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粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

核時代の厳しい現実

2014-08-08 16:08:45 | 国際時事

今年広島、長崎は69回目の原爆の日を迎え「核廃絶、世界の平和」が叫ばれる。しかし、周辺には核保有国の中露や開発を進める北朝鮮が核の脅威を日本にちらつかせている。ただ単に核兵器反対を叫ぶだけではこの厳しい現実からは逃れられない。

あの軍事評論家である田母神俊雄氏のツイッターを覗いたら、いかにも氏らしいツイートに出会った。

 

10年後、20年後に核兵器がなくなっていることは絶対にありません。それは戦争抑止兵器だからです。核兵器がない世界よりは、核兵器があっても戦争がない世界のほうがいいのです。核兵器を持たない日本などがいくら核廃絶を訴えても、核保有国がその意見に耳を傾けることはないのです

 

確かに広島の式典をみると中国を除く米露英仏の各国大使が参列していた。しかし、これらの国が日本国民の核廃絶の声に耳を傾けることはありえない。中国に至っては現在80発の核兵器が常に日本に向けられているという。北朝鮮の核開発は脅威が増すことがあっても減じる可能性は低い。

かろうじて同盟国アメリカがこうした脅威に対抗すべく日本の防衛に当っている。日本はこの緊張のなかでなんとか平和を維持している。したがって、日中が領土対立の最前線で不測の事態が起った場合、局地的な衝突はあっても本格的な戦争は考えにくい。ただ緊張が続くだけだ。以前あれだけ国境紛争が頻繁にあったインドとパキスタンが、共に核兵器を保有したことで深刻な対立から遠ざかっているのもそのためだろう。

田母神氏がいうように核兵器が「戦争抑止兵器」であることは紛れもない事実だ。決して憲法9条によって守られていることはありえない。ただ原爆投下国による核の傘というのがなんとも皮肉だ。これが戦後体制の維持あるいは脱却かという日本の今後を巡り日米関係が微妙な影を落としている。

 

イスラエルだけが悪いのか

2014-07-16 21:41:18 | 国際時事

イスラエルはエジプト政府による停戦の仲介を一時受け入れたが、ガザのイスラム原理主義勢力ハマスがこれに応じずロケット砲で攻撃したため、ハマスに対する空爆を再開したという。今後は地上軍をガザ地区に投入することもイスラエルは考えているようだ。

この紛争は過去に度々繰り返されているが、世界の世論はどうもイスラエルを非難するものが圧倒的に多い。とりわけ日本のメディアがそうである。今回もガザの養護施設がイスラエル軍によって空爆されて、病弱な住民たちが犠牲になった。その痛ましい映像が流れて、イスラエル軍のいかにも無慈悲な攻撃であるかのように強調されている。

しかし、本日のラジオに出演していた経済評論家の上念司氏が別な視点でこの現状を解説していた。東京ニッポン放送の夕方に放送される「ザ・ボイス」という番組で毎日日替わりで専門家が時事問題を独自の切り口で解説してくれる。番組内容はその日の内にネットでアップされユーチューブで聞くことができるが、目から鱗と感心することが多い。

上念氏によれば(動画の25分あたり)、イスラエルはガザを攻撃する前に攻撃すr場所を電話やビラ放送で知らせ、逃げるように呼びかけるという。ただ、民家とか病院、モスクにハマスがロケット砲を隠していて標的なるのだが、そこから逃げる住民に対してハマスが銃で脅して逃げるのを妨害する。結果的に犠牲者が多く出ているというわけだ。そして世界にガザの惨状を伝える映像が意図的に発信されることで、イスラエルを非難するプロパガンダともなっていると上念氏は指摘している。

イスラエルは地上軍を今後導入する予定だが、事前にガザの住民にビラを撒いて北部から逃げるよう連絡しているともいう。避難が完了したら攻撃するのではないかとも見られている。地上戦によって紛争はより深刻なるが、多くその犠牲になるのはガザの一般住民だ。つまり、ハマスがいわば住民を自分たちの防衛の盾として使っている可能性が高い。

