湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

自由題「交錯する時間」

2021-03-15 18:06:40 | オリジナル
自由題でTが書いた詩を投稿します。

交錯する時間

ジャカランダの花が咲いた
影はさらに濃くなり
世界は湿り始めた

朝方 夢を見た
三十才の私と二才の息子に
奥沢の公園で短い間親しかった
おばあちゃんが話しかけていた
やわらかな風が吹いて
息子はかたことをしゃべり笑っていた
名前も忘れてしまった四十年前のおばあちゃん
の 笑顔ははっきりしていた

昼下がり
二才の孫が遊びに来た
汗をかきながら
虫かごを見せる
黄色い蝶が入っている
二才の頃の息子によく似ている
容易く夢の時間につながってしまう

紫の花が揺れて この日
夕暮れはいつまでも明るかった
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種の詩パート2

2021-03-13 08:08:54 | オリジナル
共通テーマ「種」でEが書いた詩を投稿します。

種・日本教徒

国体とは主権の在り処
現今では当然国民
であるが 戦前までは
万世一系である天照の家系

神とまでは思わぬが
降臨以来種が絶えたことがない
まさに超絶
世界にも類がない

俗信によれば
日本人は総てが
天孫につながるとか
いつ絶えるか たよりない
個々の種の不安を
がっきと支える一本の柱

似ている 宗教に
とすればみな
継承におびえるものは
日本教に引きつけられる
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震災忌俳句

2021-03-11 23:50:37 | 文学
10年目の東日本震災忌に作句。

花なずな漂着戸板に「種売ります」
寄ればその時何していたかと春の雪
月朧揺るる画面の浜通り
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種の詩パート1

2021-03-10 15:57:37 | オリジナル
共通テーマ「種」でAが書いた詩を投稿します。

詩―悪疫

取り扱い書店欄にこの本屋さんが載っているのですが
「びーぐる」という雑誌はどの棚にありますか?
――何の雑誌ですか?
詩です
――し?
詩、ポエトリーです
――?

大方の書店員が
現代詩を現代史と
詩集を刺繍と間違える
詩には市民権がない
あのときも「びーぐる」は買えなかった

言葉の種を脳に蒔くと
ウイルスが取り付くことのできぬ
点線のマニエリスムが あるいは
都度変異するウイルスそのものが
うねうねと空気中に生長する
古代では呪術でもあった
詩ですよ、ポエトリーですよ

災厄に襲われた世界で休止している自主グループ
の 以前の会合で
自分の出した詩集を見せてそっと押し戻されたとき
このグループにはいられないとうっすら思ったのだが
詩を解さぬ者たちとの別離に
ふと気づけば今は数多の理由が思い当たるのだった

誰も刈らなくとも種を撒け
悪疫のように蔓延らせろ 
どんな目印も付けられないし追跡できない
ポエトリーの種の量は変わらない
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忘れるの詩パート2

2021-03-09 17:42:16 | オリジナル
共通テーマ「忘れる」でEが書いた詩を投稿します。

忘れる

友人に東大卒がいる
彼曰く 入試は簡単だ
過去問をパターン化し
解法を覚えればいい
新しい問題などまれにしか出ない
もし出ればそれは捨てる

当方はまず
問題が理解できない
できても覚えられない
覚えても端から忘れる
連中の頭は
脳細胞の一つ一つが
小引き出しになっているらしい
そこにパターンを詰め込んでおく

実社会は入試に比べて
新しい問題が頻出する
そのとき小引き出しは機能しない
同じスタートに立てるわけだ
君よ 希望せよ
虚心に問題を読み込み
愚直に対処する
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忘れるの詩パート1

2021-03-08 13:47:45 | オリジナル
緊急事態宣言再延長で、今日の詩の合評会も延期。
会えないけれどそれぞれ創作は続けようということで、新しいテーマを決めました。
「忘れる」「種」です。
上記新テーマか自由題の新作を、3月末日までにご提出ください。
では早速、Aが「忘れる」で書いた詩を投稿します。

健忘

人の名前を忘れてしまった
カードをパランパランと
読み取った検索機が
五十音順に読み上げる記号
の中から 正しい名前を
思い出して告げなければいけない
相手が電話口で待っている

目覚めてしまえば
思い出す義務は消える
無理に跳ね起きた

昨夜の夢を反芻しながら
新しい夢に入っていく
電話口でずっと黙って
待っている役人がいた
通話を切ってしまおう

一昨夜と昨夜の夢を反芻しながら
次の夢に入っていくと
もう思い出せない
人と名前を問い合わせる
役人からの電話が
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句会を延期します

2021-03-07 11:14:49 | 文学
緊急事態宣言延長で、予定していた3月10日に逗子市民交流センターが利用できなくなりました。
句会を3月24日(水)14時~に延期します。その時に新しい兼題「耕」「行」で6句投句をお願いします。
「行」はNHK全国俳句大会の新しい題で季語ではないので、春の季語を付けて作ってください。
よろしくお願いします。
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生の句

2021-03-05 16:04:39 | 文学
昨年は、第22回NHK全国俳句大会の題「生」で私たちも作句しました。
その中から、点の入ったものや添削したものを改めてまとめてみました。

息苦しさ耐えて今年も春を生き
一生の願い叶ひて古草に



生きる意味求めかねてやみみずはう
生花店作業場に落つ薔薇の棘
梅雨晴に古里語る生き証人
生ビール両手で六個運び来る
マスク取り生ビールの泡髭になり
まず生中酔えばますます声高し
生きながら世の中心地積乱雲
今生をうたえ踊れや夏祭
今生の空に名残の花火かな
今生や花火消えゆく間までなし
今生にあと幾度の酷暑かな
今生の夏に戦の聲を聞く


生活科の野外授業で椎拾う
掃苔や先を越したる生花あり

無季
恩讐や泪橋に献ずる生花
夏にいっぱい詠みましたね。集まって句会ができるようになったら、この中からみんなで天地人を決めたいと思います。
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おたまじゃくし俳句

2021-03-04 18:47:35 | 文学
名超緑地に孵りたてのおたまじゃくし。

先月の俳句教室では下記の蝌蚪2句に、講師からだけ点が入りました。
鑑賞力や想像力が受講生と違ったり、趣味の合う合わないがあったりして、よくこういうことがあります。
あやかしをかきまぜてゐる蝌蚪の群
蛙の子水ぬめらせて変容す
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自由題「春の悲観論」

2021-03-02 18:10:54 | オリジナル
自由題でAが書いた詩を投稿します。

春の悲観論

ここに生まれることは
新たな傷を身に刻みつけること
回復できずに泣いて過ごすこと
もうまっさらではない

たとえば鼓膜を
たとえば膝を
たとえば歯を
たとえば腸壁を
ついばまれる前の
状態に戻そうとしても
鴉に嘲笑われるだけ

欠けた貝殻を踏んで
海岸を歩きつつ
新たに出会った人に
打ち明け話をしてみる

生前に引き返したり
晴れた空に昇ったりすることを
望んでも仕方ないから
に他ならない
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