赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

英国の衰退を象徴する英シェルと海軍の没落

2024-03-11 00:00:00 | 政治見解



英国の衰退を象徴する英シェルと海軍の没落 :240311情報


かつて世界を制覇した大英帝国も今や落日。その象徴たるシェルと英海軍の衰退について、国際政治学者が以下のように解説しています。


英国ネイビーの没落ということですけど、かつては世界の海を支配した英国海軍も今や哀れな状況になっています。ファイナンシャルタイムズ(FT)の2月3日の記事に出ていたのですが、1998年と2024年の今を比べると小型空母が3隻あったのが大型空母2隻になったのは良かったと書いてあります。

しかし、2隻あるうちの1隻が常に故障中で修理中という状況です。これがエリザベス2世という名前のものと、プリンス・オブ・ウェールズいう名前の主力空母となっています。フリゲート艦といって駆逐艦より大きくて巡洋艦よりは小さいクラスの船だと思いますが、いわゆる戦艦です。フリゲート艦は1998年に23隻だったのが、今や6隻しかないという現状になっています。

また、駆逐艦は潜水艦を駆逐する小型艦ですが、これが1998年に12隻あったのが今や3隻しかありません。実は12隻あるものの設計ミスや修理中などで実戦配備できるのは3隻しかないということです。

それと戦略核ミサイルを積んだ戦略潜水艦は1998年に3隻ありましたが、2024年時点で4隻あります。また、攻撃型の潜水艦は1998年に12隻ありましたが、今は6隻しかないということです。しかも、2月4日付のFTの記事を見ますと、空母のクイーンエリザベス号がNATOの演習に参加するために出航していったのですが、プロペラの故障で動かなくなり不参加となりました。

それで代わりにプリンス・オブ・ウェールズ号が参加することになったのですが、これは2022年8月に出港後すぐ動けなくなってドックで修繕していた空母を代わりに出すことにしたということです。英国海軍も駄目だけど、日本としては他に連携すべきオーストラリア、フランス、スペイン、イタリアでも海軍の人手不足がひどいと言われています。

このクイーン・エリザベス号がNATO軍の軍事演習に出ていく予定だったのですが、これは冷戦終結後最大のNATOの海軍の軍事演習でした。それでクイーン・エリザベス号が出てくるはずだったのですが、故障して駄目になったために長期間ドックで修理していたプリンス・オブ・ウェールズを代わりに出されるということで、どちらか一方が常に故障して動けない状態です。

2024年3月にノルウェーの北極沿岸で行なわれる軍事演習で、NATOの海軍軍事演習として冷戦終結後最大のもので24カ国から40隻超の軍艦が参加するものです。その連合艦隊の旗艦(フラグシップ)になるはずのイギリス空母がこの有様であります。

イギリス海軍は最近、東アジアにも出てきて、日本やオーストラリア、アメリカと協力してチャイナの脅威に対抗すると言っていましたけど、とても頼れるような海軍ではありません。その辺りをかつてのイギリスというイメージで今のイギリスを見ていると判断を誤ってしまうと思います。

イギリスはEUを脱退したけどNATOメンバーではあるので、フルでやっていくときに海軍があるからということで、ロシアの脅威に関しても中東あたりまでイギリス海軍の力があるからしっかりと防衛できるなら良いでしょう。そうすると、アメリカの方も、より多くの軍事力を太平洋の方と東アジアの方に注力できます。

また、第7艦隊も中東の方までスイングしなくても、安心して西太平洋・東アジアの安定に寄与できるということです。しかし、イギリスが崩れ出すとアメリカの力が分散して、中東の辺りまで行かないといけなくなるので、東アジアの方がお留守になってしまいます。我々にとっても大きな問題です。

もはやイギリス海軍には東アジアまで出てくれる力がないと思っています。そういうことを前提として、日本の海軍は大軍拡をやらないといけないのではないでしょうか。まずは英国海軍の没落ということです。

この英国海軍は燃料の調達をイギリスのシェルという会社に依頼しています。2月1日にシェルが発表した2023年10〜12月期(第4四半期)の決算は、純利益が前年同期比95%マイナスです。一応黒字ですけど、4億7,400万ドル(約700億円)でした。売上高は22%減という状況になっています。シェルはドル箱の事業を売らないといけないようになってきているのです。

