赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

2024年は危ない——米国経済が抱える5つの不安要素

2024-03-04 00:00:00 | 政治見解



2024年は危ない——米国経済が抱える5つの不安要素:240304情報


米国株、日本株ともにアゲアゲのようですが、とある専門家筋より次のような警告が来ました。

「他人が貪欲になっているときは恐る恐る、周りが怖がっている時は貪欲に」by ウォーレン・バフェット

今、多くの投資家は極めて「貪欲」になっています。実際、これは投資家心理を表した「恐怖貪欲指数」です。この指標が75を超えている時、それは投資家が極めて「貪欲」であることを意味しています。現在の数値は78。
これは大部分の投資家が非常に強気な見方を持ち、株を“買っている”ということです。ですが今、本当に「貪欲」でいて良いのでしょうか?

心理ではなく“データ”を見れば、株式市場のリスクが大きくなっていることが分かります。実際、2024年2月には日本、イギリスが景気後退に入ったと報道。ドイツ、オーストラリアもまた不況入り間近とされています。
そして過去の傾向を見るに、景気後退は他の先進国へと伝染していく傾向にあります。さらに景気後退が訪れれば、株価は平均して32%下落。1,000万円が680万円になってしまう可能性があるのです。(以下略)


この辺はどう考えるべきなのか、国際経済の専門家にお話を伺いました。


結論から言うと、今年のアメリカ株は、これ以上そこまで大きく上昇することはないでしょう。下手をすると、かなり思い切った下落をする可能性も十分にあるので慎重に構えた方がいいと思います。

これは前から申し上げているように、非常に価値のある株であり、かつ配当金の高い安定成長の企業の株なので、これが下がったときは「買い」であるというのが私の判断です。

しかし、全体としてこのまま調子良くどんどん上がっていくことにはならないでしょう。年明け早々、S&P500もダウ工業平均も史上最高値を更新しましたので、気を良くしている方もいらっしゃると思うのですが、ここは慎重に構えた方がいいと私は考えています。

その理由の第1にマグニフィセントセブンと言われている株に株価時価総額が非常に集中してしまっていて、これは非常に危険な兆候です。このマグニフィセントセブンというのは、Apple、Amazon、アルファベット(Googleの親会社)、Meta、Microsoft、NVIDIA、テスラといった七つの巨大企業です。AIブームも手伝って、この7社の時価総額が昨今で跳上がっています。7社の時価総額だけで12兆ドルです。

これは日本、イギリス、カナダの株価時価総額を合わせたものと同じくらいの大きさですので、物凄い大きさだと理解できるでしょう。S&P500で見ますと、ITセクターだけで株価時価総額が30%を占めています。

これは行き過ぎで、通信サービスセクターを含めると37%になるのです。過去の事例ですと、1999年から2000年にかけてIT(ドットコム)バブルというのがはじけたわけですが、ITセクターがS&P500の株価時価総額に占める比率は35%まで拡大していました。

その後、急落して、それでもいいと言われたのですけど、その中で実際役に立つビジネスとして定着するようなテクノロジーと、ペーパーカンパニーのような感じで「こういうアイディアがある」と言うだけで、値上がりしていた企業がありました。

それの本物と偽物の区別がはっきりついたときにIT(ドットコム)バブルが崩壊したのです。今で言うと、AI(Artificial Intelligence)がブームになっていますけど、AIで語られている中にも実際にそれがビジネス社会に応用されてお金を生み出すテクノロジーと、話しだけの将来このようになったらいいという思惑だけで栄えているAI関係の企業やアイディアもあります。その識別や振るい落としが起きるのが今年か来年くらいではないでしょうか。そういうところでも危険を感じます。

それから2008年にリーマン・ショックがありましたけど、2007年に金融セクターの占める比率がS&P500の中で25%になりました。これも金融セクターだけで25%というのは歴史的にも異常だったのです。そしたら、翌年になってリーマン・ショックが起きたということで、この辺りの1業種に株価時価総額の占める比率が非常に大きくなってしまうのは問題だと思います。

これはバランスよく取れていた方が安定しているのです。また、株の所有が一部の富裕層に集中してしまっていても、それ自体が株価を引き上げるわけではありません。しかし、富が一部に集中するということはどういうことかというと、大衆市場の消費が低迷するのです。幅広い多くの大衆がお金を持ってないと、国内の消費はうまく拡大しないのです。

