映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

みなさん、さようなら

2013年06月30日 | 映画(ま行)
彼が結界を解くとき



* * * * * * * * * *

中村義洋監督×濱田岳、5度目のタッグ。
生まれ育った団地から一歩も出ずに生きようとする少年の、心の成長を描きます。



時は1980年代。
郊外に突如出来上がった大きな団地。
中に商店街もあり、
ここから一歩も出なくても一生暮らせる、
そんなPRもあった高度成長期、昭和の日本。
小学校卒業と同時に団地から一歩も出ずに生きると決めた悟(濱田岳)は、
中学が団地の外にあるため、中学にも行かず、
体力づくりと団地内のパトロールを日課として生活します。





16歳になって、商店街のケーキ屋に就職。
なんと恋もして、それなりに幸せをつかむかにみえたのですが・・・。



作品ちょうど半ばくらいにして、
悟が団地を「出ない」のではなく、
「出られない」のだ、ということがわかります。
ある事件が彼のトラウマとなっている・・・。
団地のパトロールの意味も、そこでようやく納得できるのです。


どうしても、団地から出る階段を降りることができない悟。
ここでは「海の上のピアニスト」を思い出しました。
彼にとっての団地は彼の結界。
それより外は彼を守るものは何もなく、
正体のわからないものが渦巻く混沌とした世界だ・・・。
時代の変遷とともに、人々は新たな生活を求めて引っ越していく。
団地は老朽化し、
取り壊されたところがあったり、外国人が住み始めたり。
商店街はシャーターが降りたまま。
あの映画のように、
彼はこの団地と運命を共にして朽ち果てていくのだろうか・・・。
そのようにも思えたのですが、
でも、ちゃんと彼のトラウマを解き放つ出来事が、用意されていました。


「先生、さようなら。みなさん、さようなら。」
小学校で、帰りの時間に交わす教室の挨拶。
それが本作の題名の由来だったのですね。
悟にとっては小学校で時は止まったまま。
外界の諸々の人々との軋轢を体験しないまま、
純粋に正義感が強く育っていくわけです。


彼は団地内を守っているつもりでしたが、
さして彼に関心を留めていなかったようなある人こそが、大きく彼を守っていたのです。
(もちろん、観る側の私達にはちゃんとわかっていましたよね!)
そんなところが又、ステキでした。


「みなさん、さようなら」
2012年/日本/120分
監督:中村義洋
原作:久保寺健彦
出演:濱田岳、倉科カナ、永山絢斗、波瑠、大塚寧々
ストーリー運び★★★★☆
満足度★★★★☆

二流小説家 シリアリスト

2013年06月29日 | 映画(な行)
本を読んだ方は見ないほうが・・・



* * * * * * * * *


本作の映画化を聞いた時には、
ひどく意外な感じがしたものです。
原作はデイヴィット・ゴードン、
国内の主要ミステリーランキング(海外版)で史上初3冠を得たベストセラー。
私も非常に面白く読みました。
これを日本で映画化するとは! 
まさに予想外。
ストーリーはこちらをどうぞ 
→「二流小説家」デイヴィット・ゴードン



原作はアメリカが舞台ですが、
こちらはストーリーの大筋は同じくして日本版にアレンジしてあります。
売れない小説家・赤羽一平に上川隆也。
凶悪殺人犯の死刑囚・呉井大悟に武田真治。
ここらへんには別に異議はありません。
まあ、良かったのではないでしょうか。
ではありますが、
原作は西洋人のイメージで読んでいたので、
やっぱりハリウッドで映画化してほしかったなあ
・・・と、思ってしまいました。
しかし私としての最大の失敗は、
これはラストに意義がある純然たるミステリでありながら、
結末を知っていたというところでした。
そうなんですよ…、
だからまあ、すみません、高評価が出せません。
普通感じるべき驚愕の結末が、驚愕にならなかった・・・。
私にとっては残念ながら、原作の感動を凌ぐものにはなりませんでした。



それからもうひとつ。
本作を見ていたら、なんだか映画なのにテレビドラマ見てるみたい
・・・という気がしてしまったのです。
あの、2時間枠のサスペンスドラマのような・・・。
どうしてなのか? 
普段私はカメラワークとかカット割りなどはあまり気にしていません。
だから映画とテレビドラマの違いなんて考えたこともなかったのですが・・・。
でも帰宅してから本作の解説を見て、
ナゾが解けました。
本作の監督猪崎宣昭氏は、火曜サスペンスのエースなどと呼ばれる、
TVサスペンスドラマを得意とする方なんですね。
そういう匂いを嗅ぎとってしまった私・・・。
(でも結局どこがどうしてそうなのかは、わかりません!)



