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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

遂にスタート!UEFA CL決勝トーナメント

2009年02月24日 | 脚で語る欧州・海外
 チェルシーに後任監督のヒディンクがやって来て、大一番のアストンビラ戦を快勝したと思いきや、あっという間にやってきたUEFAチャンピオンズリーグの決勝トーナメント第1戦1stleg。未曾有の好カードが1戦目から組まれた初戦は24日(日本時間25日未明)から始まる。

 「本当の戦いは決勝トーナメントから」と言うが、これほどCLファンにとって恵まれた対戦カードはない。注目は、CL史上最高のチケット売り上げ(2時間で完売!)という記録を打ち出したミラノでのインテル×マンチェスター・U戦。欧州王者獲得を悲願とするインテルが早速前年度王者を迎えるという屈指の名勝負があと5時間足らずで幕を開ける。
 インテルは、FWアドリアーノがモウリーニョの信頼を取り戻し、セリエAでも首位を独走している。先日のミラノダービーでもしっかりとした試合運びで首位にふさわしい試合運びを披露。ムンタリ、カンビアッソ、サネッティの中盤の底3戦士が素晴らしい連携を見せている。個人的には、最近スタンコビッチが復調を見せているのも嬉しい限り。対するマンチェスター・Uは、DFビディッチが出場停止ということもあって、エースFWイブラヒモビッチのゴールでホームで先勝しておきたいところだ。

 他の注目カードは、やはりアーセナル×ローマ。アーセナルは、ホームで1stlegを戦えるものの、セスクとアデバイヨールの負傷離脱が痛いところ。明らかに復調ぎみのローマが優勢の様子だが、地元でどこまでアーセナルが意地を見せられるかが注目だ。
 リヨンは、今季絶好調のバルセロナが相手と苦しい初戦を迎える。共に国内リーグでは首位を走る両雄だが、ここまでのリーガで、23試合終了して70得点18失点という圧倒的な強さを誇示するバルセロナ。リヨンは大きなヤマ場を迎えた。絶頂期を迎えるメッシ、エトー、アンリの3トップがほぼベストコンディションなのは恐ろしい。
 リーガでの失速が響き、アギーレ監督からレシーノに交代したA.マドリー。国内でも失点の多さが気がかりなところだが、初戦の相手はポルト。いつの間にか元東京Vのフッキが先発の座を射止めているようで、ウィファルシらDF陣がそのフッキやC.ロドリゲスらポルトの攻撃陣をどこまで止められるかが焦点になる。もちろん、マラドーナの初孫を授かったアグエロには、この大舞台でしっかり代表監督でもある偉大な義父にアピールして欲しいところだ。

 明日は、ヒディンクを迎えたチェルシーがユベントスと、そして、R.マドリーがリバプール、スポルティングがバイエルンと対戦するなど、えげつない対戦カードが目白押しのCL。ビジャレアルと対峙するパナシナイコスが、グループBを首位で突破した勢いそのままに勝利を挙げられるかも個人的に要注目ポイントだ。

名将、ロンドンでは結果を出せず・・・

2009年02月10日 | 脚で語る欧州・海外
 10日、チェルシーのルイス・フェリペ・スコラーリ監督の電撃解任が決まった。1日に行われたリバプールとの大一番を0-2と落とし、続くハルシティ戦もスコアレスドローに終わったチェルシー。アストンヴィラに順位を譲り、25週終了時点で4位に順位を落とす彼らの迷走が始まっている。

 かつてブラジルを日本で世界一に導いた名将がロンドンで過ごした期間は、たったの8ヵ月。アブラモビッチオーナーの鶴の一声で解任が電撃的に決まったが、開幕時の期待と現時点での凋落ぶりは明らかだった。昨年11月にホームでニューカッスル相手にスコアレスドロー。そして12月には、ウエストハム、エバートンと2試合連続でドローゲーム。年末のフルアム戦も勝てずに2-2のドローで新年を跨ぐと、今年最初のマンチェスター・U戦は0-3で完敗を喫した。自身が信頼を置くデコらを補強し、信条であるポゼッションサッカーを目指したものの、メンバー起用の不可解さ、不明瞭なコンセプトなどが散見され、特筆すべき結果を生み出すことなく、名将はスタンフォードブリッジを去ることになった。

