4/1 の大阪コンサートに行って来た。今回のツアーのファイナルということで、前から見ておきたい気持ちもあったのだが、私は原則として遠征はしないもので、やめておくつもりだった。しかし、新ユニットのお披露目も加わるとなって、無駄に血が騒いでしまった(^_^;)。「む、これは挑戦だな!挑戦は受けて立つ!」というような。いや、単に行く言い訳が欲しかっただけとも言うが(笑)。
往復とも格安の夜行バスを利用し、3/31 夜に東京を出て、4/2 朝に帰る強行軍。私も若い頃はそれくらいのことは平気だったが、まさか不惑に近くなってまだそういうことをやるとは思わなかった。しかも大阪に着くなり、ネットの使える環境を探して半日こもり、ブログを更新したりファンレターを書いたりして、観光もしなければうまいものも食わないというありさま。まあ今回は観光や食べ歩きが目的じゃないから良いんだが。
15:30 開場のところ、14:30 にはホールのある建物の下にたどり着いてしまったので、とりあえず近くの大阪城に向かって散歩。ゆっくり歩いて天守閣の下まで行ったが、中に入るほどの時間があるはずもなく、引き返すと客の入場が始まっていたので、私も会場に入る。根拠のない印象では、客の半数くらいを見たことがあるような気がした。
わりあい新しく、きれいでゆったりとした良いホール。私は 2 階席の前の方だったので、ステージが良く見えた。正確な記録は取っていないが、10 分弱ほど押して開幕、セットリストは他の会場と一緒だと思う。ステージセットは東京会場とほぼ同じもののように見えた。最初の印象では階段の段数が少ないかも?という気がしたのだが、たぶん気のせいだろう。もしかすると、ステージ部分の天井が東京厚生年金会館より高かったりするのかも知れない。
メンバー宛てのファンレターには、私は今回のツアーは東京にしか行かない、と書いていたので ( 実際、その予定だったので )、握手会かハイタッチの時に急に顔を見せたら、驚いてくれるかな…などと考えていたのだが、そのメンバーには 2 曲目で、あっさり見つけられていたような気がする ( 脳内 )。後の方の曲では指クルも来たし ( 脳内脳内 )。
セットリストは分かっているし、私はすでに個々の曲も知っているので、目新しさはないわけだが、かえってその分、リラックスして楽しめたし、また落ち着いてステージのいろいろを見ることも出来た。ある時は大局的に、ある時は細部を。そして、ああなるほど、ここはこうだったのかと改めて納得できる。そう言えば劇場ではいつも、そういう「繰り返して見ることの意義」を感じながら見続けて来たんだよなあ、と、私にとっては「見る側としての初心」を思い出した気分。
特に今回のツアーに関して言えば、見れば見るほど、あの階段のセットが歌い踊るメンバーにとっていかに過酷な条件かというのが分かる。ホント、1 回見ただけで ( しかも 1 階最後列から )、うかつなことを
言ってしまったのは失敗だった。メンバーの皆さんゴメンナサイ(^_^;)。
自己紹介の前フリで高橋さんからツアーのファイナルであることが告げられ、自己紹介の中でもその点に触れる人がいたほか、チーム K の 1 周年であることがコメントされたり、エイプリルフールネタが出たりして、程良く客席も温まる。メンバーもツアーファイナルということもあってか、力が入っている人が多かったように思う。特に誰ということではなく、それぞれの良さがいろいろな曲のあちこちで見えるといった感じだった。
大島優子さんのソロ「泣きながら微笑んで」は、東京でのコンサートに比べてかなり歌い方、演じ方を工夫していたようで、良くなったと感じた。タイトルにある「泣きながら」の表現を抑え目にして、あえて微笑んで見送る強さを強調した印象で ( それは私の解釈とは違うのだが )、表現に説得力が増して、結果として大きなホールの空間を大島さんのものにできていた感じで、すごく良かった。ついでに言うと、この日の大島さんは、全体曲でもかなり頑張っていたように見えた。いつも言うことだが、大島さんにことのほか厳しい目を向けている私がほめるくらいなので(笑)、かなり良かったと思う。ちなみに、かなりのテンションで飛ばした分、終盤の「花と散れ」ではいつもほどのキレがなかったけれど、私としてはそれで良いと思う。
話をユニットに戻すが、続く星野みちるさんのソロ「ガンバレ!」が、輪をかけて素晴らしかった。星野さんの方は特に何をどう変えているわけではないのだが、声の張りのわずかな違いに、星野さんの思いの強さが感じられるような気がして、1 番が終わった後の間奏で、やっぱり思わず拍手が出たのだが、いつもより強く拍手をしてしまった。たぶんそれは、客席の少なからぬ人に共通した思いだったのではないか。一際大きな拍手に感激したのか、星野さんが 2 番の冒頭で涙してしまい、歌えなくなってしまったのは惜しい点だった。それはそれで感動的な場面ではあったのだが、私としてはどちらかと言えば、しっかり歌い切って欲しかった。星野さんがステージで泣くということ自体、かなり珍しいことのような気がするので「まさか、このツアーでのソロを記念として一区切りなんて言わないよな?」と、ちょっと心配になってしまったから、というのもあるし。
