脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

何度も同じ相手に負けられない -愛媛VS熊本-

2010年09月28日 | 脚で語るJリーグ
 岡山から一気に瀬戸大橋を通過して高松道、松山道を経て松山へ。同じくJ2第28節、ニンジニアスタジアムで行われる12位・愛媛VS6位・熊本を観戦。ここまで熊本に対する通算戦績で1勝2分3敗、天皇杯を含めた今季の2度の対戦でも連敗している愛媛がホームの意地を見せて2-0と快勝。貴重な3ポイントを宿敵・熊本から奪取した。

 

 オレンジに包まれたホームゴール裏(ニンジニアではメインから向かって右手)には、「同じ相手に何度も負けてたまるか!」という気合いの入った即席横断幕が掲げられていた。愛媛は15節から23節まで9試合勝利に見放されていたが、24節から札幌、岡山、そして四国ダービーのライバル・徳島を相手に3連勝。前節の栃木戦は競り負けたものの調子は上向きのようだ。その勢いで分の悪い熊本を撃破したい。そんな雰囲気は試合前から伝わってきた。

 
 熊本にはもう負けていられない!
 熱く試合前から盛り上がる愛媛ゴール裏。

 
 日曜のナイトゲームながらも熊本サポーターも集結。
 対愛媛3タテを狙う。

 試合は互いに一歩も譲らぬ攻防を前半から展開。熊本がサイドの宇留野、平木を軸に果敢に愛媛陣内に攻め込むと、愛媛は岡山戦から1年10カ月ぶりにカムバックしたGK川北に率いられて守備陣が集中。前線のジョジマールにボールを集めて好機を窺う。前半終了間際には愛媛・MF赤井が直接FKで熊本ゴールを狙うが、GK南のファインセーブに阻まれて前半をスコアレスで折り返した。

 
 熊本は3試合ぶりにカレンを先発起用。
 まだ今季は1得点のみ。ファビオとの連携でゴールを狙う。

 
 かつて京都のJ1昇格に貢献した愛媛・DF三上。
 その経験値をここに還元して3季目。

 
 熊本はファビオにボールを集める。
 ここを小原を中心に愛媛守備陣がケア。

 
 宇留野のドリブル突破は愛媛にとって脅威。
 最近の試合では得点も決めている。

 
 前半終了間際に愛媛はこのチャンス。
 赤井のFKは南のビッグセーブに阻まれた。

 後半に入ると愛媛にスイッチが入る。この熊本戦を四国ダービーのような位置付けで選手たちが認識していたのか、もう負けたくないという気迫を愛媛のプレーから感じる。47分に熊本DFが見せたGKからボールを受けてからの緩慢なボールキープに背後から愛媛・FWジョジマールが猛烈なプレス。ボールを奪い取ると左サイドを駆け上がって折り返した。これをエリア内でフリーになっていた大木が左足で直接ゴールに流し込む。地元を愛する34歳の今季初得点でニンジニアスタジアムのボルテージは上がった。

 
 後半早々に大木の得点で愛媛が先制。
 意外なことに今季初得点。

 
 中盤では田森の献身的なプレスが光った愛媛。
 広島ユース出身、昨季から愛媛に加入した選手。

 
 後半の愛媛の攻撃をサイドから牽引したDF関根。
 運動量豊富な攻撃参加で何度もクロスを見せる。

 
 ジョジマールは歩いている場面が少ない。
 常に攻守にピッチを縦横無尽。頼れるエース。

 
 
 
 67分には関根のシュートがGKに阻まれたところに杉浦が反応。
 巧みなワントラップからDF3人を置き去りにしてシュートを決める。

 この追加点の場面はジョジマールがエリア前で粘ってボールキープしたことで熊本守備陣が完全に釣り出され、右サイドで関根がフリーで豪快にシュートを打つ余裕があった。熊本・GK南はとっさのパンチングで難を逃れるもそのボールの先には杉浦がいた。愛媛は後半のほとんどを熊本陣内で展開。試合を決定づける素晴らしい2点目だった。

 
 熊本はベテラン藤田を投入するも反撃には繋がらない。

 
 数少ない自陣のピンチにもジョジマールが渾身の守備を見せる。
 この神出鬼没ぶりにはビックリ。

 
 主将・赤井は愛媛一筋7シーズン目。
 川北と並んでチームの象徴ともいえる選手。

 
 
 86分にはジョジマールに代わって福田が登場。
 少ない出場時間にも関わらず気迫漲る全開のプレー。
 
 
 ここで勝利すれば一歩中位陣を抜け出せた熊本。
 浦和から加入の堤の奮闘も虚しく…

 
 バルバリッチ監督は何度もピッチに向かって指示を飛ばす。
 選手時代はユーゴ五輪代表としてオシム監督の下でプレーした。

 試合は後半の2得点で熊本を沈黙させた愛媛の完勝。運動量が落ちていく熊本を尻目に見事なパスワークを見せた。これでホーム・ニンスタでは3連勝、続く水戸、岐阜に連勝すれば1ケタ順位も近い。ホームスタジアムの改修問題など今後のクラブの飛躍が問われるJ参戦5年目のシーズン。愛媛のラスト10試合に注目したい。
 対する熊本は4位・千葉、5位・東京Vを追走する意味では痛い1敗。得意の相手に勝負強さを発揮できなかった。次節は福岡との九州勢対決。3連敗だけは避けたいところだ。