 冬の移籍市場でインテルからクアレスマを獲得したチェルシー。彼が置き土産となったフェリペ体制の後を継ぐのはウィルキンスコーチ。CLのノックアウトラウンドを間近に控え、チェルシーは厳しい転換期を迫られている。継続路線でいくのだろうが、後任の人選も含めて、かつてない試練が訪れたようだ。とはいっても、モウリーニョが去ってからは、チェルシーに吹き荒れる風は止まっていないようにも思えるが・・・

 BBCの情報によると、後任はヒディンクを軸に人選を進めている様子。21日には3位アストンヴィラとの一戦。ここからブルーズの巻き返しはなるか。

FIFA CWC 決勝戦 リガ・デ・キトVSマンチェスター・ユナイテッド

2008年12月22日 | 脚で語る欧州・海外
 FIFAクラブワールドカップの決勝戦、南米王者のリガ・デ・キトと欧州王者マンチェスター・Uとの一戦は、大会MVPを受賞したルーニーの得点を守りきったマンチェスター・Uが1-0で勝利。99年トヨタカップ以来の栄冠を手にした。

 

 右SBにラファエル、ボランチにキャリック、右SHにパクを起用し、C・ロナウドを左SHに回してルーニーとテベスの2トップという布陣で臨んだマンチェスター・U。パチューカ戦と変わらぬ4-5-1を敷いてきたリガ・デ・キト。トップ下のマンソを中心に強敵に挑むことになった。

 開始5分にウルティアのFKからカンポスがゴール前に走り込みビッグチャンスを得たキトだったが、パチューカ戦でもポゼッションでは相手にリードを許したように、やはり地力ではこの相手には敵わない。強く吹き込む追い風がキトの流れを引き寄せてくれればという立ち上がりだった。

 
 パス能力に秀でたキャリックを入れてきたマンチェスター・U

 
 キトの攻撃を組み立てるのはMFマンソ

 10分、ファーディナンドのロングパスをルーニーがフィニッシュに持ち込んだように、先発のルーニーは前線で驚異的な存在であり続けた。彼をターゲットに両サイドから、そしてエリアを問わずC・ロナウドがチャンスを作る。
 しかし、この日はC・ロナウドをキトの守備陣がよく封じた。ドリブル偏向の彼にとって苛立ちが募る展開。前半はスコアレスドローで折り返した。

 
 決定機を決められず憮然とするルーニー

 後半の立ち上がりにアクシデントが起こる。DFヴィディッチがファウルで退場となり、急遽テベスに代えてその穴にエバンスを投入、4-4-1というような布陣にスイッチしたマンチェスター・U。中央にC・ロナウドを配置し、ルーニーを左に回した。ファーガソンの采配に守備のタスクをその自己犠牲でしっかりと担えるルーニーのプライオリティを垣間見る。昨季のCLでも何度か見られたこの配置はマンチェスター・Uの常套手段。1人欠けた中で、攻守のバランスを考えた布陣は功を奏すのか、会場の注目は集まった。

 
 アジア人として初の栄冠に輝いたパク・チソン フル出場で勝利に貢献

 
 攻め上がったエブラとのコンビネーションが合わず苦しむC・ロナウド

 73分にエリア手前でボールを受けたC・ロナウドが巧みにコントロールしたパスを左に走り込んだルーニーへ。眼前にDFがいながら右足を一閃したルーニーのシュートが決まり、マンチェスター・Uが大きな先制点を挙げた。
 1人多い中、キトは最後までチャンスを狙い続けたが、ファーディナンドを中心に厚い守備を敷くマンチェスター・Uの前にゴールを奪えなかった。

 
 
 スタジアムを盛り上げたC・ロナウドのFKも得点には至らない

 
 
