ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

《浜田知明作・風景》に捧ぐ

2015-04-07 17:04:01 | Poem

 《浜田知明作・風景》


豪雨のなか
若い兵士の亡骸はすでに大地に溶け合おうとしていた
しかし古びた軍靴は歩き出そうとしていた
どこへ?祖国へ 

何故自分はここにいるのか
亡骸はつぶやく
お前はどこへ行くのか
海を渡る、と軍靴がつぶやく

若い兵士は
どの地で産声をあげたのだろうか
そこからどこへ?何度?移動したのか?
海を渡ったのか
どの母親から生まれたのか
父親は誰か
記憶は抹消され
物語はすべて一律化させられた

それぞれの一つの死が
山積し 散乱する
大地はすべてを抱きよせることができるだろうか
深い怒りは死とともに眠ったか
いや 疲れた軍靴は尚も歩こうとしているのだ

雨音が遠ざかってゆく
やがて空の青を映して
海の青が深まるとき
虹の足が降りてくる


   *    *    *


ささやかな献詩です。


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