 
 数字的にはJ1昇格への可能性もある熊本は痛恨の1敗。
 ここから快進撃はあるのだろうか。

 
 宿敵に勝ってホーム3連勝。
 詰めかけたサポーターは満足の試合だっただろう。

J1へのリトライへ一点の曇りなし -岡山VS甲府-

2010年09月27日 | 脚で語るJリーグ
 26日はJ2第26節が各地で開催され、岡山・Kankoスタジアムでは17位・岡山が2位・甲府を迎え撃った。試合はJ1昇格を狙う甲府が後半4得点のゴールラッシュで圧倒。0-4で甲府の勝利に終わった。

 

 岡山がJFL時代の08年以来、2年ぶりとなった今回のKankoスタジアム来訪。当時から運営面では規格外の充実ぶりを誇っていた岡山のその後のホームゲームの様子を肌で感じたかったのも一つだが、その相手が今季J1昇格へ向けて絶好調の甲府ともあって、非常に楽しみな対戦カードだった。清々しい秋晴れの晴天下で試合は行われる。

 
 ホームゲームを盛り上げるべく岡山サポーターも気合十分。
 相手が甲府ともあって気合が漲っていた。

 
 遠方にも関わらず多くの甲府サポーターも来場。
 リーグでは2位の座を堅守中。J1へまっしぐらだ。

 試合はやはり好調の甲府がリズムを掴む展開。吉田、内山の両サイドだけでなく、マラニョン、パウリーニョというアタッカーを揃えた甲府がチャンスを作り出していく。しかし、岡山も冷静に守備で対処。時には右MFの妹尾を起点とした素早いカウンターも披露する。

 
 岡山の攻撃の軸はMF妹尾の果敢な攻め上がり。
 甲府の守備を切り裂いて再三岡山のチャンスを演出。

 
 視野の広いプレーで岡山の中盤を取り仕切るキム。
 神戸、愛媛、水戸を経て今季新加入。

 岡山もゴール前では拙攻が目立ったものの守備で善戦し、甲府を抑え込む。前半は0-0で折り返した両者。しかし、後半に入ると甲府の攻撃陣が爆発した。

 
 
 49分に藤田が自身の突破で得たFKをマラニョンがヘッド。
 見事な連携での先制点。これには岡山の選手も渋い表情。

 
 
 60分にはマラニョンのパスを受けた藤田が華麗にキムをかわし…
 ワンバウンドから左足で見事に追加点を決める。

 2点のリードを得た甲府は前半以上にパスワークで岡山を圧倒。DFダニエルが負傷で退場を余儀なくされるものの、代わりに投入された柳川が完璧に代役を務める。

 
 68分にはパウリーニョがマラニョンのスルーパスを受けて得点。
 サポーターのもとへ一直線。

 
 一矢報いたい岡山も三木、白谷と攻撃的カードを投入。
 しかし、甲府のプレスに大苦戦。

 
 岡山のゴールを守るのは8月にFC東京から加わった廣永。
 しかしながら、痛恨の4失点で見せ場はなし。

 
 浦和から今季加入した主将の近藤。
 後藤と最終ラインを統率するが甲府の猛攻を凌ぎ切れず。

 
 現在得点王のハーフナーは得点を挙げられず。
 キム・シンヨンとの交代時はかなり悔しそうだった。

 86分には岡山のエリア手前で、DF後藤のボール処理ミスをマラニョンがかっさらいそのまま4点目となる得点を決めて、甲府がスコア通りの内容で圧勝。選手層の厚さと攻撃陣の充実ぶりが柏と並びリーグトップタイの55得点(28試合)という数字に現れている通り、少し他を寄せ付けない印象を与えた。現時点で3位・福岡との勝ち点差は7ポイント。ここまで8試合連続で負け知らずということもあり、先月の柏と福岡との直接対決に勝てはしなかったものの、今後は下位チームとの対戦ばかり。そろそろJ1復帰が現実味を帯びてきたようだ。
 対する岡山は攻撃陣が少し寂しい印象。ここまで15得点(26試合)はリーグワースト。強烈な得点力でチームをけん引していくエースが生まれれば、守備陣は近藤、後藤、野田らをはじめJ1経験者も多いだけにかなりチームは生まれ変わるのではないだろうか。サポーターを含めてスタジアムの一体感は良い雰囲気。国対筋には「FAGI SQUARE」なるオフィシャルグッズショップもオープンし、更なるサポーターの後押しもチームを強くしていきそうだ。

 
 甲府は充実した戦績でJ1への道は明るい様子。
 ホーム小瀬での観客動員もJ1屈指だ。
 
 
 岡山もまだまだこれから。
 MDPでも専用練習場の確保への呼びかけが目に止まった。
 今後、サポーターの力も加えて壁を乗り越えていけるはず。

堅守磐田の逃げ切り -京都VS磐田-

2010年09月26日 | 脚で語るJリーグ
 J1は第24節を迎えて残り11試合。11日の22節・神戸戦で5カ月ぶりの勝利を収めたものの、まだ降格圏内を抜け出せない17位・京都は西京極に11位・磐田を迎えた。磐田はここ5試合で4勝1敗と好調。この試合でも開始3分でFW前田が3試合連続得点を決めて0-1でそのまま逃げ切った。京都はホーム2連勝ならず、この日山形に引き分けた最下位・湘南に勝点で並ばれることとなった。

 

 京都は、前節退場処分を受けたカク・テヒの代役に増嶋が出場。左サイドには久々に中谷が復帰。一方の好調・磐田は中盤に那須、上田を据えて、左右のサイドハーフにはには船谷、西、そして守備は新加入の古賀とイ・ガンジンが取り仕切る。