ということで、本作は原作が好きだった方にはあまりオススメできません。
本を読んでいないかたは、是非どうぞ。



武田真治さんのサイコキラーは、それらしくてよかったのですが、
藤原竜也さんでも同じだったなあ・・・
などと・・・。


「二流小説家 シリアリスト」
2013年/日本/115分
監督:猪崎宣昭
原作:デイヴィット・ゴードン
出演:上川隆也、片瀬那奈、平山あや、武田真治、高橋惠子
満足度★★★☆☆

「いまなんつった?」 宮藤官九郎

2013年06月28日 | 本(エッセイ)
聞き捨てならない、そのセリフ

いまなんつった? (文春文庫)
宮藤 官九郎
文藝春秋



* * * * * * * * *

セリフを書きセリフを覚えセリフを喋って20年。
人生の半分をセリフと格闘してきた宮藤官九郎が
思わず「いまなんつった?」と振り向いてしまうようなセリフをエッセイに。
TV・舞台・映画・音楽・家庭で耳にした名&迷セリフばかり111個。
巻末には、劇作家・俳優の岩松了が書きおろした
岩松了の「いまなんつった?」を収録。


* * * * * * * * *

いまNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の脚本を手がけ、
またまた人気上昇中のクドカンこと宮藤官九郎さんのエッセイ。
普段漫画イラストの表紙がニガテの私なのですが、
この場合、福本伸行さんのイラストが妙に目を引き、
つい手にとってしまいました。
内容のセリフの数々も去ることながら、
これも十分インパクトがあります。


週刊文春で連載していたもので、
クドカンだからこそ聞き逃せない名セリフ、迷セリフの数々に
思わず笑ってしまうのですが、
同時に、宮藤氏の生活がかいま見えるのもたのしい。
何度も禁煙に挑戦したり
(ということは失敗も何度も、ということですね)、
まだ幼いお嬢さん、かんぱちゃんとのやり取りがまた、微笑ましくもおかしい。
宮藤監督ファン必読の一冊。

「いまなんつった?」宮藤官九郎 文春文庫
満足度★★★☆☆

「BANANA FISH 1~19」吉田秋生

2013年06月26日 | コミックス
懐かしのBANANA FISHを読んでみた・・・

BANANA FISH バナナフィッシュ 全巻セット (小学館文庫)
吉田 秋生
小学館


* * * * * * * * *

本作は、1985年~1994年、別冊少女コミックに連載されたものです。
少女漫画でありながらハードアクション。
よくもまあ・・・と、今更ながら思うのですが、
いや、やはりアッシュとエイジのビジュアルはステキですからね。
我が家の本棚の奥に眠っていたものですが、
久しぶりに読みだして、やめられなくなってしまいました。
その辺の経緯はこちらを・・・。
→ポスター犬19

さて、「BANANA FISH」とは、ある薬物の名称です。
その作用は激烈で、服用すると簡単な暗示で全人格を支配され、
その後は自殺するか廃人同様となってしまう。
この薬物を利用しようと企むコルシカマフィア・ディノや
アメリカ政界上層部、
そして軍。
これらの抗争に巻き込まれていくアメリカ少年アッシュと、
その友人英二の友情を描きます。


今回読んで思ったのは、アッシュの心を支配する人物は二人。
それがディノと英二ですね。
そしてそれは彼にとっての「父」と「母」であるような気がするのです。


ディノは巨大な力を持つマフィアのドン。
まだ幼いアッシュを引き取り、あらゆる英才教育を施しますが、
それは彼を力で屈服させることでもあった。
長じるに従って、アッシュは
ディノの支配を逃れ、自由を希求するようになる。
巨大で目の前に立ちふさがるもの。
乗り越えることを宿命とされているもの。
そういう「父」の象徴がディノであるわけです。
本作中でもディノはアッシュに何度も何度もコケにされ、
切り刻んでも飽き足りないくらいの思いを味わっているというのに、
どこかアッシュへの『愛』を感じてしまうわけです。
このオッサンには・・・。
(ここには実際性的な意味もあったりします(^_^;)


さて、一方英二は、
実はアッシュよりもわずかに年上ではありながら、
体も小さく童顔で、
これまで平和に生きてきた日本人ですから銃など扱えるわけもなく、
アッシュにとっては完全に守るべき存在なのです。
そしてまたアッシュは、彼の前でだけは何の警戒もなく、素のままでいられる。
ここでは性的関係は全くありません。
真に魂と魂だけのつながり。
というのも、アッシュは子供の頃からディノに性的経験を積まされ、
そういうことには恐怖心と嫌悪感しか持っていないのです。
だから彼は性的なつながりを全く尊重しない。
従ってアッシュに守られる存在でありながら、
英二は女性ではダメなのです。
アッシュにとっての安らぎ=母は、英二なのです。


守るべきものを持つものは強い。
けれどもそれはまた、アッシュの一番の弱みということでもある。
途中のどこでどんなアクションが繰り広げられたか、ではなくて、
アッシュと英二がどんなふうにかけがえのない存在になっていくのか、
やはり少女漫画なので、そういうところが見どころです。


