1月30日のNHKの朝の番組「生活ほっとモーニング」で
「闘病記で生きる力を」と題する放送がありました
その中で 骨肉腫を患った人が、亡くなる前家族に向けて書いた本である
「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」 (井村和清 著 )
の中の文章が紹介されていました。
「病人にとって、大変に苦しいことが3つあると思います。
そのひとつめは自分の病気が治る見込みのないことです。
ふたつめはお金がないことです。
みっつめは自分の病気を案じてくれる人がいないことです。
この3つめの不幸が一番苦しかろうと思います
これを聞いて、脳脊髄液減少症の私は本当にそうだとおもいました。
脳脊髄液減少症と診断がつく前は、
たとえ今すぐ命を奪われるわけではなくても、
広い意味では
この3つのすべてがそろっていたからです。
今は「治る見込み」はあると思えるようになったので、
ひとつめの苦しみは消えつつありますが、3つめの
自分の病気を案じてくれる人のいないことや、
病気の苦しさを理解してくれる人のいないことは今まで
病名判明までの長い長い年月、
症状よりも何よりも、苦しいものでした。
医師や他人はもちろん、家族も、友人にも、兄弟にも理解されることのなかった、脳脊髄液減少症の数々の肉体的、精神的な症状の苦しさ・・・。
やっと病名がついても、同じ病気の患者さんたちにすら理解してもらえない苦しさや心の葛藤・・・。
お金がないことももちろんつらいことですが、
人にわかってもらえないこと、案じてもらえないことは
人間なら誰でも、一番つらいことなのではないでしょうか?。
番組では、エッセイストの岸本葉子さんという方が
主演されていました。
私は、この方がどういう方なのかそれまで全く知りませんでしたが
この方ご自身も虫垂がんになった経験があり、
闘病記を書かれているようです。
ご自身がガンで闘病された経験があるせいか、
この方の発する言葉のひとつひとつが 、私の心に響きました。
朝の早い時間の番組で
ご覧になれなかった方も多いと思いますので、
以下、岸本さんが番組でおっしゃった言葉を
一部紹介させていただきます。
なお、かっこ( )内は私が書き加えた言葉です。
『本当に闘病記はいろんな読み方をされている。
患者本人は(闘病記から)リハビリの仕方といった具体的な情報を得ると同時に、
さらに進んで、生き方や心の構え(などの情報も得て)
そうなるともう自分と同じ病気でなくても学ぶことがある。
そして、さらにご遺族もまた、一種の心のケアみたいなものを
本から得ているんだなと感じました。
(闘病記は)たくさん読みました。
やはりその書いた人は体験談なので
同じことを、もしかしたら、お医者さんの書いた本にも書かれているかもしれないけれど(読み手の)受け取り方が違うんですね・・・。
リハビリの仕方も、もしかしたらお医者さんの書いた本にも
「こうなれば回復しますよ。」ってことが書いてあるかもしれないけれども、
闘病記はやはり体験者だから「こうなれば回復しました。」って
自分のことで書いてある。
そうすると、なんか説得力もあるし、
あ、自分もやってみようかなという強い動機づけになるような気がします。
(私は闘病記を)書くことで自分の心の処方箋を探していた、
その記録だったんだなと思います。
とてもドキドキして不安、でもその
この不安って何だろうかと書き出してみることで、
私が不安に捕らえられているのではなくて、
私がこの不安を捕らえた、 というような感じに、逆転して、
不安に立ち向かっていくみたいな気持ちになりました。
不安そのものは、なくならないんだけれども、
でも、私は、これが何だかつかんで、
それに向かっていこうとしているんだ、という気持ちになりました。
書く側にとっても、
それを受けとってくれた人も、
きっと、この人はこうしたんだ、こう思っているんだと知ることで、
またそのご自身の、
心の処方箋を探していく手がかりになるのかなと思うんです。
病気になると、ともすると
あなたはいいけど、私はこう・・・・というような
違いが気になる時もあるんですけれども、
その違いを乗り越えて、
何か共有できることがあるんだなぁ・・・。
本当に、闘病記を通じて、
同じ病気でも患者って、ひとりひとり違うんだ、
ひとりひとり違う生活背景があり、
価値観があり、
生き方がある。
(闘病記の書き手の)この人はどんな治療法を選ぶかな、という感じで、
コミュニケーションが良くなり、
そして、
患者の意思が、
医療現場に取り入れられるようになればいいな、と思います。
VTRを見て(闘病記は)異なる医療現場の情報交換にもなっているような気がしました。
闘病記って、
いろんな人をつなげる媒介になる可能性があるなって思いました。
医療現場の人と患者 (をつなげ)
患者と患者 (をつなげ)
そして、
患者の側も医療現場のことを理解するようになりたい。
たとえば、お医者さんにかかるときって、
(闘病記を書いた)この患者さんはメモして(受診して)た、
じゃ私もそうやって、スムーズにいくようにしようとか、
何かそういった、相互理解が進んで、
病気を治すという目標に向かって、
一緒に向かっていけるようになる、
材料になればいいなと思います。』
NHK生活ほっとモーニング「闘病記で生きる力を」(右上の2008年1月30日のところをクリック)
テレビ出演
作品リスト
番組で紹介された本の一部紹介
「今を駆け抜けろ」宮沢 翠
生きて輝いて(自費出版のため、読んだ方のブログにリンク)
最初のころの10分間は見ていないので、他にも何か本が紹介されていたかもしれません。
生活ほっとモーニングは再放送しないのが残念です。
岸本さん、素敵な言葉と気づきをありがとうございました。
私も不安や怒りや心の葛藤を書き出すことで、
自分の心の処方箋を探していたような気がします。
治療によっての脳や、体の症状の改善のおかげか、
書きだしたことでの心の処方箋のおかげか、
今はかなり、気持ちも、生きることも楽になってきています。
追加:
生活ほっとモーニングでの予告版の番組説明
1/30(水)闘病記で生きる力を
今、全国各地の図書館や病院で、闘病記を集めた専門のコーナーが設けられ、人気を集めています。
2年前、日本で最大規模のコーナー「闘病記文庫」を設置した鳥取県立図書館は1200冊の蔵書数を誇り、一月でのべ300冊が貸し出されています。
闘病記を読むのはがんや脳卒中などの大病と向き合う患者やその家族です。
週に1回、闘病記文庫に通う75歳の男性は、30冊を読みました。
4年前脳卒中で倒れ左半身まひになったこの男性は、人生の先行きに絶望し、リハビリにも取り組みませんでした。
しかし、妻のすすめで、二度の脳卒中を経験したものの見事復帰した同年代の男性の闘病記を読んだことがきっかけで、持ち前の明るさを取り戻しました。
自分より重い病状の人が逆境を乗り越えたことに勇気をもらい、また、回復への道筋が見えたことが希望につながったといいます。
以来、リハビリに積極的に取り組み、立山連峰の登山に成功するまでに回復しました。
一方、闘病記を書く側にも理由があります。
12年前、乳がんと診断され、左乳房を全摘した63歳の女性は、患者に役立つ具体的な情報を伝えたいと闘病記を書きました。
自身が読んだ闘病記が、抽象的なキャッチフレーズを書いたものばかりで参考にならなかったからです。
この女性は、がんの治療と仕事を両立するための具体的な工夫や再発の不安を乗り越えるための気持ちの持ち方など自分自身の体験をもとに詳細に記し、多くの読者から感謝の手紙が届きました。
闘病記の利用を始めた医療界の最新の動きも交えながら、そのパワーをお伝えします。