 
 選手入場時に京都サポーターは一斉にゲーフラを掲げる。
 そこには「勝」の文字が。

 
 磐田サポーターも好調のチームを後押しすべく大勢京都へ。

 
 3分、前田がゴール前で押し込んで3試合連続得点。
 幸先良く磐田が試合の主導権を握る。

 
 京都の頼みの綱はやはりディエゴ。
 重戦車のようなドリブルで再三チームを牽引する。

 
 ゴール前のドゥトラにハイボールを入れる京都。
 しかし、磐田のブレない守備の前に大苦戦。

 
 渡邉のサイドアタックからのクロスは効果的。
 あとはその精度とフィニッシャーの存在か。

 
 磐田はカウンター時にパクチュホが鋭い突破を見せた。
 かなり前への意識は高く、G大阪戦の2得点を思い出させる。

 
 好調・磐田を最後尾から叱咤して牽引する川口。
 ベテランらしく終始落ち着いたプレー。

 
 決定的な得点場面だったジウシーニョのシュート。
 惜しくも右に逸れてしまい、磐田は追加点の機会をフイに。

 
 完全に京都の攻撃を封じたイ・ガンジン。
 競り合いには無類の強さを誇っていた。

 
 素早いプレスと確実な守備が効いていた磐田。
 京都の拙攻にも助けられ、チャンスを作らせない。

 
 攻守の切り替え時に存在感が目立った上田。
 3連勝のきっかけは湘南戦の彼の得点から。

 
 駒野は献身的なアップダウンで守備でも貢献。
 時折、ロングパスで一気に前線まで展開する場面も。

 
 今季からチームキャプテンを務める那須。
 上田とのコンビで安定感を披露。

 
 途中出場でチャンスを演出した山本康。
 フィジカルに強いプレーでサイドから切り込む。

 
 京都のGKとして定位置を確保したか守田。
 しかしながら、この日は開始直後の1失点に泣いた。

 
 イ・ガンジンとのコンビは鉄壁。
 50番を付けた古賀の加入は磐田には大きい。

 
 得点を決めた前田はこれでリーグ通算96得点、歴代8位。
 大台は間近、個人的には時期日本代表でもプレーを見たい。

 全体的に見せ場が少なく、シュート数は京都が7本に対して磐田が4本という結果。逃げ切った磐田の堅守がひたすら目立った試合だった。京都はじわじわと忍び寄る「降格」の危機を何としてでも避けたいところだが、残り10試合でどこまで勝点を積み重ねられるか。この日の試合を見ている限りでは打開策は少ない。
 対して、ぐいぐいと復調著しい磐田は8月からの5勝全てが1点差を制するという勝負強さを発揮している。序盤の不調を脱して、新たなチーム編成が着実に固まってきたことを証明した。次節からの横浜FM、広島、浦和と勝点差でまだ逆転可能な相手との対戦が続く。10月の4試合は磐田にとって勝負どころとなりそうだ。

横浜FM、寄り切り勝利 -京都VS横浜FM-

2010年08月21日 | 脚で語るJリーグ
 J1第20節1日目、西京極では18位・京都が8位・横浜と対戦。試合はアディショナルタイムに横浜FMの河合が決勝点を決めて2-1で横浜FMが辛勝。西京極では今季3番目に多い13,963人の観衆を集めたものの、京都は4節以来16試合未勝利となってしまった。

 

 勝てない京都となかなか連勝を積み重ねられない横浜FM。横浜FMは仙台、清水に連勝しておきながら前節・山形に0-1と敗戦。今季から中村俊が加わったとはいえ、上位に定着できていない状態だ。ホームでこの横浜FMを迎え撃つ京都も完全に白星に見放されている。がむしゃらに勝利を狙いにいきたい思いはどちらも同じ。

 
 リーグでは5カ月近く勝てていない京都。
 それにも関わらず多くのサポーターがこの日も声援を送る。

 
 横浜からも多くのサポーターが来場。
 気温を更に上昇させるかという熱気で盛り上げる。

 序盤こそ京都に危ない場面を作られたが、前半からペースを握ったのは横浜FM。中盤で中村俊を起点にじわじわとポゼッションを掌握。坂田の俊足と渡邉千のポストプレーからチャンスを生み出す。対する京都はFWキムが前線で孤立してしまう場面が多く、中澤を中心とする横浜FMの守備網を切り崩せずエリア内まで侵入できない。ドゥトラやディエゴが遠い位置からシュートを狙うのみで、開始3分でゴールを強襲したように、渡邉大によるクロスから時折ゴール前を脅かすにとどまる。

 
 前半序盤から横浜FMゴールを脅かした京都MF渡邉大。
 弟・千真との直接対決で負けるわけにはいかない。

 
 攻守に献身的な動きが目立った横浜FM・兵藤。
 国見時代からのチームメイトの渡邉千と息はピッタリ。

 
 ドゥトラが包囲される。
 31分には惜しいチャンスを逃した。

 先制点は横浜FMだった。21分、中村俊が右サイドから一旦ボールをボランチの小椋に預けると、そのまま右足で再び右サイドへスルーパス。そこに上がってきたのは右MFの中村俊ではなく何とボランチを務めている松田。京都DF増嶋と中村太のマークをすり抜けてゴールライン際まで駆け上がった松田がそのまま折り返すと、坂田が走り込んでいたが結局は相手のクリアミスを誘いオウンゴールで先制点を奪った。横浜FMサポーターが時間差で歓声を上げるほどの唖然とした一連のプレー。ほとんど松田の得点ともいえる見事な攻め上がりは前半10分頃から何度か見せていたもの。中村俊をケアしがちな相手守備陣の隙を突いた松田のクレバーなプレーだった。

