Robert van der Voerst after Anthony van Dyck - Sir Kenelm Digby, 1636
ケネルン・ディグビィとはどのような男だったのでしょうか。彼には二面性があります。
一つは学者としての顔です。彼は英国学士院の設立メンバーの一人でもあり、1622-1633年にはその評議委員を務めていました。数学者ピエール・ド・フェルマー(1601-1665)との書簡の中にピエールによる無限降下法による数学的証明が残されており、これは注目すべきことです。
王立協会(The Early Publications of the Royal Society)から植物の植生(Discourse on plant vegetation, 1667)に関する本を出すなど植物学者としての顔も持っていました。特に1661年植物の生育に関する論文では、植物の維持に欠かせない物質としての酸素に言及し、この分野では歴史上始めての人物です。しかし、古い時代の影も引きずっており、膨大な時間を占星学と錬金術に費やしています。その中でも注目すべきは、類感力に関するものです。類感呪術に属する考えで、占星術に基づいて作ったパウダーを患部ではなく、傷を与えた部分に塗るとその傷が癒えるというものでした。(この本は29版を重ねるほど評判でした。)この考えは、現在のホメオパシー代替医療につながるもので、一部の人達に盲信されているばかげた考えです。
つづく。