アメリカでは70%が個人消費ですから、大衆がお金を持っていた方がいいという事になります。その意味で貧富の差はあってもいいのですが、あまり極端になってくると資本主義の市場経済そのものの成長を妨げてしまうのです。

アメリカでは上位10%の人の富裕層が所有する株式と投資信託の比率が20年前は77%だったのですが、2022年には上位10%の富裕層が持つ株式と投資信託の所有率が92.5%になっています。つまり15.5%も増えたというので、上位層への富の集中はあまり健全なこととは言えません。

アメリカの人口の61%が401kの仕組みを利用して株式を保有しているのですが、この人たちが持っている量は非常に少ないです。今年の大統領選挙で一つの見方をすると、大衆資本主義を守って発展させようとするトランプに対して、一部富裕層への富の集中を促進しているバイデン政権との戦いでもあるということが言えます。

グローバルエリート層に支えられているバイデン政権と、国民の下層の中産階級による支持を受けて、アメリカ国民ファーストの経済政策をやろうとしているトランプの戦いであるということも言えるわけです。10%の富裕層が株式の9割以上を持っているといった状況は、1929年の世界大不況の直前にも見られた現象であるため、あまり良い現象ではありません。今、株価が上がっていると言いながら急落してしまう危険性があるということです。

3番目は連邦政府の借金の急拡大です。これが鰻上りになっていて表向きの理由の一つは、パンデミックの武漢コロナがあったからだと言っています。その後のウクライナ戦争により、膨大な戦費をアメリカがウクライナに与えました。これが去年の末に34兆ドルを超えたのです。2020年に武漢コロナウイルスが広がり始めたときはトランプ政権でしたけど、政権末期の債務残高は23兆ドルくらいでした。

それから10兆ドル以上増えているというのは凄いことです。それと政府税収に占める利払い費の割合が36%に跳ね上がっています。リーマン・ショックの直後に33%まで上がっていたのですが、トランプ時代は良かったから下がっていました。しかし、それが36%まで一気に上がっているのです。

トランプ時代は経済が良かったから税収に占める利払い費の割合は順調に減っていました。これは新しい私のレポートの1月号で出ているグラフでも明らかですけど、過去最大であったときは51%に達したことが2回もあったのです。現在36%まで上がって、このまま放漫財政が続くと51%に到達するのも、そこまで先のことではありません。

この51%を超えたら財政危機ということになって、下院は共和党が多いですから予算を占めるでしょうけど、債券市場の方も警戒して金利が上がっていくでしょう。これはFRBが抑えようと思っても、これだけ政府の累積債務が34兆ドルという未曾有のレベルまで到達し、税収に占める利払い費が史上最高だった51%を超えてしまったら、金利も上がらざるを得ません。

FRBの方としては、このまま順調にいけば年の後半には金利は引き下げたいと思っています。パウエルは確実に、そのように思っているのです。

一方で、バイデン政権は放漫財政を続けています。マクロ経済的に言うと、経済政策で大事なのは中央銀行の金融政策と、行政府の方の財政政策によってどれだけのお金が入ってきて、どれだけのお金を支出するかという歳入・歳出が非常に大事です。

この二つの要素で決まってくるわけですから、放漫財政をやっていると政府が借金をしてもお金をどんどん使うので、その分が民間に出回ってしまいます。そしたら、インフレは収まらないし、FRBだけの責任ではありません。これは政府の財政政策も締めてもらわないといけないのですが、そのようなことはどこ吹く風であり、バイデン政権は伝統的な民主党政権の悪い習慣に戻ってしまって、お金を次々と使ってばら撒き政策をやっているのです。

そうすると、お金が民間に出回ってしまいますから、インフレは収まりません。FRBのパウエルとしても金利は下げて景気を良くしたいと思っているけど、このままではインフレが再燃してしまうので下げられないというスタンスです。

日本でもアメリカでも経済ジャーナリズムは、FRBの政策とインフレの収束、あるいはインフレの再発のことだけを論じられています。これは計画経済でも共産主義経済でもないわけですから、FRBだけでコントロールできるわけではありません。一方で政府がどれだけのお金を使うか、どれだけの借金を積み上げてしまうのか、どれだけの借金を減らして健全財政にして支出を抑えていくのか、これらが大事です。

支出を抑えないといけないときに、ばら撒き政策をやっているから、なかなかインフレが収まらないという事にもなってしまいます。そして、政府の借金が、どんどん大きくなっていくということで、金利も上がらざるを得ません。

