歌わない時間

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「二次被害で妻も逝った」

2008年12月04日 | メモいろいろ
ゆうべはラジオ深夜便の1時台のインタビューに聞き入ってしまいました。そのインタビューは「”二次被害”で、妻も逝った」というタイトルで、横浜市の渡辺さんという男性が悲惨な体験を語っていました。数年前のある夜、まだ20代前半だった娘さんが、元同級生だった男に殺害されたのです。さらにその事件のせいで渡辺さんのお連れ合い──娘さんのお母さん──が心の病気にかかられて、ついにお連れ合いも、事故か自殺か、電車に接触して亡くなりました。いっぽう娘さんを殺した犯人は、事件の二年後だったかに自首したそうですが、捜査の途中で急に黙秘するようになり、裁判の結果罪が認められて無期懲役の判決が出たものの、遺族への謝罪のことばもないどころか、判決を聞くために傍聴席にいた渡辺さんに向かって、「あんたが迎えに行っていれば娘は死なずにすんだ」という意味の捨てぜりふを浴びせていったというのです。

娘さんが亡くなった日、渡辺さんは趣味の剣道を教えに行ってきた後で、ご自宅でくつろいでいらしたそうです。ちょうどそのころが凶行の時間だったそうで、そのことをまさに渡辺さんは悔やんでいらした。しかし若い娘さんのことですよ。たいていの父親は「たまには遅くまで遊んでくることもあるだろう」と思ってしまいますよ。よりによって犯人からそんなひどいことを言われる理窟はないです。

渡辺さんは、娘さんばかりかお連れ合いまで、その男によってまったく理不尽なかたちで奪われた。渡辺さんご本人のお気持ちは察するにあまりある。それなのに、判決は無期懲役。

たしかに、犯罪事件の被害者やその家族に対する心のケアの問題は、これまであまりにもなおざりにされてきた。これを改善しなければならないのは当然です。渡辺さんによると、事件当時の警察の対応も啞然とするほど非人間的な無機的なものだったらしい。でもね、こういう話を聞いて胸の詰まるような思いがしても、それでもなお、「目には目を、歯には歯を、人殺しには死刑を」と言い切ってしまうことはためらわれる。「裁判を被害者の心の癒しの場に」という言い方には抵抗を感じてしまう。

夜は寝床でラジオ深夜便をすこし聞いてから寝ることが多いです。ときどき携帯ラジオの電源を切り忘れて寝てしまったりもします。