 
 堅実なポストプレーに得点力も備える渡邉千。
 陰ながらに周囲を生かすプレーに徹した。

 
 京都は中山がボールを散らす。
 ミスも少なく、潰れ役としても貢献。

 
 W杯の活躍もあって多くの声援を受けていた中澤。
 得意のヘッドで観衆を沸かす場面も。

 
 驚きの攻撃参加。
 ベテランとは言わせないと言わんばかりの松田のプレー。

 ここまで横浜FMはほとんどシュートが打てていなかったが、この先制点を機にパスが一層回るようになる。渡邉千が前線に張り付き、坂田が少し下がり目でボールを受けようとする。そこに兵藤が絡んでいく場面が多く見られたが、24分の渡邉千のわずかにゴールを逸した場面はその連携プレーが見事に現れた場面だった。
 京都も1点を必死に追いかける。31分にはディエゴのFKからドゥトラがフリーでヘッドを合わせるもわずかにゴールならず。前半は0-1と横浜FMのリードで折り返すこととなる。

 
 中村俊のプレーに柳沢がマーク。
 中村俊は決定機には絡めなかったが、堅実なプレー。

 後半に入って、横浜FMが51分、兵藤が絶好の追加点の機会を逃してしまうと、後半の頭から柳沢を投入した京都が持ち直す。前線でボールを呼び込む柳沢の動きと彼が潰れ役になることで前半よりも横浜FM守備陣をゴール前に張り付かせる形に。遂に64分には中村太の同点ゴールを生み出した。右サイドで張っていたドゥトラがボールを受けるとそのままドリブルで兵藤を抜き去り、柳沢へパス。柳沢はこれをスルーしてディエゴがポストでワンタッチ。ここに中山が走り込んで潰れながらも左サイドの中村太へパスを送った。完全にフリーの中村太はコントロールして左足を振り抜く。この日一番の鮮やかな京都の崩しとそこから生まれた西京極での6試合ぶりの得点に観客は湧いた。

 
 渾身の同点弾。
 中村太をディエゴが肩車でアピール。

 その後も京都は良い形でボールを奪って中村太の左サイドを起点に攻撃を重ねていく。72分にも中村太がフリーで飛び出しかろうじて中澤の必死のクリアに遭う惜しい場面を演出。73分には渡邉大の折り返しを柳沢が決定的なシュート逸。重ねる効果的な攻撃に勝利への追加点が期待された。

 

 ところがアディショナルタイムに差し掛かった頃、横浜FMは交代出場の河合からスルーパスを受けた山瀬がマイナスに折り返すと、そこにフリーで走り込んだのはその河合。ダイレクトでシュートを放つとこれが見事に決まって試合を決する得点となった。京都は残りわずかというところで数人の足が止まってしまい、勝点1ポイントすら落としてしまう展開となった。

 
 途中交代で決勝点を導いた山瀬。
 その場面での走力を見せた突破は脅威だった。

 
 アディショナルタイムと同時に生まれた決勝点。
 横浜FMの粘り勝ちとなった。

 横浜FMは後半劣勢を強いられながらも交代出場の2選手の活躍が試合を決めた。過去、岡田体制時にリーグ王者を経験した山瀬、河合の存在はサブであれども大きい。「ちゃぶる」とまではいかなかったが、この勝負強さを今後も発揮できれば横浜FMも上位に食い込んでくるのではないだろうか。
 一方の京都は、是が非でも勝っておきたかった試合だった。問題は同点に追い付いた後の逆転弾が遠かったこと。後半のリズムを前半から持ち得れば違った展開になっただろう。次節は首位・名古屋との対戦。負けはしたがこの上向きの内容を次節に少しでも生かしたいところだ。

ボトム組からの脱却 -神戸VS湘南-

2010年08月14日 | 脚で語るJリーグ
 お盆休みの真っ只中、J1は各地で第18節が行われ、ホームズスタジアム神戸では13位・神戸と17位・湘南が対戦。消耗戦の末に決着はつかず、0-0のスコアレスドローに終わった。

 

 神戸は前節の浦和戦を三原の終了直前の得点によって勝利、ここまで4得点を挙げている都倉、マルチな茂木が出場停止という苦しい状況ながら、降格争いから脱するためにも今季初の連勝を狙いたいところ。一方の湘南はここまで泥沼の4連敗中。J1残留を狙うためにも低迷する神戸を相手に勝点3ポイントを狙いたいところ。湿度が80%を超える厳しいコンディションの中、両チームとも何よりも勝利に飢える状況での試合となった。

 
 湘南に期限付き移籍したGK都築。
 しかし、不調に喘ぐチームの救世主とまではなっていない。

 
 前節の活躍でスタメンの座を勝ち取った三原。
 昨年、金沢のJFL昇格に貢献。経験を積んだ。

 前半から圧倒的に神戸が攻め立てた。前節の活躍もあって三原がボランチで初スタメン、サイドバックは右が石櫃、左が松岡という布陣で前線は大久保が1トップを担う陣容。前節の途中からこのパターンの布陣が効いたこともあって、自然とフィニッシャーの大久保にボールが集まっていく流れとなった。
 一方の湘南は、ここまで4連敗中の失点が14失点とかなりの重傷。坂本の出場停止に加えて、チームの主軸であるDF村松がフルタイム出場を続けていたにも関わらずスタメンを外されるという事態になった。田村がアンカーとなる4-3-3という布陣。前線は田原を中央に阿部と中村という陣容。神戸の攻撃を凌ぎ続ける時間帯が多く、なかなかパスを前線まで繋げられない苦しい展開が前半から続いた。