 73分、C・ロナウドのアシストからルーニーが決勝弾を決める

 風邪で体調をこじらせているベルバトフや若手のウェルベックも個人的には見たい選手ではあったが、やはりクオリティはマンチェスター・Uが一回りも二回りも上だった印象があった。プレミアリーグの過密日程や先日CLノックアウトステージの初戦がインテルに決まったことも、彼らのこの後の熾烈なシーズンを物語る。今日帰国の途に着いた彼らからは、この大会の歓喜は既に過去のものになっているに違いない。スタジアムに駆けつけた多くのマンチェスター・Uファンを熱狂させて、風のように去っていった“赤い悪魔”たち。彼らは様々な意味で“非日常”を提供してくれた。

 
 シルバーボール賞はC・ロナウドの手に

 
 大会MVPはルーニー 全てにおいて“違い”を見せつけた

 
 セレモニーは尋常でない火薬の量 スタジアムが煙に包まれる

 
 歓喜に酔いしれるマンチェスター・U 完成度はクラブ史上最高峰か

 
 チームを率いて23年目 サー・アレックス・ファーガソン監督

FIFA CWC 5位決定戦 アルアハリVSアデレード・ユナイテッド

2008年12月20日 | 脚で語る欧州・海外
 G大阪とマンチェスター・Uの試合が行われる前に、5位決定戦のアルアハリVSアデレード・ユナイテッドが行われていた。0-1でアデレードが勝利し、5位の座を勝ち取った。

 
 

 アデレードは、7分に左サイドでボールを受けたFWクリスティアーノが一気にドリブルで持ち込み、決勝点となる鮮やかなシュートを決めた。その後は守りに徹したアデレードが完封試合で逃げ切った。G大阪と計3度の対峙、世界との真剣勝負の場を経験した彼らにとって、今季は実りのある1年になったはずだ。

 
 
 FWクリスティアーノが果敢に左サイドを突破する

 
 7分、アデレードがクリスティアーノのゴールで先制する

 彼らは、2003年に設立された新しいチームだ。Aリーグ開幕以前にあったオーストラリアン・ナショナル・サッカーリーグ(NSL)におけるアデレード・シティの撤退により、急遽チームが組織された。その際にはプレミナリー・ファイナル(グランドファイナルまでのプレーオフ)まで進出するなど及第点以上の活躍。2004年11月に開幕したAリーグから参加している数少ないチームである。2年連続のAFCチャンピオンズリーグ出場となった今季は、準優勝という結果を残し、クラブワールドカップへの切符を掴んだ。サラリーキャップ制度(チーム全員の年俸合計はA$180万以下)というAリーグ特有の規則に縛られている彼らにとって、今大会で5位入賞は大きな意味を持っている。

 
 ピッチ上のリーダーとして勝利に貢献したDFオグネノブスキ

 
 GKガレコビッチも好守で勝利を手繰り寄せた

 G大阪との3度に渡る真剣勝負は、彼らを逞しくした。アルアハリ戦でも球際におけるプレーの集中度はアデレードが勝っており、左SBのジェイミーソン、CBのオグネノブスキ、そして最後尾で好プレーを見せた守護神のガレコビッチの奮闘は印象的だった。G大阪に完封負けを3度味あわされ、エースの自覚を再確認したであろうクリスティアーノが値千金の決勝弾を奪ったことも大きかった。

 試合中は、G大阪サポーターからも声援が送られていた。スタンドは、“メインイベント”前ともあって、閑散としていたが、彼らの5位という成績には拍手を送るべきだ。アデレードから駆けつけたサポーターの数は少なかったが、ちょうど1ヶ月前に現地で知り合い、多くの交友を深めたサポーターの彼らが本国で見つめていたであろう。日本に来ながら、チケットを入手できずにスタジアムに入れなかった人たちもいるという。クラブワールドカップは彼らのインターナショナルな場でのアイデンティティを構築する貴重な場となっていることを感じた。

