理大VS図南SC群馬

2007年09月17日 | 脚で語る天皇杯


 これをジャイアントキリングと呼ぶには天理大の選手たちにいささか失礼であろうか。天気予報を覆す炎天下の日差しが降り注ぐ橿原公苑陸上競技場はホーム天理大学の勝利を喝采する地元観戦者の歓声に包まれた。
 天皇杯1回戦である奈良県代表の天理大学と群馬県代表の図南SC群馬のマッチアップは3-1で天理大学が勝利し、2回戦へと駒を進めた。

 この日のスターティングメンバーは・・・
<天理大学>
GK31 吉田晋
DF16 広重隆之
 4 内藤翔平
 36 田中勇太
 11 森田郁也
MF22 亀田訓央
 24 嶋田祥吾
 27 岡由和
 7 山田友也
FW8 布施要
 10 谷口祐樹

<図南SC群馬>
GK1 鏑木豪
DF27 二瓶隼
 2 タファエル
 4 東田学
 20 上田敏之
MF6 氏家英行
 15 樹森大介
 16 小仁所洋平
 22 マルキーニョ
FW13 塚越良太
 31 関根秀輝

 上記のメンバーで対戦する両チーム。片や奈良県内では社会人も含めての実力を持つ大学サッカー部とザスパ草津に続き、群馬県から2チーム目としてJ入りを狙うクラブチームの対戦という組み合わせだ。図南は元Jリーガーも揃うだけに戦力としては明らかに大学生より上であることは明白。関西学生リーグ2部所属ながら、県代表の座を掴んだ天理大の戦いぶりが焦点だった。

 前半、若さゆえの勢いというのか、天理大がポゼッションを握る序盤となる。図南は落ち着いてボールを回すが、天理大のチェックにボールを奪取され、簡単にカウンターを許す。どうもスローペースな試合の入り方であった。8分早速試合が動くこととなる。絶好の位置で得たFKを天理大はMF嶋田がゴールに沈める。元JリーガーのGKをあざ笑うこれ以上ない先制点であった。天理大は中盤7番の山田(静岡学園高)を起点にハマればテンポのいいカウンター攻撃で図南を脅かす。前線では布施と国体選抜のメンバーでもあったエース谷口が巧みにポジションを入れ替え、図南ディフェンスをかき回していた。
 しかし図南もボール回しは経験者豊富なゆえにリズムが乗り出すと次第に機能してくる。その中で25分に得たPKを主将樹森が決め、一度は同点に追いついたが、図南がゴールネットを揺らしたのはこの一度きりとなった。塚越と関根の2トップに展開するが、この日はこの前線の2人がチャンスに弱すぎた。チャンスボールをフニッシュまで持ち込めず、ジリジリした展開。33分には関根が決定的なGKとの1対1のチャンスをフイにしてしまう。そうこうしているうちに39分には森田の右CKからDF田中がヘディングで合わせ追加点。再び突き放し、天理大は前半のうちにセットプレーからの2発で図南のゲームプランを粉砕した。

 後半、暑さもあり、アマの宿命か、運動量が徐々に落ちていく両チーム。前半の不甲斐無さを取り返すべく、図南は中盤の樹森、氏家が果敢にチャンスを作る。露骨に図南はシュートのペースが増えたが、天理大ゴールを決定的に脅かすチャンスは無いままにゲームは進められる。氏家は一人気を吐き、シュートを2列目から果敢に放っていた。しかし、相変わらず2トップの仕事量は希薄で、得点の匂いは漂わすことなく図南は2トップを替えることとなる。さらに途中から出場した元草津の小久保純は果敢に突破を試み、質の高いチャンスボールも供給できていただけに、図南はFWの不出来さが助長されて目立つ形になってしまった。天理大よりも遙かに繋ぐサッカーは実践されているのだが、単純にゴールを奪えるプレーが無かったということである。
 グッと運動量が落ち、図南のパスワークに苦しまされながらも、天理大はさらなるチャンスを狙っていた。78分には布施のパスを受けた途中出場の福田真吾がGKの頭上を越えるループシュートを決め勝負あり。難なくゲームをクロージングさせていく。疲れが見えながらも天理大はあきらめず、ラインを高い位置で保ち、最後まで集中力を切らさなかった。

