赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

国際平和は多様性を認めることから始まる

2015-04-27 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(17)

国際平和は多様性を認めることから始まる





グローバル・スタンダードは存在しない

これまで大きな世界大戦を二度経ても国際社会に平和が訪れなかった理由は、国際社会がそれぞれの多様性を認めず、「一つの思想」や「一つの基準」に統一しようとする考えを「正義」としたことにあったからではないでしょうか。戦後70年経ったいまでもその傾向は続いているように思います。

とくに、戦後の国際社会は、アメリカとソ連という二大国によって支配されていたといっても過言ではありません。アメリカは自由主義と民主主義を世界に植えつけようとし、ソ連は社会主義を世界に植えつけようとしました。そのせめぎあいが代理戦争のような形になり、世界各地でさまざまな紛争が巻き起こりました。

ソ連が崩壊した後は、アメリカによるグローバル・スタンダードと称されるアメリカン・スタンダードを国際基準にしようとする動きがあらわになりました。しかし、それがイスラム社会や独裁政権下にある国家の反発を招き、テロリズムを活発化させる原因ともなっています。

一方、日本の援助などで急激に工業化した中国は、21世紀になって覇権主義の色を強め、「中国の基準」を国際社会に押し付けるようになりました。他国への経済的支援の形をとりながら、実質的には中国の利益のために開発を援助するもので、アジア・アフリカ諸国に対する新植民地主義といわれています。

現在、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)も、その本質が懸念されており【※1】、前途は多難【※2】と見られています。中国も、アメリカがイスラム社会で反発されている理由を学んで、対外政策の教訓としてはいかがでしょうか。

【※1】安倍総理はAIIBの本質を「悪い高利貸からお金を借りた企業は、その場しのぎとしても未来を失ってしまう」と述べた。

【※2】中国は覇権確立のため、当初は太平洋支配を狙っていたがアメリカによって阻止され、現在はシルクロード経由でユーラシア進出を目差しているが、ロシアがこれを阻もうとしている。



『共生』の意味

歴史を見るとわかるのですが、こうした「一つの思想」や「一つの基準」に統一しようとする考え方は、多様な人種や民族、宗教、慣習の違いが存在する国際社会には馴染みません。どの国も、どの人びとも反発するものでしかないのです。人には思想の自由があると同時に、考え方を強制されることを好みません。また、いかなる国も国家主権を蹂躙されることには抵抗するものなのです。

本年(2015)4月22日にインドネシア・ジャカルタで行われたバンドン会議(アジア・アフリカ会議)の60周年記念首脳会議において、安倍総理の「Unity in diversity ~共に平和と繁栄を築く」の演説内容【※3】には特に注目したいと思います。

【※3】【一部引用】:共に生きる――古来、アジア・アフリカから、多くの思想や宗教が生まれ、世界へと伝播していった。多様性を認め合う、寛容の精神は、私たちが誇るべき共有財産であります。その精神の下、戦後、日本の国際社会への復帰を後押ししてくれたのも、アジア、アフリカの友人たちでありました。この場を借りて、心から、感謝します。

私たちの国々は、政治体制も、経済発展レベルも、文化や社会の有り様も、多様です。しかし、60年前、スカルノ大統領は、各国の代表団に、こう呼び掛けました。私たちが結束している限り、多様性はなんらの障害にもならないはずだ、と。・・・



共生を阻むもの

ところで、「共生の思想」と相容れない考え方があります。意外なことかもしれませんが宗教の世界観です。例えばキリスト教です。

なぜ、キリスト教が共生の思想を阻むのかといえば、「キリスト教以外のすべての宗教は異端である」と排除するからです。これは、カトリックもプロテスタントでも例外ではありません。キリスト教徒同士では寛容の精神はあるものの、異教徒には極めて非寛容なのです。この精神が十字軍となって同じ預言者を戴くイスラム教世界との対立を生み、さらには、西欧列強の植民地主義の先兵となったのです。キリスト教にとっては、異教徒は、征服されて改宗されるべき存在にすぎなかったからです。

また、西欧の考え方の基本は、自分と他人を明確に峻別し、比較し、優劣を競い合うというものでした。「弱肉強食」、「優勝劣敗」という考え方が基本にあります。これが差別を生み出し、排他主義の元凶となり、さらには搾取と支配、抑圧の関係を正当化し、紛争を引き起こす要因になっていました。ただし、その事実を日本人は見失いがちになっています。日本は西欧に追いつくために西洋近代の発想を取り入れましたので、自と他の峻別を自明の理として捉えるようになっているからです。

したがって、国際社会を調和させ、人びとが真に共生するためには、これまでの国際秩序を形成してきた西欧社会が、物事の考え方を真っ先に変革しなければならないことは明らかです。また、西欧文明の支柱であるキリスト教も原点に立ち返って、「博愛と寛容」の宗教に立ち戻らねばならないのです。


異質を排除しないことが平和と調和をもたらす

不調和な世界は「自と他が違う」というところから始まります。従って、調和の世界に至るのは、不調和な世界と真逆の、「違う」ということを「認め合うこと」からはじめねばなりません。すなわち、「違う」ということに寛容であらねばならないのです。
聖徳太子の十七条憲法の第十条にこのような言葉があります。

(現代語訳):十にいう。心の中の憤りをなくし、憤りを表情にださぬようにし、ほかの人が自分とことなったことをしても怒ってはならない。人それぞれに考えがあり、それぞれに自分がこれだと思うことがある。相手がこれこそといっても自分はよくないと思うし、自分がこれこそと思っても相手はよくないとする。自分はかならず聖人で、相手がかならず愚かだというわけではない。皆ともに凡人なのだ。そもそもこれがよいとかよくないとか、だれがさだめうるのだろう。おたがいだれも賢くもあり愚かでもある。・・・