 1907年創立の古豪、アフリカきっての名門クラブ、アルアハリは残念な結果に終わった。2年前にはこの大会で3位に入っており、彼らも今後、アフリカの代表的なクラブとして再起することを期待したい。

 
 
 
 FWアブトレイカのFKは惜しくも決まらず

 
 機を見た攻め上がりでチャンスを作ったDFゴマ 

 さて、明日はG大阪がパチューカとの3位決定戦に挑む。会場が日本であるならば、雰囲気としては、決勝戦よりもこっちが“メインイベント”にならなければならないところだが、メディアスペクタクルの象徴ともいえるこの大会。日本で行われながらも、残念ながらそういうわけにもいかないのは事実。そこは頭から除いて、G大阪の世界3位入賞を切に願うばかりだ。

マンチェスター・ユナイテッドの風景

2008年12月18日 | 脚で語る欧州・海外
 
 50年代後半に在籍した北アイルランド代表GKハリー・グレッグ
 しかし、クラブ史ではレイ・ウッドの方が名を残している
 (1958年のスウェーデンW杯より)
 
 
 ジョージ・ベスト 彼抜きにマンチェスター・Uは語れない
 (1971年 イングランドフットボールリーグ チェルシー戦)

 
 1968年にバロンドールを受賞したベスト 愛称は「エル・ビートル」
 40年後、C・ロナウドも受賞 彼はやはりベストの再来か

 
 闘志をむき出しに激しく詰め寄るロイ・キーン
 マンチェスター・Uへの移籍金は当時国内最高額
 (写真は、1996年FA杯決勝 リバプール戦)

 
 デビューは1991年、ライアン・ギグスはクラブの象徴だ
 (1993年の南アフリカツアー時の一コマ)

 
 90年代のクラブの栄光を支えた左SB、デニス・アーウィン
 オールド・トラッフォードでサポーターに囲まれる

 
 99-00シーズンのCL決勝はロスタイムで劇的な逆転勝利
 プレミア、FAカップも制してトレブルを達成

 
 世界中を席巻する彼らのグッズ
 (写真はオールド・トラッフォード外のメガストア)

 
 前身ニュートン・ヒースLYRの創設から130年 世界中がその虜だ
 (写真はユニフォームに身を包むジンバブエの子供たち)

 
 チームを率いて22年になるサー・アレックス・ファーガソン

<出典:TIM GLYNNE-JONES 「Game of two halves」 Football Yesterday & Today Foreword by BRIAN CLOUGH 2003年 CARLTON>

THEATRE OF DREAMS

2008年12月17日 | 脚で語る欧州・海外
 どこまでG大阪のスタイルが見せられるか。チーム史上最高の大舞台が迫ってきた。対するは、名実共に世界に名を馳せる欧州王者、マンチェスター・ユナイテッド。至極の戦いを翌日に控え、興奮が収まらないのは正直な心境だ。

 「ガンバのスタイルは把握した」
今日の記者会見で、サー・アレックス・ファーガソン監督はこう話した。昨日の朝にアデレード戦のVTRをじっくり観たようで、頭の中にG大阪のイメージを十分描いているようだ。それだけでも普段から考えればあり得ないことなのだが、彼の目には果たしてG大阪のサッカーはどう映ったのだろうか。

 限りなくG大阪は分が悪い。先日のアデレード戦で佐々木を負傷で失い、故障箇所を痛めた二川もフルでの参戦は難しそうだ。それでも、サッカーの不確定な競技特性を考えれば、何が起こるか分からないといえよう。世界をひっくり返す“ジャイアントキリング”を目指して欲しい。