 このように元J選手も在籍する格上のチーム相手に小さなジャイアントキリングを見せてくれた天理大。次戦の相手はバンディオンセ神戸である。かなりの強敵であり、勝つことは至難であろう。しかしながら、地元奈良の戦いで鮮やかに初戦を突破したことには文句無しで賛辞を送るべきだと思う。

 橿原に映える大和三山の景色がさらに緑色濃く、鮮やかに目に映ったのはそんな天理大の奮闘を目の当たりにしたからではとも自分なりに考えながら、私は奈良を後にし、G大阪VS横浜FM戦のために一路万博へ向かった。

ジャイアントキリングを占う!

2007年09月15日 | 脚で語る天皇杯


 16日に日本版FAカップ(個人的にはそう思っている)、天皇杯が幕を開ける。個人的には幼い頃からこの天皇杯は非常に楽しみである。何故なら日本中のプロとアマチュアの真剣勝負を観ることができるからで、その勝負はノックアウトのトーナメント戦。そこに起こる奇跡がさらにフットボールの魅力を掻き立てるのだ。

 ジャイアントキリング。それは格下のチームがプロを始めとする遙かにレベルの高いチームに土をつけることである。
 かつて90年代はは現在FC東京としてJ1にその戦いの場を移している東京ガス(当時JFL)がジャイアントキリングの名手であった。対戦するJチームはその勝負強さの前にことごとく沈黙し、アマラオと中心とするアマチュアの雄の前に屈した。1回戦から戦う全国の各都道府県の代表チームはJチームが現れる3回戦以降ほとんどがその姿を消してしまうが、アマでもそこに真剣にチャレンジできる機会としてもこの大会の価値は十分にある。

 今季も各都道府県代表として47の個性的なチームが元旦の国立を夢見て戦いを始める。個人的に気になるチームの注目していきたい。
 まずは滋賀代表のFC Mi-OびわこKusatsu。関西リーグではバンディオンセ神戸の前に苦杯を喫したが、初出場として注目度の高い戦力を有している。1回戦の相手は四日市大学だが、いつも通りの試合運びができればおそらく圧倒的な強さを見せれるはず。幸山とかつて神戸でプレーした村瀬の両エースが活躍できれば難なく2回戦で栃木SCと対峙できるだろう。前線に比べ経験者が多数鎮座するDFラインも強固だ。今季関西リーグわずか11失点の最終ラインが学生相手に崩れることはないだろう。是非3回戦で福岡との対戦を楽しみにしたい。
 そして、4回目の出場を誇る大分U-18と対峙する徳島アマチュアの2チーム。このカードもかなり熱いゲーム内容が期待できそうだ。U-18日本代表をはじめサッカー界のエリートたちを多数抱えるヤング大分に雑草魂をどこまで見せられるか徳島アマチュア。今季途中に加入した大黒聡にも注目である。

 間違いなく1回戦最高の対戦カードはツエーゲン金沢VSロッソ熊本。どちらも多くのJ経験者を揃えながら、カテゴリーは熊本がJFLと一歩リードしている。今季は北信越リーグでも躍進を遂げる好調な長野勢の前ににその存在感が薄かったが、これまで石川県代表の常連であったテイヘンズFCの牙城を破り本戦出場を決めた金沢の闘志に期待できる。また熊本も順当に勝ち上がればJ2の水戸と対戦するということもあって、今大会のジャイアントキリング期待度ナンバーワンのチームであることは確かだ。
 バンディオンセ神戸もJFL昇格を目指して戦う地域リーグ決勝大会の前にこの天皇杯で勢いをつけたいところ。昨年は横浜FCを下すなど目下今大会でもジャイアントキリングを起こす最有力候補だ。前述の熊本よりカテゴリーが低いだけにさらに注目したいところだ。そのB神戸が順当に勝ち上がれば3回戦でキング・オブ・アマチュア佐川急便SCと対戦することになる。B神戸にとっては目標のJFL昇格を前に力試しを是非行いたい。今季関西リーグでも2人でチーム総得点の半分以上を叩き出した松田と西村が火を吹けば、佐川急便も苦戦は必至だろう。
 中国リーグで中位に着けるレノファ山口も将来のJ入りを目指すチーム。今大会ではJFLのソニー仙台と戦うが、この山口にもジャイアントキリング発揮してもらいたい。