 
 神戸は前半から果敢にポポがゴールを狙う。
 前節出られなかった鬱憤は溜まっていたようだ。

 
 神戸の右サイドバックは石櫃。
 今季は先発起用が少なくなっている。

 
 湘南の守備を支えるベテランDFジャーン。
 早いもので湘南でのプレーももう4年目。

 大きな決定機は15分、神戸DF河本が大久保にスルーパス。これを受けた大久保がGK都築も抜いて無人のゴールに入れるかという場面があったが、かろうじてカバーに入ったジャーンにクリアされる。この試合がこの後予想以上に拮抗することを考えれば絶対に決めておきたい場面だった。

 
 大久保がこのシュートチャンスを決められない。
 あまりコンディションが良くないように見えた。

 
 湘南のキーマンはアンカーの田村。
 最終ラインと連携して必死に守る。

 防戦一方の湘南は前半のアディショナルタイムに田村のロビングパスを受けようとした島村が松岡にエリア内で倒されてPKを獲得。千載一遇のチャンスを得る。しかし、キッカーの中村がまさかの失敗。この局面はコースを冷静に読んでいた神戸GK榎本の活躍が光った。

 
 
 湘南が掴んだ数少ないチャンス。
 このPKを外したのは痛かった。

 
 神戸のボッティは何度もチャンスボールを供給。
 存在感は際立っていた。

 0-0で折り返した後半も続いて神戸がポゼッションを支配。新加入のイ・ジェミンが後半から入り積極的にシュートを放つ姿勢で更にチームに活力を与える。攻守の切り替えはスムーズだったが、肝心のゴール前で決定力に欠けていた。湘南もチャンスを逸し続ける神戸を尻目に、前半以上にセットプレーなどから得点を狙う。54分には阿部が左から走り込んで、中村からのパスをゴールにねじ込んだが無情にもオフサイドの判定。61分にも左サイドを駆け上がった阿部の折り返しを田原があと少しで詰められたという場面があった。しかしながら、両チームとも最後まで試合を決する得点は生み出せなかった。

 
 湘南は阿部の得点がオフサイドの判定。
 あと一歩というところでゴールが遠い。

 
 70分に投入された湘南FWヴァウド。
 神戸の守備網の前にほとんど仕事はできず。

 結局スコアレスドローに終わったこの試合。終了のホイッスルと共に神戸サポーターが集うゴール裏からは怒号のようなブーイングが。それも確かにそうだ。今日のような勝てる試合を落とすことほど痛いことはない。しかし皮肉なことに榎本のあの1本のセーブが無ければ負けていたかもしれない。順位的に安全圏ではないこともあって、今季初の連勝を逃したダメージは大きそうだ。対する湘南も連敗はストップしたが、内容的にはかなりミスも多く、神戸との違いは歴然だったように思える。リーグワースト失点の汚名返上すべく守備陣は奮闘していたが、相手の決定力不足に勝点1ポイントをもらった感は否めない。
 両チームともこの夏はボトムグループから抜け出すためには非常にプレッシャーを抱えた試合が続きそうだ。

 
 この試合で最も目立った榎本の好セーブ。
 前線がそれに応えられず2ポイントを落としてしまった。

 
 下位争いから抜け出せず、苦しい戦いが続く神戸。
 中3日ずつで磐田、山形と試合は続く。

明と暗 -京都VS新潟-

2010年08月08日 | 脚で語るJリーグ
 JリーグはJ1第17節が行われ、最下位に沈む京都は7位の新潟と対戦。試合は0-2で新潟が勝利し、破竹の11戦無敗で7日現在暫定で4位に浮上。一方ホームで敗戦の京都はこれでなんと13試合未勝利となってしまった。

 

 現在、Jリーグで最も好調なチームと最も不調なチームの対戦カードとなったこの試合。前節より京都の新監督が秋田豊氏になったことで、ここで対峙する両チームの監督は鹿島の黎明期から黄金期を支えたOB同士ということになった。しかしながら、秋田監督は少し先輩となる黒崎監督から勝利を挙げることはできなかった。
 試合は前半から新潟がペースを掴む。加藤弘、中村太、宮吉と若手を軸に試合に臨んだ京都に素早いパスワークで揺さぶりをかけ続ける。京都も素早いプレスでシュートまで持ち込ませず、ボールを奪うとディエゴを起点にカウンターで速攻を仕掛ける展開となった。新潟はシュートこそ少なかったが、28分に左サイドでチョヨンチョルがボールを受けるとそのままドリブル突破。エリア左から狙い澄ましたシュートがゴールとなり先制点を叩き出した。先日、新生韓国代表に選ばれたサイドアタッカーの本領発揮といった場面だった。

 
 ゴール前に攻め込む宮吉にM.リシャルデスがこの守備。
 京都は再三ゴール前までボールを持ち込むが・・・

 
 新潟の左サイドバック酒井は持ち味を見せた。
 W杯にもサポートメンバーで帯同した将来性豊かな選手。

 
 韓国代表に選ばれた京都DFカクテヒ。
 しかし、同じく代表に選ばれたチョに先制点を献上することに。

 
 チョヨンチョルが先制点を挙げる。
 1人で持ち込んで決めたナイスゴールだった。

 新潟は1タッチないし2タッチで素早くボールを回す。本間、小林のベテランボランチがしっかり底からボールを捌き、ミシェウやチョ、そして司令塔として君臨するM.リシャルデスが前線に攻め込む。シュート場面こそ限られたが、中盤の構成力はなかなかのもの。前半は京都が守備面で苦労を強いられただろう。前半は1-0で新潟がリードのまま折り返すこととなった。