 明日のマンUの布陣が気になるところ。今季の彼らは、9月のプレミア開幕以降、月を追うごとに安定感が増している。GKはファン・デルサル、DFは、CBをヴィディッチ、ファーディナンドの不動のコンビが壁を作り、左SBに屈指のスピードを持つエブラ、右SBは、ベテランのネビルになるだろう。ここで今季デビューを果たしたラファエルを起用するかどうかが注目点だが、ラファエルは恐ろしくスピードのある選手、個人的には経験よりも、勢いのあるラファエルに出てこられると、G大阪は左右のSBはほとんど上がれないだろうと考える。
 ボランチはフレッチャーとコンビを組むのはキャリックか。個人的にはやはりどこかのタイミングでギグスを見たいのだが、パス能力などの安定感を考えるとキャリック。そして、攻撃的に行くならば、アンデルソンになるだろう。左MFはおそらく彼らの鍵になる。C・ロナウドはおそらく先発であろうから、ナニが左MFに入るか。もしくは、ここにはパク・チソンも考えられる。
 そして屋台骨の前線は、CFにベルバトフ、セカンドトップにルーニーは間違いないだろう。テベスも控えているが、つい先日のストークシティ戦でダメ押しの5点目を決めた期待の若手FWウェルベックも個人的には注目する。

 彼らがこの大会に臨むのは、99年のトヨタカップ(当時)パルメイラス戦以来だ。この時に決勝点を決めたキーンのような“闘将”らしい選手こそ今のマンUにはいないかもしれないが、おそらく現在の彼らのチーム力はクラブ史上最高のもの。その彼らを本気にすることが、明日のG大阪の最初の仕事になるだろう。

 “THEATRE OF DREAMS”
かつて彼らのユニフォームに刻み込められていた刺繍の文字通り、明日我々がその「夢の劇場」の当事者になる。

プレミアリーグ酔夢譚 Week16

2008年12月10日 | 脚で語る欧州・海外
 ミドルクラスのチームとマンチェスター・Uの動向が気になるプレミアリーグ。16週は、4試合を私的にピックアップ。

 7日に行われたプレミアリーグ第16週、エバートンVSアストン・ビラは大味な試合になった。ヤクブを再び怪我で欠き、アニチェベとケイヒルを攻撃の軸に、ホームのグディソンパークでアストン・ビラに少しでもポイントで迫りたいエバートンだったが、開始1分、目の冷めるような攻撃からシドウェルのシュートで先制点を献上。バリーが中盤に復帰したビラが、幸先良く試合の主導権を握った。
 30分にエバートンはDFレスコットが同点ゴールを決めて試合を折り返したが、1-1で迎えた54分には、自陣でDFジェギエルカが痛恨のバックパスミス。これを左サイドから攻め上がったヤングがかっさらい、ビラが勝ち越し弾を奪う。そして、2-1でビラの勝利が濃厚かと思われた後半ロスタイム、エバートンがレスコットのこの2得点目となる同点弾をゴール前の粘りから奪う。沸きに沸き返るグディソンパークだったが、その直後に悪夢が待っていた。
 2得点の活躍を見せたレスコットが難なくDFラインの裏を取られてしまい、ヤングの独走を許すと、そのヤングが再び勝ち越し弾を奪って、勝負あり。ロスタイムに試合が二転三転する展開で、エバートンはポイントすら奪えず自滅。対するビラは、トップ4追走に大きな勝利を挙げたのだった。

 トップ4以外のチームで他に目を奪われたのは、やはりハルシティの復調だ。ミドルズブラをホームに迎えた一戦は、91年3月以来となる18年ぶりの対峙だったが、0-0で拮抗した展開で迎えた79分にFWトゥンジャイが右サイドを駆け上がったホイトのクロスを鮮やかにヒールで流し込んで先制。しかし、その直後にホームKCスタジアムの声援を一身に浴びた途中出場のメンディが右サイドを突破し、角度の無いところからシュートを放つと、これがGKに当たりゴール。85分には、ジオバンニの突破からエリア内でファウルをもらい、PKのチャンスにエース、キングが今季7得点目となる逆転ゴール。ラスト10分で驚異の逆転劇を演じたハルシティは、昇格組とは思わせない粘り強さを見せてくれた。
 90分で、ミドルズブラ相手に18本のシュートを放ったハルシティ。フィル・ブラウン監督がサンダーランドからのオファーを一蹴するなど、ここに来て再びチームの強い結束が見られる様子。ビラに次ぐ現在6位という戦績は決してフロックではないようだ。

