脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

無得点で“一つ”タイトルを逃す ~スルガ銀行チャンピオンシップ~

2008年07月31日 | 脚で語るガンバ大阪
 コパスダメリカーナ2007の覇者であるアルゼンチンのアルセナルFC(プリメーラ・ディビシオン)を招いて戦ったスルガ銀行チャンピオンシップ2008OSAKAは0-1でG大阪が惜敗。パスサッカーの応酬では負けじと劣らず持ち味は見せたものの、スコア以上に前線のレベルの差を痛感させられた試合だった。

 山崎の1トップで臨んだこの試合。前半から相手の高いプレスに苦しみながらもG大阪はいつも通りのサッカーをしようとした。DFラインから中盤の展開においては、特にそこまで問題点らしき問題点も無かったかもしれない。前半のアルセナルは完全にG大阪の出方を窺っていた。25分に橋本の左からのサイドチェンジを加地がトラップしたところをジャクージにかっさらわれて一気にカウンターを食らう。右サイドのカレイラからクロスが上がると、FWサバのヘディングシュートはかろうじて藤ヶ谷がセーブし、こぼれ球に反応したジャクージのシュートもゴール右に逸れたものの、ここから徐々にアルセナルペースになっていった。ショートパスを繋いで組織的に組み立てるアルセナルのサッカーは、そこまで脅威を感じるものでもなかったが、厚い守備の前に山崎の1トップという苦しい布陣のG大阪はなかなか攻撃のチャンスを掴めない。32分には左サイドから、33分には中央からルーカスが強烈なシュートを見舞うが、PA内でアルセナルを崩せない現実が目の前に立ちはだかった。

 再三チャンスを狙いに来るサバを集中してよく守った中澤、山口を中心に0-0で踏ん張った前半から後半に入ると、51分の下平のシュートをはじめ、G大阪は先制点を狙いにいくが、やはりPA内まではなかなか持たせてくれない。53分には右サイドからゴメスが折り返し、ジャクーシの強烈なシュートを許すなど、ここ一番の精密さはアルセナルに分があった。パスサッカーの応酬になったこの試合が動いたのは87分、アルセナルの左CKからカステリオーネが強烈なヘッドで先制。橋本がギリギリでクリアしたかに見えたが、ゴールラインを割ったと判定されたこのシュートが決勝点となり、アルセナルが初代スルガ銀行チャンピオンシップ王者に輝いた。

 相手がアルゼンチンのチームだということを差し引いても、勝負に負けた事実は受け止めなければならない。しかも、PA内で相手守備陣を決定的に崩す場面がほぼ皆無で、ほとんどが中距離からのシュートにフィニッシュを頼る場面は散見された。守備陣が集中して守ったにも関わらず、前線はその踏ん張りに報いることができなかった。中盤の攻防はパスサッカーを持ち味とするチーム同士見応えはあったのだが。
 この“点の取れる予感”がしないG大阪の攻撃は深刻だ。やはりルーカスにはバレーの代わりは務まらないし、これだけ中央を厚く守られると、山崎に1トップを託すのも無理がある。橋本がその攻撃の起点となって奮闘はしているが、これまでのG大阪の“ウリ”は完全に消えてしまっている。僅差で決着がついてしまった試合だけにこの点は悔やまれるが、短時間で解決できる課題では無さそうだ。ここで平井、岡本らが爆発してくれれば話は別なのだが。

 16日の大宮戦で遠藤の帰還を待つのが得策か。それで本当にG大阪の攻撃は変わるのか。加地が負傷し、山口も終了間際に頭部を負傷した。今週末に試合を控えてはいないものの、連戦が続くこの夏、G大阪は試練に晒されそうだ。この低調な攻撃陣を自浄できるか。現有戦力で戦わなければならない今、必死に耐えて、泣き言は我慢しなければならない。

 ちなみに夏休みを過ごす小中高生のサッカー少年が総動員されたのか、観衆は19,700人を超えた。会場が大きすぎたということで空席こそ目立ったが、平日だということを考慮すれば面目はなんとか保たれたか。だが結果は敗戦。タイトルも含めて、結局何も得ることはできなかった試合なのかもしれない。