BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

おんなの一念

2017年11月04日 | 古本
小檜山さんの古い本が見つかった。いずれも切ないおんな達の短編が20篇。何処にでもある風景の
中にある、どうにもならないおんなの事情。おとこもおんなもひょっとしてこの中の物語と同じ立場
であってもおかしくないと思わせる。高度成長期に取り残された悲しくつらい女の生だ。
小檜山さんだから目につき書けた世界、それは愛しい天女とも言えるひとたち。
 「天女たち」 著者 小檜山 博  河出書房新社 定価1236円
  ( 1985年1月25日 初版発行 )

名古屋拘置所の厚く高い塀の外を歩くのは、中にいる息子〔奥西 勝〕に差し入れする母、タツノ。
「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ最高裁でも死刑が確定していた。度重なる再審請求も無駄に
終わった。冤罪で無罪を信じていた母は1988年、84才で栄養失調で亡くなった。これは食の
細さもあろうが、高齢まで賃仕事をして息子に送金したためか。
死刑囚の勝氏は有罪になってから一度も娑婆にでることなく、冤罪を訴えながら2015年10月
八王子の医療刑務所で死亡、89才だった。いわば獄死である。
おしなべて検察官は、矛盾する証拠やアリバイ、証言などを捻じ曲げ、不利となる証拠は提出しな
い。それどころか強引な証言や捏造証拠さえ平気でだし、白を黒として法廷に臨む。そんな例は日
本の冤罪事件裁判歴史の中で枚挙にいとまがない。
この事件もぶどう酒の配達時間や毒物の鑑定にも多大な疑義がある。奥西 勝氏も被疑者の一人では
あるが真相と真犯人は分からぬままである。一審の三重県津市地方裁判所では疑わしいが直接証拠は
ないということで、無罪になった。その後控訴され、以後は逆転有罪死刑判決が出て、半世紀ともい
える時間を拘置所に繋がれた奥西 勝、無念の獄死であった。
 「名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀」 東海テレビ取材班 岩波書店 定価1900円+税
  ( 2013年3月25日 第2刷発行 )

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