 ここ9戦勝ち無しとインス監督の力量に不安視の声が止まないブラックバーンは、リバプールと対戦。F.トーレスとキーンを欠いているとはいえ、やはり相手は優勝候補のトップ4の一角。69分にシャビ・アロンソ、79分にベナユンにゴールを奪われると、85分にサンタクルスが意地の一発を返し、反撃の狼煙を上げたかと思いきや、ロスタイムにGKロビンソンのクリアをリエラに奪われ、難なくフリーのジェラードに決められて万事休す。これで10試合に渡って勝利に見放されたブラックバーン。順位も自動降格圏内の19位とまさに泥沼の様相を呈してきた。

 CWC出場のための来日を間近に控えるマンチェスター・Uは、キーン監督を木曜日に解任したサンダーランドを対戦したが、ヴィディッチの1点を守りきり、サー・アレックス・ファーガソン監督クラブ通算500勝目となる勝利をもぎ取る。相変わらず、前線でハードワークを厭わないルーニーと、負傷交代するもドリブルのキレは抜群のC・ロナウド。58分にはテベス、68分にはアンデルソンをギグスを同時投入し、攻撃体制を一新するなど、試合の駆け引きも超一流を感じさせる。特にいぶし銀のギグスは、チャンスを再三演出し、呼応するかのようにキャリックやアンデルソンらも前線に顔を出す。スコアこそ1-0ながら、改めて彼らの怖さを感じた先週土曜日の試合だった。

 盤石のチェルシーについては、別の機会にするとして、やはり、来日間近のマンチェスター・Uと、トップ4をどのチームが追走するかは、今季序盤から中盤にかけてのプレミアリーグの私的な見所だ。個人的にも前述のアストン・ビラ、ハルシティはもちろん、アダムス率いるポーツマスや30歳のブラードがイングランド代表復帰を匂わせる輝きを放つフルハムなどもこれからが楽しみだ。そのサッカー先進国の息吹を来週には、マンチェスター・Uを通じて、日本で少しでも味わえるのだから、これほど楽しみなことはない。

来日控える“赤い悪魔”

2008年12月09日 | 脚で語る欧州・海外
Jリーグも今季の日程が終わり、スポーツ紙を中心に各チームのオフの動向が取り沙汰されているが、個人的には、ホットな話題はなんといっても11日から開幕するクラブワールドカップだろう。G大阪が出場することもあり、今から非常に楽しみにしている。

 マンチェスター・Uの来日メンバーが発表された。先日のサンダーランド戦で負傷したC・ロナウドも心配なく順当に選出されており、イングランド代表のルーニー、ブルガリア代表のベルバトフと、主力選手の欠員はない様子だ。あとは、どれだけのモチベーションで臨んでくるかである。

 どういったメンバーを組んでくるかが気になるところだが、彼らの選手層は並大抵ではない。特に中盤は、十分にターンオーバーが効く陣容で、ベストメンバーで臨んでくるならば、バロンドールのC・ロナウドを観られなくても、ギグスやスコールズといった“レジェンド”を拝めてしまう。本当に今季のマンUをこの目で観られることは幸せなことだ。

 さて、どうだろう。今から彼らの初戦のスタメンが気になるところだ。おそらく、日頃のメンバーと遜色ないと思われるが、個人的には右SBは熟年のG・ネビルと若手で成長著しいラファエルの2人を見たい。ここにはラファエルに遅れをとったブラウンが回ってくる可能性もあるが、エマージェンシーの際だけだろう。左SBのエブラが非常にタフで、スピードに優れている。オシェイが起用される可能性もあるが、エブラはかなり攻撃面での功績も大きく、メンバーを落としてきても、彼だけはスタートから起用される気がする。CBはヴィディッチとR・ファーディナンドという2人以外に考えられないので、エバンスやブラウンをここに起用してくるならば、かなりナメられたものであろう。
 ボランチは、ギグスとフレッチャーのコンビで初戦は臨んでくる気がする。両翼は、パク・チソンとナニが起用され、C・ロナウドは後半からということもあり得る。2トップは、ルーニーとベルバトフなら本気。テベスとギグス、あるいはナニが起用されるパターンもある。ウェルベックが起用されれば、完全に手を抜いてきている。