 後半に入って、試合は意外な展開。まず新潟のミシェウが54分に退場処分に。これは非常に不可解な判定だったが、どうやら直前のボールがタッチラインを割ったあたりで何やら京都の選手のユニフォームを掴んだということだろうか。奥谷主審が第4審に確認してレッドカードを提示したが、どうも後味の悪い厳しい判定だった。このミシェウの退場処分で新潟は残り80分余りを10人で戦うことを強いられる。
 しかし、これで京都に流れが傾くかといえばそうではなかった。56分にドゥトラが前線に走りこんでチャンスを掴むがオフサイド。68分には左サイドの中村太からのクロスをディエゴが決めたかと思いきやこれもまたオフサイドとあと一歩でゴールが遠い。1点をリードしている新潟はかなりペースを京都に奪われたが、相手の拙攻にも助けられてリードを失うことはなかった。それどころか78分には左からのCKをM.リシャルデスが蹴ると相手DFのオウンゴールを誘発。完全に軌道がゴールに向かう素晴らしいキックで思いがけない追加点を得ることになる。

 
 
 まさに変幻自在のキックで観客を魅せるM.リシャルデス。
 後半に追加点をそのキックで演出。1人でゲームを決めてしまう。

 
 京都は宮吉を生かし切れない。
 しかしながら宇佐美(G大阪)と並んで国内若手の最高峰。

 
 68分にはディエゴがゴールを決めたかと思いきや・・・
 無情のオフサイドに思わず詰め寄る。

 
 
 M.リシャルデスのキックを捕獲できずオウンゴールに。
 新潟のラッキーな追加点が生まれた。

 結局、試合は2-0で新潟が勝利を収めて、これが西京極での初勝利となった。後半は京都にもチャンスがあったが、追加点を奪ってから守り通した新潟守備陣の前に1点も生み出せなかった。ここまでチームの現状が試合に浮き彫りになるとは。まさに明と暗がそれぞれくっきりと出てしまった。これで11試合無敗。新潟の負けない強さはこの後に控える清水や川崎との試合で真価が問われそうだ。
 一方の京都はこれで丸4カ月間勝利に見放されるという事態に。13試合連続で勝利が無く、そして5試合得点が生まれていない。幸い下位グループは勝点差がまだ離れていないために1勝さえすれば良いきっかけになりそうだが、18日の湘南戦あたりが正念場になりそうだ。

 
 新潟で10年プレーするMF本間。
 彼の冷静なプレーぶりは新潟に欠かせない。

 
 ゴールこそ少ないが矢野の存在は不可欠。
 前線から良くプレッシャーをかけ続ける。

10戦無敗、清水の鼓動 -京都VS清水‐

2010年05月05日 | 脚で語るJリーグ
 GWの最終日を迎える5日、JリーグはJ1第10節が各地で行われた。西京極ではここまで3連勝、開幕9戦無敗の清水がアウェイで京都と対戦。前半こそ京都が立て続けに2点を先取し試合をリードしたが、後半猛攻を仕掛けた清水が圧巻の4得点で4-2と逆転勝利。4連勝で10試合無敗と戦績を伸ばし勝ち点を24にまで伸ばした。一方の京都は6戦未勝利という苦しい状況となった。

 

 気温33度(スタジアムでは36度とアナウンスされた)という酷暑のコンディション。完全に初夏を超えて真夏日という状況の中、試合はここまで2点以上奪われたことのない清水が0-2で前半を終えるという意外な展開。31分に京都陣内から角田からのロングフィードを前節からFWに名を連ねるドゥトラが落として柳沢が持ち込み先制点を挙げる。エースのリーグ100得点目で勢いに乗った京都はその3分後にもドゥトラが高い打点のヘッドを沈めて追加点。好調・清水を上回る決定力で試合をリードする。

 
 京都の先制点は柳沢。
 前日に子供が誕生し、かつリーグ100得点目というメモリアル弾。

 
 序盤は判定に苛立ちすら見せていた京都FWドゥトラ。
 34分、ディエゴのFKに頭で合わせてチームの追加点をゲット。

 前半は最終ラインが浮足立ち、マークの受け渡しのミスも目立った清水だったが、攻撃面では幾度か京都ゴールを脅かすなど小野を中心に決定機を演出していた。しかし、この2点のビハインドは清水にとって厳しいものに見えた。
 後半に入ると、頭から右SBにレギュラーメンバーの辻尾、中盤に兵働を投入。これで小野が前半以上に積極的に前線に絡むようになり、全体的に歯車が合いだした清水は、54分に岡崎が水本のファウルをエリア内で誘いPKを奪取。これを藤本が決めて1点差に迫ると、59分には右サイドからの小野のクロスをヨンセンがヘッドで合わせて同点に追いつく。

 
 小野を軸に後半息を吹き返した清水。
 その猛攻は2点をビハインドを簡単に弾き返した。

 
 ワンボランチでチームを支える本田。
 球際の強さと卓越のポジショニングで時には最終ラインにも。

 
 54分に藤本が最初のPKを決めて1点差に迫る清水。
 藤本は3トップの右サイドで神出鬼没の動き。

 
 まもなく発表されるW杯本大会メンバー入りは確実な岡崎。
 この日は無得点も相手DFを撹乱。PKを2度奪取。

 ここまでリーグ戦9試合で最多得点及び最少失点を誇る清水の攻守。一度リズムを掴めばそれは揺るぎ難い。PKの追撃を機に一気に攻勢へ転じた。69分には京都・中山が2枚目の警告で退場処分となったことも手伝って京都の逆襲の芽を啄ばむ。このファウル直後のFKも藤本がバー直撃のシュートを強襲させるなど得点の雰囲気は依然清水に感じられた。78分にはエリア内に飛び出した岡崎が再びファウルを誘いPKを奪取。これを藤本が再び決めて逆転に成功すると、83分にはDFボスナーが強烈なFKを直接沈めてダメ押しの4得点目。後半戦だけで勝負をひっくり返した清水の強さがただただ際立った。