最後の19巻では、スピンオフの短編も掲載されていますが、
本編より数年後を描いた「光の庭」にはしびれてしまいます。
ここまで読みついで来た人へのご褒美みたいな作品です。
ひどく切ないのですが、
英二が無茶苦茶ステキに変貌しており、
見とれてしまいます。


いやはや、古い作品でも、やはりいいものはいいですね~・・・

「BANANA FISH 1~19」吉田秋生
満足度★★★★★

アフター・アース

2013年06月25日 | 映画(あ行)
シンプルな少年の成長物語



* * * * * * * * *

ウィル・スミスとジェイデン・スミス、
「幸せのちから」以来6年ぶりの親子共演作品です。
ジェイデンくんは「幸せのちから」ではまだ本当に幼く、
「ベスト・キッド」ではやんちゃなちびっ子、
そしてここではちょっとナイーブな少年。
私は、リアルに成長していく子役を見るのが好きなんだなあ・・・。
ほとんど孫の成長を見守る「おばあちゃん」の心境。



さて、本作の舞台はなんと1000年後の地球。
地球は環境破壊によって、もはや人類の住める所ではなくなってしまい、
人類は「ノヴァ・プライム」という新しい惑星に移住。
しかし、そこには異星人がいて戦争となり、
敵の最終兵器「アーサ」により、人類は大変な苦境に立たされる。
それは生物兵器で、ヒトの恐怖心を感知し、襲いかかるというもの。
(確かに、見ただけで恐怖にすくみ上がりそうな形状でございます。)
しかし、一人の兵士が恐怖心を消し去ることに成功。
彼は伝説の戦士サイファと呼ばれ、
この地の軍隊=ユナイテッド・レンジャーの総司令官として活躍し、尊敬されている。




さて、その彼の息子がキタイ。
しかし父親が伝説の戦士では、さぞかし辛いですよね。
乗り越えるべき父親があまりにも強大なので、
逆に萎縮してしまうという構図が見えてきます。
また、彼は幼い時に姉が自分をかばって「アーサ」に襲われたのを目撃しており、
アーサへの恐怖心が焼き付いている・・・。
こういう設定が、けっこう気に入りました。
本作は、予告編で感じたような、凶暴に変化した『地球』が敵なのではなく、
人の恐怖心を食うアーサこそが本当の敵なのでした。
父親は負傷で動くことができず、
キタイはたった一人でこの危険極まりない地上を歩まねばなりません。
少年の成長物語。
孫を見守るおばあちゃんとしては、
またもや胸を熱くするのでありました。



本作は100分とコンパクトにまとめられています。
本当は父と息子の信頼関係にもう一波乱欲しかったかな?とも思えます。
M・ナイト・シャマラン監督のわりに意外な展開や
アッと驚く結末もなかったですし。
でも、非常にシンプルな少年の成長物語として、私は気に入っています。
まだまだ、“父親”を乗り越えるのは早いですしね!



ところでこの地球、凶暴に変化した地球でも、
ほんのちょっぴり「愛」の兆しがありましたねえ・・・。
そこが良かった。
もしかして、今度は青年期のキタイが
地球の懐かしさにひかれて、
再び地球に舞い戻ってくる、(今度は父親なし)
な~んて、ストーリーがあったらいいなあ・・・。

別件ではありますが、本作のオフィシャルサイト、スタイリッシュでステキです。

「アフター・アース」
2013年/アメリカ/100分
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ウィル・スミス、ジェイデン・スミス、ソフィー・オコネドー、ゾーイ・イザベラ・クラビッツ

生命力にあふれた地球★★★★★
親子の関係の進化★★★★★
満足度★★★★☆

ドラマW 誘拐 KID NAPPING

2013年06月24日 | 西島秀俊
みかんをむいて対峙する二人

ドラマW 誘拐 [DVD]
三上博史,西島秀俊,石坂浩二,中越典子,渡辺いっけい
ポニーキャニオン


* * * * * * * * *

五十嵐貴久さん原作のWOWOWドラマ。
映画ではないけれど、でもこれ、なかなかよかったですねー。
誘拐モノには多いけれど、犯人側の視点から描いてあるよね。
そうそう、犯人ははじめからわかっている。
倒叙方式。犯人側と警官側の知恵くらべだ。
本作の犯人は、生きる意欲を失ってしまった秋月(三上博史)。
警察側が、やり手だけれどノンキャリアで上司に疎まれている星野(西島秀俊)。
冒頭、生きることに絶望し、自殺しようとしている秋月にかかって来た電話。
その後、なぜか秋月は誘拐の計画を進め始めるんだね。
一体誰からのどういう電話だったのか。
死のうとしていた秋月をやる気にさせたのは何だったのか。
そういう大きなナゾがバックボーンとしてあって、
ずっと最後まで引っ張られていくという構成がいいよね。


