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「駅物語」 朱野帰子

2016年11月09日 | 本(その他)
鉄道会社に入った2つの理由

駅物語 (講談社文庫)
朱野 帰子
講談社


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東本鉄に入社した若菜直は、
東京駅へ配属された初日から乗客のトラブルに見舞われ、うろたえる。
「お客様に駅で幸せな奇跡を起こしたい」。
しかし直が抱いていた本当の夢は、
かつて自分に手を差し伸べてくれたあの5人を探し出すこと―。
人を助け、人に助けられながら成長していく若手駅員たちを描いた感動作。


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東京駅で働く駅員たちの物語・・・。
この著者は私にとってはじめてなのですが、
「東京駅」というところになんとなく興味を惹かれて読んでみました。


鉄道会社に入社した若菜直は、
これまで特に鉄道のファンだったり、ましてやオタクだったりしたわけではありません。
鉄道が大好きだったのは彼女の弟。
しかしその弟は病でなくなっており、
直は、一体弟が鉄道の何がそんなに好きで鉄道員になることを夢見ていたのか、
それが知りたくて鉄道会社に就職したのです。
無愛想な同期の同僚や、ヤンキーな先輩、
すべてのIT化・機械化を図ろうとする上司、
様々な職場の人々や、駅で起こるいろいろな"事件"を語りながら、
直自身の職業人としての成長を描きます。


秒刻みで列車の到着と発車を繰り返す駅のスケジュール。
そのためにどんなに神経をすり減らすか、
そういうところで、ごく最近あった実際の事件を思い出してしまいました。
確か、列車の遅れを乗客に問い詰められた駅職員が、高架から飛び降りてしまった、という・・・。
そんなふうなストレスに耐えきれなくなってしまう状況が、
この本を読むとリアルに迫ってきました。


ところで、先に直が駅員になったのは、「弟のため」と書きましたが、
もう一つ、かつて自分が駅で倒れたときに助けてくれた5人を探し出すという目的があったのです。
・・と、ここのところですでにミッションが分散してしまったし、
短期間でその5人が見つかってしまう
(しかもそれぞれが駅側から見ると変な、あるいは困った客なので目立った)
という設定は、どうにも都合が良すぎるなあ・・・と思わないでもありません。
駅の中の色々なことはふだん意識したこともないし、
知らないことばかりで、それは非常に興味深くはありました。


「駅物語」 朱野帰子 講談社文庫
満足度★★★☆☆


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