BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

シベリア

2021年08月02日 | 古本
シベリア抑留のことを書いた本はあまたある。しかしこの本は実父の話をまずは他人に聞き取らせ、著者が整理してまとめ、
父に確認を取るという手法を行った。思い入れや他の感情を抑え、極めて冷静に推敲したものだ。
カバーのコピーにはこれ以上ないというように、一人の軌跡全体を印した文章になっている。以下その文章から。
<とある一人のシベリア抑留者がたどった軌跡から、戦前・戦中・戦後の生活模様がよみがえる。戦争とは、平和とは、高度
成長とは、いったい何だったのか。戦争体験は人々をどのように変えたのか。著者が自らの父・謙二(1925-)の人生を
通して、「生きられた20世紀の歴史」を描き出す。>
アタシの父は大正元年(1911年)の生まれだった。徴兵検査があったが不合格だった。片腕が肩より上に上がらず、それが
理由だったと何度か聞いた事がある。そのおかげでアタシが戦後に生まれ、父も人を殺さず殺されもせず、抑留などという経験
をせずにすんだ。その後の荒れ地での百姓という苦労はあったにせよ、アタシも戦争というバカな手柄話を聴かずにすんだ。
毎年8月も半ばになると、あの先の大戦戦争の検証番組などが放送される。NHKも埒も無い朝ドラや、戦国時代のアホな武将の
大枚をかけた番組などは止め、この本の主人公の庶民生活史などの一生をドラマ化したらどうか。これ程正確で具体的な人生史
の原作はほかには無いだろう。
今年の8月はコロナやオリンピック関係の番組で、忌まわしい戦争の番組などは無いだろう。もうすぐ広島や長崎に原爆が投下
された日が近づく。マラソンはそれらをつぶすだろう。
 「生きて帰ってきた男ーある日本兵の戦争と戦後」 著者 小熊 英二  岩波新書 定価940円+税
  ( 2017年5月8日 第11刷発行 ) ※初刊は2015年6月、その後11刷も重刷されたことに感謝だ。

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