あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

「風の市兵衛」を読んで

2012-06-10 14:52:07 | インポート

辻童 魁 という人の書いた 時代小説「風の市兵衛」を読んで、その面白さにのめり込んでしまいました。大好きな佐伯泰英さんの作品と同様、登場人物がとても魅力的な存在です。

算盤侍と言われるほど数字に強くまた経済的なしくみに精通した知識を売り物にして、「渡り用人」として商人や武士に雇われ、誠実に仕事に打ち込む姿。その人柄を知り、窮地を救ってもらうことで、雇用する側も市兵衛に深い信頼を寄せるようになります。

風の市兵衛は、風のような剣を使う人物でもあります。雇用者を守るために剣を奮い、戦いに臨みます。雇用契約を結んだ以上全力でその責任を果たそうとし、契約以上の報酬は決して受け取りません。

旗本の家に生まれながら、若くしてその家を出、上方にのぼって剣を修行し、算盤や商いを学び、ものづくりを学び、諸国を旅することで人間を学んだ後、江戸に住んで「渡り用人」として暮らしています。

市兵衛の周りに登場する人物たちも魅力的です。江戸で再会した公儀十人目付筆頭支配の兄、その兄の配下である弥陀ノ介(やがて友となる)、北町奉行所同心の渋井。いずれも個性的で心優しい、市兵衛の人柄を慕い、支える仲間です。

武士に生まれながら、その生き方を選ばず、庶民の立場で物事を考え、幅広い知識と視野に立って犯罪を暴き、矛盾した社会のゆがみや弱い立場にいる人の悲しみを真摯に受けとめ 生きていく主人公の市兵衛。風のような剣技以上に、自由な立場で風のようにさわやかに生きる姿が心に残ります。

シリーズは、これまで 7巻が刊行されています。1巻読むたびに、市兵衛という人物が好きになり、その活躍を応援したくなってくるから不思議です。

機会がありましたら、是非 一読を!

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