脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

奈良クラブ!アインを撃破! ~第44回全社関西1回戦 奈良クラブVSアイン食品~

2008年07月28日 | 脚で語る奈良クラブ
 第44回全国社会人サッカー選手権関西大会1回戦2日目の日程が橋本市運動公園多目的グラウンドで行われた。第2試合で我らが奈良クラブが初戦に挑み、見事に格上のアイン食品(今季関西リーグ2位)を2-1で下し、2回戦進出。新潟での全国大会に王手をかけた。
 なお、第1試合で行われたアルテリーヴォ和歌山と日本写真印刷の一戦は3-2で和歌山が勝利した。

第44回全国社会人サッカー選手権関西大会1回戦Bブロック

●アイン食品 1-2 奈良クラブ○
得点:12分嶋、28分松野正
@橋本市運動公園多目的グラウンド

 

<奈良クラブメンバー>
GK31松石
DF21中村、5杉田(78分=2中川)、4秋本、11松野智
MF16河合(60分=7石田)、24東(66分=19土井)、26矢部、13金城
FW9嶋、10松野正

 誰かが倒れてもおかしくないほどの炎天下の橋本で、ジャイアントキリングは起きた。今季関西サッカーリーグでバンディオンセ加古川に次ぐ2位のアイン食品に、奈良県リーグの奈良クラブが勝利。奈良県勢の全社関西での勝利は初。ささやかながら関西社会人サッカーの歴史を揺るがした。

 この日は、CBに杉田、秋本。右に中村、左に松野智を起用。そしてチームの根幹である矢部、東のダブルボランチが復活した。右SHには河合、左SHには金城、2トップは嶋と松野正だ。控えメンバーには合流直後の石田が入り、DF上西、上林を除いて考えられるベストメンバーがこの大一番に揃う形となった。
 ここで詳細は割愛するが、アイン食品はほぼリーグ最終節バンディオンセ加古川戦と同じメンバー。前線は辻村、井上の強力2トップに中盤の底にはゲームメイカーの佐藤良、10番の南茂もスタメン出場。警戒していた選手は全て出場している。おそらく80分(40分ハーフ)、守備一辺倒の時間を強いられることが濃厚だった。

 試合が始まるとやはりアインがポゼッションを握った。しかし、奈良クラブは守備陣が良く頑張る。CBの杉田、秋本を中心にシュートコースを消しにかかり、中盤からの早く高いプレスでボールの出所を押さえにかかった。特に矢部、東のボランチコンビは阿吽の呼吸で、リスクコンダクターとしての東、そしてゲームメイカーとしての矢部と役割分担がはっきりしていた。もちろん矢部も守備にはいつもより忙殺され、なかなか良いリズムは生まれにくいと感じた。
 12分に右サイドでボールを持った嶋が狙い澄ましたコントロールショットで先制する。アイン守備陣の意表を突くコースでボールはゴールに吸い込まれた。まさかの先制点。チームには申し訳ないが、この展開だけでも出来すぎな気がした。しかし、この嶋の先制点は、奈良クラブにさらにリトリートの意識を植え付け、タイムアップまでの集中力を保つカンフル剤となった。
 28分にはカウンターのお手本とも言える展開から追加点を挙げる。中盤から矢部がボールを左サイドの金城に繋ぐと、対峙したDFをタッチライン際で鮮やかに抜き去った金城はそのままトップギアで左サイドを疾走。クロスを入れると中央で松野正が上手くコントロールし、鮮やかなシュートを決めた。ここ数試合の不調を完全に吹き飛ばす2トップの活躍はチームを上昇気流に乗せた。

 
 矢部次郎(26)、東幸一(24)のボランチコンビはチームの生命線

 まさかの2-0。ポジティブな意味で“想定外”だった。関西リーグで最少失点(14試合で13失点)を誇るアインに2点を先行するこの展開。サポーターも浮き足立った。頭を過ぎったのは、この後も同じペースでリズムを保てるかということ。後半足の止まったチームがアインの猛攻を食らい、立て続けに失点を食らうとうことも考えられた。しかし、そんな思いは杞憂に終わる。
 後半も奈良クラブは運動量がそこまで落ちなかった。それどころか守備意識の統一が見られ、相手に枠内のシュートを打たせない。特にCB秋本の粘りのディフェンスは出色の出来だった。
 DF秋本佳則は奈良育英高校から今季奈良クラブに入団した選手だが、奈良育英ではスタメンを確保できず、Bチームでプレーする毎日だったという。昨年大晦日の前橋育英戦もその姿はおろか、登録メンバーにも名前は入っていない(この時、土井はベンチ入り、金城はスタメン出場)。後に聞けば、春の大会をもって部を辞め、大学進学のために受験勉強に励んだという。「今が一番サッカーをしていて楽しい」と話す彼はYANAGI FIELDでの練習時も照明が落ちるまでボールを蹴っているのだ。そんな彼が対等に格上のチームにその努力と粘りで打ち勝とうとしている。その彼の姿はチームの縮図のようだった。同じように奈良クラブがチーム全員のその粘りと意地とプライドを80分間見せつけてくれたのだ。

 
 終始集中した守備を見せたDF秋本佳則(4)

 後半1点を返されるも、徹底した粘りの守備で80分間を走りきった奈良クラブが勝利。ジャイアントキリングは達成された。これで次戦は8月3日(日)橿原公苑陸上競技場で2回戦(FC加古川戦)を戦える。新潟で11月に行われる全国行きに“王手”をかけた。数こそ少ないが、充実したメンバー、そして充実した精神面で、この大会で死力を尽くし、できるところまで登りつめる。奈良クラブは間違いなく面白くなってきた。

 
 この日右SBで出場したDF中村祥朗(21)が攻め上がる

 
 かつて横浜FCでもプレーしたFW石田雅人(7)もこの日初出場

 
 最高の仕事をした殊勲の2トップ 嶋(9)と松野正(10)

 なお、第1試合を戦ったアルテリーヴォ和歌山は元G大阪玉置の活躍もあり、先制されながらも3-2で勝利。次戦強敵バンディオンセ加古川を迎えることになる。

 
 和歌山の勝利に貢献した元G大阪のMF玉置慎也