シェルはシンガポールに製油所と化学工場を持っているのですけど、ここが昨年の10〜12月期に大損を出しました。金額にして45億ドル(約6,500億円)の損を出したということです。この石油化学工場がエチレン工場であり、化石燃料への逆風が強まるのでシェルはシンガポールの資産の売却を検討しています。

しかも、チャイナ国有の中国海洋石油に売ってしまおうとの話をしているようです。本来であれば、製油所は儲かるところですが、エチレンプラント製油所の売却をシェルが考えています。それからシェルにとって非常に大事なナイジェリアの油田の話もあるのです。

ナイジェリアの油田というのはシェルにとってのドル箱でした。アフリカの中でもイギリスから比較的近くにありました。ナイジェリアというのは、アフリカの数ある国の中でもイギリスの影響で一番近代化が進んだ国の一つとも言われています。

また、シェルにとってありがたいのは、とにかく生産コストがものすごく安い原油だったことです。生産コストが安い原油ということは売れば必ず儲かります。一番儲かるところだったのですけど、ここも売り出そうとしているのです。

ナイジェリアの油田を手放してしまうと、本当のドル箱を手放すことになるでしょう。シェルはナイジェリアの陸上油田を13億ドルで売却することで合意しました。このことをFTが1月16日に伝えています。かつてはロイヤル・ダッチシェルと呼ばれていたのですが、この会社がなくなって2022年1月にはオランダとの縁を全て切って、イギリスのシェルという会社になりました。

本社もオランダだったのですけど、全てイギリスにあるということです。拠点を移転しただけではなく社名も変更しました。オランダとの縁は全て切れているということです。オランダにエネコという会社があり、これは三菱商事と中部電力が持っている会社ですが、オランダ有数の電力ガス会社であります。オランダやベルギー、ドイツで600万件の契約を持っていて、契約総数のシェアはオランダで2位、ベルギーでは3位となっているところです。オランダのエネコという会社は実際上日本の子会社ですが、ここもロイヤル・ダッチシェルと洋上風力で組んでいたのですが、そこと縁を切ってノルウェーのエクイノール社と組むことにしました。そもそも洋上風力は儲からないから、それほど大きな話題ではないかもしれません。

オランダ第2位の電力会社であるエネコが自国内の洋上風力事業で長年のパートナーだったダッチシェルとの関係を絶った代わりに、ノルウェーのエクイノール社と組むことになったということです。このエネコは三菱商事が80%、中部電力が20%を出資する共同出資会社が持っているということです。このシェル曰く、これからは水素エネルギー、脱石油、脱天然ガスと言っているのですが、カリフォルニアで持っていた乗用車向けの水素ステーションを全て閉鎖すると発表しました。シェルの没落が激しくなっていて、本来儲かるべき今の資産をどんどん切り売りしているように見えます。

「売り家と唐様で書く三代目」という川柳がありますけど、ご先祖が稼いできたドル箱の事業をどんどん売り払っているのです。私はシェルの基本方針が間違っていると思うのです。

シェルは脱石油、CO2コントロール、地球温暖化、脱二酸化炭素、CO2カーボンニュートラルをやるから、古い石油や天然ガス事業を売り払っているのでしょう。今とは違う方向として太陽光、風力、洋上風力へと進む方が正しいという間違ったことを言っています。それは儲からない方向であるというのが私の感想です。

それに対してエクソンモービルは、今後も天然ガス、石油は継続的に大事であると言っています。表向きにCO2温暖化の否定はしていませんが、エクソンモービルは手堅い手を打っているということです。実際、アメリカにおける天然ガスの生産量と原油の生産量が去年は史上最高でした。

今年もその最高の生産量を2025年も上回るだろうと予測されています。脱炭素化は間違った方向というのをエクソンモービルの方は表向きに言わないけど理解しているでしょう。それに対してシェルの方はわかってないということです。典型的な3代目経営に陥ってしまっているのではないでしょうか。




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