aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

モリコーネ

2023-01-29 00:19:00 | 映画
Bunkamuraル・シネマで「モリコーネ 映画が愛した音楽家」を見てきました。

これも公開を知った時からずっと楽しみにしていた映画です。言わずと知れた作曲家エンニオ・モリコーネのドキュメンタリーですが、監督・脚本はジュゼッペ・トルナトーレ。最高の映画にならないわけがないのですが、やはり最高でした…インタビュイーも豪華。タランティーノ、クリントン・イーストウッド、ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマー、クインシー・ジョーンズ、パット・メセニー、そしてベルナルド・ベルトリッチ…(以下、ネタバレします)。

トランペット奏者の父を持つモリコーネは、子どもの頃から厳しい音楽教育を受けて育ちました。本当は医者になりたかった、というのは初めて知りました…。サンタ・チェチーリア音楽院では最初、トランペットを学んでいたのですが、和声の課題で好き勝手したため、作曲をやったほうがいいということになったようです。ここで師となるペトラッシと運命の出会いをします。この頃に対位法の研究をし、それが後の音楽にも影響を与えています。また、実験音楽にも接近していたようで、それも後の仕事に生きてきます。卒業後にRCAレコードと契約して編曲の仕事を始め、映画音楽の仕事にも携わるようになります。そして、何と小学校の同級生だったセルジオ・レオーネ監督と運命の再会を果たし、彼と組んだマカロニ・ウエスタンの音楽で有名になり、トルナトーレ監督と組んだ「ニュー・シネマ・パラダイス」で世界的な名声を得ます。結局、6度のアカデミー賞へのノミネートを経て、名誉賞を受賞することに…。

映画音楽の作曲家としてはこの上ない成功を収めたモリコーネですが、絶対音楽と映画音楽、芸術音楽と商業音楽の狭間で葛藤し続けた人生でもありました。映画音楽を創るのは屈辱だった、とさえ言っています。何度となくもうやめる、と言い続けたものの、映画音楽には天与としか思えない才を発揮しました。映像にふさわしい音楽を生み出す才能…それも手紙を書くように曲を書く…この場面にはこの音楽、のジャッジは時として監督以上に正確でした。そして、圧倒的に素晴らしいメロディー…彼の母親が素敵なメロディーを書いてね、と彼に言っていたそうですが、おそらくその影響があるのでしょう。妻の献身的な支えもありました。音楽家ではない妻が曲にOKを出していたというのはけっこう驚きでしたね…。最終的には厳格だった師や彼を無視していた学友も彼を認め、彼の中でも絶対音楽と映画音楽が高い次元で融合を果たすことになります…。

映画と音楽…切っても切り離せないものですが、映画と音楽の関係にもいろいろあります…映画に寄り添う音楽、高揚させる音楽、あえて異質なものをぶつけて化学反応を起こすような音楽…でも、映画を超える音楽、というのは唯一無二でした。そして、モリコーネ自身の人生も、ある意味、映画を超えるようなものだったのかもしれません…。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 祈り | トップ | 12 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事