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『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲セレクション(1曲目)David Bowie『Changes』

2024-02-17 11:26:02 | 『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』

国内では震災に飛行機事故。海の向こうではアメリカがイエメンを空爆したりと
波乱の幕開けとなった2024年も既に一カ月以上経過!

ニュースを見ていると、今自分が何不自由なく生きている事が奇跡のように思える。
だからこそ、毎日感謝の気持ちを持って、有意義に大切に生きようと思うのですが、
日々の忙しさに流されて、気付けば時間だけが過ぎている・・・というのも事実なのです。

「ああ、もっと何か色んな事が出来るはずだ。何かを変えなきゃ」と、焦ることもありますが、そんな時、僕は一度立ち止まって、レコードに針を落とします。

このコーナーで最初に紹介する記念すべき1曲目は

デヴィッド・ボウイ『Changes』(1972年)

常に自己の表現として、時代に問題定義をし、文字通り「変化(Changes)」し続けた男、
デヴィッド・ボウイを象徴する名曲中の名曲です。

聴いた事がない人は、まず一度聴いてみてください。CDやレコードで聴ければベストですが、
Youtubeのデヴィッド・ボウイ公式チャンネルでも聴く事が出来ます。

終始躍動するリック・ウェイクマン(元Yes)のピアノプレイや、この曲が初めて収録されたオリジナルアルバム『ハンキードリー』!その中でも「私が愛聴する西ドイツ盤の音質の素晴らしさ!」等、サウンド面でも語りたい事が星の数程ありますが、ソコはグッと抑えましょう。

なぜなら当コーナーは、
「歌詞の面にスポットを当てる」
というコンセプトですので、
それは又の機会にいたします。

さて、それでは早速本題!
皆様が聞かれたと判断し進めます。緊張感のあるイントロから、
一瞬解き放たれたようにドラムのビートが止まり、デヴィッド・ボウイの歌が始まります。

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I Still don't know what I was waiting for
And my time was running wild
A million dead-end streets, and

今も分からない 何を待っているのか
時間は荒々しく走っていたが
行き止まりの道ばかり
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この曲を作った当時のデヴィッド・ボウイは24歳
デビュー後、幾つかのシングルヒットはあったものの、決定的な「大ヒット」のない少し停滞した時期でした。
そんな彼自身の、無駄に時間だけが過ぎていくことへの「焦り」が歌詞に込められています。「時間が荒々しく走る(Running wild)」「100万もの死んだような街(A million dead-end streets)」
という英語ならではの表現が、どこか切迫したストレートな感覚で聴き手に迫ってきます。
また、ここでの「dead-end streets」は英国人ならKinksの古い曲『Dead end street』を思い起こさせることでしょう。

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Every time I thought I'd got it made
It seemed the taste was not so sweet
So I turned myself to face me

いつも成功すると思っていたが
それほど甘くないようだ
だから自分を見つめ直したが

But I've never caught a glimpse
Of how the others must see the faker
I'm much too fast to take that test

僕は今も感じたことはない
人がペテン師を眺めるときの視線を
そのテストを受けるには、僕は敏速すぎる
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無駄に過ぎ去る時間の中で自分を見つめ直す主人公(ボウイ)
そこに対する焦燥感と周囲の人たちとの間隔のズレが歌われています。
ここで歌われている事は当時のデヴィッド・ボウイの心情そのものですが、
現代を生きる僕たちにも十分当てはまる内容だと思います。

ここでボウイは自分自身を鼓舞するように、
この曲で最も重要なメッセージを歌い上げます。それが次のサビです。

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Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, don't wanna be a richer man
変化だ (向きなおれ 奇妙なものに目を向けろ)
無数の変化 (金持ちの男になりたがるな)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, just gonna have to be a different man
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (彼は別の男になるべきだ)
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この歌詞がこの曲の決定打と言えるでしょう!

「奇妙なものに目を向けろ」
とは、そこだけを切り取っても今いちピンと来ないかもしれませんが、
私はこの「奇妙なもの」を「他の人と違うもの」と解釈します。
続く「金持ちの男になりたがるな」も同様に、他人の真似をしたり、価値観の中で生きるのではなく、
「自分自身のオリジナルの個性をでどんどんやっていこうぜ!」と言った意味合いに感じます。

ボウイ自身はミュージシャンですから、他人の真似をしたり、自分の音楽を殺してまで売れようとする事への問題定義のようですが、ミュージシャンでなくても、社会を生きる僕たちにも十分に当てはまる一節でしょう。