 今大会は、彼ら以外は欧州基準で考えれば無名に近いクラブばかり。おそらく彼らもほとんど事前情報は持ち合わせていないはず。手探りの状態で、この大会に臨んでも制覇は難しくないという公算は高い。しかし、そこをどれだけ裏手に取るか、G大阪には“日本の意地”を見せてもらいたいものだ。

 昨季は、ミランの本気度に驚いた。日本に早くから来日し、1週間以上に渡って調整を続けた。同じことを毎年欧州王者に求めるのは酷な話だが、いずれにしろ、G大阪が初戦を勝てば、これまでで最強の“敵”と戦うことになる。

 来日を間近に控えた彼らには、せめて、12年前にG大阪が、第1次キーガン体制のニューカッスルにプレシーズンマッチで勝ったということだけ知っておいて欲しいものだ。

プレミアリーグ酔夢譚 Week13

2008年11月19日 | 脚で語る欧州・海外
 先週末の土曜日、マンチェスター・Uを撃破したメンバーで臨んだアーセナルをアウェイながら撃破したアストン・ヴィラ。2-0の完勝劇で、一気に勝ち点でアーセナルに並んだ。

 両チーム共に1トップを敷く布陣だったが、この試合では、アストン・ヴィラの1トップ、アグボンラホルが強烈な印象を残してくれた。昨季、自身キャリア初の二桁得点を叩き出したこのFWは、80分にチームの2点目となるシュートを決めたのだが、そのゴールまでのプロセスは彼の“韋駄天”ぶりを堪能するものとなった。自陣エリア付近で、味方DFがアーセナルの攻撃を抑え込むみ、ラウルセンがクリアしたロングボールにハーフライン付近から反応。トップスピードでギャラスと競り合いながら右足を一閃すると、この日序盤にPKをファインセーブしたGKアルムニアをあざ笑うかのように彼のシュートはゴールに吸い込まれた。

 しかし、この地元バーミンガム生まれの22歳のFWには恐れ入る。今季もこれで13試合で7得点。ヴィラ・パークの人々は、この恐るべき下部組織から誕生した怪物に、今季も夢見心地を幾度となく提供されるのだろう。

 オールド・トラフォードでは、C・ロナウドが見事なFKで自身100ゴール目を記録したが、このストークシティ戦は5ゴール全てがファンタスティックだった。相手が今季昇格を遂げたチームだということは考慮すべきだが、それにしても、先々週のアーセナル戦の敗戦の後に、このストークシティ戦があったことは彼らにとっても幸運といえるだろう。どうせなら、ノリにノッた状態で、クラブワールドカップに来てもらいたいものだ。

 ザ・ホーソンズでWBAと戦ったチェルシーは、ミッドウィークにカーリング杯にてバーンリーに敗れる波乱があったが、このWBA戦も2得点と止まることのないアネルカの好調ぶりに、バーンリー戦で相手サポーターと問題を起こしたドログバとのコントラストは拭えない。自身のキャリア上最高のシーズンを過ごしているアネルカと、怪我が落ち着かず、昨季の移籍発言からお騒がせが続くドログバの2人の関係は今後も注目だろう。ちなみにチェルシーは、このWBA戦の勝利で、アウェイ10連勝とプレミア記録を打ち立てた。

 ベストゲームは、エバートンVSミドルズブラのリーグ直近4戦無敗同士の戦い。先行されたホームのエバートンが後半、アルテタのFKに怪我から復帰したヤクブが合わせて、痛み分けに。90分通して両チームの勝利への執念が止めどなく交錯して良い試合になった。
 エバートンはヤクブが戻って来たことで、今後さらに楽しみだが、個人的には、最近話題になっているアルテタのイングランド代表への帰化招集には期待したい。

