グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

“衰退した”と名指しされた農業が守ってきたもの。

2012-12-13 19:13:16 | Weblog
“衰退した”と名指しされた農業が守ってきたもの。


札幌市の街頭演説で日本維新の会・橋下代表代行が「今の農業はもう
衰退のみ。だから農業を企業化しようと、僕は考えている。個別の農
家を守るのも重要だが、日本の将来を考えれば、農業の企業化は当た
り前だ。」と演説されたとのこと。
しかし現実には、その“衰退した”と名指しで批判された農業が日本
の水を守っているという現実があるのです。現役の市長さんとしての、
このあまりに現状認識のないご発言に、その現実〔わかりやすいよう
水田に限った話として〕をご説明すべくペンを取った次第です。ご
参考までに、よろしかったら。

 ↓

“衰退した”と名指しされた農業が守ってきた“水”。

なにげなく見過ごしてしまいがちなのですが、冬の時期に枯れていた
田畑地帯にある小川が春になると流れていることに気づかれたことは
ありませんか。

じつはこれ、自然な小川ではなく農家の手によって人為的に流されてい
る用排水路の場合が多いんですよ。農家を主体にした水利組合の管理
のもと、計画的にながされている農業用水
なんです。

田の水を管理する水利組合は、農業生産を行う上で欠かせない用排水
施設の整備・管理や農地の整備いわゆる土地改良を目的として設立さ
れた農家の人たちの組織です。この土地改良区は全国に約7,000・
関係する農家は約300万人・関係する農地は約300万haといわれ
ています。

そんな日本の農業用用排水路の総延長は なんと 約22万km!

この距離は、ほぼ地球5.5周にも達っするのだそうです。現場にい
るわたくしなども、この話しを聞いたときにはさすがにびっくりしま
した。いや、すごいものですね。

そして、そんな日本の用排水路の管理についてのおはなしです。

田植えに先立つ2ケ月前、水稲農家の苗づくりと並行してこなわれる
のが、集落ごと・水の流れる系統ごとの用水路の清掃です。
イネの栽培がおわってからおよそ半年、繁茂した草や、その後の増水
などで埋まった土砂などが用水路から除去されます。もちろん投げ込
まれたゴミの処理も、当然あります。。

しっかりやっとかないと、水の流れがとちゅうで止まってしまいます
からね。自分のところに流れてきた水は、次の田畑へ流していかねば
なりません。

この用水路清掃には、その水利を利用する方たちが参加するわけです
が、かなりな時間と労力がかかります。自分の経験では、ひとつの水
利系統で半日くらいの出役となります。

規模を拡大したり・高齢化の農家の農地を借りたりして田畑を耕作す
る方は、この共同清掃に何らかの形での参加が義務付けされますので、
これがなかなかに大変。耕作規模が大きくなるほど負担も大きくなる
わけですから。

これもまた、日本の耕地面積の土地集積が行なわれにくい大きな原因の 
ひとつといえるでしょう。


◎ 農業を行うに当たって、どうしても必要となる〔農家300万人分
  の水路管理に関する
〕共同作業の認識が欠けている農業論が跋扈す
  る現状って・・・・じつに寂しい話しだと思うんですよね。
  
51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染





農産物。輸出するつもりが、輸入量拡大になったり。

2012-12-13 00:43:43 | Weblog
農産物。輸出するつもりが、輸入量拡大になったり。

なにかといえば「山形のサクランボ」を持ち出す農業論があります。
品質と競争力を高めさえすれば、日本農業は大丈夫・・・とする説です
ね。しかし、はたしてほんとうにそうなのでしょうか。
そこで今回は、歴史的にいってコメ以上に評価されてきた日本の干しシ
イタケ〔加工もされてますし〕のたどった道を例にとって、日本の農業
と農産物の輸出入を予想してみましたよ。よろしかったら、ご参考に。

 ↓

『輸出するつもりが、輸入量拡大になったり。』

優秀な日本産のコメであれば外国で飛ぶように売れるといったような、希
望的観測に満ち満ちた説があります。はたして、本当にそうなのでしょう
か。そんな農産物に関する輸出入についての話を、その高品質さゆえに、
昔から 海外に輸出されていることで有名な干し椎茸 を例にとって
おはなししてみます。

さて、干し椎茸です。

椎茸は、生のものよりも乾燥したほうが風味や香り・旨みが増すために、
日に干して、干し椎茸に加工されます。高品質の日本産の干し椎茸は、
本場ものとして人気があり、日本各地の干し椎茸業者が主として香港や
台湾に、昔から輸出をしている
ことで知られています。
なんといっても『道元が南宋に渡った際に現地の僧から干し椎茸を持って
いないかと何度も問われた』という逸話がある
ほどのものであったといい
ますから、いかに当時から日本産の干し椎茸の価値が高かったのががわ
かる話ではありませんか。

そんな干し椎茸の本場である日本に、外国産の椎茸が輸入されることなど
可能なのだろうか・・・と、前述の逸話を読まれた方は思われるかもしれ
ません。

が、現実は厳しいものです。

全国でも有数の干し椎茸の名産地である宮崎県の干しシイタケの生産量
1984年と2008年の数字を使ってご紹介しますと・・・

1984年度 2237トン

2008年度  646トン


と、いう具合に、四半世紀の間に生産量が 1/3 になってしまいました。
名産地の宮崎県でさえこれです。ちなみに全国の生産量でみれば

1984年度 16000トン

2008年度  3867トン


と、こちらは 1/4 になっています。

この生産量の減少の原因がじつは、それは 安価な中国産シイタケが大量
に日本市場に流入した
ことによるのです・・・・。

そして、コメです。
干しシイタケとちがって、本当に喧伝されているように“優秀であるから外国産
に勝てる
”のでしょうか。

わたくしは、この説をはなはだ疑問に感じます。

関税が自由化された場合、コメもまたシイタケと同じ道をたどるのではない
のか、と、思ってしまうからです。

たしかに

 高品質の日本のコメは外国に輸出される。

しかし、同時に

 低価格の外国産米も、同時に日本の国内市場に大量に輸入される。

結果として、日本産のコメの生産量は、

 コメの名産地で 1/3、日本全体では1/4以下

となる。それが、輸出のために関税を撤廃した場合の真実となるの
ではないでしょうか。

日本は山国であり耕地がせますぎること。水資源にも陰りがみえてきてい
ること。農業と農村は、土地利用型農業農業ばかりでなりたっているわけ
ではない
ことから考えると、そう思えてならないのです。


◎ 韓国の食問題についての要注意な記事は、 こちら 。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染