こうした例は、かつて湾岸戦争でもフセイン政権が駐在の外国人を米軍に攻撃されそうな場所に集めて、無防備で晒したことが思い起こされる。おそらく、最近のシリアやイラクのイスラム原理勢力の占領地区にオバマ政権が空爆に踏み切れなかったのも、こうした人間の盾になった一般住民の犠牲を懸念したことが一因であると思う。

もちろん、それでイスラエルの空爆が正当化されるものではない。しかし、この世の紛争には一方だけが悪者と決めつけられない。大国や政府軍といった兵力で圧倒している側の攻撃が非難されることが多い。しかし、弱者側が劣勢を挽回するため、国際法を無視した非人道的な行為に走ることも少なくない。

かつて作家の村上春樹がイスラエルの講演で、自分は壊れやすい卵と高くて固い壁のどちらに与するかと問われれば弱い卵の側に付くと語っていた。近代兵器を駆使するイスラエルでなく、ロケット砲というローテク兵器で応戦するパレスチナ側を支持することを暗に表明するものだった。しかし、これは文学の世界では許容されても必ずしも現実の政治の世界では通用しないと思う。弱い者の同情だけでは事の本質を見誤ることもある。

追記1:上念氏は今日の番組で他の話題でもユニークな解説をしている。特に1番目の川内原発の基準審査認定(動画の冒頭から)や5番目の中国経済の内実(動画18分あたりから)については大いに傾聴すべき内容だ。

追記2:村上春樹がイスラエルの演説で言及した「壊れやすい卵」という表現は、おそらく石などを投げて抵抗する一般住民を想定したものと考えられる。彼はロケット砲については「高く固い壁」の側のものとしている。この点は自分自身の認識不足であった。

 

 

シンゾーとバラク

2014-04-25 10:48:56 | 国際時事

昨日の安倍首相とオバマ米大統領による共同記者会見で、安部さんが何度も「バラク」と相手方をファーストネームで呼んでいたのに、オバマ氏からは最後まで「シンゾー」の名前は出てこなかった。ずっと聞いていてひどく不自然な印象を拭えなかった。前日の寿司屋での会談ではお互いフファーストネームで呼んでいたようだが。

テレビのコメンテーターが解説していたが、やはりオバマ大統領に「怒り」の感情が残っていたのだろうか。オバマ大統領は「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象」であることを本人の口から率先して表明するほど日本を支持する配慮をしたのに、TPP 交渉では日本は譲歩せず頑な態度をとっているこへのいらだちだろうか。

「俺がこんなに日本の防衛のため努力しているのに、牛肉、豚肉の関税大幅引き下げも駄目、米自動車の規制緩和による輸出も駄目では、割が合わない」とオバマ氏は歯ぎしりしているのかもしれない。そこには今年の中間選挙で自分を支持する業界に成果を示さなければならなに厳しい事情があるのだろう。そう意味ではまだ安倍首相の方に余裕すらみえる。

しかし、実際3月頃は日米関係が靖国問題や慰安婦問題でぎくしゃくしていてアメリカからは安倍首相を右傾化した民族主義者とみなす空気が充満していたようだ。そして米政府による「安部下し」の露骨な動きがあったともされる。3月危機とも呼ばれるほどに安倍首相にとっては深刻な状況が続いたとのことだ。

ただ、そんな中ケネディ駐日大使が安倍首相と密かに対談して、首相が過激な民族主義者ではなく極めてノーマルな現実主義者であることをオバマ大統領に直接伝えたようだ。オバマ氏もそれを聞いて安倍首相への先入観を改めたという。(ニッポン放送「ザ・ボイス」青山繁晴氏の証言より)

