永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(1119)

2012年06月13日 | Weblog
2012. 6/13    1119
五十一帖 【浮舟(うきふね)の巻】 その27

「『なやましげにおはします、と侍りつれば、宮にもいとおぼつかなく思し召してなむ。いかやうなる御悩みにか』と聞き給ふ」
――(薫が)「お加減がお悪いとのことで、大宮にもたいそうご案じになっておられます。どのような御容態でいらっしゃいますか」とお聞きになります――

「見るからに、御心さわぎのいとどまされば、言すくなにて、聖だつと言ひながら、こよなかりける山伏心かな、さばかりあはれなる人を、さて置きて、心のどかに、月日を待ちわびさすらむよ、と思す」
――(匂宮は)薫の姿を御覧になるなり、胸さわぎがますますひどくなってこれれて、言葉少なにお返事をされます。それにしても、この方(薫)は聖めいているとの評判だが、とんだ山伏心もあったものだ。あのような可愛らしい女を、あのような所に隠して置いて、のんびりと長い間、待ちわびさせるとは。などとお心の中で思っていらっしゃる――

「例は、さしもあらぬことのついでだに、われはまめ人ともてなし名のり給ふを、ねがたり給ひて、よろづにのたまひ破るを、かかること見あらはいたるを、いかにのたまはまし」
――いつもは、大したことでもないと思うような折でも、薫が、自分こそは実直人(まめびと)という顔つきで振る舞い、また、それを口にもされていましたのが忌々しくて、事々に匂宮は言い負かしていたものを、まして、こうした秘密を見つけたからには、どんなにでもおっしゃるでしょうに――

「されど、さやうのたはぶれごともかけ給はず、いと苦しげに見え給へば、『いとふびんなるわざかな。おどろおどろしからぬ御心地の、さすがに日数経るは、いとあしきわざに侍る。御風邪よくつくろはせ給へ』など、まめやかに聞こえ置きて出で給ひぬ」
――全く冗談口にもなさらずに、大そうお苦しそうにしていらっしゃいますので、薫は、「それはいけませんな。これという大したご病気でもなく、それでいて何日も治らないのは、良くない御容態かと存じます。どうか御風邪をよくご養生なさいますように」と、心からお見舞い申し上げてお帰りになります――

「はづかしげなる人なりかし、わがありさまを、いかに思ひくらべけむ、など、さまざまなることにつけつつも、ただこの人を、時の間忘れず思し出づ」
――(匂宮はお心の中で)本当に薫という人は奥ゆかしい人だ。あの山里の浮舟は、この薫と自分を引き比べてどのように思うであろうか。などと何ごとにつけても、ただただあの女のことを少しの間も忘れずにお思い出しになるのでした――

では6/15に。



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