プーチンに宣戦布告した故ナワリヌイの妻 :240314情報
先月、北極圏の刑務所で急死したナワリヌイ氏。ロシアのプーチン大統領の最大の政敵で、葬儀の後もモスクワの墓地に献花をする人たちの列が絶えません。
葬儀は、武装警官も含む厳重な警備の中、行われました。数千人以上の支持者および市民がナワリヌイ氏に別れを告げるために二キロ以上の長い列をつくりました。
ナワリヌイ氏の後継者については、妻のユリアさんが今後も夫の遺志を継ぐ考えをしめしています。ただナワリヌイ氏というカリスマ的な指導者を失ったことは反プーチンにとっては大きな打撃となっているようです。。
このあたりの最新の情勢を、北野幸伯氏が以下のように語っています。
◆『獄死したプーチンの政敵ナワリヌイ氏をロシア人はどう思っているか?』(当ブログでは、『ナワリヌイとロシア人』)中で、以下のようなことを書きました。
<インターネット世代はどうでしょうか? こちらは、ナワリヌイ派と反ナワリヌイ派(=クレムリン)で、激しい情報戦が繰り広げられています。 クレムリンの「説」は、なんと「ナワリヌイの死は、【 西側 】に都合がいい」というものです。断言はしていませんが、暗に側の諜報機関がナワリヌイを殺したのだろう」と言っているのです。
どういうロジックでしょうか? クレムリンのロジックはこうです。ナワリヌイが亡くなるまで、西側は追い詰められていた。なぜ?
ォックスニュースの元看板キャスター・タッカーフォカールソンが2月6日、プーチンにインタビューした。それが公開され、プーチンの主張が全世界に広がってしまった。「このままではプーチンの主張が拡散され、
俺たち(西側)の主張のウソがばれてしまう!」と危機感をもった西側の支配者たちがナワリヌイを殺した?
その結果、世界中の注目がナワリヌイの死に集中し、カールソンのインタビューは忘れ去られた。かくして、西側の支配者は、目的を達成したと。〉
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その時も書きましたが、この説の問題点は、「どうやって西側諜報機関が殺せるの?」という点です。ナワリヌイは、ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に収監されていました。どうやって、西シベリア、北極圏に位置するヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に収監されているナワリヌイを暗殺したのでしょうか?
そして、それ(西側諜報による暗殺)を許したとすれば、当局の責任者は、追及され、罰せられるはずです。ところが、当局責任者は、ナワリヌイ死亡直後、逆に昇進しているのです。
『時事』2月20日付。『ナワリヌイ氏担当が昇任=抑圧指揮、陣営は「殺害3日後」と反発─ロシア』
〈ロシアのプーチン大統領は19日付の大統領令で、法務省傘下にある連邦刑執行庁(FSIN)のボヤリネフ第1副長官を「大将」に昇任させた。独立系メディアは20日、ボヤリネフ氏が獄死した反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏に対する抑圧を陣頭指揮していたと報じた。
FSINは16日にナワリヌイ氏の死亡を発表した。同氏の陣営は20日、SNSで「殺害3日後」の昇任と反発。ボヤリネフ氏について「刑務所で拷問を直接監督し、依頼人(プーチン氏)から褒賞を与えられた」と非難した。 〉
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西側諜報による暗殺を許した責任者なら、昇進するはずがないでしょう? ですが、「プーチンからの指令を完遂してナワリヌイを葬った」ということなら、「ミッション完遂ご苦労!」ということで昇進する可能性はあるでしょう。
ところで私は、クレムリンの意向に沿って、「西側がナワリヌイを殺した説を流布する人が日本でもでてくるだろう」と書いていました。そしたら、予想通りボチボチ出てきていますね。フェイク情報に踊らされないよう、ご注意ください。
▼故ナワリヌイの妻が、プーチンに宣戦布告
さて、夫が獄死したユリア・ナワルナヤさん。2月19日、プーチンに宣戦布告しました。スピーチ全文訳を掲載させていただきます。私は28年モスクワに住んでいたので、当然ロシア語はわかります。しかし、翻訳のプロではないので、多少おかしなところがあるかもしれません。あらかじめご了承ください。
以下、ユリア・ナワルナヤさんの声明です。
〈「私は、アレクセイ・ナワリヌイの使命を続けます」「こんにちは。ユリア・ナワルナヤです。今日、このチャンネルで初めて皆さんに呼びかけたいと思います。私は、この場所にいるべきではありませんでした。私はこのビデオを録るべきではありませんでした。私の代わりに他の人がいるべきですが、その人を殺したのはウラジーミル・プーチンです。
3日前、ウラジーミル・プーチンは私の夫であるアレクセイ・ナワリヌイを殺しました。プーチンは私の子供たちの父親を殺し、私の最も大切なもの、最も親しい人、最も愛していた人を奪いました。そして、プーチンはあなたたちからもナワリヌイを奪いました。
どこか極北の刑務所、北極圏の永遠の冬の中で、プーチンは、ただアレクセイ・ナワリヌイを殺したのではありません。プーチンは、彼と一緒に私たちの希望、自由、未来を殺そうとしたのです。ロシアが別の国になり得ること、私たちが強いこと、勇敢であること、私たちが信じ、必死に戦っていること、他の生き方をしたいこと願っていることの、最高の証拠を破壊し、無効にしようとしたのです。
