25
名にし負(を)はば 逢(相)坂山のさねかづら
人にしられで くるよしもがな (三条右大臣 873~932)
「さねかづら」の「ね」は「寝」。「かづら」はからみつくもの。
かなり濃厚な表現になっている。逢うことの難しさが歌われている。
26
小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ (貞信公 880~949)
「みゆき」は漢字で書くと「行幸」つまり天皇のお出かけ。
その日まで、小倉山のもみじよ、散らずにいておくれ。
27
みかの原 わきて流るる いづみ川
いつ見きとてか 恋しかるらむ (中納言兼輔 877~933)
記憶に遠い方を何度も思い出そうとしているのは何故?
「恋しい」という言葉すら遠いものと思えてならないのに
湧き出る泉のように胸の奥で音を立てています。