脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

もはや「金星」ではなく -徳島vs北九州-

2011年08月06日 | 脚で語るJリーグ
 震災の影響で延期となっていたJ2の第3節が今週末に行われる(17日に行われる札幌-千葉を除く)。金曜日に先行して行われたポカリスエットスタジアムでの首位・徳島と5位・北九州の試合は、白熱した攻防戦の末に、1点を守り切った北九州が1-0と勝利。勝点を33ポイントに伸ばした。徳島は勝点を稼ぐことができず、土日の試合の行方によっては首位陥落の可能性も出てきた。

 

 台風が近づいている影響もあってか、雨が降ったり止んだりと不安定な天気だった徳島の鳴門。ここで対峙するのは、どちらも直近5試合では1敗しかしていない最近好調の2チームだ。首位の徳島は、6月19日のFC東京戦(@味スタ0-1)で負けて以来黒星知らず。対する北九州もJ参入1年目の昨季はなんと年間1勝しかできなかったチームがここまでで既に9勝。7月は岡山に喫した黒星のみの1敗と非常に好調で、なんと先週30日の試合ではFC東京を相手にホームで1-0と完封勝利を果たしている。
 この日は、徳島が警告累積からDFエリゼウが復帰してベテランの三木とコンビを組み、左右のサイドバックには西嶋、島村、そして中盤でもセンターに斉藤とマーカス、右MFに衛藤という今季から新加入のメンバー。左に柿谷、前線では昨季16得点の津田と3年目の佐藤がコンビを組む。GKには昨季終盤から出場しているオ・スンフン。まだこれに加えて、ベンチには倉貫、島田ら百戦錬磨の選手たちが。そういえば今季の徳島には、榎本や杉本なども加入しており、選手層はすこぶる厚いイメージ。
 北九州は、今季三浦泰年監督を迎えて積極補強を敢行。この日の先発もGK佐藤、DFでセンターを組む宮本、福井、そして中盤の安田、森村、木村と6人が新加入選手。G大阪から加入の安田がトップ下を務めるひし形の中盤構成で、左右のサイドバックに冨士、関、そして1ボランチに桑原。FWは4試合連続得点と絶好調の池元と昨季はDFで一貫して起用されていた長野がコンビを組む。

 
 初来訪、鳴門・大塚スポーツパーク。
 グルメも豊富で雰囲気は良い。

 
 首位に躍り出た徳島。悲願のJ1昇格へ後半戦が始まる。

 
 前日に亡くなった松田直樹に向けて試合前には黙祷が。

 上位同士の攻防戦とあって試合は終始見応えのあるものになった。立ち上がりから徳島がボールを回して果敢に北九州陣内に攻め込む。特にセンターの斉藤とマーカスの今季加入コンビが起点になっている。ここに1列前で攻撃的に前へ仕掛けていける柿谷と衛藤。それを追いかけるようにバイタルエリアに西嶋、島村というかつては攻撃的ポジションだった両サイドバックが絡んでいく。
 しかしながら、今季の北九州もひと味もふた味も違う。5分には相手ボールを奪ってから池元がスピードあるドリブルで徳島陣内へ持ち込むと、最後は長野が勢いあるシュートで徳島ゴールを牽制。徳島が攻めあぐねたところでこのスピードを活かしたカウンターを仕掛ける狙いが北九州にはあっただろう。

 
 今季から中盤を担う徳島・MFマーカス。

 
 仙台から途中加入のMF斉藤はまさかのモヒカンスタイルに。

 
 北九州は池元がここまで6得点と絶好調。速い。

 徳島、北九州もあまりロングボールを使わず、繋いで攻める形が目立った。徳島が中盤のタレント力で北九州のそれを上回るが、なかなか北九州を崩せない。北九州は宮本、福井のコンビが非常に良かった。集中して徳島の攻撃をブロックする。繋ぎの面では1つ前にベテラン・桑原がいる。2006年のニューウェーブ時代の九州リーグから北九州を支えるチームのバンディエラは攻守両面で今だにこのチームのキーマンであった。20分過ぎに北九州が連続でCKを得るチャンスがあった。前半だけで7本のCKを得るが徳島の高さの前にこれを打ち崩せない。ただ、安田、森村とアタッカー陣が積極的にエリア内に攻め入る形が作れており、得点の匂いは感じる。
 徳島も27分にハーフライン付近でボールを受けたFW佐藤が一気に相手DFを背負いながらもスピードで突破。シュートは惜しくもゴール右に逸すという場面があった。平均的に高身長を誇る陣容だけにセットプレーなども活かしたいところだったが、前半は得点を奪えず。特に前半終了間際に島村が右から抜け出して折り返し、津田がシュートに持ち込もうという場面は決めておきたかった。北九州の渾身のカバーリング凄まじい守備が効いており、両チームスコアレスで前半を折り返す。