オバマ大統領の改心?によって尖閣問題で日本を強力に後押しすることにもなったが、そこは政治家だ。自分の政治的な立場を維持することに汲々としており、「見返り」を要求する。しかし、今回それが芳しくなかった。前日寿司屋でケネディ大使とともに人生最高の寿司を舌鼓してご満悦だったが、次の日が少しご機嫌斜めだった。そんな複雑な心境が会見に現れたといえる。

「バラク「と呼んで悦に入る安倍首相、かたや「安倍首相」と呼んで冷淡さがどこかみえるオバマ大統領。今回の日米首脳会談では日本側が有利に進めたようだが、一寸先は闇だ。米政界には親日派と親中派はしのぎを削っていて裏で暗闘を繰り広げているといわれる。

ミシェル夫人の周辺にも中国人の影があり、今回の不同行にも繋がっているという。逆に3月の夫人の中国訪問は米国に留学中の習近平の娘が画策に動いたともされる。大統領の事務所にも中国系を2人抱えている。ケリー国務長官は中国重視が際立っているという。TPP交渉などが進展しなければ、オバマ大統領周辺で親中派は勢力を増して対日対中の力点が変化しないとも限らない。シンゾー、バラクと気遣いなしに自然と飛び交う日が来るのは期待したいが。

 

女性高校教師とミシェル夫人

2014-04-15 13:17:55 | 国際時事

埼玉県の女性高校教師が、自分の高校の入学式を欠席し息子の高校の入学式に出席したことが問題になっている。この50代の教師は新学年で1年生の担任に決まっているのでなおさらだ。保護者が県の教育委員会に匿名で通報してそれが発覚したという。端から見ても自分の職務よりもプライベートを優先でさせることは教師にあるまじき行為だと思う。

それ以前に教師から休暇願が出された時、ここの校長はどう判断したのだろうか。さらにはこの教師の家庭事情を想像してしまう。母子家庭でなければ、夫はこの妻の行動をいかに見ているのか。「あまりみっともないことはするなよ」と夫は忠告できないほどこの妻の発言力が強いのだろうか。息子は「母さんは来なくてもいいよ」なんていえなかったのだろうか。

他人の家庭なのでその内部事情は知る由もないし、こちらがそれ以上詮索しても仕方がない。しかし、これが一国の元首の家庭の場合はどうか。オバマ米国大統領のことだ。今月国賓として日本を訪問する。天皇皇后両陛下ご臨席の晩餐会にオバマさんは出席する。しかし、なんとミシェル夫人が同行せず当然晩餐会にも臨席しないという。

その理由が子どもの学期中のためというとんでもない話だ。先月は母子で中国を1週間も訪問し習近平夫人とも会見している。この時期は子どもの春休み中だったというが、今回の訪日不同行をみるとなんとも日本への非礼の度が過ぎていると思う。オバマ政権が日本より中国を重視していることの現れと見る向きもあるが、はたしてどんなものだろうか。

正直な話、ミシェル夫人の気まぐれに過ぎないのではないか。どうもこの夫人ファーストレディとしても自覚がなさ過ぎる。政治の世界でファーストレディ外交とよくいわれる。男同士の外交は、表向きの建前が先行しやすいが、夫人同士がプライベートの交流を深めることで相互の国民の親睦を高めるのに一役を買う重要な役割がある。

昨年安倍首相は米国を訪問した際には、昭恵夫人を同行させなかった。実は当時ミシェル夫人の都合で夫人同士の会談が出来ないためということだったようだ。昭恵夫人は会うつもりでいたのだが。そして今回のミシェルの不同行、結局両夫人の会談がいまだ実現していない。朴槿恵韓国大統領ばかりを責める訳にはいかなくなる。さぞかしケネディ駐日大使も気をもんでいることだろう。