秋月が狙うのは現職の総理大臣佐山(石坂浩二)の孫娘、百合(三吉彩花)。
時は折しも韓国の大統領が来日しようとしているところ。
日韓友好条約締結を前にし、警察が全力を上げ、警護にあたっている。
誘拐はその裏、隙を突くように行われるんだね。
秋月は、人質と交換に日韓条約の中止と30億円を要求する。
だけど、結局現金は受け取らないまま、孫娘は無事帰還。
虚を突く展開に、え~っ、いったいどういうこと?と、引きこまれてしまいます。


本作は、西島秀俊ファンでも、つい犯人=三上博史を応援しちゃうね。
頼むから、この犯罪を成功させて・・・と祈ってしまう。
ラストで二人が対峙するシーンがすごく良かったなあ・・・。
何もない部屋で、みかん食べてる二人・・・。
のどかな状況なんだけどさ、実は緊張感に満ちているという・・・。
いや~、ステキです。


警察組織、特に上層部に反感を持っている星野だけれど、
仕事には真摯で、しかもキレる。
そして人の心もちゃんと分かるんだよね。
やっぱりステキじゃん。西島秀俊!


「ドラマW 誘拐KID NAPPING」
2009年/日本/100分
監督:小林義則
原作:五十嵐貴久
出演:三上博史、西島秀俊、石坂浩二、三吉彩花、中越典子

定石の外し度★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★★☆

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

2013年06月22日 | 映画(あ行)
踏襲されたパターンが心地よく怖い



* * * * * * * * *

19世紀末を舞台とするゴシックホラー。
ちょうどコナン・ドイルが霊体実験をする
などという新聞記事があったりして、
まあ、そういう時代背景が効いています。



愛妻を失くした若き弁護士アーサー(ダニエル・ラドクリフ)。
彼は仕事のため、まだ幼い息子をロンドンに残し、
ある田舎の村へやってきます。
彼は最近他界した老婦人の屋敷で、彼女の遺言状を探さなければならない。
ところが村の人々のアーサーに向ける視線は冷たく、
と言うより敵意に近いものがあり、
その屋敷に彼を近づけたくない様子。
潮が満ちると通れなくなる細い道を辿ってたどり着いた屋敷は、
今は住むものもなく荒れて陰気に静まり返っています。



終始陰鬱で緊張感に満ちています。
この屋敷で何もないはずがない。
うわ~、嫌だ、さっさと帰ろうよ・・・と、
私などはつぶやいてしまうのですが・・・。
彼は実のところ生活に困っていて、
この仕事をやり遂げなければ、帰るにも帰られないという事情があったりします。
早速、誰も居ないはずの屋敷で、不審な物音。
そして謎の黒衣の女性の影がちらつく・・・。

この屋敷の一人息子が幼い時に事故死をしたという。
そして又、町の子供達も、幼くしてなくなる例が多い。
アーサーがその謎を解き明かしていくのですが・・・。



いかにも陰鬱なこの村と屋敷。
私などはこういうお膳立てだけで喝采したくなってしまいます。
閉鎖された人々の輪に紛れ込む旅人。
そこでの因襲やら因縁やらに巻き込まれる主人公。
踏襲されたパターンですが、それがまた心地よい。
(いや、怖いんですけどね。)
ハッとする場面はありますが、過剰な演出はありません。
でもこういう古風な味付けが
ますます時代色を帯びて、私は好きです。
ダニエル・ラドクリフもハリーポッターのイメージを脱し、
立派な「大人」となりました。
今作はほとんど屋敷で一人のシーンが多いのですが、
充分演じきっていたと思います。
今後ももっといろいろな作品で拝見したいところです。



それにしてもこのラストは・・・。
ありきたりでないところがまた、よし、
ということにしておきましょうか。

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ダニエル・ラドクリフ,キーラン・ハインズ,ジャネット・マクティア,リズ・ホワイト
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ダニエル・ラドクリフ,キーラン・ハインズ,ジャネット・マクティア,リズ・ホワイト
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「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」
2012年/アメリカ・カナダ・スウェーデン/95分
監督:ジェームズ・ワトキンス
原作:スーザン・ヒル
出演:ダニエル・ラドクリフ、キアラン・ハインズ、ジャネット・マクティア、リズ・ホワイト、ショーン・ドゥリー
舞台設定:★★★★★
じんわりくる怖さ:★★★★☆
満足度★★★★☆

インポッシブル

2013年06月21日 | 映画(あ行)
一番恐ろしかったのは、たった一人になってしまったとき。



* * * * * * * * *


2004年、スマトラ島沖地震による津波に襲われた家族の物語です。
実話を元にしていますが、
言うまでもなく日本はもっと間近でそういう体験をしているわけで、
また改めてその恐ろしさを感じ、背筋が凍る思いをしました。


この家族は5人。
夫ヘンリー(ユアン・マクレガー)、
妻マリア(ナオミ・ワッツ)、
長男ルーカス(トム・ホランド)とまだ幼い弟達2人。
タイのリゾート地にバカンスで訪れていたのです。
津波に襲われたのは12月26日。
つまりここのリゾート地はクリスマス休暇の家族で賑わっていたということ。
クリスマスの夜の平和な美しい光景からは
その後の悲惨な状況を想像することは難しい。



