歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

『ジ・エッセンシャル・エマ・カークビー』

2008年12月25日 | CD バロック
The Essential Emma Kirkby
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75分33秒。Virgin。1980年代半ばから90年ごろにかけてカークビーがVirginに録音したものからのピックアップ。カークビーの全盛期は80年代だったとわたしは思っていますので、まさにその時期の記録として一聴に足るものです。作品からいうとイギリス・エリザベス朝のリュート歌曲、モンテベルディ、シュッツ、パーセル、ヘンデル、バッハといった品揃えです。

リュート歌曲も70年代のダウランド全集のころと比べるとあきらかに声が熟してきて、いかにも古楽の女王と呼ばれるにふさわしい。モンテベルディは3曲。コンソート・オブ・ミュージックとしてのマドリガーレ集第8巻からのソロと、パロット指揮の『晩課』から採られていて、これはどちらも元のアルバムを愛聴しています。

パーセルは《Hail! Bright Cecilia》からの"Thou tun'st this world below"というわたしの好きな曲で、パロット指揮の全曲盤から採られているんですが、これは全曲盤買えなかったのでありがたかった。《Messiah》もパロット指揮のCDから"Rejoice greatly"と"I know that my redeemer liveth"の極めつきの2曲。こちらは全曲盤も買いました。ほかのソリストの出来が悪くて《Messiah》のCDとしてはあまりすすんで聴こうという気になれないものですけど、こうやってカークビーのアリアだけ取り出すとやっぱりいいですわ。

まあどの曲もいいんですけど、もっともカークビーの柄に合っているのはリュート歌曲からモンテベルディあたりかなあ。ヘンデルやバッハはほかにも歌える人が出ましたけど、16世紀末から17世紀の音楽を圧倒的な説得力で歌えるソプラノ歌手は、カークビー以後、まだ出ていません。