この精神が「和を以って貴しとなす」の具体的な行動指針になるのではないでしょうか。

現在の国際社会は紛争や戦争の原因は、「違う」ということをもって、違う人を排除して「富」を独占しようとする自己中心主義、利己主義にあります。これは、アメリカを筆頭に、中国も、ロシアも、そしてEU諸国も、お隣の韓国も、そして、殆どの国がその考え方に毒されています。日本にもその考え方がないとはいえません。日本の左右両翼には排他主義が存在します。この考えがある限り、いつまでたっても世界が調和に至るはずもありません。中には、違うことを排除することが、愛国主義だと錯覚している国や人びとも存在します。真の愛国心とは、自分の国を愛するように他の国をも尊重する心なのです。「違う」ことを排除しないのです。

現代社会の「違う」ことをもって比較し殊更、優劣をつけようとする考え方は前世紀の遺物にしなければならないと思います。口先だけの世界平和ではなく、本気の世界平和を望むなら、まず私たち自身が「違う」ことを認め、寛容になっていくことからはじめねばならないのです。


ところで、4月29日には、安倍総理がアメリカ上下両院合同議会で演説を行います。アメリカ議会での演説は54年前の1951年、当時の池田勇人総理以来のことです。また、上下両院合同会議の演説は日本の歴代総理では初めてのことでもあります。アーミテージ元国防副長官も「これは米国人に対してだけの演説ではない。世界に向けた演説だ」と歴史的意義を語っています。

ここでは、バンドン会議における「共に生きる、共に立ち向かう、共に豊かになる」という演説をふまえた「日本の決意」が示され、それが国際社会の新しい価値観の提起になることを期待しています。



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21世紀の官僚論

2015-04-21 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(16)

21世紀の官僚論




大きく変貌する国際社会と日本の役割

産業革命以前の富の源泉は農業でした。近代西欧諸国は農産品を求め、アジア・アフリカの土地を奪い合うように開拓しました。それが植民地主義を生み出しました。そして、産業革命以降から20世紀までは工業生産物が富をもたらせました。同時に生産を可能にするエネルギーの奪い合いが帝国主義を生み出しました。これまでの国際社会における紛争は「富」とその「独占」に原因があったといえるでしょう。

しかし、21世紀になって、知識集約型社会の到来とともに社会は大きく変貌しようとしています。国際社会は「頭脳集約型の知的労働」と「情報の共有」によって、争奪をせずに「繁栄」がもたらされるだろうといわれています。知識労働が富の源泉となり、情報にアクセスさえできれば、何処にいても富を手に入れることが可能になったからです。

現に、インターネットは瞬く間に世界に広がり、グローバル化した情報が世界を席巻するようになりました。しかも、情報は人為的に引かれた国境を瞬時にまたいで伝達されています。「距離」と「時間」の壁は取り除かれました。これにより、国際社会全体に調和を促し、利益を共有するための「国境を越えた政策」もスムーズに伝達が可能となったわけです。

このような時代の大転換期にあたって、日本の国際社会に対する果たすべき役割も極めて大きなものになってくるはずです。なぜなら、非西欧社会でありながら西欧社会の文明を吸収し、しかも独自の伝統文化を守っているのが日本の実像です。このスタイルが、非西欧諸国に対する「発展のモデル」となり、また、西欧文明と非西欧文明の架け橋となると思われるからです。


わが国最大のシンクタンク

ところで、知識集約型社会における知識が生産的であるためには、知識の高度化が要求されますが、それを実現するのは組織によるチームプレイが必要です。また、人体に頭脳があるように、組織にもブレーンが必要です。今日のような知識社会の到来においてはブレーンという集団が大きな意味を持つはずです。

日本においてブレーンと称される組織は、政府系の9団体【※1】をはじめ、金融機関系、証券会社系、企業系、業界系、その他を含めて300以上あるといわれています。

【※1】経済社会総合研究所(内閣府)、経済産業研究所(経済産業省)、地球産業文化研究所(経済産業省)、財務総合政策研究所(財務省)、総合研究開発機構、行政管理研究センター(総務省)、日本銀行金融研究所(日本銀行)、日本国際問題研究所(外務省)、防衛研究所(防衛省、)経済社会総合研究所

しかし、日本にはそれらのシンクタンクを大規模に上回る頭脳集団があります。それは日本の官僚組織です。戦後の70年、しっかりコントロールしていたのが官僚集団でした。「官僚制社会主義の日本」と言われる所以でもあります。

ただし、日本の官僚にも欠点があります。前例踏襲主義と変化を極端に嫌がることです。これは責任を取りたくないが故の問題点です。それに加えて、官僚集団が「許認可権」を一手に独占していましたので、保護主義政策に陥りやすく、日本の発展を一方では阻害してきたという一面を持っています。

こうした両面性を理解した上で、知識集約型社会に対応するために、日本最大のブレーン組織を生かすことを考えねばなりません。


国家公務員の人員規模

中央省庁は1府12省【※2】からなり、国家公務員64万人中で人事院勧告の対象となる非現業職員【※3】は約27万人といわれています。

【※2】内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省と国家公安委員会の1府12省。

【※3】非現業職員とは一般職の国家公務員のうち、国有林野事業を行う国営企業の職員(現業の国家公務員)や特定独立行政法人の職員、検察官を除いた職員。


一般政府雇用者の国家公務員(自衛隊員、国立大学の教授など含む)の数については、全労働人口の5.3%で、OECD諸国で最も小さい数値だといわれています。また、先般のISIL(通称 「イスラム国」)問題への対応でも担当する公務員数の少なさが指摘されています。

