アエラの第1特集が「食品の放射能検査17都道県での実施状況」だ。記事によると政府が東日本の17都道県の約700市町村に食品の検査を指導したが120市町村が検査を一度も実施していなかったと「驚いている。」
しかし内容を見ると岩手県、青森県、秋田県、静岡県、長野県・山梨県のそれぞれ一部である。これらの県は岩手県の牛肉と静岡のお茶を除けば食品に暫定基準値を超えたものはなく出荷規制された食物はない。周知の通り岩手の汚染牛のエサは宮城県の稲わらであった。お茶に関していえば基準数値そのものに問題があることを9日のブログで疑問を呈した。
こうしたなか、記事でも新潟大学の教授が指摘するように「(日本の土壌の性質上)今後は、野菜からそれほど高いセシウムが検出されることではないのではないか」と結論づけている。つまりこれら「不検査」の市町村に基準値以上の放射性物質が検出される可能性、特に野菜は極めて低いといえる。
そこでアエラの矛先は果物に移る。8月にゆずが基準値を超えたが、それ以外の秋の味覚モモやナシ、ブドウは検出されていない。これらは主に落葉樹で事故当時葉がなく汚染を免れたと分析している。またもや空振りだ。
最後にアエラは隠し球をだす。キノコ類だ。記事によればキノコ栽培に必要な菌床を含む原木やそれを砕いて粉末にした「おが粉」の全国一の生産県が福島県でそれが全国で出回っているという。政府が8月に福島の原木やおが粉の流通に規制しようとしたが、それ以前のものはすでに市場に流れてしまったと警告を発する。「牛肉の稲ワラの二の舞」になりかねない…と。
ただ四国徳島県の第3セクターが福島県から取り寄せたおが粉から1キロ当たり最大410ベクレルが検出されたというが、栽培されたキノコそのものがどの程度の数値になっているのか記事にはない。さらに秋田県で福島産おが粉を使ったナメコからキロ当たり5.2ベクレルのセシウムが検出されたというが「トーンダウン」も著しい。
もちろん現在のところ安全性を軽視するわけにはいかないが、今週の第一特集にしては、それこそ羊頭狗肉、あるいは竜頭蛇尾といった見かけ倒しの感を免れられない、というのが私の感想である。
第2特集、今度は魚介類の汚染である。タイトルが長たらしく日本語としてどうかかなと思ったりする。
「もう『危ないかもしれない』を避けるしかない…魚介類100種の安全指数」だ。
ご丁寧にマグロ、カツオ、サバなどの魚を始めエビ、カニ、タコ、イカ、貝さらに海藻などあらゆる魚介類100種で「宮城、福島、茨城、千葉」4県で捕獲・採取される比率(昨年度実績)を築地市場と全国レベルで算出している。つまり築地に出回っている魚介類のうち4県を除いたシェアをA類、全国産出量から4県を除いたシェアをB類として数字をだしている。
それによるとA、Bとも大半は90%前後と今年であっても「安全度」は高いが、カツオはAが38%(Bは86%)ワカメはAが42%(Bは95%)と築地市場で「不安」な食品も一部ある。しかし、この数字福島県はともかく宮城、茨城、千葉を含めているのには疑問を感じざるを得ない。というのも同じ記事で紹介されている資料には原発事故後に魚介類で暫定基準値を超えたものが列挙されている。それによれば63品目中58品目が福島県内あるいはその沖でとれたものだとわかる。残りは5品目のうち4つは群馬県前橋市の赤城大沼の淡水魚で残り一つが茨城県日立市沖のエゾイソアイナメ(キロ当たり540ベクレル)である。つまり千葉、茨城、宮城の「3県」でいえば、1品の例外はあるものの全く魚介類は安全といってよいレベルだ。
残念ながら福島県産の魚介類が風評被害を含めてほとんど市場に流通していない現実を考えると、福島県と隣県3県を同一比するのは問題が多すぎるといえる。福島県をを除いた海産物の今年の数字はA、Bともほぼ「安全指数100%」になるのではないはないかというのが私の印象である。
以上アエラ今週号の特集を見てきたが、放射線医学と食品汚染の素人である私でも、記事の大見出しと実際の内容に落差を感じてしまう。見る方が意地悪いといわれればそれまでだが。記事そのものはウソは少ないが、大見出しだけを見た人は放射能に対する偏見だけを増幅させてしまうのではないか。もしそれを週刊誌が意図していないとしても、結果的には思惑通りになってしまう恐さがある。そんな事を改めて考えた今週号であった。