これはFRBの責任というより、市場において借金する側が多くて、実際に出回っているお金が多くなければ金利も上がっていかざるを得ないです。そういう矛盾を今のアメリカ経済は抱えています。だから、政府の無責任なバイデン政権による債務の拡大も非常に悪い条件です。

4番目にバフェットインデックス(指数)というものがあります。これはバフェット指数が危険水域になって入っているということですが、アメリカの株価時価総額とGDPの比率を表したものです。アメリカの株価時価総額を年間の国内総生産で割ったものがバフェット指数と言われているもので80%前後が平均とされてきています。

これが100を超えて大きく上昇しますと、その後、一気に下がるということが今まで繰り返されてきました。私のレポートの31ページにも出ていますけど、これによると2000年のときと2007年のときにピークをつけています。2007年のときは、そこから下がって翌年のリーマン・ショックに結びつき、2000年のときはドットコムバブル(ITバブル)の崩壊です。

これが結構上がってきていて、2024年2月上旬で176.71となっていて、グラフを見ていただいてもわかるように異常な高さになってきています。これは、もっと下がってもおかしくありません。そろそろ下がってもおかしくないのではないでしょうか。200近くまで行ってきたのが、今のところ少々下がって、また上がっているという状況です。これから見てもアメリカの株式相場全体のバランスから言うと、危険水域に入っています。

最後の5番目は金利引き下げへの過剰期待ということです。金利に関してパウエルとしてはインフレが収まれば下げたいのですが、バイデン政権が勝手に放漫財政を続けていますので、共和党主流の下院がどうにかそれを止めようとしています。

しかし、民主党と共和党の議席差は僅かなものですから、そこまで大きなことができるわけではありません。やはり、妥協の産物です。放漫財政を連邦政府が続けている限りは、金利を下げたいと思ってもパウエルFRB議長は簡単に下げることができません。

ここのところの経済の動きや雇用統計を見ても結構経済は強いです。まだ、インフレが強いと言って良いでしょう。そうしますと、これはなかなか止められません。市場はFRBの金利下げに対して過剰期待であるということが一つあります。もう一つは、この50年くらいの間に金利が上がって下がったという非常に大きなサイクルが9回くらいあったのですが、そのうちの7回は株価が下がっているのです。

つまり、金利を下げたことによって株価が上がったのは、9回のうち2回しかありません。これは株式市場の分析家の方はご存知だと思うのですが、今のアメリカの市場はFRBが金利さえ下げてくれたら、株価は順調に推移するというのが歴史的に言うと間違った期待であると言えるのです。

3番目として、現在の金利はそこまで高いのかというと、FF金利(フェデラルファンドレート)の誘導レンジはFRBが言っているところは5.25%から5.50%を目標にしています。1954年以来、約70年のFF金利の平均は4.60%です。これと0.6%から0.9%くらい高いということで、今の金利水準はそこまで高いわけではありません。だから、1%弱下げても平均金利になるだけですから、今程度の金利のレベルに耐えられない株式相場は非常に脆弱であり骨太の株価上昇ではないです。中身のない株価上昇であるということが言えます。

健全な株価上昇であれば、このくらいの金利レベルには耐えられて然るべきです。もっと下げてもらわないと、株価が上がらないという考え方自身が私は間違ったパーセクションだと思います。

なぜ間違ったパッションなのかというと、この20年来、金利がものすごく低かったからです。これはやむを得ないところもあって、2008年のリーマン・ショックで大不況になったらいけないというので権利を非常に下げました。そこからテーパリングというので徐々にノーマルな上昇に戻そうと思ったら、2020年の武漢コロナのパンデミックが起きて、経済を支えるために金利を一気に引き下げたのです。

そこで今度いよいよノーマル化しようとして、徐々に上げてきています。それも歴史的に見れば、極めて低いレベルということです。特にこの10年間で我々は金利の低い時代に慣れすぎてしまいました。2000年のITバブル崩壊のときに一気に下げています。

それから、ちょっとは上げましたけどFFの5%くらいでした。それからまたリーマン・ショックがあって、急落させたということで、特にこの10年は我々の目が超低金利に慣れてしまったのです。だからこそ、もっと下げろと言うのですけど、歴史的なレベルからすると、そこまで高いレベルではありません。

この金利下げによって株価が上昇すると言って、過剰に期待するのは間違っていると思います。以上のような五つの理由で、私は今年のアメリカ株は総体として見てみればあまり期待しない方が良いでしょう。しかし、株価が下がったときは優良株の買い時です。これは念を押しておきたいと思います。



お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz
ng>