歌わない時間

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エストマンのモーツァルト

2011年01月20日 | 音楽について
アルノルト・エストマンが指揮してオワゾリールに録音したモーツァルトのオペラは『フィガロ』『ドン・ジョバンニ』『コジ』『魔笛』で、わたしはこの四つがセットになったCD10枚組を、すでに当時国内の通販サイトではカタログから外されていていたんで、またつぶれる前の米Towerにわざわざ注文して手に入れました。なんか、執着していたんですよね。その10枚組は無事アメリカから届いたんですが、その後たしか一年もたたないうちに米Towerはつぶれたんぢゃなかったかな。

現在、『ドン・ジョバンニ』と『魔笛』は廉価盤で入手可能ですが『フィガロ』と『コジ』は新品では手に入らないみたいです。『コジ・ファン・トゥッテ』は──主役の歌手たちが清新とは言いがたいので──まあなくてもいいかもしれないけど、『フィガロ』が出ていないのはもったいないねえ。

エストマンはモーツァルトのオペラの、時代楽器による録音の走りでした。しかし出来はいい。エストマン盤の価値は、ただほかの指揮者に先んじたという点のみにとどまらない。時代楽器の演奏らしく快速ながら、モーツァルトらしい優美豊潤はそのまま。そして歌手が総じて揃っている。とくにアーリーン・オジェー、バーバラ・ボニー、スミ・ジョー、デラ・ジョーンズといった女声は充実をきわめている。最初に録音されて、ヤカール、ナフェ、ウィンベルイ、クラウセと歌手には新味のない『コジ』にしても、しかし音楽そのものは決して悪くない。

その後(またはそのころ?)、ガーディナーもアルヒーフでモーツァルトのオペラを継続的に録音して、そっちのほうが録音したオペラの数は多いんですが、そのガーディナーのも、さらにその後のヤーコプスのもまだセットにはなってないでしょう。ヤーコプスは、彼のヘンデルを聴いたところから臆測するとよほど聴かせ上手な演奏だろうと思われますが、わたしはヤーコプスの指揮の巧さよりもモーツァルトの音楽そのものを味わいたいので、しばらくヤーコプスに手を伸ばす気はありません。

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