あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

楊令伝(7巻)を読んで

2011-12-19 08:49:03 | インポート

いよいよ、先の戦いで敗れた 童貫率いる宋の正規軍との戦いが始まります。登場人物それぞれが過去の戦いや出来事を振り返り、国のありよう、志のもちかた、戦死した仲間や共に戦う兵への思い、心に刻まれたものを 見つめながら、戦いの場に臨みます。

梁山泊軍の頭領としての楊令の果敢な活躍、呼延酌・趙安という二人の将軍の戦いと死、呼延酌が息子を救うために死んだことを知って我を失う楊令……印象に残る出来事や場面が展開します。

特に印象的だったのは、我を失った楊令が鬼人のようになって敵陣にたった一人で切り込んでいく場面です。呼延酌の死と自分を守るために死んでいった父の姿が重なり、楊令の理性を奪ってしまったのです。こういった心の傷を抱え、自分の弱さも吐露しながら、頭領として生きていく楊令の姿に、この物語の大きな魅力があるように思います。他の登場人物も強さと同時に弱さも抱えた人間的で魅力ある人物として描かれています。これまでの戦いの中でたくさんの仲間や肉親の死を見てきたことで、誰もがさまざまな心の傷を抱えていることに気づかされます。

これからの戦いの中で、どんな人間模様が描かれていくのでしょうか。戦いそのもの以上に、登場人物の心のありようが気になります。次号の発売が楽しみです。