 
 ポストプレー、フィニッシュと変幻自在の活躍を見せたヨンセン。
 水本も彼を捉えきれない。

 
 後半から入り、チームに勢いをもたらした兵働。
 彼が入ってから前線への縦パスが一気に増えた印象。

 
 藤本が逆転弾となるPKを決める。
 直接FKも1本ゴールを肉薄。

 
 パスや華麗なボール奪取でスタジアムを沸かした小野。
 太田の退場で80分にお役御免となるがその貢献度は文句なし。

 
 83分のボスナーの弾丸FKにはスタジアムが騒然。
 本人含めチームメイトもさぞかし驚いたのでは。

 止まらない清水。2点のビハインドを一気に取り返したその強さが改めて実証された。次節は2連勝と勢いのある新潟だが、果たしてあと2試合彼らをストップさせてJリーグはW杯の中断期間を迎えるのか。かつての輝きを取り戻しつつある小野の代表選出なども十分に可能性を感じながら、あと2試合この勢い余るオレンジの旋風から目が離せない。

大移動 ‐国内ストーブリーグ‐

2010年01月08日 | 脚で語るJリーグ
 束の間のシーズンオフを過ごす地域リーグ以上の国内サッカーカテゴリー。新シーズンの始動日程もチームによっては決まり始めており、続々とチーム間の選手移動が日ごとに熱を帯びてきている。

 まずは、やはり群を抜いて驚いたのは久保のツエーゲン金沢加入のニュース。来季からJFLに昇格する金沢に元日本代表のエースが加入することは、間違いなくこのカテゴリーでのトップトピックスであり、Jリーグ参入を目指す金沢が今季のJFLでの戦いに相当の意気込みで臨んでいる証だろう。この1年はJリーグを目指す金沢にとって戦績のみならず観客動員面などの営業面で勝負の1年になりそうだが、何よりまだJ2レベルでもプレーできるのではと思わせる久保、横浜FMのリーグ優勝に貢献した03年あたりの絶頂期からもう5~6年経つが、日本人離れしたシュートセンスが印象的な彼をJFLで見られるのは非常に楽しみだ。個人的にも昨季は入替戦こそ見届けられずも、高知から松本までその戦いぶりを見守った金沢だけに今季はより一層注目したいチームだ。
 そして、逆パターンとして地域リーグレベルでは、中国リーグのFC宇部ヤーマンから平石がJ2・福岡に練習生契約が決まったという。昨今なかなか見られない下のカテゴリーからの2階級特進。各Jクラブの予算的な厳しさという背景もあるだろうが、今後もこういったチャンスを掴む選手が地域リーグのカテゴリーから出てくることを切望したい。

 Jリーグに目を移すと、毎日のようにリリースされる移籍情報において、J1で積極補強が目立つのは名古屋とC大阪。名古屋は浦和から闘莉王をはじめ、大分から金崎、新潟から千代反田、東京Vから高木義、札幌からダニルソンといった補強を敢行。吉田のオランダ移籍も含めた戦力的な差し引きで充実している様子だ。昨季はACLや天皇杯などいずれも惜しいところでタイトルを逃しただけに、10年シーズンの名古屋の本気度がうかがえるストーブリーグとなっている。
 一方、久々のJ1復帰となったC大阪も大分から高橋、上本、清武という3人に加え、G大阪から播戸、家長(レンタル移籍先の大分より)、FC東京から茂庭、磐田から松井といった即戦力ばかりを積極補強。戦力的な差し引きではおそらくリーグトップの充実ぶりで、香川や乾ら既存の戦力と噛み合えば台風の目になる予感。その他、京都や神戸も如実に選手層を充実させる補強を敢行している。

 J2では、札幌の中山獲得で話題が沸騰した感があるが、その札幌や横浜FCが積極的に移籍組で補強を進めている感がある。予算的な苦戦を強いられるチームが多そうだが、今季からサテライトリーグが撤廃される関係もあり、若年代の選手は特に活躍の場を求めたいところだろう。まだまだこれから動きはありそうな国内ストーブリーグ、あっという間に10年シーズンのスタートがもうそこまで訪れている。

城福トーキョーの戴冠

2009年11月03日 | 脚で語るJリーグ
 11月初旬の恒例であるJリーグヤマザキナビスコカップの決勝戦が行われ、FC東京が2-0で川崎を下して優勝を果たした。FC東京は04年以来、5年ぶりのカップウィナーに。対して初タイトル獲得を狙った川崎だったが、00年、07年に続く準優勝に終わった。