しかし一方では、行政改革の上で、かつてみんなの党が「国家公務員5万人削減案」を主張したように、人件費削減せよという意見もあります。

おそらくは、余剰人員を抱えているところと、極端に人員不足のところがあり、極めてバランスを欠いているものと思われます。たとえば、これからは法務省の入国管理局などは大幅な人手を必要とするはずですが、農水省は余剰人員を抱えていると思われます。しかし、農水省から法務省にはおいそれと人事異動ができない仕組みがあるのです。


国家公務員の登用に新たな選択肢を

人事制度の最大の欠陥は、学歴を重視し、有力校を卒業したもののみに高級官僚の道が開かれている点です。しかも、登用の時点での成績が後々の昇進に影響します。大器晩成型の人にとっては不利な条件となっています。さらに、省庁間の壁が厚く、互いを敵視するために業務が非常に非効率となっています。

現在は人事交流も行われ、予算も財務省の手を離れつつありますが、未だ縦割り行政の弊害が残っています。この際、人事採用も「○○省入省」などといった枠組みを取り払って、省庁をまたいで仕事をする方式にしたら縦割り行政の諸問題は解決するのではないでしょうか。

また、意欲のある幹部職員は、内閣府などに再結集させて、国家のブレーンとして遇する方法もあるのではないかと思います。


日本の官僚に求められるもの

さて、21世紀の国際社会において日本が多大の貢献を果たすためには、国際社会全体が共感し、理解し、納得する「戦略」や「プログラム」の提示が必要です。すなわち、国際社会の平和と安定、繁栄を全体で享受する提案です。しかも、効率よく情報として伝達していく方法も検討されなければなりません。そのための研究と開発をコントロールすることも必要になってきます。

この知的営為の中心に存在すべきなのが官僚です。アメリカの場合は、大統領が変わるたびに官僚も入れ替わるのでこれには適していません。日本の官僚がこの任に一番ふさわしいはずです。なぜなら、多数の知的従事者の分化された仕事を統合してチームにまとめ、機能させていくには、日本の官僚システムが最適であるからです。

ただし、これらのシステム構築の前に、官僚自身の変革が強く要請されます。

知識や頭脳集団というだけでなく、「理性」や「感性」、「幅広い分析力」、「洞察力」、「高度な判断力」、もっと言えば、「他人を深く理解する能力」、「愛情」といったもの。要は、愛情に裏打ちされた知識や分析能力、仕事能力が要求されるのです。これらは今の官僚に欠落しています。まだ、本当の意味で役に立っているとはいえません。これらの資質が伴ってはじめて世界に誇る日本の官僚といえるはずです。

この精神に立脚した日本の官僚システムの登場が21世紀の国際社会の発展に寄与できると確信しています。



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政治家に期待すること

2015-04-17 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(15)

政治家に期待すること





統一地方選挙も前半戦が終りました。当選された方々、まことにおめでとうございます。

どうか立候補時の初心を忘れることなく、気を引き締めて頑張っていただきたいと思います。


変化のスピードは速い

こういう言葉があります。

「現実における変化は、決して以前のものとは同じにならない。そして、机上で考える変化より先に現れる――」

大変に含蓄のあることばです。世の中の変化は激しく、しかもすばやく動きます。


今から20年前に識者らが警告していた少子高齢社会もあっという間に来ました。すでに団塊の世代も高齢者にカウントされ、高齢者人口は3186万人、4人に1人が高齢者となっています。また、10年前に問題視された年金も、2025年には、2人で1人の高齢者を支えていく構図となるとされています。

さらに。高齢者問題と連動しますが、地域の過疎化、高齢化という問題も1990年代初頭から論議去れていたにもかかわらず、いまや首都圏、名古屋圏、大阪圏を除く地域では深刻な問題になっています。しかし、抜本的な解決策は見出していないままです【※1】。予想外に変化のスピードは速いのです。

【※1】読売新聞が実施した47都道府県知事を対象にアンケート調査によれば、日本の人口について、27人が「今現在、深刻な問題だ」、18人が「将来、深刻な問題になる」と答え、計45人が深刻な問題と受け止めていることが明らかになった。



今回の統一地方選挙で国民の支持を得られなかった候補者や政党の多くは思想的な立ち位置は違えども、「時代の変化」を拒絶しているところに共通点があるように思います。かれらは、現状の既得権を守るために「変化を拒絶」していたので、有権者から忌避されたという事実を理解すべきです。

政治の第一義は変化に対応すること、つまり、いまある現実に対して「何かを行わなければならない」ということが必要なのです。刻々と変わる社会の「変化」に対応することが最優先課題なのです。

現自民党政権がなぜ高い支持率を得ているのかというと、「外交においては国益のために何をしなければならないのか」、「国民の安全を守るために何をしなければならないのか」、そして「国民を豊かにするために何をしなければならないのか」ということを最優先課題にしているからです。

現実の変化に対して対応しているということです。しかも、この対応は、自民党やその利益に連なる人たちのためではなく、国民全体のために何をなさねばならないのかを考えて、実行しているのです。

この考え方があるから、激動の変化に対して対応できているのです。私たちはここに着目しなければなりません。高支持率の理由もここにあるのですから。

この「何かを行わなければならない」という考え方は、中央政界のみならず、地方政界でも同様に必要なことです。

社会の変化の速さに対応しなければならないのです。

地方の過疎化は深刻な問題ですが、次の改選のときの4年先はもっと深刻になるかもしれません。シャッター通り商店街の対策、災害対策、場合によっては、有事の際の地方都市の対策も国民保護法以上の対策がいるかもしれません。それ以外にもやらなければならないことは山積みなのです。

当選した地方議員は「自分がやらねばならないこと」は何かと考えてそれをすぐに実行していただきたいと思います。公職者として党派を超え、市民全体の立場に立ってやらねばなりません。