 1回戦に出場する47チーム全てが実にそれぞれ個性的で、実力者ばかりだ。学生、企業チーム、ユース、高校問わず、そこに各カテゴリーの垣根は存在しない。火蓋が切られれば皆がフットボーラーとしてそのプライドをぶつけ合う。

 今年も1回戦からそのプライドに衝突が見せてくれる数々の奇跡を楽しみにしたいものだ。

JFL観戦記② 佐川印刷SC VS ジェフリザーブズ

2007年09月14日 | 脚で語るJリーグ


 前後半でゲームのイニシアチヴをひっくり返すには、よほどのゲームプランか選手たちの気持ちが無いとそれは容易ではない。しかしながらこの日西京極にはいとも簡単に前後半でガラリと姿を変え、魅力的なサッカーを展開するジェフリザーブズというチームがあった。

 U-22日本代表がホームにU-22カタール代表を迎えての大一番を戦うその夜、私は西京極にいた。佐川印刷SCとジェフリザーブズのJFL後期第8節。500人近い観衆がメインスタンドに詰めかけたそのゲームは、なかなか見応えのある好ゲームとなる。
 ホーム佐川印刷SCは以前、FC岐阜との一戦で濱岡、大坪、町中の3人で構成される前線の攻撃ユニットが特に印象に残っていた。ボール回しの早いそのショートカウンター中心の攻撃は見応えがあり、前回の観戦時もFC岐阜に攻め込まれながらもあわやというシーンを幾度となく演出していた。
 この日もホームの佐川印刷が前半からゲームのペースを握る。中盤の主将で元ガンバユース東と元京都の大槻を中心に攻撃を組み立てる佐川印刷。前述の3人にボールが収まれば、ゴール前までの展開には苦労しない。対するジェフリザーブズ(以下ジェフR)は、組織的な守備を中心に自らゲームを組み立てていこうとする、どちらかというとアクションサッカー。中盤で佐川印刷のプレスの思うようにボールが動かせず、前半のジェフRには明らかに拙攻の色が見え隠れする。ボール奪取後に鋭いカウンターを見せる佐川印刷の典型的なリアクションサッカーとは対極的な動きであった。
 ジェフRは、4バックの布陣で攻撃のタクトを振るうのは10番の堀川。そしてトップチームから籍を移した中原(奈良・一条高出身)とテクニシャンでキャプテンの蓮沼が中盤からそれをサポートする。
 前半26分に佐川印刷は決定的なCKのチャンスを決め切れず、続く34分の濱岡の強烈なFKもジェフRのGK瀧本がファインセーブ。前半のうちに先制点を奪いたい佐川印刷は前半ロスタイムまでその攻撃の意識を緩めることはなかった。ロスタイムに大槻のシュートがバーの上をかすめて外れるとメインスタンドからは溜め息が漏れる。是が非でも佐川印刷は前半で先制点を奪っておきたかった。

 後半、開始早々から眠っていた猛獣が覚醒したかのようにジェフRが攻め込む。前半乗り切れなかったパスワークが冴え、完全にゲームの主導権を奪う。52分には堀川がゴール前で落ち着いてオーバーラップしてきたCB宇野にラストパス。完全にシュートコースが空いた目の前に宇野が蹴り込みジェフRが先制する。
 こうなれば、止まらないジェフR。後半15分間でおよそ8本のシュートを放ち、防戦一方の佐川印刷。前半から巧みな運動量で右に左にそのポジションを変え、堀川を衛星的にサポートしていたFW河野がPA前でボールを受け取り、ドリブルで切れ込み追加点を挙げる。右SBの松本も随所に好オーバーラップを連発し、攻撃をサポート。蓮沼に代わり、途中出場の鳥飼もテクニックを駆使して2番という背番号に似つかわしくないゴール前での活躍を見せる。最後尾ではGK瀧本がファインセーブの連発で佐川印刷に追い上げの隙を作らせない。後半だけで11本ものシュートを放ったジェフRがそのまま難なく勝利し、ゲーム巧者ぶりを見せつける形となった。