 ここ数年、ナビスコ杯の決勝戦は凄い盛り上がりである。国立のスタンドはいつも生中継で観る限り一杯の観客で埋まっている。特に今季はチケットが発売後20分で完売に至るなど、俗に“多摩川クラシコ”と称される首都圏ライバル同士のマッチアップとなり、盛り上がりにも拍車がかかったのではないだろうか。
 下馬評では、圧倒的に川崎の勝利を予想する声が多かった。現在優勝争いへの最終局面に突入したJ1でも首位に鎮座しており、未だJ1での主要タイトルに無縁の川崎。彼らが目前に迫ったこのタイトルを渇望していないわけがない。直近のJ1第30節広島戦では7-0という大勝で今や説明不要の攻撃力を見せつけている。対するFC東京は、石川の負傷離脱と長友の負傷によるベンチスタートに一抹の不安が感じられたが、ニューヒーロー賞に輝いたMF米本をはじめ、DF椋原、GK権田など若い選手がチームの軸にもなっており、興味深い一戦となった。

 試合は、やはり川崎が堅実なパスワークから試合のリズムを握る。特に右サイドのレナチーニョと中央のジュニーニョは、シュートでのフィニッシュに固執する。これをDF徳永、そして若き守護神・権田が良く防いでいた。中央もブルーノと今野がきっちりスペースを作らせずブロックする。特にこの日左に入った徳永は攻撃を自重、体を使った守備が光っていた。
 チャンスでは先手を打たれていたFC東京だったが、22分に米本が見事なミドルシュートを決めて先制。スピードに乗った無回転のボールは縦に落ちて川崎・GK川島に反応させなかった。この先制点を機に、攻める川崎と守ってカウンターから好機を狙うFC東京の構図はよりはっきり浮き上がる。

 後半に入ってもGK権田の活躍もあり、川崎のチャンスを阻み続けるFC東京。59分には前がかりになった川崎の隙を突いて、鈴木が左サイドからカウンター攻撃を仕掛け数的優位な状況に。中央でフリーだった平山にクロスを入れると、これをしっかり平山が頭で決めて追加点を奪った。その後すぐに長友を投入して、4-5-1と中盤のプレッシングを高めるFC東京。最後まで彼らのゴールを陥れることができなかった川崎の反撃を凌いで90分間を終えたのだった。

 ここ最近、リーグでも好調同士のマッチアップであっただけに非常に面白い試合だった。FC東京は無理をせず、しっかりと守ってチャンスを逃さなかった。特に中盤、米本や黒子役の梶山だけでなく、サイドハーフの羽生や鈴木までもが連動された守備意識を貫いていた。終盤には平松、佐原といった守備職人を両サイドハーフと代えて投入するなど、徹底した守りの采配が効いていた。リーグ戦でも23節・鹿島戦以降、いずれも失点は2失点以下という数字である。
 加えて、攻撃面では米本のシュートもさることながら、2点目の形が大きかった。鈴木が左サイドから持ち込んだが、森の攻撃参加で手薄になる川崎の右サイド攻略はFC東京としても試合の流れである程度は狙っていたはず。カウンターとはいえ、鈴木がこのスペースを意識して突いたのが得点に結びついた。守備の強さと明確な攻撃面での狙いがFC東京の然るべきリードをもたらした。

 試合後、照れながら「シャーシャーシャー」と連発していたMVP米本のあどけなさに、改めて得点シーンとのギャップを感じて驚いたが、彼の口から「東京らしさ」という言葉が出ていたのが印象的。まだ若干18歳のルーキーに「東京らしさ」と語らせてしまうほど、プレイヤーの立場からも城福監督のサッカーは魅力に富んでいるのだろう。
 今季のFC東京は、最若手・米本の大活躍、そして椋原や権田ら若手の台頭と藤山、浅利の退団という“一つの時代の転換期”を象徴している。このタイミングで掲げたカップの意味は、FC東京にとって大きいはずだ。

サッカーでも厳冬到来

2009年11月02日 | 脚で語るJリーグ
 この不況下で何とも寂しいニュースが続けて飛び込んできた。

 まずは、来季からのJ2降格が決まってしまったJ1・大分が資金難のためにJリーグから約2億円の融資を求める準備に入っているとのこと。これは公式試合安定開催基金という名目で資金難のクラブにリーグ側から資金調達を図るというものだ。
 これまで、J2では草津と岐阜がこの融資を受けたことがあるが、J1のチームとしては初めてのことになるという。そういえば、先日の京都戦でもアウェイ席のサポーターの多くが、長らくメインスポンサーを務めたマルハンに感謝の意を示すゲーフラを掲げていたのは記憶に新しい。現在、大分の累積赤字は推定で7億円ともいう。来季から降格する大分にとって、この財務状況で今後のインセンティブ減少はクラブ存続にも関わる死活問題。皮肉にも明日はナビスコ杯決勝戦。昨年のその舞台でカップを掲げた彼らの暗転ぶりは信じられない限りだが、主力選手の動向を含めてサポーターにとっても今季のオフは気が気でない冬になりそうだ。

 

 続いて、JFLに所属する三菱水島FCが今季限りでのリーグ撤退を表明した。三菱自動車水島の不況下による影響が原因とだいう。今後もチームは存続するようで、どのリーグに属するかは現状では未定のようだ。
 これは企業チームという問題だけでなく、万全な活動資金が確保できていないアマチュアクラブにとっても「明日は我が身」という話題である。特に今後Jリーグを目指す地域クラブにとっては、こういった企業チームが撤退するご時世に活動資金を集めること自体が至極困難なのだ。JFLといえどもアマチュア最高峰の全国リーグだけに、その加盟料や遠征交通費を考えると年間でかなりの支出額になる。幸い三菱水島はチーム自体が存続するが、地域リーグレベルのチームであれば一気にクラブの存続に関わる事態になっただろう。

 こちらの奈良でもひしひしと感じるスポーツへの厳しい逆風。この不況の煽りを受けて寒さの厳しい今冬が待ち受けている気がする。