そして、やらねばならないすべてのことに着手するために命がけで奔走していただきたいと思います。

国民は、「やるべきことをやらない怠慢な地方議員」ではなく、「時代の変化の中で、揺るぎない信念を持ち続けることのできる政治家」の出現を待望しているのです。




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地方創生と統一選挙に寄せて

2015-04-14 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(14)

地方創生と統一選挙に寄せて




政府は、人口急減・超高齢化という課題に対し、政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置しました。

4月12日には、10の道府県知事選、41の道府県議会選、5の政令指定都市市長選、17の政令指定都市市議会議員選挙が行われ、26日には、89の市長選、295の市議会議員選挙、東京都の特別区では11の区長選、21の区議会選、さらに122の町村長選、373の町村議会選が行われます。

これを機に有権者は、候補者が何を目的にし、何を訴えているのかじっくり観察することが大切です。

とくに、首長選挙は、候補者の「街づくり」の考え方が前面に出てくるので、首長としてふさわしい人物であるか否かが判断できる機会になると思います。


かつて地方自治体は三割自治【※1】といわれてました。この時代は予算執行の裁量範囲が全体の1/3しかなかったので首長は誰がなっても同じようなものでした。

【※1】三割自治:自治体における歳入(収入)のうち地方税の収入が三割しかなく、この財源分しか具体的な使途がきめられなかったことに由来する。残りの七割は地方交付税、国庫補助金など国からのお金である。

現在は、基本的に地方が自由に使える交付金として、国から「一括交付金」と、国直轄事業を中心とした「公共事業関係費(使途が決まっている)」が助成されるようになったので、裁量権が大きくなり首長の信念やアイデアで、地域のあり方を大きく変えることができるようになっています。【※2】

【※2】佐賀県武雄市は市役所WebサイトをFacebookへと全面移行した。また、福岡市はソーシャルメディアを通じて市政情報や市の魅力に関する情報を写真や動画などで発信、市内で無料公衆無線LANの整備も進める。東京都荒川区では全小学校・中学校にタブレットPCの導入を行った。


自治体の首長は行政業務を民営化する勇気を

地方行政には無駄が多いのも事実です。また、労働組合【※3】の力の強いところでは組織改革もままならない状態【※4】が続いています。

【※3】全日本自治団体労働組合(自治労)。地方自治体職員などによる労働組合の連合体で、日本労働組合総連合会(連合)に加盟。加盟団体数2,737単組、組合員数83万2,814人(2010年現在)。

【※4】かつて杉並区長であった山田宏氏は『日本よい国構想』のなかで、「口角泡を飛ばす、職員との『サンダル論争』」、「猛反対にあった給食の民間委託(給食職員年俸750万円)」などで、区役所内部の意識改革に苦労した旨を記述している。


しかし、時代の推移とともに住民の意識も変わってきましたし、首長のやる気があれば地域住民も積極的に賛同しますので、必然的にその地域は変わります。

たとえば、博多駅から電車で1時間あまりの距離にある人口が約5万人の佐賀県武雄市。ここでは、前市長が図書館を民営化【※5】しました。また、自治体病院も民営化【※6】して15億円の累積赤字を解消しました。批判も相当あったようですが、首長の決意一つで地域は変わるのです、

【※5】武雄市図書館はTSUTAYA等を経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社を指定管理者として運営委託を行う。委託以来3カ月間で26万人を突破したが、これは前年の年間来館者数を超える人数となっている。

【※6】武雄市民病院の民営化で働く人たちの給料も増え、市には固定資産税が入るようになった。ただし一連の改革で市職員の32%が退職したという。なお、給料は減らしていないので、一人あたりの生産性を高めることとなった。



民営化のメリット

行政の枠にとらわれない発想や様々なノウハウの蓄積がある民間企業にアイデアを出してもらい、行政業務を委託しても良いと思います。

実際、民間企業は動きが素早いです。かつて小さな町が発電所を誘致しようとした際、街づくりを専門に行う企業に計画立案を委託したのを見たことがあります。その企業は住民のアンケートをとり住民の意向を調べ、プランを作成し、議会対策用の説明書、住民対策の説明書を1ヶ月で作り上げました。もし、これが役所仕事なら1年以上はかかったかもしれません。民間企業はスピードと効率を両立させてくれるのです。


役所業務は全面的に民間委託にすべき



お役所仕事も民営化されますと途端にサービスがよくなります。かつての三公社五現業【※7】も殆どが民営化され、実にサービスがよくなり、メリットのほうが大きかったと思います。

【※7】日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社の3つの公社と郵政、国有林野、印刷(日本銀行券や郵便はがき等の印刷の事業)、造幣、アルコール専売の5つの事業のこと。国有林野を除き、民営化又は独立行政法人等に移管している。

また、民間に委ねることで上手く機能した事例があります。介護保険制度です。これは、高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みで、その最大の特徴は、利用者へのサービスを民間の企業が中心になって運営していることです。利用者のケアの認定(要支援2段階、要介護4段階)はケアマネージャー【※8】と呼ばれる民間人が行っています。

【※8】ケアマネージャー=介護支援専門員:要介護者等からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況に応じ、適切な居宅サービスまたは施設サービスを利用できるよう市町村、居宅サービス事業を行う者、介護保険施設などとの連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有する。

ケアマネージャーは介護を希望する人の家にいって、直接話を聞き、状態をよく見て申請します。また、申請してから毎年状態を確かめてその都度、更新の判断を役所に提出します。そのため、ケアマネージャーには公平な判断力が求められます。資格をとるためにはかなり難易度が高いといわれています。そして、実際にケアは、民間のホームヘルパー(訪問介護員)などが行うようになっています。

