「この国のかたち」的こころ

敬愛する司馬遼太郎さんと小沢昭一さんに少しでも近づきたくて、書きなぐってます。

結婚と離婚と仕事とSEX Ⅶ  ダスティンホフマンには…11

2005年10月05日 22時38分02秒 | 結婚観
 その日、彼女はいつもと少し違っていました。

 「今日はちょっと飲んじゃおうかな。」と彼女が言いました。

 ぼくはそれだけでかなりドキドキしてしまいました。

 なんか分からないけど、彼女の心の状態が少し不安定になっていることが分かりました。
 しかし僕にはその理由が分かりません。

 僕はまさしく恐る恐る聞いたのです。

 「なんかあったの?」

 いままでのケースですと会社の上司に(僕も上司の端くれですが)何事かひどい言葉を言われたときなのです。
 でも彼女は上司を悪し様に言うような人ではありません。

 言われて、それがいけないことだと分かっているのに、上手く出来ない自分に腹を立てているケースがほとんどでした。

 「私ね、ホントに自分のことが嫌になってしまうことがあるの、どうして普通の人みたいにしっかり出来ないんだろう。」と哀しげにうつむいて言うことがあります。

 でもその日は違っていました。

 彼女は彼女のお兄さんに会ってきたのです。

 彼女には2つ上のお兄さんがいます。

 偏差値の高い大学をでていると聞いていました。

 そして、兄は家と、正確には彼女のお父さんと絶縁状態にあることを話してくれました。

 どういういきさつなのか、そしてお父さんとお兄さんの間にどんな経緯があったのか、彼女は話してくれませんでした。
 
 ただ、どちらもかなり頑固な性格で、一歩も譲る気配がないようなのです。

 そして彼等の仲を決定的にしたのは、お兄さんが、年上でバツイチで子供が一人いる女性と結婚したいとお父さんに向かって宣言したことにあるようなのです。

 猛然と反対する父親を説得するのを諦めたお兄さんはそれきり家に寄りつかなくなったそうです。

 ”学歴や家柄じゃなく人をみてほしい”今にして思えばお兄さんはそういいたかったのかもしれません。

 国家官僚の家柄というのが果たしてどんなものか、僕には想像もつかなかったのですが、僕にはお父さんの考えも分かるような気がしていました。

 年上はまだしも、バツイチで、子連れは嫌だなあと、その当時は思っていました。

 恋情のなんたるかを全く知らない、教育的常識の範疇を抜け出せないでいる僕がいました。

 彼女は、外で会うたびに父との和解を促していたようです。
 ただ、和解と言っても、実際には兄の方から歩み寄ることですし、それは何らかの形でお兄さんがお父さんにたいして謝罪する形をとるのですから、お兄さんにとってもできる相談ではなかったと思います。
 彼女もまた、僕と同じように結婚相手については、社会的に兄に相応しい人であるかについては疑問を持っていたようでした。

 「背が小さくてね、とても優しそうで、年齢よりもずっと若く見えるのよ。」
と言っていましたから、実際に会ったことがあるのだろうと思います。

 ただ、お兄さんは優しい人のようですから、お父さんのように「二度とそいつの話をするな。」と怒鳴りつけるようなことはせず、「Y子には迷惑かけちゃうな」と言ってくれるようでした。

 彼女はいつもより少し速いペースでグラスを空けながら、そんな話をしてくれました。

 帰り際、僕らは人通りの絶えた商店街を手を繋いで歩いていました。

 すると彼女が「お父さんも可哀相なのよ。」と突然泣き出しました。

 僕はどうしたらいいのか分かりませんでした。

 握った手を離して、彼女の肩に回すと彼女は彼女の頭が僕に寄りかかるように僕の肩にのりました。

 「ねえ、家族なのにどうして仲良くなれないのかしら、どうして分かり合えないのかしら、だって家族でしょ。二人とも大切な人なのに」と彼女が言いました。

 僕は、しばらく考えて「分かり合えないって、全てじゃないよね。僕は君の全部を知っている訳じゃない。でも君のことが好きだよ。分かり合えるところを積み重ねていけば、距離をおかなくちゃいけないところも、もっと近づけるところもあるはずさ。君の家族だって同じさ。お兄さんもお父さんも全部が全部認め合えないってのは絶対違うとおもうし、君がお兄さんや、お父さんのことを心配してることは、どっちも分かっていることでしょ。対立してるとこを後回しにして、わかり合えるところを積み重ねて行けば良いんじゃないの」というと

 「そんなに簡単にいく相手じゃないの、二人とも」といいました。

 僕は自分で結構良いこと言って内心「決まった!」と思ったりしてたものですから、この反応にはがっかりしました。

 でも涙に震えていた彼女の肩が、違う振動になっているのに気付きました。

 そして彼女はクスクス笑っていました。

 「ほーんっとに頑固なのよ、二人とも、やんなっちゃう」というとひとしきり笑ってました。

 そして、肩越しに僕を見て「あなたも私の大切な人だから」といいました。

 僕の中で何かがはじけたようなきがしました、僕は怒ったような顔をして、彼女を商店のシャッターに押しつけ、二人はぎこちないキスをしました。

 彼女の体が店のシャッターに当たったときかなり大きな音がしましたが、構っていられませんでした。

 その後、僕らはまた手を繋いで歩き出しました。

 「突然、ごめんね」というと

 それには応えず「気持ち悪い」と言いました。


 なんと非道いことをいう人だと一気に落とされた気がしました。

 「飲み過ぎでホントに吐きそう」と言いました。

 みるとかなり顔色が悪そうでした。

 「ごめんね、私、ここからタクシーで帰るから。」というと自分でサッとタクシーを捕まえて乗り込みました。

 タクシーの窓を開けた彼女が、別れ際僕の手をいつもより強く握って、「さっきはありがとう」と言いました。

 ぼくは、さっきってどっち?と聞きたかったのですが、「うん」としか言えず、「じゃあ、また明日」といって別れました。

 時計は12時を回っています。

 僕もタクシーに乗りたくなって、車をつかまえ、「これでいけるところまで行って」とタクシーの運転手に1万円渡して(距離から言えば深夜でも6千円の距離)
高速道路をかなりのスピードで走って家に帰ってきました。

 





 この稿書いてて恥ずかしい…。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おぉ! (かず)
2005-10-06 22:30:25
盛り上がってきましたね~!!



>この稿書いてて恥ずかしい…。



そ、そんなことおっしゃらずに・・・(笑)

楽しみにしてますよ~ん ^ ^
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あ、ありがとうございます (aniki)
2005-10-06 22:53:55
 自分で初めてしまったことですから、せきにんもって終わらせまする。



 つもりです。



 かずさんに励まされたらやるしかないかあ。



 頑張ります。
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来たー!! (mamachari)
2005-10-07 21:13:18
電車男風に言うとこうなるのよね。

続きを報告求む!ちょっと違うかな?
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電車男は (aniki)
2005-10-08 00:01:38
 ハッピイエンドなんですか?



 見てなかったんですよ。



 僕の話の展開はひょっとすると電車男以上かもしれません。
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