脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

沈黙、混沌の幕開け -G大阪vs甲府-

2011年09月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の首位を走るG大阪は、ホーム万博で第27節を甲府と対戦。前回対戦では3-4で競り負けた相手だったが、この日はホームで今季初となる無失点で0-2と敗戦。今季4敗目は12試合ぶりの敗戦で、優勝争いを続ける中で非常に痛い1敗となった。対する甲府は前節の福岡戦に続き今季初の連勝。

 

 4連勝で迎えた前節・横浜FM戦をドローで終え、リーグ優勝へ粘りの戦いが続くG大阪。2位につける柏とは勝点差が1ポイント。おそらく今季のJ1優勝はその2チームと3位・横浜FM、そして4位の名古屋に絞られるはず。直接対決を残すのは名古屋だけということで、勝点が切迫している他チームの勝敗に大いに左右される展開。前回対戦時に撃ち合いで敗れた相手でありながら、甲府の現在の順位は16位と降格圏内だけに、ここは負けられないところだ。G大阪は、前節先発だった武井に代えてキム・スンヨンが先発に名を連ねる。左SBにはルーキーの藤春が4試合連続の先発。対する甲府はこのタイミングでダニエルが出場停止から帰還。市川がベンチへ入り、先発には吉田が名を連ねる。佐久間監督に代わってから片桐がハーフナーの後ろにトップ下として配置するようになったようだ。パウリーニョも含めてテクニックのある選手は多い。

 
 
 2万人近くが入った万博。
 この試合展開は一体どれほどの人が予想できただろうか。

 それでもG大阪は、途中加入したラフィーニャとシーズン開幕から活躍するイ・グノのコンビがここまで19得点挙げており、失点数は多いものの負ける気がしないのも本音。相手が16位ともあって、撃ち合いは予想できてもこの展開は予想できなかっただろう。前半終了時点でメインスタンドには席を立つ人が見られたほど。それほどこの試合のG大阪の攻撃は「非日常」的な退屈なものとなってしまった。
 両チームミスが少ないわけではなかったが、G大阪はゴール前へボールを進めるものの落ち着かない。カウンター時にシフトアップするG大阪の攻撃に対して、井澤、山本のボランチコンビ、そして吉田、内山の両サイドバックがしっかり寄せてくる甲府。中央には屈強なダニエルが186㎝を誇る長身でハイボールを跳ね返す。G大阪のくさびに対して3人も4人も詰め寄るこの素早いプレスの意識は徐々にG大阪にこれまでなかった焦りをもたらす。

 
 甲府の守備の厚さを崩せず。
 ラフィーニャも得意の形を作れない。

 
 甲府の守備の要として立ちはだかったダニエル。
 幾度となくチャンスボールを潰し続けた。

 甲府は、30分に片桐のライナー性のクロスボールをハーフナーが合わせ損じたところを柏がシュート。これはG大阪が藤ヶ谷のセーブで切り抜けるが非常に危なかった。元来、守備がスペシャルなチームではない。守備だけでいえば、26試合で42失点という数字はミドルクラス以下。これまで圧倒的なその得点力でここをごまかしてきたチームにとって得点が奪えなければ必然的にこういう場面が巡ってくるのは当然だ。34分には二川が渾身のドリブル突破から折り返し、キム・スンヨンが合わせるが、ギリギリのところで甲府のDFに体を入れられた。

 0-0で迎えた後半、分水嶺となったのは61分の交代の場面だった。G大阪は藤春、キム・スンヨンに代えて佐々木、武井を投入。なんと最終ラインを加地、山口、高木の3バックにシフト。すると、その1分後に中盤からバランスの崩れたG大阪のあたふたぶりを尻目に甲府・パウリーニョがドリブルで突進。エリア前から得意の左足でミドルシュートを決めた。相手DFの板挟みになったラフィーニャがボールを奪われた後に見事なまでのダイレクトパスの連続から一気にパウリーニョに繋がれる。甲府の集中力が発揮された瞬間だった。

 
 パウリーニョと対峙する山口。
 しかし、先制点の場面は完全にパウリーニョの勝利。

 
 
 ほとんどの場面で相手DFの素早い寄せに孤立を強いられる。
 ラフィーニャはG大阪加入後最も苦しんだのでは…

 1点を追いかける展開になったG大阪。ラフィーニャには良い形でボールが入らず、彼がシュートまで持ち込む場面も作れない。イ・グノが突破してもダニエルを中心に甲府の最終ラインが身を挺してこれを止めにかかった。後半のG大阪は前半からたった3本しかシュートを上積みできず。自ら3バックにしてしまった直後の混乱から奪われた1点の重みに苦しむばかりか、試合終了間際には、前がかりになったところをカウンターで簡単に裏に出され、安易な守備を見せた明神をかわしたハーフナーにダメ押しの2点目を決められて試合を終えることになった。

 
 
 
 
 アディショナルタイムのハーフナーの得点。
 日本代表クラスにあまりにイージーな守備で対応してしまった。

 痛い1敗。前節の横浜FM戦の引き分けも帳消し以上に思える取りこぼし。ここまで閉塞感の漂い続けた攻撃はG大阪らしくなく、元来持ち合わせていた守備面での脆弱性を改めて見せるだけとなってしまった。なんとかチームを動かそうとした61分の交代と布陣変更だったが、全体的に勝負を焦っていたと感じる。とはいえ、甲府の守備の高い集中力とタスク実行力の賜物。彼らは決して無理をせず、ほとんど数的不利の場面を作らせなかった。G大阪にとっても今季初の完封負けということだったが、甲府にとっても15節・鹿島戦以来の完封勝利ということで、残留に向けた強い意志を確かに感じる勝負に徹した試合運びだった。
 甲府に敗れて以来、2ヶ月ぶりの敗戦も甲府の前に。次節は20周年を飾るイベントを兼ねたホームでの浦和戦。残りのリーグ戦は7試合。明日、2位の柏が勝利すれば逆転で首位に浮上する。このG大阪を1差で追いかける名古屋、そして3差で追う横浜FM。今季も最後までJ1の優勝争いは混沌となりそうだ。

 
 どうも遠藤に元気がない様子だった。
 やはり、G大阪の浮沈は彼次第か…


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