このように民間が事業に取り組めば、役所の仕事は削減されます。同時に、民間の力を使いますから雇用も増え、地域の活性化に貢献することになります。

こうした考え方をさまざまな分野で活用すれば世の中がもっとよくなるはずです。何事もアイデア次第ではないでしょうか。


生活保護やその他の福祉にも応用ができる

社会福祉の分野では、役所でいくら職員を増やしても、本当に困っている人には救いの手が伸びず、窓口で大声で騒ぐ人や一部の政党の議員に頼んだ人の審査が通りやすくなるという矛盾の実態【※9】が見受けられます。このような生活保護の許認可、児童相談なども民営化した方がいいのではないでしょうか。

【※9】生活保護受給者217万人、生活保護負担金3.8兆円、そのうち半分が医療扶助となっている。生活保護に一度なってしまうと働かなくても生きていけるので、頑張って働く気が薄れてしまう弊害があるといわれる。また、病院も生活保護の人を過剰診療することで、必要以上の処置をして国や自治体に請求して病院の経営が潤うようにする事件も起きている。

また、児童虐待などの対する児童相談なども、相談員数の不足から満足な対応ができていないという問題もあり、ここも介護と同様に民間委託した方がもっときめ細かい対応ができる可能性があるはずです。

そのほかにも役所は住民と接する仕事はたくさんあります。再開発事業での折衝、滞納整理、公営住宅の家賃徴収、高齢者住宅での身寄りのない人への対応や苦情処理などもあります。そのほとんどを民営化して、それの成功したモデルケースを全国的に展開するという考え方もできると思います。


地方の行政は、首長の強い信念と決断で大きく変革することができると思います。その意味でも、統一地方選の首長選挙には強い関心を抱いていきたいと思います。




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沖縄反基地闘争の本質――利権目的の反日闘争はもう止めよう!!

2015-04-10 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(13)

沖縄反基地闘争の本質
利権目的の反日闘争はもう止めよう!! 




沖縄で何が起きているのか

辺野古基地建設問題で沖縄が大変騒がしくなっているとの報道をたびたび目にするようになりました。「沖縄と日本政府の戦いだ」などとの報道さえもあります。また、本年(2015)3月23日、自民党出身の翁長雄志【※1】沖縄県知事が、辺野古沿岸の埋め立て作業の中止を指示したこと、これに対して国が沖縄県知事の指示の「効力を一時停止」の方針を示したことから、沖縄と国の対立が一層顕著になったようにも思えます。

【※1】翁長雄志(おながたけし):2014年12月の沖縄県知事選挙で、現職で辺野古移転派の仲井眞弘多氏を破っては初当選。それまで自民党所属の那覇市長であった翁長氏は、社民・共産・生活の3党の推薦と辺野古移設反対派を巻き込んだのが勝因とされる。

しかし、実際に騒々しいのは、基地が移設される辺野古周辺と、移転前の普天間基地周辺、そして沖縄県庁あたりだけというのが実情のようです。県民はいたって冷静だと思います。

マスコミは冷静な目で沖縄の真実を報道していただきたいと思います。


反基地闘争の本質

さて、沖縄の反基地闘争の実態をよく見ますと非常に違和感を感じます。なぜなら、辺野古問題は国防問題ですから国家の専権事項であり、沖縄県知事や県民が口を挟む問題ではないからです。その上、「反基地」闘争を繰り広げる人たちが、いわゆるプロ市民【※2】といわれる人たちであり、その中にはもともと沖縄の住民でない人も多く、さまざまな疑問が生じてくるからです。

【※2】プロ市民:一般市民を装い市民活動と称しているが、実質的には営利目的または別の目的を持つ政治活動家を指す。

こうした点を考えていけば、「国家 VS 反国家・反基地」という対立の構造で見える沖縄問題も、実際は、「別の事柄」を隠すために、この図式を利用しているのではないかと思われるのです。それは、ずばり「お金」の問題をかくすための口実なのです。

こう考える理由はただ一つです。沖縄の人はだれもが「辺野古に基地を移設することは阻止できない」と知っているからです。沖縄県知事も、プロ市民も、そして沖縄県民もそれはよくわかっています。それを承知の上で、なぜ反対するのかといえば、反対運動を大きくしたほうが莫大な利権を手に入れることができるからです。これまでの日本では、国家の施策に反対する声を大きくするほど莫大なお金を得た経緯があるからです。


日本革命を放棄した左翼の人びと

この「反国家闘争は金になる」ということは、一般の人にはにわかに信じがたいことかもしれません。しかし、これが今日の日本における「反日、反国家闘争」の本質なのです。実際のところ、プロ市民とか左翼とか言われている人びとで「日本に革命が起きる」と信じている人は殆どいないでしょう。日本革命を夢見た人たちは1970年代までに殆どいなくなってしまいました。

かつて、街宣右翼が60年代安保時に自民党の傀儡になったり、70年代に総会屋となって堕落したように、左翼の活動家は70年代には日本革命を諦め、利権目的の集団になってしまったのです。そこには社民党や共産党も含まれます。イデオロギーが金集めの道具になったのです。国民の支持が広がらない理由もそこにあるのです。


こうした流れの発端は、かつての首相田中角栄氏の金権政治でした。金権政治は自民党の専売特許ではありません。野党も、労働貴族も、日教組も、左翼運動の闘士もみんな金権に染まっていったのが70年代の日本なのです。お金で問題の全てを解決しようとしたのです。その傾向を、いまもなお、野党や、左翼の人たちが引き摺っているのです。

筆者自身、ある大物代議士が70~80年代に国会対策委員として活動していたときの話しを伺ったことがあります。その大物代議士は次のように語りました。「野党の国会議員対策の接待で明け暮れていた」と。

また、知己を得た方からは「成田闘争当時、警察庁幹部や政府要人が集まって、反対派の個人リストを広げ、一人一人への具体的な支払金額を決めていた現場に立ち会っていた」というお話も伺ったこともあります。ものはいい得く、圧力はかけ得く、ゴネ得くがまかりとおっていたのです。