しかし、大津波は突然に襲ってきます。
母親と長男は同じ方向に流され、
必死で離れ離れにならないように手をつなぎ合わせます。
濁流には雑多なものが渦巻いており、母親は大きな傷を負ってしまう。



通常のドラマならば、そこで気を失った母は、
気がつくと病院の清潔なベッドの上にいたりしますよね。
でも今作はどうにもならない苦しい時を克明に追っていきます。
波に呑まれないよう、ただ必死。
一度大きな波は止まったように見えても
また次の波が来るかもしれないという恐怖。
情報など全くなく、傷を負い動くこともままならないので、
ひたすら救助を待つのみ。
ようやく現地の人に救出されるけれど、
言葉は通じないし、医療施設があるわけではない。
それからやっと病院へ運ばれるけれど、
そこも多くの人が運び込まれ、
母子が離れ離れで互いの居所がわからなくなってしまったりする・・・。
すべてが混乱の渦中。
夫や他の子供達がどうなったのか、それを知るすべもない。
災害というのはこういうものなのですよね。
東日本大震災を知ったつもりになっている私は、
やはり本当のことは何もわかっていなかったのだと、
思い知らされる作品であったような気がします。



この母と行動を共にした長男ルーカスは、
反抗期に差し掛かるという年頃。
母親は口うるさくて鬱陶しいと思っているし、
弟達の世話を押し付けられるもの不満。
そんなふうでした。
でも、傷を負った母を見てから、明らかに彼は変わります。
ああ、男の子だなあ・・・と、思わず眩しく見てしまう。
しっかり母を助けなくてはという責任感のめばえ。


父親のヘンリーは息子にこんなふうにいいます。
「一番恐ろしかったのは、津波がやってきた瞬間ではない。
子どもたちを見失って一人になってしまったときだ。」
助け合い、守り合う人がいるから
人は強くなれるのでしょう。
そしてまたそれは、肉親だけのことに限らない。
人と人とのつながり、思いやり、
そういうもので随分沢山の人が助かって、
生きる希望を見出していったのであろうことが見て取れます。



なにやら、自然災害が多発しているように感じられる昨今、
とても大切な作品です。

「インポッシブル」
2012年/スペイン・アメリカ/114分
監督:J.A.バヨナ
出演:ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー、トム・ホランド、ジェラルディン・チャップリン、サミュエル・ジョスリン

家族愛度★★★★☆
災害のリアル度★★★★★
満足度★★★★☆


好きだ、

2013年06月20日 | 西島秀俊
「好きだ、」というために流れた時間



* * * * * * * * *

えーと、これは「海でのはなし。」の姉妹編みたいな題名だけど・・・
いや、でも監督も全然別だから・・・。
でも宮崎あおいに西島秀俊だしねえ。
制作年も近いし、同じ穴狙いではあるね。
あー、だけど正確には本作は、この二人は同時に出ていないわけだよね。

 

はい。この2つのポスター見てください。
17歳の二人とその又17年後の二人、
ということで俳優さんが途中でバトンタッチします。
そもそも西島秀俊出演作品は、リストから適当に選んでいるだけなので、
すべて全く何の予備知識もなしに見てるでしょう。
だからすご~くスリルがあるよね。
どんな展開になるのか予測がつかない。
だからまあ、これは普通にラブストーリーかと思ってみていたわけです。
17歳ユウ(宮崎あおい)と、ヨースケ(瑛太)。
二人は幼なじみで、ユウはヨースケのことがとても気になる。
彼は野球少年だったはずが、何故か突然野球をやめて、ギターなんか弾いてる。
川辺で練習する曲は彼のオリジナルらしいけれどいつも同じフレーズの繰り返し。
そのヨースケはどうもユウのお姉さんに憧れているようなのです。
お姉さんは半年前に大切な人を事故で亡くし、
失意の中にいる。
そんなお姉さんをヨースケはとても気にしている。
ユウは自分の気持を押しつつんで、二人の仲を取り持とうとするんだね。
だけど、お姉さんはヨースケに会いに行く途中で事故にあってしまう・・・。


カメラは執拗に二人の表情を映し続けるね。
こんなにじ~っとアップで映し続けられたら、辛いだろうと思ったりする。
いやいや、だけどさすが実力派の俳優陣だよね。
見事に微妙な心の揺れを表情で表しているよね。
そんなワケで私は本作、若い二人の心の揺れをみずみずしく描いた作品かと思ったんだけどね。


突然17年後。
いや、そうじゃないと西島秀俊が出てこないから。
34歳のユウが永作博美。ヨースケが西島秀俊、というわけかあ。
瑛太の17年後が西島秀俊? 
それはないでしょ、ぜんぜん違うじゃん・・・とはじめは思ったんだけどね。
なんだか、無精髭の西島秀俊さんなんか見てたら、だんだんそれほど違和感もなくなってきた。
二人は17歳のあの時からずっと会っていなくて、ここで再会。
しかし、どこにでもある日常を描いた作品と思っていたら、
ラスト付近で驚くべき展開がありまして・・・
ここは予測がいい方に裏切られた。だから面白い!