 昨季、勝利になかなか恵まれなかったチームとは思えないジェフR。最後は遙々駆けつけたサポーターに向かってトップチームと同じくイレブン全員での前転で挨拶。疲れ切った表情を見せる佐川印刷イレブンと対極的にその笑顔が印象的であった。
 トップチーム顔負けの魅力的なサッカーを見せつけてくれたジェフR。トップチーム昇格を狙える選手もこの中から出てきてもそれはおかしくない。若手中心であるだけに可能性溢れる選手たちが多い。今後も見逃せないチームであることは間違いない。

陸の孤島?広島の憂鬱

2007年09月11日 | 脚で語るJリーグ


 今週号のサッカーダイジェストに目を通すまで知らなかったこのニュース。なんと広島のホームゲームの指定席チケットが25節浦和戦において13年ぶりに前売り段階で売り切れたとのこと。対戦相手がリーグ屈指の人気を誇る浦和というのもあってか、広島にとっては何とも感無量の状況である。

 皆さんは広島のホームゲームで満員に詰まった広島ビッグアーチをその記憶に留めてらっしゃるであろうか。筆者もJの試合なら現神戸監督の松田浩が強烈なロングシュートを叩き込んだ初年度のV川崎(当時)戦しか脳裏に浮かばないのである。個人的にも以前から、この広島はどうもその広島ビッグアーチのキャパシティとその立地に長年苦しんでいるように思えてならなかった。根源を物申せば、広島という都市自体、人がなかなか集まりにくい都市なのではないかとも思える。そう、サッカー観戦者は特にである。
 
 広島は中国地方で唯一のJリーグチームである。県庁所在地の広島市は日本で12番目に人口を集約する街であり、平和都市としても、そして宮島などの世界遺産を有することからも観光都市としても名高い。その中国四国唯一の政令指定都市は、大阪と博多の中間点ほどに位置し、アクセスは専ら山陽新幹線が定番である。
 個人的に考えるのは、この広島が隣接する他県の大都市と繋がっている特に便利な立地ではなく、地元の人間以外はある程度の時間を要して広島まで向かう必要があるということだ。中国地方は確かに本州の中でもセンターラインを横断する山地の面積は著しい。日本海側の山陰地方と瀬戸内海側との距離もそれほど遠くはないが、この間を山地が占領する中国地方は正直、電車によるアクセスが生かせるのは瀬戸内海側だ。おまけに空の玄関である広島空港は立地が非常に悪い。広島市内からでも30キロ以上の所にある空港は尾道市と広島市の中間点に位置するといっていい。

 このように特に人口の集中する他県の大都市と1時間~2時間以内でのアクセスが取れない広島はさながら陸の孤島なのかもしれない。特筆すべきはJ屈指のホームスタジアムのアクセスの悪さ。これも大きく影響しているはずだ。
 広島ビッグアーチは車を運転するのが苦でない方なら山陽道を五日市で降りればすぐ眼の前であり、大いに結構だろうが、電車で向かうにはかなりの忍耐力を要する。市内をムダにグルッと回ってしまうアストラムラインを乗るにしろ、JR横川駅からバスにしろ混雑を考えれば約40分はかかってしまう。遠路はるばる広島に到着したアウェイサポを待ち受ける試練の時間だ。
 それから、広島市内に市民球場を持つ広島東洋カープとしばしば試合開始時間が重なることも大きな要因だろう。平和記念公園から目と鼻の先にあるこの球場は、原爆ドームと並んで市民のシンボルとなっている。もし、野球かサッカーと迷えば、アストラムラインに乗ることは選ばないのが自然な選択である。

 とにかく5万人(Jではバックスタンドの一部は使用しないため3万人)のキャパシティが有り余ってしょうがない広島の憂いは足を運べばすぐ実感できる。将来的には同じ中国地方にファジアーノ岡山がJチームとして参入する時も来るであろう。山口もレノファ山口に頑張ってもらいたいものである。山地に遮られた中国地方のサッカーファンの往来がもっと顕著になれば広島のホームゲームにも人が集まるだろう。だからこそ余計に浦和戦の好調なチケットの売れ行きは喜ばしいニュースであり、営業サイドの努力の賜物でもある。自由席の売れ行きも好調なようで何よりだ。
 
