今年6月の誕生日で100歳になる柴田トヨさんの詩集『くじけないで』。
昨年末、NHKでドキュメンタリーが放送されたりして、友人と話題にしてて、
「図書館にリクエストしてるんだけれど、当分回ってきそうもないわ」
と言ったら、友人が持ってるからと貸してくれました。
恐縮至極m(__)m
自分で買えばいいのにねー。
【くじけないで】
ねえ 不幸だなんて
溜息をつかないで
陽射しやそよ風は
えこひいきしない
夢は
平等に見られるのよ
私 辛いことが
あったけれど
生きていてよかった
あなたもくじけずに
始めにさ~~っと全編読んだ時は、言葉が平易過ぎて、やわらか過ぎて、優等生過ぎて、血を吐くような思いで言葉をつむぐ職業詩人の立つ瀬がないなーと思いました。
なんと『くじけないで』今年1月にとうとう発行部数100万部を超えたそうなのです。
詩集って、1万部売れたら、成功だと聞きました。
ところが・・・です。
繰り返し読むうちに、毎週息子さんの来訪を待って、完成させるトヨさんの詩の行間にひそむ気持ちが響いてくるようになりました。
【溶けてゆく】
ポットから
注がれる
お湯は
やさしい
言葉のようだ
私の
心の角砂糖は
カップのなかで
気持よく
溶けてゆく
若々しい詩でしょう?
26歳、新婚さん? 夫を送り出した朝のひと時かな?
それとも、大きなプロジェクトを完成させ、久し振りにゆっくりした週末の昼下がり、居間のソファーに座って紅茶を飲もうとしている27歳か?
短いフレーズの中からたくさんのイメージがわいてきます。
90歳を超えた詩人の作と知っててもね。
私の好きな詩はこれ。
【先生に】
私を
おばあちゃん と
呼ばないで
「今日は何曜日?」
「9+9は幾つ?」
そんな バカな質問も
しないでほしい
「柴田さんは
西条八十の詩は
好きですか?
小泉内閣を
どう思います?」
こんな質問なら
うれしいわ
100歳近くになっても広い世界の中に自分を立たせることができる。
そんな風に年をとってきた、生き方が素敵です。