斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

高田公園でボート転覆、1人死亡

2016年04月03日 22時34分20秒 | 水難・ういてまて
新潟県内のニュースです。
新潟日報から。「4月3日午後6時すぎ、上越市本城町の高田公園の堀で、少年4人が乗った手こぎボートが転覆、4人が堀に投げ出された。3人はすぐ救助されたが、同市の男子高校生(15)が一時行方不明となり、およそ2時間後に発見されたが、死亡が確認された。」

高田公園の堀のボートとはこれこれです。たいていの内水面、しかも池や堀では救命胴衣を着用させることなくボートを貸し出ししていますので、ボートが転覆して投げ出されれば、溺死の確率が高くなります。助かった3人のように転覆したボートにつかまるのは、このような非常時における賢明な手段です。転覆したボートに上がることは不可能なので、どこかにつかまって呼吸を確保すること。

ボートにつかまることができない、あるいは遠くに離れたら、背浮きで呼吸を確保し、救助を待ちます。4月の夜なので、少しは厚着をしているでしょうし、靴もしっかり履いていれば、誰でも背浮きで浮いていられます。その間に近くの人たちが浮くものを投げてあげます。近くのボートが近づき、オールを差し出して救助隊が来るまでつかまっていてもらうことも手段として選べます。でも、いずれにしても浮いて呼吸を確保していてくれないとダメです。

ういてまての実技を実施できる条件がそろっていただけに、この水難で若い命が失われて残念です。ご冥福をお祈りします。

プレゼンにしても文章にしても頭の中身のプリントアウト

2016年04月03日 08時04分21秒 | 斎藤秀俊の着眼
良し悪しは、別として。(私の文章など、ひどいものなのでこういう頭だと思ってください)

たいへん字がきれいで、発色のよいプリンターを準備しても、中身のないパソコンにつなげば何も印刷されません。中身があったとしても、たいした情報がなければ、それなりの印刷になります。

人が行うプレゼンテーションにしても、人が書く文章にしても、頭の中のプリントアウトそのものです。もちろん、たいへん優れた中身でもプリンターの性能が悪ければそれはグレードダウンしますが、それでも優れた内容は伝わります。

科研の申請書を書く前に、「ブレインストーミングが重要だ」といつもお話しておりますが、頭の中身の構造を徹底的にスマートにできて始めて洗練された文章に近づくという意味で言っています。このことはもう10年以上言い続けたので、そろそろ次の視点を加えていこうかと考えています。

それは、守備範囲です。人のプレゼンテーションを聞いていて、「何かこのプレゼンは浅いぞ」と感じるときがありませんか。確かに体裁としては整えられていて、見た目はきちんとしている。つまり、ブレインストーミングはされているようです。ところが、後味が悪い。それは、然るべき守備範囲を頭の中に入れているかどうか、その守備範囲はバランスよく配慮されているかどうか、という点が抜けているのです

水難の世界でいえば、救助技術について熱心に議論する人がいます。優秀な救助員の養成、グローバルの技術導入、見た目の綺麗な人員配置。ところが、救助される人のことを全然考えていない。救助を待つ人は最低限どのような形で救助を待てばよいか、そのような教育をどのように繰り広げていけばよいか、が思いつかない。これでは、中身が浅いと言われても仕方ありません。

世の中、数十人、数百人の力(救助側)で、数万人あるいは数億人の物事(要救助側)に対処しなければならないわけです。こういう時は、前者を考える方が手っ取り早い。後者は途方もないことで、後回しにされるのが常です。だから、むしろ数万人、数億人の物事をどうマネージメントするかという点がアイディアになり、しかも数十人、数百人の「今の努力」で劇的に世界が変わるようにしむけるようなことを考えるわけです。

このことは、別に水難の世界に限った話ではありませんので、いろいろと応用して考えてください。