永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(328)

2009年03月17日 | Weblog
09.3/17   328回

三十帖【藤袴(ふじばかま)の巻】 その(6)

源氏も、

「さりや、かく人のおしはかる、案におつることもあらましかば、いと口惜しくねじけたらまし、かの大臣に、(……)けざやかなるまじく紛れたるおぼえを、賢くも思ひ寄り給ひけるかな、とむくつけく思さる」
――やはりそうだったのか、人が皆そう思っているとおりの思うつぼに嵌るなら、くやしいし、面白くない。内大臣に(是非とも潔白な心を知らさねばならない)それにつけても、はっきりさせず紛らわしている玉鬘への恋心を、よくも見抜かれたものだ、と、内大臣の眼力を気味悪く思われます――

 さて、髭黒の大将は、実は柏木の長官に当たる方ですので、柏木を常に呼びつけては、玉鬘へのとりなしを熱心に相談して、内大臣にも結婚の申し入れをなさったのでした。

「人がらもいとよく、おほやけの御後見となるべかめるしたかたなるを、などかはあらむと思しながら、かの大臣のかくし給へることを、如何は聞こえ返すべからむ、さるやうあることにこそ、と、心得給へる筋さへあれば、任せ聞こえ給へり」
――(内大臣は)、髭黒の大将は人柄もたいそう立派で、ゆくゆくは公の政治の中心と目されている方ですので、婿として何の不足があろうかとお思いになるものの、源氏が玉鬘を尚侍(ないしのかみ)にとお勧めになっておいでになりますのを、どうして反対できましょうか、きっとそれには、それなりのお考えがあるものと、源氏にお任せなさいます――

 この大将は、春宮の御母・承香殿女御(じょうきょうでんのにょうご)の兄君でいらっしゃいます。お歳は三十二・三で、太政大臣と内大臣は別として、それに次ぐ帝のご信任の篤い方です。

「北の方は紫の上の御姉ぞかし。式部卿の宮の御大君(おおいぎみ)よ。年の程三つ四つが年長は、ことなるかたはにもあらぬを、ひとがらや如何おはしけむ、嫗とつけて心にも入れず、いかで背きなむと思へり」
――髭黒の大将の北の方は、紫の上の御姉君なのです。そして式部卿の宮(紫の上の父君)の御長女です。年齢は髭黒の大将より三つ、四つ上なのは、別に欠点というほどのこともないのですが、お人柄がどうなのでしょうか。髭黒の大将は「おばあさま」とあだ名をつけて、大事にもなさらず、何とか別れようとしていらっしゃる――

 このようなことがありますので、源氏は、髭黒と玉鬘の縁組は不似合いだと思っていらっしゃいます。

◆したかたなる=下形なる=下地、素質の備わった

◆御大君(おおいぎみ)=御長子、御長女

◆ことなるかたは=殊なる片端=取り立てて不都合

ではまた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。