脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

苦戦の金沢ラウンド! ~NC準々決勝第1戦 VS横浜FM~

2008年07月02日 | 脚で語るガンバ大阪
 金沢は石川県西部緑地運動公園陸上競技場で行われたナビスコ杯準々決勝横浜FM戦、第1戦は1-0でG大阪が辛勝した。殊勲の1点を挙げたのはこれまでバックアップで燻っていた平井。遠藤不在の中、中盤の支配力で完全に負けていたゲームを彼の一撃が救った。 

 G大阪恒例となっている年に一度の金沢開催が今年もやってきた。一昨年は磐田と、そして昨年は鹿島との大一番だった。例年行われているこの金沢開催、今季はナビスコ杯準々決勝第1戦という絶対に負けられない一戦がアサインされた。
 京都から特急サンダーバードに揺られること2時間ばかり。かつて加賀百万石の威光で栄えた日本屈指の城下町に到着する。ここに来るのはもう何度目だろう。サッカーを抜きにしてもだ。北陸の新鮮な食材を一通り揃えた活気盛んな近江町市場、全国屈指の庭園である兼六園、忍者寺と呼ばれるカラクリだらけの妙立寺など、これまでいろんな所に訪れた。卯辰山の麓には鉄板焼の旨い六角堂もある。JR金沢駅前は近年整備され非常に利便性を増した。ホテルも過去に比べれば増えている。そんな金沢駅からバスでスタジアムへ向かった。

 
(このエリアがもっと入れば完璧なのだが・・・)

 ここは万博記念競技場にどことなく似ている。陸上競技場としての設備はほぼ変わらない。メインスタンドの外に軒を連ねる屋台の数は万博のそれと違って見えるが、ミッドウィークにも関わらず10,702人の観衆が結果的に詰め駆けたことは、第2のホームと呼ぶにふさわしい認知度とは言えるかもしれない。バックスタンド真ん中のエリアに空席は目立ったものの、地元のサッカー小僧をはじめ、年に一度のこの時を楽しみにしているサッカーファンたちが自転車や、はたまた徒歩やマイカーで、11度目となる西部緑地公園陸上競技場でのJリーグに押し寄せた。

 G大阪は、遠藤が発熱による戦線離脱で、ここまで再開後良いリズムをもたらしていた中盤の布陣の組み換えを余儀なくされた。橋本が中央に戻り、ルーカスが左MFに。前線は山崎がバレーと組む形で臨むこととなった。倉田を中央で起用して、ここまで好調な「橋本の2列目」を試すことも考えたが、それを指揮官はチョイスしなかった。
 そのことは結局、試合が始まれば明確になった。勝負の世界に“たら”、“れば”は禁句だが、遠藤がいればもっと楽に試合を展開できたはずだった。それほどG大阪の中盤はポゼッションを握れず、序盤から横浜FMの速いパス回しと個人技に翻弄され、守備重視で行かざるを得なくなる。左サイドで下平が田中隼に再三突かれ、ルーカスがフォローに回るシーンが多く、攻守の切り替えがスムーズに進まない。今までなら半分の手数で攻撃にシフトできていた一連のプレーがことごとく滞った。前半だけ見ればホーム第1戦でアドバンテージを得るには実に苦しい内容だった。

 

 横浜FMは、センターラインが実に分厚かった。負傷のロペスに代わって起用された兵藤と河合の2枚とその後ろに控える中澤と松田のCBコンビ。中央突破はほぼファーストチョイスとして消える。アタッキングエリアでのロニーの鋭さと速いドリブルからチャンスメイクしていく山瀬功をG大阪守備陣はよくこらえて潰していた。だからこそ後半から下平に代わって出場した安田理の存在は大きかった。
 結論から言えば、安田理の投入によって飛躍的にリズムが変わったわけではない。依然横浜FMに押し込まれる守備陣は、ギリギリのラインで持ち堪える。ポゼッション比率で言えば、G大阪は4割を下回るほどの展開が続いていた。

 65分を過ぎても動かないベンチにサポーター側がイライラしていたのは事実だった。山崎に代わって倉田を投入し、ルーカスを前線に上げて勝負に出なければいけないと誰もがそう考えていた。ところが、70分にピッチに投入されたのは平井だった。単純に山崎と代えて、サテライトの試合で好調を維持する平井が前線に入る。指揮官は彼に賭けるだけの価値を見出していたのだろう。前日にマンツーマンでもシュート練も100本こなしていたらしい。その賭けは見事に8分後、最高の形で体現される。
 78分に自ら得たチャンスで思いっきり放ったシュートは一度セーブされるも、そのこぼれ球を自身できっちり決めた。ここまで低空飛行を続けていたG大阪が一気に試合の流れを勝利へと傾ける。結局最後まで守備陣も奮闘、横浜FMの詰めの甘さにも助けられて、第1戦の勝利を手にした。内容はともかく、勝ち方としては、アウェイゴールを与えなかった最高の勝ち方。1ヵ月後の第2戦も必ずや気持ち良く勝って準決勝に駒を進めたいところだ。

 
(殊勲の決勝点を挙げた平井。なんとこの直後阿波踊りを披露!)

 しかし、遠藤を五輪代表のOA枠で招集されることを考えれば、今日のような試合運びでは不安は残る。巧手の切り替え時に中盤に必要な推進力が無さ過ぎた。これで先手を奪われていたとしたら・・・そう考えると無失点で切り抜けた全員の守備意識は評価できる点だ。
 連戦は待ってくれない。中3日で迎える日立台でのリーグの柏戦は日曜日。少しでも良い流れを掴みたい。そういう意味でも“反逆のカリスマ”らしい今日の指揮官の采配には救われた。

 
(久々の金沢に盛り上がって調子に乗る浪速のカリスマ)