BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

教訓その①

2009年07月18日 | 古本
 写真展の中にあった一枚に目が留まった。
写真家森山 大道さんが1978年の一夏、札幌の白石区に
拠をかまえ、撮ったものの中にあった。
 道内のどこか場末のスナック、丸い7脚のイスの左端に座り、ひとりの若い女
の子がこちらを振り向いている。客なのかホステスなのか、口開けの客を待って
いるママさんにもみえる。ありふれた状況だとしても、心を捉えたのはその表情
にあった。一途で無垢、この先を恐れたりしない若さがあった。あるがままを受
け入れ、達観した明るさというよりは、この先の人生にある何者をも討ち貫く強
さに満ちている。今もきっとどこかで人の心を捉えた生き方をしているいるのだ。
 果たしてアタシの若い日に、こんなひとに遇っていたか、いなかったかどうか。
記憶の地層を探っても、そこはもう曖昧だ。
 
 この写真が欲しいと思ったが、ハガキ状にはなっていなかった。
入場口の森山ショップには、写真集やグッツが森山じゃなくて山盛り。アタシは
発作的につい活字の多い本を買ってしまった。係りのお姉さんが美人だったこと
に動揺し、冷静さも欠きミエを張ったのだ(笑)。アタシは1ヶ月分の本代を、
一瞬にして使ってしまった。こういう展覧会は入場料だけをポケットにねじ込ん
で行くべきだ、というのが教訓その①だ。(笑)

 「森山大道、写真を語る」(※写真と対談) 著者 森山 大道  青弓社
  ( 定価3000円+税 2009年3月14日 第1刷 )