吉田調書を巡る朝日新聞の誤報問題で朝日は6人の記者の処分を決めたという。その困惑も収まらない中、朝日新聞に新たな衝撃が走った。吉田調書報道に続く第2の原発誤報事件といってよい。朝日が誤報であることを(朝日のことは全く言及していないが念頭にあることは確かだ)を報じたのは、またしても「宿敵」産経新聞である。
「がれき撤去でコメ汚染されず 昨夏の福島第1原発、規制委が実測値報告」(産経新聞11月26日)
東京電力福島第1原発で昨年8月に実施したがれき撤去作業で飛散した放射性物質が、20キロ以上離れた水田を汚染したとされる問題で、原子力規制委員会は26日、放射性物質の降下量の数値結果から、がれき撤去による汚染ではないと結論付けた。
これは今年7月朝日新聞が報じた「スクープ記事」を意識し完全否定するものだ。
「がれき撤去で飛散、コメ汚染 福島第一の20キロ先」(朝日新聞7月14日)
東京電力福島第一原発で昨夏に実施した大規模ながれき撤去作業で放射性物質が飛散して、20キロ以上離れた福島県南相馬市の水田を汚染した可能性を農林水産省が指摘し、東電に防止策を要請していたことが分かった。福島県は「他の要因は考えられず、がれき撤去の可能性が限りなく高い」としている。東電は要請を受けて撤去作業を凍結してきたが、広範囲に飛散した可能性を公表しないまま近く再開しようとしている。
要するに、昨年夏、原発内のがれき撤去作業による放射性物質飛来と南相馬市の米汚染とは因果関係はなく東電は「白」だったのである。しかし、朝日は限りなく「黒」であるがことく報じている。
ただ、直接的に誤判断したのは農林水産省であって、朝日が一方的に誤報を流したということではない。しかし記事に「東電は要請を受けて撤去作業を凍結してきたが、広範囲に飛散した可能性を公表しないまま近く再開しようとしている。」とある通り、朝日はこの問題を東電批判の口実としている。
実際、南相馬の「米汚染」は世間では朝日の報道によって知るところとなった。この報道によって多くの国民は原発事故はいまだ深刻で収拾にはほど遠いといった印象をもったはずだ。
それが事実誤認となれば、朝日の報道は一体なんだったのかという疑惑が深まるばかりだ。農水省の判断を鵜呑みにして朝日お得意の東電批判のキャンペーンをはるばかりか、福島の復興を冷淡視してまるでいつまでも福島が危険でなければならないという悪意さえ感じてしまう。
この記事を報じたのが「手抜き除染」報道で名を馳せた青木美希記者であった。こちらの問題も自分のブログで紹介したように、極めてやらせに近く強引ともいえる取材によるもので、その信憑性に疑問がもたれている。
青木記者は吉田調書報道で信用失墜した朝日新聞のなかにあって今では「花形記者」の筆頭のような存在だ。彼女は元々は北海道のローカル紙の出身であるが、その実力から北海道新聞に抜擢され、さらには朝日新聞へと転身している。朝日でも原発報道でスクープを連発してまさに飛ぶ鳥を落とす勢いといったところだ。しかし、吉田調書報道の木村英昭記者同様、反原発の朝日でも「尖っている」(原理主義)ように見える。
その危うさが今回の誤報で露呈しつつある。あの吉田調書スクープ記者が栄光から転げ落ちたように…。