沖縄県知事選挙は、新旧各派の沖縄利権争奪戦だった

こういう事例から考察すれば、沖縄の反基地闘争も違った姿で見えてくるはずです。

昨年(2014年)の知事選も実は沖縄利権にからむ新旧勢力の利権争奪戦だったのです。仲井眞弘多前知事の影響下に利益がもたらされるか、翁長雄志現知事の影響下に利益がもたらされるのかの戦いが沖縄知事選の本質であったのです。「平和、反戦、反基地、自然環境の保全」が本質ではなかったのはいうまでもありません。

沖縄は昔から特殊な地域です。常に国の補助金で成り立っている【※3】場所です。

【※3】沖縄県平成25年度決算:収入総額7190億円。そのうち県税や県債が1571億円(自主財源26.3%)、国庫支出金と地方交付税の合計が4400億円(全体の73.6%)で、国からの財源がなければ沖縄県の運営は成り立ちません。

翁長氏は那覇市長を務めていた時代から、補助金に関わる利権を握っていた人物のようです。ひところの自民党の体質をしっかりと継承していました。そして、当然、那覇市よりも県に沖縄振興【※4】の莫大なお金がつぎ込まれていたのを知っていますから、大きな利権の方に切り替えようとしたわけです【※5】。

【※4】沖縄振興特別措置法;1972年から2011年の間に沖縄振興費用として累計約10兆円が投じられ、内9割以上が公共事業に費やされてきた。多額の振興費用は土建屋に流れ、その結果、沖縄県下には中小零細を含むと5000社を超える建設関連業者が存在する。翁長知事誕生のとき、隣で万歳していた後援会幹部は、沖縄で有名な土建業者であったといわれている。

【※5】平成26年度沖縄振興予算の総額は3,460億円。基本的に沖縄が自由に使える交付金として「沖縄振興一括交付金」が1,759億円、国直轄事業を中心とした公共事業関係費が1,382億円となっている。



翁長氏は知事選出馬のために、辺野古基地移設反対派や親中派の利益団体を取り込みました。同時に共産党や民主党と同様、表向きの政策に「自然保護」とか「反戦」という聞こえの良い理屈を掲げたわけです。翁長氏は利得のためだけに、共産党や社民党と手を組み、彼らと予算の山分けをしようと考えていたようです。

したがって、翁長氏は知事になって、継続的に国からお金を引き出すためには、基地周辺の工事の差し止めなどの手法で国を揺さぶり、恫喝をかけたのが、「辺野古沿岸の埋め立て作業の中止」ということなのです。あくまでも駆け引きに利用しているわけです。

最終的に、辺野古移転は国家の基本政策ですから必ず実現します。翁長氏はどこかで補償問題などを持ち出すことになるはずです。しかも、翁長氏と連帯している諸政党【※6】やプロ市民らは、翁長氏が国からお金を引き出す能力に期待して騒ぎを一層大きくするでしょう。かれら自身、「沖縄は中国化されない」とわかっています、逆に中国からの資金援助も堂々と受け入れています。中国もかれらのことを「欲が深い人間だ」と蔑んでいる可能性もあります。

【※7】2015年03月25日、鈴木宗男氏はブログで「私は砂利利権と考えるが、あの綺麗なジュゴンのいる海を埋め立てる発想が理解できない。翁長知事と沖縄県民の思い、心を私は尊重して参りたい」と述べている。



日本の政治は変わらなければならない

旧態依然とした政治、そして、利権を山分けして特定の人だけの利得を追求する政治はもう止めてほしいものです。それも、本来はそのような利権を真っ先に批判すべき野党勢力が、実は一番に利権を追い求めていたのです。

政治の根本は、国民が豊かで安心して暮らせる社会の実現が第一義です。そのために選良として委託されたのが政治家のはずです。改めて政治家は自らの姿勢に襟を正すべきです。

また、同時に選挙民は私利私欲や名誉欲のために動く人物にNOを突き付けねばなりません。


沖縄問題を真剣に考えよう

沖縄支援策のこれまでの経緯を見ると、特定の人の利権の温床となっていたということも認識して改めなければなりません。

政府は、沖縄の人びとの真実の声を聞くことから始めなければならないでしょう。まずは、沖縄県民の本当のニーズとは何なのか知り、その上で、人びとの雇用を促進し、より豊かに生活できるためには何をしなければならないのか、という提案が必要になります。

今ある観光産業の充実にプラスして、ほかに伸ばしていく産業は何なのかを考え、活性化を進める必要があるのではないでしょうか。


沖縄の基地問題を解決する最良の方策は、政府が「沖縄の心」を理解し、沖縄の振興と沖縄県民が生き生きと暮らしていける提言を行うことだと思います。内閣府の特命担当大臣に期待したいと思います。



次回は4月14日(火) 『地方創生と統一選挙に寄せて』を掲載する予定です。

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AIIB(アジアインフラ投資銀行)について

2015-04-06 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(12)

AIIB(アジアインフラ投資銀行)について 





コメント欄に、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)についての見解を問うご質問がありました。ちょうど話題に上がっているときですので、私見を申し述べたいと思います。


中国のタテマエと本音

AIIBは、2013年10月、アジアのインフラ整備を支援するとして習近平中国国家主席が創設を提唱したものです。習氏は「世界銀行やアジア開発銀行(ADB)への対抗組織ではなく、補完関係にある【※1】」と繰り返し説明しています。
【※1】「日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれない増大するアジアにおけるインフラ整備のための資金ニーズに対応するため」としている。

AIIBは、今年(2015)3月イギリスの参加を機に加盟に向けた動きが一気に広がりました。3月末の創立メンバー募集終了の時点ではAIIBに51の国と地域が参加申請したといわれています。なお、創設メンバーの国は、AIIBの枠組みを定める設立協定づくりに参加できるとされています。