 継続は力なり。そんな広島ビッグアーチに今季最終戦、皆で足を運ぼうではないか。

JFLに見るフットボールの醍醐味

2007年09月10日 | 脚で語るJFL


 フットボールにおいて長丁場がもたらす「予定調和の破壊」ほど魅力的なものはない。9月を迎え、プロ野球と同じくJ2もJFLも佳境を迎え俄然面白くなってきた。

 9日にJFL後期第9節、2位ロッソ熊本とその直下で3位につけるYKK APとの直接対決がKK WINGで行われた。この後、約1ヶ月の中断を挟んだ後に首位である佐川急便SC、Honda FC、現在好調なジェフリザーブズと強豪ばかりとのマッチアップが控える熊本にとって、このYKK AP戦は是が非でも勝っておきたいゲームだった。
 いや、勝ってプレッシャーをかけておきたかったのはむしろYKKの方だろう。1-1で迎えた89分にロングフィードに朝日大輔が抜け出し逆転ゴール。先制しながらもホームで試合の主導権を握れなかった熊本は劇的なYKKの逆転勝ちの前にまさかの敗北を喫する。この敗戦がすぐに直接成績を左右することはないが、10月以降にまだ後期日程を8試合残すリーグでこの敗戦は後に強烈なジャブとして効いてくる可能性もある。アマチュア最高峰の頂を狙うこのJFLはJ準加盟のチームとてそう簡単に勝てるものではない。現に首位の佐川急便はこの日も横河武蔵野に快勝し、熊本にポイント差で7を付けた。優勝でJ参入に錦を飾りたい熊本も4位FC岐阜と5位アローズ北陸の43ポイントとわずか11ポイント差であることを念頭に入れておかねばならない。
 ロッソ熊本のHPでダイジェスト映像を見る限り、このYKK戦はかなり白熱したゲームであった。JFLは面白い。もはや近年のJFLはアマチュアリーグの枠を遙かに超えるクオリティの好ゲームに恵まれている。

 筆者は12日の水曜日にU-22日本VSU-22カタールを観ずに、JFLをチョイスする。西京極で佐川印刷とジェフリザーブズのゲームが行われるからだ。実は以前からジェフリザーブズにはかなり興味があった。

 市原スポーツクラブとして発足したのは1995年にも遡る。当初はジェフ市原(当時)のホームタウン事業の一環としてコーチを派遣し、96年に千葉県1部リーグより参戦した。2001年にトップチームのジェフの下部組織に編入されたのだが、03年に関東リーグに昇格、04年には1部昇格、翌年の05年には全国地域リーグ決勝大会で2位となり、いたって真っ当なルートでJFLまで上りつめたのである。トップチームのジェフの下部組織とはいえ、選手の流通があるぐらいで、完全にこのチームはジェフユナイテッド千葉・市原とは一線を画す別のチームなのである。

 JFLには様々な境遇の選手たちが混在する。かつては華々しいJ1のピッチでプレーした者、元日本代表の肩書を持つ者、その夢半ばで挫折し大卒や高卒からJFLにプレーの場を求めた者など、企業チームとJリーグ参入を狙うチームこそ違いはあるが、おおよそ全ての選手たちに共通するのは、フットボーラーとして誰もが「上を目指している」のである。ここで終われば明日はないといわんばかりにかつてJ1に在籍した選手たちもその戦いに凌ぎを削る。そんなプレイヤーの固まりであるJFLは熱くならない訳がないのだ。
 そんなJFLにおいて、ジェフリザーブズの存在は極めて価値のあるものだと思う。在籍選手は若手が多いが、J1のトップチームと連携がとれる環境は選手にも更に活躍の場を飛躍させるモチベーションの源になるはずだ。

 昨季はJFLで苦戦したジェフリザーブズも今季はいい戦いを演じている。そういえばJ2徳島もアマチュアチーム(最近、トリノでプレーする大黒の実弟である大黒聡が入団した)を有しているし、新潟もシンガポールに同じようなコンセプトでチームを活動させている。こういったモデルケースは他のJチームも模倣してもらいたいものだ。プロとアマチュアの交流、そしてその門戸を少しでも開けられるチャンスがあればと思うのだが。