 そのエバートンも含めて、アストン・ヴィラ、トッテナムを破ったフルハム、少し調子を落としてきているハルシティ、ミドルズブラ、ポーツマスあたりが年末に懸けてリーグを掻き回してくれれば、さらに面白くなってくるはずだ。

プレミアリーグ酔夢譚 Week12

2008年11月10日 | 脚で語る欧州・海外
 先週末に行われたプレミアリーグ第12節、エミレーツスタジアムで行われたアーセナルとマンチェスター・Uの一戦はスペクタクルに溢れたゲームとなった。

 2-1でアーセナル勝利の立役者になったのは、今季から加わったMFナスリ。21分にセスクのエリア右付近からのFKを、ベルバトフがクリアしたところに瞬時にシュートで対応。相手DFにかすってコースの変わった弾道はゴールに吸い込まれた。
 47分には、中央を突破したセスクのラストパスから目の覚めるようなシュートを再び叩き込み、試合の行方を決定づけた。このシーンでは、エリアに斜めに走り込んだウォルコットが相手DFを効果的に釣ったことで、最終的にボールを受けたナスリの眼前にスペースが生まれた。アーセナルの崩しの真骨頂ともいえる鮮やかな得点劇に、ハードワークを身上とするマンチェスター・Uの守備は見事に引き裂かれた。

 この大一番には、ファンペルシ、アデバイヨールという前線の2枚看板を欠いたアーセナルだったが、美しく攻撃的なサッカーが熟成の一途を辿る今季の彼らには、大きな問題ではなかった。昨季と比較して、フィジカル面で成長著しいウォルコット、その逆サイドで大きな得点源となっているニューカマーのナスリ、攻守共に無欠の働きを見せるセスクと、この3人による縦への速いパス回しが、魅力的なアタックを構築している。攻撃時のミスも少なく、この試合では、前線のベントナーの頼りなさが少々目立ったが、ベストメンバーが揃えば、前述のFW2人がともに5得点しているのに加え、ナスリも今季4得点目と誰もが得点を奪えることは実証済みだ。今季ここまで25得点という総得点はチェルシーに次ぐ数字。これからさらに、彼らのスペクタクル満載のサッカーは我々を楽しませてくれるだろう。

 そんなエミレーツのゲームとは対極的に、つまらない試合になったのが、翌日、雨のイーウッド・パークで行われたブラックバーンとチェルシーの一戦だった。

 2-0とアネルカの2得点で、難なく勝利を得たチェルシーだっだが、ポール・インスが新監督を迎える新生ローバーズは、低予算のチーム編成をものともせず、昨季7位と健闘したチームとは打って変わって、骨のないチームと化していた。
 最終ラインからのフィードは、まともに前線に繋がらず、ほとんど攻撃らしい形を作れない。中盤でベントリーを失ったダメージが見事に現れているが、この日欠場していたエースのサンタクルス、セントラルMFのダンがいたところでどうにかなったとも思えないその低調なパフォーマンスは残念だった。

 中継の中で、解説の粕谷氏が指摘していたように、プレミア初の黒人監督となったインスの求心力の無さは納得できるものがある。特例により、プレミアで指揮を執るライセンスを持ち得ていないことも理由の一つだと考えられるが、やはり前任のヒューズの存在は、かねてから在籍する選手たちにとっては大きかったのだろう。昨季は1度も経験してなかった15位という位置にチームは低迷。せめてもの救いは、その選手たちに慕われていたヒューズ率いるマンチェスター・Cが13位とほとんど同じ位置で喘いでいることか。

 とにかく、彼らののらりくらりとしたサッカーに足並みを揃えてしまい、後半はほとんど力を発揮できなかったチェルシーも評価はし難い。片やスペクタクルに富んだライバル同士の一戦、片や雨中の凡戦と、好対照なマッチが印象深かったプレミア第12節。リバプールがWBA戦の前半終了間際に見せた見事なカウンター攻撃が素晴らしかったことも付け加えておく。