さて、AIIBは中国自らが最大出資国となり、銀行の本部を北京に置く意向とみられています。さらに、中国は自らが好む国に対するインフラ支援を、AIIBを通して他国の資金も使うことができるようにするつもりだといわれています。つまり、中国にとっては、従来よりも少ない金額で投融資が可能となり、しかも、今までと同じ効果が期待できることになります。中国にとってAIIBは、対アジア外交強化の強力な武器となるわけです。


内外の反応

ところで、日本はAIIBへの参加見送りの方針を明らかにしました。

麻生財務相は3月31日の閣議後の会見で「参加には極めて慎重な態度をとらざるを得ない」と語っています。その理由は、AIIBの出資比率は加盟国のGDPに応じて決まるため、GDPの大きい中国は、運営面での影響力が大きくなると見ているからです。

それに対し、野党側は一斉に政府の対応を批判しました【※2】。
【※2】維新の党の江田憲司代表は「中国外交の勝利、日本外交の完全敗北だ」。民主党の蓮舫代表代行は「貧困解消や格差是正などのために日本はアジアで努力すべきだったが、結果は成功していない」。 共産党の志位和夫委員長は1「アメリカの顔色だけをうかがう自主性のなさが露呈した。アジアで参加していないのは日本と北朝鮮くらいで、参加すべきだ」と強調。

また、日本経済新聞や朝日新聞などがAIIBの不参加に対し強い懸念を表明しています。

一方、中国では、「日本のAIIB不参加は短絡的」(人民網)、「日本にアメリカの承認を待たずに参加するべき」、「日本がいつまでもアメリカの指示待ちをするとすれば、とても恥ずかしいことだ」(中国国営通信・新華社)と日本を半ば煽るような形で報道をしています。


中国の狙いと参加国の狙い

しかし、専門家筋にお話を伺いますと、「中国は本当は日本とアメリカにはAIIBに参加してほしくはない」とのことです。また、「中国主導でアジア諸国を支配下におきたい」というのが本音であろうとのご指摘でした。中国にとって日本やアメリカの参入があっては思い通りにいかなくなるからです。

また、中国の通貨である人民元の国際通貨化も狙いにあるようです。ただし、この問題は現在の国際基軸通貨であるアメリカのドルへの挑戦ということになります。

さて、一方で、AIIBの創立メンバーに参加した国の思惑はどうなっているのでしょうか。

アジアで参加した国々は、「経済的な支援を当てにしているが、資金援助があったからといって中国の意向に服従するわけではない」とのしたたかな一面を持っている様子が見てとれます。この辺のバランスの取り方はなかなかうまいものがありそうです。

また、イギリスなどの先進国がAIIBに参加した理由は、出資目的よりもアジアのインフラ整備の際に、自国の企業を優先的に使ってもらうために早めに足場を築いておこうという趣旨のようです。したがって、将来的には、「中国が主導するインフラ整備」とは大きく対立する考え方になりますので、結構早いうちから、先進国の撤退という事態が引き起こされる可能性も高くなるものと思われます。


AIIBの将来性

こうして分析してみますと、AIIBの前途はあまり明るくはないようです。

この根本原因は、AIIBの「設立の動機」にあります。中国はアジア諸国に対して莫大な費用のかかる軍事的な制圧よりも、他国の資金を利用する形で中国主導の経済的制圧を目論んだところに動機の不純さを感じます。

中国が純粋な気持ちでアジアの国々の発展のために、インフラ整備をしようという考えでAIIB構想を進めたら、参加形態がもっと変わっていたはずです。また、中国が人民元を世界通貨にしたいという野望を持たなければ、アメリカも態度を硬化させなかったのではないでしょうか。中国には「覇権を経済政策で実現させたい」という思惑があるから、参加表明をした国々も、自国の利益だけで集まったのです。

その意味で、覇権を狙う中国に加担しない日本が参加を見送るのは当然の帰結でした。また、野党やマスコミが参加を求めていること自体、中国の不純な動機に便乗して経済的利益を得たいという旧来通りの搾取の考え方です。かれらの考え方こそが、実は、植民地主義であり、収奪の構造なのだということに気づくべきです。


これからの二国間、多国間における国際援助のあり方については、援助する側が、自国の利益を得る目的にしてはならないのです。相手国の発展を願って、そのために何をすべきかということを考えて援助していかなければならないのです。それが、国際関係における協調であり、WIN―WINの関係を築き、互いの信頼に結びつくことなのです。


利害損得をこえたところにこそ、世界の調和と発展は果たされるものだということを銘記したいと思います。




次回更新は4月10日、「沖縄反基地闘争の本質」を掲載します。

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日本は中国の環境汚染改善に手を差し伸べよう

2015-04-01 00:00:00 | 政治見解
赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(11)

日本は中国の環境汚染改善に手を差し伸べよう





刻な中国の環境汚染

日本のマスコミはなぜか中国の深刻な環境汚染を報道しません。あくまでもトピック的な報道なので、日本国民はPM2.5【※1】の飛来くらいにしか認識していない可能性もあります。

【※1】大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子。非常に小さいため(髪の毛の太さの1/30程度)、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸系への影響に加え、循環器系への影響が心配されている。

しかし、詳しく中国内部の情報を集めますと、中国は、大気も、大地も、そして水も汚染されていて、それも想像を絶する汚染度になっているようです。とても、人が住めるような環境ではありません。これを改善しない限り、環境によって中国の国土が破壊され、生活や経済活動に大きな影響が出てくる可能性も考えられます。

2013年、NASAの人工衛星が撮影した中国大陸の東部の平地は、ほぼグレーのスモッグで覆われていました。太陽の光が届かないほど大気汚染が悪化している北京の状況は、「核の冬」に匹敵すると科学者が警告しているほどです。原因はPM2.5でした。その濃度は、WHO(世界保健機関)基準の40倍を超えると報じられていて、外出のみならず室内での活発な行動も控えるよう警告が出されているほどです。