 そんなケツに火を付けてフットボールに打ち込む漢たちの戦いの場がJFLである。とにかく面白くてたまらない。

あとの祭り

2007年09月09日 | 脚で語る日本代表


 「負けなくてよかった」と形容すべきか、「勝つべき試合だった」と言うべきか。もし後者を選択するのであれば、ゲームプランの不明瞭さが際立ったゲームであり、正直なところ前者の感想が最も当てはまるU-22代表の昨夜のサウジアラビア戦であった。

 終わってみれば、カタールもベトナムと引き分けたことで、このゲームの「勝ち点1」はアウェイながら価値ありと判断できるかもしれない。まだ2戦目ながら、現段階にて勝ち点4で並ぶカタールとは12日の次戦ホーム国立で直接差をつけることができる。勝てればの話であるが・・・
 とにかく負けることは許されなかっただけに最低限のゲームを行えたと判断すべきだ。逆に実質的な話をすれば結果以外の収穫はほぼゼロにも等しい。

 DF陣はある程度の及第点を与えることができるだろう。キャプテンマークを巻いた水本を中心によく相手FWのアブデレラとユーセフの2人を凌いだ。特に活躍が光ったのはGKの山本。前半9分のイブラヒムのミドルと41分のグワイニムの決定機をよく守った。何よりホームで運動量の勝るサウジアラビアは時折見せる中盤のリズム良いパスワークで日本ゴールを脅かした。グワイニムやモサあたりのプレイヤーにかなり自由にやられた感は否めない。どうしても球際の強さでは中東の選手たちに分があるのは致し方がないが、日本が実践すべき「組織」としてのプレスと攻撃が100%実践できたかというとまだまだ程遠い出来であった。

 中盤は、本田拓がどうしてもプレーにムラがあり、かねてから個人的には不安の残る選手である。サウジアラビア戦も警告をしっかり1枚頂戴していたが、それと同時に彼と梶山のプレースペースの開きが相手のリズムを助長させたのではというのが専らの感想だ。その梶山もやはりもっと前に絡みたいところだが、家長が君臨する昨夜のフォーメーションでは梶山自身の持ち味やインパクトは残しにくいなと感じた。キープ力はあるが、時折見られるイージーなミスを無くせばさらに良くなるはず。ともかくフル代表同様、ここの2枚が気になるのが現在の日本の共通点である。
 水野はチャンスに絡むシーンもあったが、ほとんどプレー機会は無かったとも言える。柏木との交代に何を思うのか。彼は指揮官にこの交代の真意を尋ねて、自分のプレーを省みるべきかもしれない。本田圭と家長に関しては、本当に見ていてジリジリさせられた。この戦術でのキーマンは間違いなくこの2人であるのだが、本人のトップコンディションもイマイチであるのに、その家長のトップ下が機能しているとは言い難い。ボールを収める懐の深さはよく分かるが、次のプレーに直結できない。単純なボール逸もあり、トップ下としては決定的な仕事はできなかった。本田圭もその家長と同じく、決定的なチャンスに無縁。豪快なFKは一見の価値があるが、家長と共にもっと局面で打開できるプレーを求めたい。

 平山に代わり、初先発のチャンスを掴んだ森島には期待できるところもあった。彼にしかできないプレーというものを随所に見せ、平山と違った起点となる動きは見られた。しかしながら、彼を生かすクロスの精度が低すぎた。何かを起こしてくれそうな予感めいた選手だけに更なるチームへのフィットが必要である。

 ダラダラ書いても一緒である。とにかく相手が10人になったところで試合を決定づけられるほどこのU-22代表チームは熟成していない。逆に言えば、自分たちで勝つ方法を模索するのに時間を要し、組織でのサッカーが完遂できていない。中盤はなんとなくタルい感じになり、ダイナミズムに欠ける。明日の我が身が気になってならない指揮官の切るカードも決定的なジョーカーに恵まれていない。

 さあ、まだ最終予選はこれからだ。代表各カテゴリーの中でおそらく最もスペクタクルとは程遠いこのチームがどうやって本大会の切符を掴むか。
 
 とてもじゃないが、予選を勝ち抜くことがいっぱいいっぱいで、本大会でのメダル獲得の話なんかはできない。スローガン通り北京に行くだけで終わりになるだろう。でも果たしてそれでいいのか。そんな議論をするのは本来ならば軽く2年ほど前にしておかなくてはならないが、後の祭りとはこのことである。