相手の顔色を窺ったり、人と違うことをするのを恐れて、委縮するなんて馬鹿らしいですからね。

そして、ここで、この曲の重要なフレーズが、突き放すように歌われます。
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Time may change me
But I can't trace time
Oh-yeah
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
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この一節が加わる事で、今までの歌詞に一気に重みが加わります。
「自分を変えよう」という前向きなメッセージの中に、どこか銃口を突き付けられたような焦燥感があり、人生は決して楽観的なポップソングじゃないんだと気付かされます。
「人生と真剣に向き合う」というロックミュージックの存在意義を感じます。

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I watch the ripples change their size
But never leave the stream 
of warm impermanence, and
さざ波の変化を観察する
形を変えても流れから離れる事はない

So the days float through my eyes
But still the days seem the same
穏やかな永遠の流れから日々は目の前を流れてく
けれどそれはまだ同じように見える

And these children that you spit on
As they try to change their worlds
君が鼻であしらう子ども達が
世界を変えようとする時

Are immune to your consultations
They're quite aware of what they're going through
彼らは君の慰めには耳を貸さない
通り過ぎていくことを彼らは完全に意識しているのだ
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次の歌詞では、さらに「変化」に対する様々な例が組み込まれていきます。
「さざ波」や、「世界を変えようとする子ども達」のような多様さが、この曲に更なる深みを加えていきます。特に「子どもが君の慰めに耳を貸さない」という表現に、「年をとって下の世代と感覚がずれていく」という、誰しも感じる焦りや違和感が表現されており興味深い部分でしょう。

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Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, don't tell them to grow up and out of it
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (成長して子どもから脱皮せよとは言うな)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, where's your shame?
You’ve left us up to our necks in it
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (恥ずかしくはないのかい?)
君は問題に首までつかったまま残されてるんだ

Time may change me
But you can't trace time
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
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二回目のサビでは、さらに追い打ちをかけるメッセージが歌われます。
「成長して子どもから脱皮せよとは言うな」
ここでいう「子ども」はポジティブな表現だと思います。夢を捨てて「現実的で魅力のない大人」になってはいけない
という感じでしょうか。
「君は問題に首までつかったまま残されてるんだ」これこそもはや救いのない表現ですが、
無駄に抽象的で、ごまかしの多いポップソングが溢れる中、やはりこういったハードパンチなメッセージは大事なのだと思います。

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Strange fascination, fascinating me
Ah, changes are taking the pace I'm going through
奇妙な魅力は僕を虜にする
変化は通り抜けてきたスピードでやってくる
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流れるようなCメロから、最後の畳みかけるようなサビが始まります。

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Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, oh, look out you rock 'n rollers
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (君のロックンローラーたちをよく見ろよ)

Ch-ch-ch-ch-changes (turn and face the strange)
Ch-ch-changes, pretty soon now you're gonna get older
変化だ(向きなおれ 奇妙な物に目を向けろ)
無数の変化 (もうすぐ君も年を取る)

Time may change me
But I can't trace time
I said that time may change me
But I can't trace time
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない
時は僕を変えていく
でも僕は時間に足跡を残せない

対訳★北沢杏里
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最後まで「変化」という言葉が力強く歌われます。

ボウイ自身、この後『ジギースターダスト』という新たなキャラクターを生み出し、
名実共にロックスターに上り詰めるわけですが、この曲で歌われる「変化」する事の大切さを身を持って証明した形となるわけです。

『そこまで思い切った変化』を望むことは、我々にとっては中々難しいと思いますが、
たとえば、『毎朝3分だけ筋トレをする』とか、『職場の一駅前で降りて歩く』とか、
相手が言うのを待つのではなく『自分から元気に挨拶をする』とかちょっとだけ何かを変える事でも十分に意義があることでしょう。

でも何か新しい事を始めたり、今までの「当たり前」を変えるのて怖いですよね。
そんな時こそ『ロックミュージックを聴いてみる』というのはいかがでしょうか?

そこには、先人たちの『僕らに役立つ熱いメッセージ』が込められています。

多くの人にとって、
『ロックミュージックには人生を変える程のエネルギーはないのかもしれません。』
でも、
『悩んでいるあなたの肩を、ちょっとだけ一押しする事は出来る』
と私は確信しています!

「2024年は何かを変えよう!」
そんなあなたにこそ私は
『熱いメッセージが込められたデヴィッド・ボウイの「Changes」を推します!』
ぜひ通勤通学の前の時間に聴いて、自分を鼓舞して欲しい!
応援していますよ!

以上、スターマン☆アルチでした!

《スターマン★アルチ筆》

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