BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

元映写技師

2018年11月16日 | 古本
月刊雑誌・小説新潮に昨年連載されていた10本の連作短編をまとめた単行本。桜木さんホントに上手くて舌を巻く。
日常使う国語辞典で事足る語彙の中で、難しい単語などないのにこれほどの表現ができ、それを捻り紡ぎだす。
夕方読みだして深夜に読み終えた。後半2編はやや緩慢で眠くて記憶をなくしたが、翌日読みなおした。

ある1組の言わば二人暮らしを交互に事情を連ねた。女は30半ば、男は特に記述が無かったが同じくらいだろう。
女は看護師、男が驚いたことに元映写技師で今はフリーで月に何回かのフィルム上映に地方などから声がかかる。して
札幌の大通リにある映画資料などを展示しているNPO法人「北の映画館」で、週に1日2日留守番ボランティアを
している。どこが驚きかというと、今年に知り合った〔M〕さんがモデルになったのではというくらい似た人物設定だ。
ひよっとして桜木さんから取材など受けたのかもと想起させる。(今度会ったら直接聞いてみたいが。笑)
桜木さんの登場人物の職業描写はややくどいきらいがあるが、今回もそれなりにリアルだ。映写室でのフィイルムの扱い、
映写機2台の交互上映や1本に繋いだターンテーブル式など、これらの所作は専門の知識や経験がないと表現できない。
そんな中、小説の男はシナリオを書いて応募などしているがモノにはならない。アタシの知る〔M〕さんも元映写技師で
いまは新聞に画の連載を持っている。どちらも表現行為をしていること、画とシナリオ、違いはその辺だけだ。そして
〔M〕さんも「北の映像ミュージアム」でボランティアをしているのだ。
ただアタシは〔M〕さんのプライベートな部分は何も知らない。
それにしてもホントに誰が桜木さんに35mmフィルム上映の状況や現場を教えたのか、その意味でも興味が尽きない。

 「ふたりぐらし」 著者 桜木 紫乃  新潮社 定価1450円+税
  ( 2018年7月30日 発行 )

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