全てをひっくり返せ

2007年09月08日 | 脚で語る日本代表


 今夜U-22日本代表が灼熱のアウェイでU-22サウジアラビア代表と激突する。この若き五輪代表はターニングポイントとなる最終予選最大のヤマ場を迎えるといっても過言ではない。もはや反町監督がどこまでチームを指揮できるかも瀬戸際の問題になりかねない内容の乏しさなどが専らの焦点ではあるが、目の前の試合に勝つことしか方法は無い。五輪代表はじっくり見守るとしよう。

 その兄貴分であるフル代表はオシム体制初となる欧州遠征を行い、オーストリア代表と対戦した。結果的にPK負け、内容はオーストリア相手にまずまずの試合展開を見せたとも評価できるかもしれないが、結果だけを見れば勝てていないのが現実だ。正直申し上げて、アジア杯からオシムジャパンの著しいマンネリ化を感じてならない。

 遙々、欧州まで行って何とお粗末なゲームをしているのかと言ってしまえば言い過ぎかもしれない。しかし、この遠征での収穫要素は果たして実り多いものになるのかと言う点でも懐疑的にならざるを得ないのが現在の日本代表である。
 まず中盤の点を取る意欲に欠けたプレー。鈴木と遠藤がオシムには重宝されているが、正直、中村俊という欧州基準を知る選手と比較すれば「意識」の面で乖離があるとも言える。今回のオーストリア戦では同じく欧州組の稲本と途中出場の松井がまずまずの評価を得たが、鈴木と遠藤の国内組常連は前への意識に欠けたスペクタクルとは無縁の無難なプレーに終始した。
 特に遠藤に関しては、得点に直結できるプレーメイカーである選手だけに露骨に苦言を呈させて頂きたい。ガンバでの彼の貢献度は抜きに話をさせてもらうと、彼は代表におけるプレークオリティをもうワンランク飛躍させるべき必要がある。元来、中盤において「散らしの達人」と名高い彼だが、もっとゴールを生み出す始点にならなければいけないはずだ。もし、欧州基準で現在の日本代表を検証すれば遠藤は間違いなく「不要」の烙印を押されかねない。「散らす」ことから「取らす」ことへの徹底的な意識変換をお願いしたい。

 前者の鈴木に関しては、オシムがどうしてあれだけ重宝するのか分からない。年齢的にいえば若く、所属する浦和も好調なだけに召集メンバーの常連であることは分かる。しかしながら、現在の鈴木レベルであればもっと国内組で試用したい選手もいる。彼を起用し続ける裏側にはこのボランチのポジションにおけるバックアッパーの少なさすら痛感させられる。中村憲と鈴木のパフォーマンスが落ち込んできているなら、迷わず稲本と新たに試せる選手を起用したいところだ。

 FW陣に関しても、中村俊が今回の遠征合宿中に苦言を呈するなど、もうワンレベル飛躍が必要である。前回のカメルーン戦で起用した前田と大久保ではなく、スタメンに名を連ねたのは田中と矢野。様々な選手を試したいというところが本音だろうが、それが勝利という結果に直結するか否かの判断はもう少し固執したいところだ。
 今回オシムの選考基準に「走れる選手」というキーワードがあったが、走れるだけで決定力を持ち合わせていない、もしくはそのチャンスメイクができないのであれば、その選考基準は理想的ではない気がする。今回は田中がリーグ戦の好調ぶりを垣間見せた感もあったが、それでも高原不在時の迫力不足と得点力不足は克明になった。その柱となる高原でさえ、アジア杯終盤ではパフォーマンスに精彩を欠いたことを考えると、もっと国内組でコンスタントに得点を奪える軸となる選手が必要である。

 とにかくマンネリ甚だしいオシムジャパン。全てを根底からひっくり返せ。現在の序列をリセットしてもいい。点を取らなければゲームは勝てない。
 日本協会もボヤボヤしているとオーストリアの熱視線に指揮官を奪われることもあるかもしれないぞ。