 
 攻め込む北九州・MF森村と徳島・DF島村のマッチアップ。

 
 
 G大阪では出場機会に恵まれなかった安田。
 北九州ではトップ下として輝きを放つ。ドリブル突破も。

 
 主将を務める柿谷と西嶋の徳島左サイドコンビ。
 2人とも今季はここまで2得点。

 後半に入って、北九州が繋いでチャンスを作る。前がかりになった北九州の隙をついて徳島もカウンターを仕掛けるが、52分に津田が惜しいシュートを決められず。1人で勝負に持ち込んだが、少し距離が遠かった。北九州が攻勢を見せるものの、徳島は三木、エリゼウが決定機の芽を摘んでおり、前線はそれに応えたい。
 しかし、前半以上に調子の良さを感じさせる北九州が先制する。GK佐藤からのロングボールを受けた池元が左サイドライン際からフリーで走り込んだ安田へ。これを安田が遠めながらもシュート。平凡なシュートだったが、これが徳島のDFに当たって若干コースが変わり、ゴール右隅に決まった。

 
 徳島の衛藤はプレスキッカーとしても活躍。
 北九州の桑原は衰え知らずのハードワーク。

 
 
 安田のラッキーな得点で北九州が先制。

 徳島は66分に衛藤に代えて徳重、佐藤に代えてドウグラスを同時投入。ギアを上げる。72分には柿谷のスローインからドウグラスが頭で落としたところを徳重がヘッド。完璧なタイミングだったが、これを北九州GK佐藤のセーブに阻まれる。この直後のCKはエリゼウのヘッドはゴールならず。そして79分には徳重のクロスを島村が頭で合わせるがミートしない。81分には相手のパスミスを拾ったマーカスが強烈なシュートをペナルティアーク付近から放つが、シュートはバーを直撃。85分にはエリゼウのアーリークロスにドウグラスがヘディングシュートを放つもGK佐藤の横っ飛びに阻まれた。チャンスは作れど最後の最後まで1点が遠い徳島。スタジアムのメインスタンドでは応援の手拍子がこのラスト10分の猛攻に対して絶頂を迎える。
 北九州は、相手の運動量がきついこの時間帯にレオナルドを投入。この狡猾な起用法が効く。カウンター時にはまだ池元もスタミナにそれほど衰えがなく、かつこのレオナルドがスペースを狙って徳島の選手の運動量を更に削ぎ落とす。87分にはレオナルドがDF2人を背負いながら1人でシュートへ持ち込むなど厄介な存在としてアピールした。

 
 高さが売りの徳島FWドウグラス。惜しくもゴールならず。

 
 津田は何度もゴールを脅かすが、オフサイドに苦しむ。

 
 徳島の猛攻、北九州の鉄壁。熱いラスト10分。

 
 北九州のレオナルド。途中起用が非常に効く。

 試合は、先制点を死守した北九州に軍配が上がった。本当に昨季ダントツの最下位だったチームとは思えない戦いぶり。ひたすら繋ぐことを前提に皆がサボることなしに勝利へひた走った。タレント力で劣るところはカバーリングの意識で乗り越えた。何とも屈強なチームだなと感じる新生・北九州。なんと先週のFC東京戦ではCKを15本も与えながらの完封勝利だったようである。まさにそのデジャヴともいえる集中した終了間際の守備。これは「金星」ではなく、実力での勝利だといえよう。これで勝点は33ポイント。依然上位陣の中ではまだ上がいる状況であるが、この北九州の好調ぶりは後半戦のJ2の見どころになるだろう。
 一方、ホームで首位固めのための1勝をという徳島だったが、本当に1点の遠い遠い試合だった。厳密に言えば枠内シュートは少なかったので、決定力ということになるのだろうが、リーグ2位の総得点を考えれば、これだけチャンスを作っていたならば勝っておきたい試合だった。昨季16得点の津田はまだ今季ここまで5得点。コンビを組む佐藤の成長著しいとはいえ、タレント陣の充実度を見れば、やはり優勝は十分争えるはず。FC東京、千葉、栃木、北九州と並み居るJ2の強豪に競り負けられないポイント争いがここから熾烈になってくる。
 とにかく今季初見の2チームながら、見応えのある上位争いに相応しい試合だった。

 
 
 見応えたっぷりの試合を見せてくれた両チーム。
 これは今後のJ2が気になってしかたがない。

 
 北九州を率いる三浦監督。
 まぁとにかく身振り手振りが派手で熱い熱い。


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