つまりね、この作品はたった一言
「好きだ。」というために流れた時間のドラマなんだなあ・・・。
エンディングでようやく全貌を現すギター曲というのも洒落ていたなあ。
好きだなあ、こういうの。

好きだ、 [DVD]
宮崎あおい,西島秀俊,永作博美,瑛太,小山田サユリ
TCエンタテインメント


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「好きだ、」
2005年/日本/104分
監督・脚本:石川寛
出演:宮崎あおい、西島秀俊、永作博美、瑛太、小山田サユリ

口に出せない思いの深さ★★★★★
みずみずしさ★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★★☆

最終目的地

2013年06月18日 | 映画(さ行)
新しくて古い。古くて新しい。



* * * * * * * * *

2009年作品と、わりと最近の作品なのですが、
何十年も前の古い映画のような肌触り。
「日の名残り」のジェームズ・アイボリー監督作品でしたか、
なるほど、納得。


南米ウルグアイの人里離れた邸宅。
そこにはある作家が家族と住んでいたのですが、
その作家は自殺で既に亡くなっています。
そこに残されているのは、作家の妻キャロライン(ローラ・リニー)、
愛人のアーデン(シャルロット・ゲンズブール)とその娘、
兄アダム(アンソニー・ホプキンス)と、そのゲイのパートナー・ピート(真田広之)。
この作家の伝記を書く許可を得るために、
アメリカ人青年オマー(オマー・メトワリー)が邸宅を訪れます。



妻妾同居に兄はゲイというセンセーショナルな状況でありながら、
彼らはそういう複雑な心境を胸の底に押しつつみ、
彼らをつなぎとめる作家の不在の中で、
まるで時が止まったような倦んだ時間を過ごしていたわけです。
そこへ新たな風を吹きこむのが、オマー青年の役割ということですね。



冒頭、自宅付近でオマーが沼に足をとられて
ニッチもサッチもいかなくなるというシーンがあります。
それはウルグアイで前にも後にも動けなくなってしまった作家の邸の人々と通じています。
彼らにはそこが最終目的地であったのか? 
ひとときは停滞しているように思えても、
生きていく限りは色々な可能性があるということですね。
そしてオマー自身の最終目的地も、また・・・。



ウルグアイの片田舎という、想像もつかない辺鄙な地。
本当に時間が止まったような・・・というのには最適の地なのかもしれません。
オマーの恋人が電話をかけてきて、
「ケータイを買えばよかったのに」というシーンに違和感を覚えるほどに、
全体が古色を帯びているのです。
でも確かに話題はゲイのパートナーとの同居。
あ、新しい・・・(^_^;)。
だからこそこの作品、あと50年後くらいに見ても、
全然古びないかもしれません。



さてさて、問題は真田広之さん。
うひゃ~という役柄で、
アンソニー・ホプキンスとのキスシーンまであったりしますが、
う~む、こういう役柄もできてしまうわけなんですね。
日本の作品では考えもつかないところですが・・・。
ゲイだからといって、ヘンにおねえっぽくないという方が普通なんでしょうね。
あ、そういえば、先日見た「メゾン・ド・ヒミコ」のオダギリ・ジョーさんもこんな感じでしたっけ。

最終目的地 [DVD]
アンソニー・ホプキンス,ローラ・リニー,シャルロット・ゲンズブール,オマー・メトワリー,真田広之
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「最終目的地」
2009年/アメリカ/117分
監督:ジェームズ・アイボリー
原作:ピーター・キャメロン
出演:アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャルロット・ゲンズブール、オマー・メトワリー、真田広之

古色度★★★★☆
満足度★★★★☆


華麗なるギャツビー

2013年06月17日 | 映画(か行)
手に入れたいものは唯一つ



* * * * * * * * *

私には1974年のロバート・レッドフォードによる作品のイメージが強く、
本作のチラシや予告編には多少違和感を覚えていました。

しかし、以前原作の「グレート・ギャツビー」を読んだ時に、
私自身でこのように書いています。

「思うに、ロバート・レッドフォードはギャツビーを演じるには輝かしすぎ。
彼はまったくそのまま、大富豪の坊ちゃんに見えてしまう。
ギャツビーには、もう少しほの暗くて、成り上がり者っぽいところがほしい。」

・・・あ、そういうことならまさしく、
ロバート・レッドフォードよりはレオナルド・ディカプリオかも。
そう思ったわけです。
又、予告編では賑々しいパーティにラップ音楽がかぶさり、
そこも「全然時代が違うじゃん」と思ったのでしたが、
本編を見るとすべてがラップというわけではなく、
流れの中で狂騒的雰囲気を盛り上げる部分に用いられているだけで、
そう悪くはないように思いました。
ある場面では現代的ラップにトランペットが重なり、
これもいい具合にジャズと融合しています。
結果、危惧していたほど無茶苦茶な現代化はなく、
原作のイメージに近く出来上がっているのではないかと思いました。



