《ハウリンメガネ》
さあさあさあ、お待たせしました、
「イーノで紐解くロックの歴史!」
満を持して前回やるつもりだった、
「サイケの時代でもルーツ!」
特にブルースに正面から向き合ったバンドの話です!
{ 編集長 「MASH] }
キミ、あれだぞ?
満を持してと言うが、
前回、俺はそのまま続けても良かったんだぞ?
《ハウリンメガネ》
いや、ほら、長くなりすぎると
読者も読みづらいでしょ?
私はそのへんも考慮してですね……
{ 編集長 }
そうかなぁ?
そんなことないと思うけどなぁ。
《ハウリンメガネ》
(小声で)
話が長引くと間違いなく
「ビートルズの話」に突入して
さらに話が長引くからなぁ……
{ 編集長 }
今、ビートルズって聞こえたぞ?
《ハウリンメガネ》
いえいえ!気のせいです!
{ 編集長 }
そぉ?聞こえた気がしたんだけどなぁ・・・
ビートルズって!
《ハウリンメガネ》
あなたいつもビートルズのことを考えているから
ついつい幻聴が聴こえちゃったんですよ。
{ 編集長 }
幻聴?いくらサイケ話でも、
俺はヘンなクスリはキメてないぞ!
《ハウリンメガネ》
さあさあ!早速行きましょう!
サイケの話になってから毎回のように
「アメリカン・サイケの根っこはルーツ・ミュージック」
と言っとるわけですが、
その中でもやはりブルースは外せません!
{ 編集長 }
「ロックはブルースから生まれた子供だ!」
ってジョンリーも言っていたしな。
《ハウリンメガネ》
というわけで……こちら!
「イースト・ウエスト/バターフィールド・ブルース・バンド」!
{ 編集長 }
うむ。絶対に外せない大名盤だ!
俺も幼少期にコレを聴いて
随分とギターが上達したよ!
《ハウリンメガネ》
はい!そんな盤を解説しましょう!
シカゴで育ち、マディやウルフから直に薫陶を受けた
そんなハーピスト兼ボーカルのポール・バターフィールドと、
これまたシカゴ出身で、ボブの「追憶のハイウェイ」
にも参加したギタリスト、マイク・ブルームフィールド
を擁するブルース・ロック・バンドの大名盤です。
あ、忘れちゃいけない。
メンバーにエルビン・ビショップもいますね!
{ 編集長 }
エルヴィン・ビショップ!
彼は70年代に自分のグループを作り
良いアルバムを連発しているギター弾きだよ!
《ハウリンメガネ》
本作は66年作ですから、まさに前に話した
「ザ・ディープ」や「ブルースマグース」同様
サイケデリック勃興の年、ド真ん中のリリースですよね。
{ 編集長 }
で、どうよ、コレ!
《ハウリンメガネ》
いやぁ……表現に困る……
{ 編集長 }
何をそんなに困ってるんだ?
《ハウリンメガネ》
うーん……
いえね、かなり幅広くないですか?
このアルバム。
{ 編集長 }
ルーツと当時の音が混ざった作品だよね!
《ハウリンメガネ》
A3の「アイ・ゴット・ア・マインド・トゥ・ギヴ・アップ・リヴィング」
なんかはB.B.御大の影響もろ出しのアーバン・ブルースですけど、
A1の「ウォーキン・ブルース」とか、
A4の「オール・ジーズ・ブルース」とかは
だいぶファンキーじゃないですか!
{ 編集長 }
JB「パパのニューバッグ」以降
というのも大きな要素だよね。
《ハウリンメガネ》
あと、B1の「メアリー・メアリー」とか
B3の「ネバー・セイ・ノー」なんか
ドアーズがやっててもおかしくない
「ドロッとしたロック」だし。
{ 編集長 }
ロックやアンダーな部分も
メンバーはゃんと聴いていたから
66年らしいサウンドにもなっているんだよね!
《ハウリンメガネ》
なるほど。
単純なブルース・ファンの出す音ではないですよね。
特にA面ラストの「ワーク・ソング」。
リズムが抜群にスイングしてるんだよな。
実はリズム隊はジャズ上がりだったりするのかしらん?
{ 編集長 }
俺もコレをよく演奏するけれど
キャノンボールの名曲だろ?
だから元々ジャズありきで、
ソコにブルース的フィールを入れているんだ!
《ハウリンメガネ》
この曲でのソロ回し!
それぞれのリードプレイは素晴らしいです!
演奏はかなりドライヴしてて、
ロッキンなのにちゃんとジャジー、という。
ソロ回し最後のポールのハープもいいですね。
ジャジーに聴こえるんだけど、ちゃんとブルースが滲んでる。
{ 編集長 }
俺はこの曲が本作のピークと見ているけれど
とにかくブルース・ロック・バンドがヤルJazz!
と考えると分かり易い!
俺もこのスタイルには憧れたねぇ!
《ハウリンメガネ》
あと、やっぱりB面最後の「イースト・ウエスト」。
これ聴くと
「あ〜、デッドとかオールマンがジャムでやろうとしてた事ってこれだったのか」
って思いますよね。
{ 編集長 }
そうね。
デッドはもう少しアシッド感があって
オールマンはカチッとブルース基調でジャムる・・・
その違いは有れど、本作の影響は大きいね!
