TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に日本が加盟するかどうかで国内が揺れている。一番大きな争点はやはり農業問題だろう。協定を結ぶことで外国から安い農産物が国内市場に流通し国内の農業が壊滅的打撃を受けるというのが、農業関係者を中心とした懸念だ。
私はこれに異議があり、TPPには加盟すべきと言う立場だ。もちろんいろいろな立場で意見は異なるだろうが自分としての個人的な見解としてあらかじめ断っておく。
農業問題は農村問題だと思う。つまり農村の過疎化だ。これは経済成長期から始まり、バブルが弾けた20年前からより深刻になってきた。いまや農業に従事する人の平均年齢は66歳前後と言う。つまり農村のおじいちゃんおばあちゃんが今の農業を支えているのが現状である。このままではいずれ農業に従事する人は絶滅するのではないかと危惧される。つまりTPP加盟はその速度を速めることはあっても、決してそれが根本の要因ではない。
これまで東京を中心として一極集中が過疎化を進めてきた。よく国会議員の議員定数是正など問題になるが、自分から見れば都会人のおごりにしかみえない。ここで過疎化対策をいかに進めていくか真剣に考えていかなければならない。地方分権として道州制もそのひとつの方策であるがもちろんそれでは不十分である。やはり都市と農村の関係において現状は農村が都市に従属しているのが問題だ。これまでは農村が都市の工業・商業の労働供給の基地なってきた。これからは逆に都市部から供給される仕組みをつくる必要がある。そのためには農民の再評価が大前提だ。
いまでも農民の労働水準は高い。いわゆる農家のおじいちゃんやおばあちゃんは世界屈指の農業の達人であるといってよい。ここでいうのも変だが、日本人の宗教観も影響してるのではないか。この世の森羅万象に生命が宿っているという考え方だ。当然農民にとって家畜や米、野菜、果物は自分たちの汗の結晶であり、単なる物ではなく手塩にかけた子供のように思えてくる。当然農産品の質そのものは高い。残念ながら、それを流通させる能力にか欠けている。つまり一種の職人であって商人ではない。結局農協などの組合組織に頼わざるを得ない。しかしその農協は既存組織のとしての地位に安住して既得権益に汲々としてしている感がある。
ここで都市部の行政、学術関係、流通関係、消費関係などがあらゆる能力を結集して有能な農民を強力にバックアップする仕組みを構築することが是非とも必要だ。そして農村が都市に従属するのでなく相互依存する対等な関係でなければならない。そしておじいちゃん、おばあちゃんの知恵を継承していく必要がある。どうしても今後は個人規模の農業は難しく大規模農業の形態に進まざるを得ないが、これまで培ってきた個々の農民の業績は尊重されねばならない。
改めていうが、日本の農産品は世界に冠たる品質を誇っていると思う。品質は一朝一夕には生み出されない。外国の安い産品が入ってきてもそう簡単には負けないと信じている。むしろ、日本の産品が安くなって世界に輸出されても不思議でない。日本の工業品は円高や外国の圧力にもめげず質の向上を高め世界に誇れる製品を生み出してきた。農産品にしても同じことだ。TPPでの外圧を逆に奇貨として世界にうって出る変革こそ望まれるのではないだろうか。