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ボンゴマン

2024-05-07 00:21:40 | 映画
シネマカリテで「ボンゴマン」を見てきました(この映画館での上映は既に終了しています)。

ジミー・クリフが1980年に行ったライブ・ツアーを記録したドキュメンタリーです。この映画ではツアーの模様だけでなく、当時のジャマイカの状況など、ジミー・クリフの音楽の背景を知ることができます(以下、ネタバレ気味です)。

映画は「レゲエは心だ」というジミー・クリフの言葉から始まります。ジャマイカの美しい自然。その一方で二大政党が争い、街が炎上する光景。「欲をかくものはすべてを失う」というジミー・クリフのアジテート…。そのような状況の中で始まったライブ・ツアーはジミー・クリフの故郷、サマートンでのフリーライブからスタートしました。このライブはまさに手作り…丘を重機でならし、ステージを一から作るところから始まります。作業をしている人々もどこか楽しげ。ところが、当日になって、スコールのような豪雨が…それでも神の思し召し、と慌てません。結局、ライブは開催され、会場は熱狂の坩堝と化します。ジミー・クリフがボンゴマンと呼ばれ、地元の人から愛されている様子が伝わってきます。そして、ツアーは南アフリカ、ドイツへと続いていきます。ライブでは“Harder they come“や“Many Rivers To Cross“を熱唱する場面、ボブ・マーリーに“No Woman,No Cry“を捧げる場面も。この曲をジミー・クリフが歌うとどこか内省的に響きますね…。ドイツで「ベトナム」を歌う場面では、戦争を止めてくれ…南アフリカで、アフガニスタンで、イランでと叫んでいます。ジミー・クリフは「団結すれば、メッセージは伝わる。レゲエにはその力があるんだ」と力強く語ります。ジミー・クリフは「いたる所戦争だ、俺は平和がほしい」と言っていましたが、音楽家が政治に口を出すなというのは平和な国だからこそ、というのを痛感しました…。

彼らはやはり音楽の次元が違うと思いました…何というか、音楽も信仰も政治も人生も、全てが一体になっている感じです。ラスタの教えというのは本当に強力なのですね…裏を返せば、それだけ抑圧が強力だったということなのでしょう。映画ではマルーンの歴史にも触れられていましたが、まったく状況が違う国で暮らしていると、こういった音楽を根幹から理解するのは正直、難しいのかもしれません…。魂の自由のために歌い続けたジミー・クリフ。レゲエが君のところに届いてほしい、という彼の願いはきっと受け継がれていくのでしょう…。
コメント
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