これまでずっと、私はアレクセイのそばにいました。選挙、デモ、自宅軟禁、家宅捜索、拘束、刑務所、毒殺、再びデモ、拘束、そして再び刑務所。これが私たちの最後の出会い、2022年2月の中旬、私たちの最後の写真です。
ちょうど2年後、プーチンが彼を殺しました。私は、いつもアレクセイのそばにいました。彼を支えること、彼のそばにいることが幸せでした。しかし、私は今日、あなたたちのそばにいたいのです。なぜなら、あなたたちも私と同じくらい多くの物を失ったことを知っているからです。
アレクセイは3年間の苦痛と拷問の後、刑務所で亡くなりました。彼は、他の人たちのように、ただ(刑務所に)いただけではありません。
彼は拷問され、独房に入れられました。コンクリートの箱の中に。想像してください。それは、6または7平方メートルの部屋です。中には台、流し台、トイレの代わりに床に穴があり、壁に固定されたベッドしかありません。マグカップ、本(1冊)、歯ブラシ、それ以上のものはありませんでした。数百日間。(彼らは)ナワリヌイを侮辱し、世界から切り離し、私や子供たちに手紙を書くためのペンと紙を与えませんでした。
彼は飢えに苦しんでいました。3年間の飢えです。しかし、彼は決して降伏しませんでした。彼はいつも私たちを支えてくれました。励まし、笑い、冗談を言い、勇気づけてくれました。彼が何のために戦っているのか、何のために苦しんでいるのか、彼はひと時も疑いませんでした。私の夫は折れない男でした。
だからこそ、プーチンが彼を殺したのです。恥ずべきことに、(プーチンは)臆病で、ナワリヌイの目を見ることも、彼の名前を呼ぶことすらできませんでした。そして今、彼らは同じく卑怯で残忍にナワリヌイの遺体を隠し、彼の母親に見せず、返さず、残忍に嘘をつき、プーチンのノビチョク(註:化学兵器)の痕跡が消えるのを待っています。
私たちは、プーチンがなぜ3日前にアレクセイを殺したのか、その具体的な理由を知っています。すぐにお伝えします。そして、誰がどのようにこの犯罪を犯したのかを必ず知るでしょう。我々は名前を挙げ、顔を明らかにします。しかし、最も重要なこと、私たちにできることは、アレクセイと自分自身のためにも、
闘いを続けることです。
これまで以上に、勇敢に、怒りを込めて。これ以上できないように思えるかもしれませんが、もっとやらなければなりません。私たちは皆一丸となり、この狂気の政権に対して強力な一撃を与えなければなりません。プーチンに、彼の友人たちに、制服を着たギャングに、私たちの国を破壊した泥棒や殺人犯に。
私は知っていますし、感じています、あなたが内面で抱えている疑問があることを。なぜ彼(ナワリヌイ)は(モスクワに)戻ったのか? なぜ彼は自らの命を危険にさらし、彼を一度殺そうとした人々の手に飛び込んだのか? なぜそのような犠牲を払ったのか?
結局のところ、彼は平穏に暮らし、自分や家族のことに専念できたはずです。黙って生き、調査せず、演説せず、戦わずに済んだはずです。彼にはそうすることができませんでした。アレクセイは世界で最もロシアを愛していました。
彼は、私たちの国を、あなたたちを愛していました。彼は私たち、私たちの力、私たちの未来、私たちがより良いものに値すると信じていました。彼はそれを言葉だけでなく、行動で信じていました。
彼はそれほど深く、誠実に信じていました。彼はそのために自分の命を捧げる覚悟がありました。彼の大きな愛があれば、彼の使命を続けることができます。必要なだけ長く。アレクセイがしたように、同じように激しく、勇敢に。
皆さんは今、その力をどこで見つけるのか? どうやって生きていくか?と考えているでしょう。私たちはその力を、彼の思い出、彼のアイデア、彼の考え、私たちに対する絶え間ない信念から得るでしょう。
私は、自分の力をまさにそこから見つけるつもりです。アレクセイを殺したことで、プーチンは私の半分、私の心の半分、私の魂の半分を奪いました。しかし、私には残りの半分があり、それは私に降伏する権利はないと教えてくれます。
私はアレクセイ・ナワリヌイの使命を続けます。私たちとあなたたちの国を守るために戦い続けます。
そして、あなたたちが私と共に立つように呼びかけます。私たちを取り巻く悲しみや絶え間ない苦しみを分かち合いましょう。
私はあなたたちと共に怒りを分かち合うようにお願いします。怒り、憤り、私たちの未来を奪った者たちへの憎しみ。私はアレクセイの言葉であなたに訴えます。私はこの言葉を強く信じています。「少ししか行動しないことが恥ずかしいのではない。何も行動しないことが恥ずかしいのだ。自分が脅されること許すのが恥ずかしいのだ。」
戦争、汚職、不正に対して闘うために、私たちはすべての機会を利用する必要があります。公正な選挙と言論の自由を求めて戦います。私たちの国を取り戻すために戦います。
ロシアは自由で、平和で、幸せな国。これは私の夫が夢見た未来の美しいロシアです。それが私たちに必要なものです。私はそのようなロシアで生きたいと思っています。
私は私たちとアレクセイの子供たちがそこに住むことを望んでいます。私はあなたたちと一緒に、アレクセイ・ナワリヌイが想像したような、尊厳、正義、愛に満ちたロシアを築きたいと思います。それ以外にありません。
彼がもたらした考えられない犠牲は無駄になることはありません。戦い続け、降伏しないでください。私は恐れません。そしてあなたも恐れないでください。〉
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ユリア・ナワルナヤさんの声明を読み、あなたは何を感じましたか?
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