ストーリーなど詳しくはこちらをご覧ください。

1974年版 「華麗なるギャツビー」

村上春樹訳「グレート・ギャツビー」



今作のキモとなるのはやはり、
ギャツビーがデイジーと会いたい一心で夜毎繰り広げる
パーティの馬鹿馬鹿しい盛大さ。
そして、それとは裏腹に、
ピュアで孤独な成り上がりのギャツビー。
その対比ということになりましょう。
有り余る財産。
けれども彼がほしいのは唯一つ。
対岸の光・・・。

舞台はいかにも絢爛豪華です。
1920年代アメリカの世相。
盛り上がるチャールストンのダンス。
紙吹雪に花火。
「ラプソディ・イン・ブルー」の曲は
どうも「のだめ」のイメージがついてしまっているのは残念でしたが・・・。



私の好きな、ギャツビーが色とりどりの高級シャツを
舞い上がらせる(この場合は投げ下ろすか?)シーンもあって、
満足、満足。


最も好きなのは、ギャツビーがニックの家を花々で飾り立て、
デイジーの訪れを待つシーン。
まるで少年のようにコチコチに緊張している。
これがあの大富豪なのかとニックも呆れるという、
いいシーンですよねえ。
トビー・マグワイアの役どころ、これがいい!



・・・ということで、要所要所のツボをきっちり押さえてありまして、
思ったより満足できた作品でした。

「華麗なるギャツビー」
2013年/アメリカ/142分
監督:パズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン

狂騒の時代度★★★★★
ギャツビーの切なさ★★★★☆
満足度★★★★☆

ポスター犬 19

2013年06月16日 | 工房『たんぽぽ』
ガラスの仮面 ギャグ??



* * * * * * * * *

待ってました、「ガラスの仮面」、アニメギャグ版。
実にくだらなそうですが、ファンとしてはやはり見てしまいそう・・・。
それぞれのキャラが際立ち、
やみつきになるかも・・・。
このアニメ、一体どういう年齢層の方が見るのでしょうね???
私のような往年のファンは有りかもしれないけれど。
若い方も見るのかなあ???
ナゾです。





この度の羊毛フェルト作品は、
はじめからプロフィール写真に使おうと思って作ったもの。
犬なんだか、猫なんだか、シロクマなんだか
よくわからない。
ま、いいか。ということで。



* * * * * * * * *

さて、私ここのところ、まともな読書ができておりません。
特別忙しいわけではないのですが、
自分ではこれを「逃避行動」だと思っています。
というのも、
もともと敬愛する吉田篤弘氏の
「圏外へ」
という本を読み始め・・・
こ、これが、なぜか
ち~っとも頭に入って行かない。

三浦しをんさんの「レジへ行くべし!」という推薦までありながら、
情けない・・・

なんと言いますか、
頭のなかの取り留めのない思いをそのまま文章にしたような感じ・・・?
(これまでも、そのような作風はあったのですが)
部分を取り上げればけっこう面白いのですが
全体像が把握できず、というか把握できるところまで辿りつけず、
読み進むべき興味がなかなかわかない・・・。
そんなうちに、本棚の奥に眠っていた古い漫画につい手が出てしまい・・・。
これが吉田秋生「BANANA FISH」全19巻。
すっかりハマって、本筋の読書中断。
・・・というような経緯であります。
まるで試験前につい漫画に手が出てしまうような、アレですね。
まあ、ついでなので「BANANA FISH」については、
後日ご紹介します。
「圏外へ」については
ほとぼりが覚めたら又はじめから読んで見ることにします。
もしどなたか読んでいましたら、
こんなところが、こんなにおもしろいよ・・・と、
教えてくださいm(_ _)m



セレステ∞ジェシー

2013年06月14日 | 映画(さ行)
親友でいるために離婚???



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学生時代に恋に落ちて
そのまま結婚したセレステ(ラシダ・ジョーンズ)と
ジェシー(アンディ・サムバーグ)。
セレステは仕事も順調、
仕事に生きる自分に自信たっぷりで、自分の道をまっしぐら。
一方、ジェシーは売れないアーティスト。
二人は馬鹿げたことでも笑い合える、非常に馬の合う相手ですが、
セレステのほうがそれでは物足りなくなってしまったようなのです。
“永遠に親友でいるために”離婚を決意し別居しているのですが、
家は隣同士で結局いつも仲良く二人でいる。
友人たちはそれを全く理解できず、
彼らを非難したりもします。
しかし、あることから二人は
毎日共にはいられなくなってしまいます。
セレステは、ジェシーには自分が必要と思っていたのですが、
実は彼を必要としていたのは自分の方だったと気がつくのです・・・・・・・。



ラシダ・ジョーンズが本作脚本と製作総指揮も担当しています。
だからまあ、ご本人も確かに今注目株で、
“できる”女性なのでしょうね。
う~ん、私はそういう女ではないからなのか、
どうにもセレステには感情移入できず、
だから全体にもなんだかピンとこない作品でした。
そもそも、はじめから結婚しないという選択ならわかります。
それが一旦結婚しておいて、
“親友”でいたいから離婚
・・・という前提自体、理解できかねます。
今時の若い方でも、日本人ならそうじゃないかなあ・・・。
それとも私の考えがやはり古い?