なお、コンサート終盤の MC で、今度は大島優子さんが泣いてしまったのだが、これについて終演後、私の友人 ( もちろん私が大島さんについて厳しいことを言うのを知っている ) が「あれはどうなんだろう、2 ちゃんあたりでは嘘泣きだと叩かれると思うんだけど」と水を向けて来た。確かにあの場面で涙を流す演技くらいは簡単にできる人だと思うが(笑)、私としては、そこまで勘繰らないで良いと感じた。ご本人が語った通り、名古屋・福岡に出られなかったことでプレッシャーもあったのだろうし、もしかするとソロ曲を比較され続けたことへの思いもあったのかも知れない。実際にこの日の大島さんは、各曲で気合が入っているように見えたし、ソロ曲はかなり良かった。泣けばその場の同情票は集まるだろうが、それだけでどうにかなるほど AKB48 の客席は甘くない。メンバーは歌やダンスのパフォーマンスの高さで客席を納得させれば良いのであって、この日の大島さんはそれができていた。だから、本気で泣いたのかどうかなんて、実はどうでも良いのだ ( 繰り返しておくが、私には嘘泣きとは思えなかったので、念のため )。
まあとにかく、コンサートはすごく楽しかった。時間があっという間に過ぎて行く感じだった。良いステージを見ていると、そこまでのプロセス ( たとえば今回だったら大阪までの遠さとか、いつもの劇場公演だったらチケット入手の行列とか ) がどれだけ大変でも全部忘れてしまうもので、まさにこの日は、そういうことがすっかり頭から抜けていた。目の前で繰り広げられるステージに一体化したような気分で、同じ時間と空間と物語を生きていると思えた。東京で見た 3 回よりその思いを強く持てたのは、単にセットリストを知っていることだけが理由ではないと思う。メンバーがこの日のステージにかける思いが、一際強かったからこそ、私たち客席に伝わるものが大きかったのではないだろうか。
そして終演。私個人としては、ファイナルでもあり、ダブルアンコールまたはカーテンコールをかけたい気分だったが、しかしすでに客席側は、この後に“Chocolove from AKB48”ユニットによる楽曲「明日は明日の君が生まれる」のお披露目があることを承知している。実際、幕が下りてすぐに上手袖からマネージャーの野寺さんが姿を見せ、メンバーの着替え時間を稼ぎつつ、ユニット並びに楽曲紹介の MC。ほどなくして準備ができ、再び幕が開く。“Chocolove from AKB48”と「明日は明日の君が生まれる」についての私なりの感想はエントリを分けて述べるが、一口に言うとお披露目での印象はなかなか良かった。客席の反応も概ね良好だったと思う。
そして再び幕が下り、ハイタッチ会へ。私はチーム A へ。2 階席だったので比較的早い順番だったためか、そんなに激しくは流されず、1、2 回軽く肩を押された程度。と言っても全員に「お疲れさま!」と言い、動きが淀んだところではもう一声かけるのがやっとではあるが。幸い中西さんのところでは「ユニット良かったよ!」と言えた。また、私は友人と続いて行ったので、そのことを友人の推しの人に「厄介な連番で来たよ~」と言ってみたのだが、意図が伝わらなかったようで残念(^_^;)。まあ流れもそこそこ速かったし、向こうはこちら 2 人が友人どうしだとは知らないだろうから、仕方ないか(笑)。なお、私は今回、その後のロビー乾杯にも参加することができたのだが、これについては別エントリで。
コンサートが終わって、私は非常に充実した思いで会場を後にできた。ハイタッチやロビー乾杯を抜きにして、コンサートそれ自体で十分に満足でき、大阪まで来た甲斐があったと思えた。そして、一ファンとして正直なことを言うと、あまりにも劇場に慣れ、メンバーを身近に感じ過ぎていたのかなという反省もしたのだった。普通のアイドルとファンの距離感って、これくらいだよなあ、と。遠くから届かない思いを馳せる対象であるからこそ、アイドルという人たちには、何よりも輝く存在であって欲しいのだ。私たちファンは手近に置いて触れるガラス玉が欲しいのではなく、手の届かないダイヤモンドに憧れていたいのだ ( なお、世の中にはダイヤモンドを手にできる人もいる、という指摘に対しては、芥川の「芋粥」を読むようにお勧めしておく。憧憬は自ら設定して楽しむフィクションであり、渇望それ自体を楽しめない人は不幸なのだ )。
かつて土くれの中で鈍く光っているだけの原石だったメンバーたちは、今ではかなり磨かれ、まだダイヤモンドではないかも知れないが、しかしずいぶん輝きを増して来ている。もちろん一ファンとしては、今後も可能な限り AKB48 劇場での公演も続けて欲しいとは思うが、しかしもうそろそろあの劇場だけでなく、いつもの観客だけでなく、もっと多様な機会を通じて、幅広い層の人たちに、その輝きを知ってもらうべき時期が来たのだろうと、実感として思えた。硬度の高い宝石を磨くには、より硬い砥石が求められるように、メンバーたちの輝きを今以上に増していくためには、マスの視線にさらされることが必要な段階に差しかかっているのだと思う。
メンバーにとって、大きなホールでのコンサートは、たぶん良い経験になったことと思う。スケジュールが厳しくなり、結果的に劇場公演が月に 3 回しかなかったことも、今回のコンサートに ( ほぼ ) 全員が出られたことの意義に比べれば、仕方がなかったのだと思っておくことにしたい ( もちろん、同じことを繰り返して欲しくはないが )。ただ、それだけの犠牲 ( ファンにとっても、事務所にとっても、そしてメンバーたち自身にとっても ) を払って実現した「全員でのツアー」の経験を、本当の意味で本人の血肉にしていけるかどうかは、個々のメンバーのこれからの心構えにかかっていると考える。これからまた劇場公演に戻った時に、慣れ親しんだ小さなハコと顔なじみの観客に安心感を覚えて、楽に「こなして」しまうのか。それとも、あの小さな劇場のステージから、はるかに広がる空間をイメージして、1000 人、2000 人という観客に訴えるつもりで演じるのか。その違いが、メンバー個々の力量の差を、ますますつけていくかも知れないし、あるいは逆転させるかも知れないのだ。