しがない噂によると、オバマ夫妻の夫婦仲は芳しくないという。昨年オバマ大統領がデンマークの美人首相と談笑していたのをミシェル夫人が激怒したという報道もあった。あるいは歌手のビヨンセとオバマが不倫している噂も。それこそ仮面夫婦そのものになってしまう。

それはともかく、政務よりも子どもそして自分自身を優先させるミシェル夫人、息子の入学式に出席した女性高校教師とだぶってみえる。困惑するオバマ大統領と女性教師の夫。不信感を募らせる日本政府と日本国民、かたや担任を受け持つ生徒と保護者、規模の違いはあるが、いいようのないやり切れなさを感じているることは確かだ。

 

ロシアのクリミア編入と日本

2014-03-19 14:52:09 | 国際時事

ロシアのプーチン大統領がクリミア自治共和国のロシア編入に署名した。16日のクリミア住民投票の結果を受けての動きだが、国際法上の是非はともなくその素早い決断を見ると彼の政治的手腕には感心せざるを得ない。確かにロシア議会やメスコミの大半が親プーチンという現状もあるだろうが、その決断力はやはり傑出しているといえる。

政治思想家のマキャベリが政治には決断のスピードが大事であることを君主論で説いていた。周りから喜ばれることはともかく、嫌がられることでもそれがやむを得ない時には直ぐに決断しなければならない。遅れる事によって、周りの不満が増幅して収拾ががつかなくなるからだ。

アメリカが制裁措置として、ロシアの政府高官の訪米や在米資産の凍結を表明したが、その効果はほとんど期待できない。EUも表向きロシアの暴挙を非難しているが、たいした具体的な措置がとれない。EUの主導国ドイツがパイプラインを通じてロシアからガスを輸入していて国内エネルギーの3割を依存しているとあってはおいそれと厳しい制裁に動けない。

肝心のウクライナ暫定政府とて今回のロシア編入宣言を表向き厳しく批判をしているが、内心やむなしと考えているのではないか。もともとクリミアはロシア領で1950年代にフルチョフによってウクライナに編入された。いわば、「棚ぼた式」によって得られた領土であって古来よりの領土という認識は弱いのではないか。クリミアの産業も観光と農業で特別ウクライナには必要不可欠とは言いがたい。おまけに圧倒的にロシア人が多いときてはウクライナに留まっていてもその統治にはてこずるのではないか。

そしてウクライナの財政基盤の貧弱さ。その人口規模からいってギリシャの比ではない。表向きEUは財政支援を表明しているが、とても救済はできないだろう。ましてEU加盟など到底あり得ない。ウクライナの経済危機は今後深刻になっていくが、大半のエネルギーをロシアに依存するウクライナにとってはどうしてもロシアとの関係改善に進まざるを得ない。

こうしたEUやウクライナの状況を把握した上でのロシアによるクリミア軍事介入であり、今回の編入宣言である。その点プーチンの政治的な眼力は鋭く対応もしたたかといわざるをえない。

しばらく、欧米の対抗措置が続くだろうが、いずれそのほとぼりが冷めるといくものと予想される。プーチンもクリミア以外のウクライナ領土に対しては野心がないことをいち早く表明していて、これ以上政治的緊張が高まることを避けようとしている。これは欧米やウクライナにとって「渡りに舟」であろう。

いずれ「政治の季節」は終わって「経済の季節」が始まる。ロシアとて今回の騒動で経済的な影響がでているようだ。国内のエネルギー株が急落している。経済力の半分をエネルギーに頼るロシアにとって由々しき事態だ。今後プーチンは経済回復に全力を投球するものと思われる。

そこで日本との関係が大事になる。日本は今回の問題でアメリカと共同歩調を取らざるを得ない。言い方は悪いが、仕方なくアメリカに従わざるを得ない。しかし、来る「経済の季節」に向けて日本はロシアの情勢をじっくり観察して機敏に対応する必要がある。その点で安倍首相とプーチン大統領とのこれまでの懇意な関係に期待したいところだ。