さらに、大地【※2】も水【※3】も、深刻な状況です。また砂漠化【※4】も進んでいます。

【※2】Searchina 2014-06-06:中国では「食の安全」が足元から崩れつつある。土壌汚染だ。耕作地2328万1000ヘクタール余りで、カドミウム、ニッケル、銅、ヒ素、水銀、鉛、DDT、芳香族炭化水素などの汚染物質の含有量が国の基準を超えていることが分かった。同面積は2012年における日本の耕地面積合計、454万9000ヘクタールの約5.1倍だ。

【※3】中国では工場排水や生活廃水などが垂れ流され七色の川が流れる。また、都市の90%の地下水、河川、湖沼の水の75%が汚染されている。水質汚濁の広がりのため、毎日7億人が汚染された飲料水を飲んでいる。

【※4】遊牧地の開墾、樹木の輸出や農作物の増産などが原因で砂漠化が深刻化している。現在中国の30省、889の県で合計174万平方キロメートルの砂漠が広がり、これは中国国内の18パーセントに当たるとしている。この砂漠化により黄砂が年々悪化し、中国国内や海を渡った日本にまで被害を及ぼしている主要因と見られている。



地球の生命体の一員として考える

人間は一人で生きられるものではありません。地球という生命体の上で、大いなる自然環境の中で生かされ、人々と支えあってこそ生きていけるのです。自然環境に逆らって人間は生存できません。

しかし、このまま中国の環境が悪化していけば、中国人の生存が危うくなるレベルから、地球の全ての人びとの生存に影響を及ぼすような状況になってきます。

昨今の環境問題に関する国際的な意見交換の場でも、先進国は発展途上国の環境汚染を非難し、発展途上国は先進国のかつての環境破壊を問題にするばかりで、なにも解決ができないまま今日に至っています。あくまでも、自国の利益のみに固執し、国際社会全体の利益を考えていませんでした。

ここは、政治的対立を越えて、地球に存在する同じ生命体として手を携えて環境を改善していかなければならないときが来たようです。いまや、中国も事態の深刻さを認識【※5】しはじめています。

【※5】2015年3月7日の全国人民代表大会(全人代=国会)に関する記者会見で、陳吉寧環境保護相は「経済発展と環境保護の、人類史上未曽有の矛盾に直面している」と述べ、強い危機感を示した。


中国の複雑な国内事情

ただし、中国という国は内部事情が実にややこしいものがあります。政治的には一枚岩ではありません。現国家主席の習近平氏、前主席の胡錦濤氏、元主席の江沢民氏の三派に分かれ、それぞれがいま激烈な主導権争いを演じているといわれています。

専門家筋の話によりますと、軍は莫大な軍事予算の15%を軍幹部が不正使っていると言われ、また、軍が中国の石油利権の大部分を握っていると言われています。

このように権力を握るさまざまな集団が存在し、一方、国民の側は政治には無関心のため、日本のようなまとまりのある国として見ることのできない難しさがあるように感じます。


日本が積極的に行うべき提言

しかし、このような内部事情を踏まえた上で、中国の深刻な環境汚染に対し積極的に手を差し伸べていくべきだと思います。

環境汚染の改善対策は、国内の政治的な対立とは無関係であり、周辺諸国への軍事的脅威にも繋がりません。環境汚染を克服することは中国にとっても地球環境にとっても良いことなのです。

さらに、環境汚染を克服する姿勢は発展途上国へのモデルケースともなり、未だに環境保全に消極的な先進国にも重大な影響を与えることができます。結果的に、先進国 vs 発展途上国の環境汚染問題の対立を収束させるきっかけになるかもしれません。国際社会に調和をもたらす要因になる可能性があるのです。

その提言を日本が積極的に行うべきときがきたと思います。

これは、かつての公害を克服することができた日本だからこそできることだと思います。


日本は本気で取り組むべき

日本には環境汚染に対抗する技術や改善するノウハウもあります。かつて日本は公害で苦しみ、これを克服してきました。空気がきれいになり、水道水がおいしくなりました。土壌汚染も改善され河川には魚が戻り、海も浄化されつつあります。かつての公害を問題視された1970年代の日本とは大きく様変わりをしています。

こうした日本の蓄積された技術のノウハウを、地球全体の環境を守るという観点から、無条件で提供することも必要ではないでしょうか。 


真のナショナリズムの発揮

さて、日本が積極的に中国の環境問題に取り組むことで、日中双方ともに存在する排外主義の壁を乗り越えることができるのです。排外主義とはナショナリズムでもなく、愛国主義でもありません。単なる利己主義です。自分さえ良ければいい、自分の国さえよければいいというような国家利己主義です。この排外主義がある限り国際社会の調和実現は不可能なのです。

いまの日中関係は、「己の欲せざる所は人に施すこと勿れ(自分が好まないことは、他人に対してもしてはならない)」という孔子の言葉とは真逆の、自分が嫌がることをもって日中双方で非難しあっているのです。排外主義の悲しい現実なのです。

従って、いまほど真実のナショナリズムが求められるときはありません。ナショナリズムとは、自分の国を愛するように他の国も愛するという感情です。その感情は、同時代に互いに地球の一員として生きているから生まれます。どんな姿格好をしていても、その人間に内在する善なる性質を発見するところから生まれるのです。

まず私たちがやるべきことは、日中双方の人びとからも、また国際社会の人びとからも何の異論も出ない「中国の環境汚染の改善」ということではないでしょうか。

いまこそ真のナショナリズムをもって日本人の心意気を示すべきときだと思います。大和魂とはこういうときに発露すべきものではないでしょうか。



次回更新は4月6日 0:00です。AIIBについての私見です。


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