ちなみに先に挙げた「ウォーキン・ブルース」
デッドがライブでプレイする時はこのアレンジが元だよね。
《ハウリンメガネ》
あと、私、これ聴くと
マイルスの「カインド・オブ・ブルー」を思い出すんですよね。
楽器のプレイがモードジャズっぽいというか。
こういうモード的なセッションってイーノ、
というかイーノプロデュース期の
「トーキングヘッズのアプローチ」
に通じる感じしません?
{ 編集長 }
「トーキングヘッズ」って
メンバー全員「もの凄く凝る」でしょ!
あの時代では珍しく「音楽マニア的な集団」で、
その点がイーノと合致しててさぁ。
《ハウリンメガネ》
うん、一枚まるっと通しで聴くと、
やっぱり幅広いですよ。
でも幅広いのに一本芯が通っているのは
彼らの根っこに「ブルースという芯」があるからでしょうね。
{ 編集長 }
そう!
例えば俺だったらビートルズ大好きじゃない!
でも歌やプレイでは「ブルースが芯」でしょ?
コレは「自分の音楽的アイデンティティ」が
「ブルースにある」からなんだよねぇ。
《ハウリンメガネ》
なんちゅうか、これまでに話に出てきたサイケバンドって
やっぱり「ビートルズ・ショック」が根っこにあると思うんですよ。
「うぉぉぉ!カッコいいぜ!俺たちもこういうのがやりたいぜ!」
という。
{ 編集長 }
その気持ちは多いに分かるし、
俺も最初にギターを持った時
ソレしか考えなかったよ。
でも、すぐに変ったけれどね・・・・。
《ハウリンメガネ》
えっ、なんで?
{ 編集長 }
ギター始めた当時さぁ
ビートルズの歌本で弾き語るじゃない!
ジャラーンと・・・・
そーすると虚しくなるんだよ。
彼らの偉大な曲が自分の口を通すと駄作になる・・・・
要はビートルズが完璧だから自分が情けないワケ(笑)
《ハウリンメガネ》
なるほど。この人たちは
「ビートルズ、カッコいいよね!でも俺たちロックじゃなくてブルースだから」
という気配が見えるといいますか、
マディの「エレクトリック・マッド」みたいに
まずにブルースがあって、ロックはその味付けというか。
{ 編集長 }
その通り!
まさにそこが「彼らのアイデンティティ」だよね!
グループ名にも「ブルースバンド」って付いているわけでさ(笑)
やっぱり「新しいブルース」という感覚でプレイしているはずさ。
《ハウリンメガネ》
しかし、話は飛びますが、
「マイク・ブルームフィールド」
はココでもイイ音させてますね。
{ 編集長 }
キミは相変らずギター好きだねぇ!
《ハウリンメガネ》
いいじゃないですか!好きなんだもん!
あの、私、あなたとの会話の中で
ホワイト・ブルース・ギタリストの話って
あんまりしてないと思うんですよ。
話の取っ掛かりに出ることはあっても、
すぐマディだジョン・リーだマジック・サムだの・・・
黒人ブルース話になだれ込むから(笑)。
{ 編集長 }
実はブルームフィールドだけじゃなく
ビショップの音もイイんだよ!
「彼らのカラミ」が「当盤の聴き所」
でもあるワケでさぁ。
《ハウリンメガネ》
そもそも白人ブルースギタリストの話って
数人で話すと、SRVとかジョニー・ウィンターの話になるでしょ?
アレは音がどうしてもロックに聴こえちゃうから・・・
ソコがイヤなんですよね。
だけど、ブルームフィールドはねぇ……
ちゃんとブルースが聴こえる。
{ 編集長 }
ココから出た後は
「アル・クーパー」との「スーパーセッション」とか
「フィルモアの奇跡」とかでブルース・ブームを牽引する・・・
とても重要なギタープレイヤーのひとりだよね。
《ハウリンメガネ》
彼のソロアルバムを聴くとわかるんだけど、
ギタリストだけど、ギターギターしてないんですよ。
前へ出るべき時に出て、それ以外はちゃんと控えてる。
ちょっと次回はその辺を掘り下げつつ、
さらにルーツに寄ったバンドの方へ話を進めましょうか。
{ 編集長 }
その前に、この時代に
「ビートルズの影響下だからこそ出せた」
そんな作品を見て行こうよ!
65年からのアメリカン・ロックの流れは
「ビートルズからサイケ」という流れの後、
そこに「ブルースが入り込み、一般化されていく」だろ?
その流れを追ってみようぜ!
《ハウリンメガネ》
なるほど。アル・クーパーもそうですが
急激にブルース・ブームが来るわけではないですよね!
ソコにも当然「流れ」がある!ワケです。
そのブルース・ブームの源流が
今日ご紹介の「EAST WEST」なワケですから!
{ 編集長 }
ブルースは白人によりオーバーグランド化したんだよ。
ソコをちゃ~んと追って行こう、じゃぁあーりませんか!
《ハウリンメガネ》
うっ、チャーリー師匠!
残念です。
{ 編集長 }
チャーリー師匠!いずこへ~!
《ハウリンメガネ》
ご安心下さい。
きっと天国ですよ。合掌です・・・
<続>