あまりにも自分本位なセレステなので・・・、
たぶんこういう人は女友達がいなさそう(でもいるんですよね・・・)
なんてつまらない想像まで呼ぶ。
う~ん、私にとっては、残念作でした。


「セレステ∞ジェシー」
2012年/アメリカ/92分
監督:リー・トランド・クリーガー
出演:ラシダ・ジョーンズ、アンディ・サムバーグ、イライジャ・ウッド、ウィル・マコーマック、エマ・ロバーツ

満足度★★☆☆☆

フランケンウィニー

2013年06月13日 | 映画(は行)
犬好きには涙なくして見られない



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ティム・バートン監督が
1984年に制作した同名の短編を長編化したもの。
10歳の少年ヴィクターは、愛犬スパーキーを事故で亡くしてしまうのですが、
雷の電力でよみがえらせることに成功。
そのことは秘密にしておくつもりだったのに、
やはりバレてしまい・・・。
彼の真似をして、死んだものを蘇らせようとする少年たちの目論見で、
町は大騒ぎに・・・。



全編モノクロですが、本当は3Dだったのですね。
それもちょっと見てみたかった気がします。
普通の町、普通の学校の人々、子どもたちなのですが、
ティム・バートンだとなんだか怖い。
中でも、フシギちゃんとジグルスキ先生の造形がナイスでした。
私は気に入ってしまった・・・。



そしてなんといってもスパーキーです!!
犬を飼ったことがある方なら、
このまさに“犬”の動きに心を奪われるに違いありません。
ボールを追いかけるのが大好きなのも、
仕方ないですよね・・・。



科学オタクで、友だちもできないヴィクター少年の、
たった一人(1匹)の友達だったスパーキー。
その友人を失った悲しみは・・・、
全く、犬好きには涙無くして見られないシーンであります。
フランケンシュタインのように、つぎはぎで蘇ったスパーキーが、
自分のお墓の所で一人(だから1匹)
丸くなっているというシーン、
これも切ないなあ。


不慮の事故ではあるけれど、
一度召された生命は、蘇ってはいけない。
静かに眠り続けるのが自然の摂理というもの・・・、
ということです。
では、このラストは一体何なの?と思ってしまいますが・・・。
まあ、サービス、サービス。

フランケンウィニー DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「フランケンウィニー」
監督・原作:ティム・バートン
出演(声):ウィノナ・ライダー、マーティン・ショート、キャサリン・オハラ、マーティン・ランドー
犬らしさ★★★★★
切なさ★★★★★
満足度★★★★☆

「言霊」山岸凉子

2013年06月12日 | コミックス
何事もポジティブに

言霊
山岸 凉子
講談社


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山岸凉子さんは、やはりバレエもので本領を発揮しますね。
最新作の本作、バレリーナを目指す16歳澄(さやか)が主人公です。
彼女は自分が本番に弱いと思っているのですが、
なんとかこのメンタルを克服したい、と模索していくというストーリー。
テレプシコーラでもそうでしたが、
山岸作品の主人公の少女は
自分の非をまっすぐ見据える健気な子が多い。
だから本作でも澄は、友人には「頑張って」といいながら
実は「失敗すればいい」と思ってしまうことに、
罪悪感を抱いているのです。


しかし、それが良くないというのには、科学的根拠がある。
本作はすべてのアスリートに通じるアドバイスを送っています。
すなわち、練習中も本番も
決してネガティブな言葉を考えたり口にしたりしてはいけない。
なぜなら大脳は考えるすべての言葉に影響を受けるから。
自分のことだけではなく人を呪ったりすることも同じ。
これこそが「言霊」の意味だったのですね。
人を呪わば穴二つ。
自分にも必ず跳ね返ってくるということなのでしょう。
この考え方は、以前にも著者の短編の中にあったと思いますが、
確かに大事なことだと思えます。
全てはポジティブに。
きっとうまくいく。
あなたも。
私も。


この本にはもう一作「快談・怪談」という中編が収められています。
山岸凉子といえばバレエ物ではありますが、
そう、怪談ものでもあります!
でも本作は、『怖い』話ではなくて、
ちょっとフシギな幸運の出来事を集めた「快談」集。
前作からの流れで言えば、やっぱり良いのではないでしょうか。
何事もポジティブに、ということで・・・。
我が家にも白蛇が降ってこないかな・・・?

「言霊」山岸凉子 講談社
満足度★★★☆☆