映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ブラザーズ・ブルーム

2010年03月31日 | 映画(は行)
相手を幸福にする詐欺



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詐欺師の兄弟、
スティーブン(マーク・ラファロ)とブルーム(エイドリアン・ブロディ)のストーリーです。
日本では未公開の作品のようですが、
菊地凛子さんも出ているというのに残念ですね。


冒頭は二人の少年時代。
どうして二人が詐欺師を志したのか・・・というエピソードがえがかれています。
本当の詐欺というのは相手を幸福にするものだ、というのですね。
そこで失ったお金はさして問題ではない・・・と思わせるほどの夢を見せてくれる。
まあ、そういう詐欺を目指しているわけです。

結婚詐欺でお金をむしり取ったあげく殺してしまう。
そんな詐欺は論外!!
真の詐欺には美学がある。・・・と。



いつも詐欺のシナリオを作るのは兄、スティーブン。
主演を演じるのが弟ブルーム。
しかし、ブルームはこの稼業もすっかり嫌になり引退宣言。
ところが、兄はこれが最後だといってまた一つの山を持ってくる。
標的は億万長者の未亡人、ペネロペ。
退屈しきっている彼女は、彼らの持ってくる怪しい話に飛びついてきますが、
そのエキセントリックで好奇心旺盛な彼女に次第に惹かれてしまうブルーム。
さて、どこまでが本当で、どこまでがインチキなのだか
次第にわからなくなってきますよ。
この詐欺の結末と、この恋の結末はいかに。
そして、弟思いのこの兄の気持ちにもちょっぴり泣かされます。


スタイリッシュな美しい色彩が目を引きます。
ナイーブそうな弟ブルームにエイドリアン・ブロディはぴったり。
こういう男性の細くて長い指に私は弱い・・・。

さて、菊地凛子は、この詐欺兄弟のアシスタントという役どころ。
あまり英語が得意でない日本人という設定で、ほとんどセリフなし。
でも、この存在はすごくユニークで光っています。 
何を考えているのかよくわからない。
神秘的でへんてこ。
これって、日本人のイメージ???

2008年/アメリカ/114分
監督・脚本:ライアン・ジョンソン
出演:エイドリアン・ブロディ、レイチェル・ワイズ、マーク・ラファロ、菊地凛子


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「桃色トワイライト」 三浦しをん 

2010年03月30日 | 本(エッセイ)
ズバリ! 仮面ライダークウガの巻

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桃色トワイライト (新潮文庫)
三浦 しをん
新潮社

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三浦しをんさんの爆笑エッセイ。
もうやめようと思いつつ、つい手が伸びる・・・。
松苗あけみさんのカバーイラストもおなじみになりました。


この巻の中心は、「仮面ライダークウガ」。
三浦氏はそのクウガ役オダギリジョーに、すっかりはまってしまった様です。
う~む、仮面ライダーですか・・・。
TVなどの話題に疎い私は、
そのようなモノが、子供たちというよりはそのお母様方に
密かに人気になっていたという噂くらいは聞いたことがありましたが・・・。
しかもそれがオダギリジョーだったなんて、ち~っとも知らなかった。

子供向けとバカにしてはいけない。
つい、ツボにはまって夢中になってしまうことはありますね。
かくいう私はいい年の20歳くらいのときに、
「ガッチャマン」にはまった覚えがあるので、人のことは言えない。
だから彼女が「クウガ」に夢中になっても無理のないことと思います。
若干のストーリー説明もあって、なるほど・・・とは思いつつ、
でも、やっぱり、私はたぶん見ないですね。
2時間の映画なら見てもいいけど、TVシリーズ見るほどの時間がない。
そんなわけで、今回は話題について行けずに、残念・・・。
ヴィゴ・モーテンセンまではついて行けたんだけどな。


さて、この三浦氏の「クウガ」布教の犠牲者(?)の一人が、
なんと先日紹介したエッセイ集「ねにもつタイプ」の著者岸本佐知子さんなのです。
こんなふうに、図らずも読む本・観る映画同士に
なんらかのつながりが出てくることが時々あるのが面白いんですよね。
この本の解説を彼女が務めているのですが、
その中で、三浦しをんは一人ではないのではないかと書いています。
こんなふうに爆笑エッセイを繰り広げる三浦しをんと、
心揺さぶる感動作品を書く三浦しをん・・・。
実は何人もの三浦しをんが机を並べてエッセイや小説を書き分けているのでは・・・と。
うん。
それもありそうです。
本当は岸本氏の頭の中ではもっと奇想天外の妄想が駆け巡ったことでしょう。
ここではかなり抑えめだとお察しします。


満足度★★★☆☆

バード

2010年03月29日 | クリント・イーストウッド
お酒と麻薬はミュージシャンの必須アイテム?

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この作品、ここまでのクリント・イーストウッド監督作からすると異色ですね。
そうですね。ご当人が出ていませんし、アクション作品ではない。
ビ・バップと呼ばれる新しいジャズの中心的存在、
チャーリー・パーカー(愛称バード)のストーリーです。
サックス奏者なんですね。
そう、この方なんと34歳という若さで亡くなっているのですが、
その晩年を回想シーンを挟みながら描いているのです。
アメリカの実在のミュージシャンを主人公とする作品は、最近でも多いですよね。
でも、どれも共通しているのは皆、お酒と麻薬におぼれて身を持ち崩している・・・。
そうなんだよねー。
人の心を揺さぶる音楽には、まるでお酒と麻薬が必須アイテムだとでも言うようだ・・・。
そうした快楽と苦痛の狭間で生み出される音楽・・・というのが、
私たちの心のどこかを刺激するのかもしれないねえ・・・。
それで、このチャーリー・パーカーもまさに麻薬漬け。
麻薬を紛らわすためにさらにお酒漬け。
そのためもあってか、肝硬変に胃潰瘍。
さらには、まだ小さい子供を一人亡くしているんですね。
身も心もボロボロになりながらサックスを演奏し
・・・あげくに衰弱のあまりの心臓麻痺。
・・・と、なかなか壮絶です。


ジャズを愛する方にはまさにじっくり楽しめる作品でしょう。
演奏シーンがたっぷり入っていますからね。
イーストウッド監督はかなりのジャズファンと見受けられます。
ご子息、カイル・イーストウッドはジャズミュージシャンでもありますし。
だからこそ、出来た作品というわけか。
イーストウッド監督は、この作品でゴールデン・グローブ最優秀監督賞を受けています。
なるほど。ここのあたりを転機として、アクション作品に限らなくなってくるわけなんですね。
けど白状するとこの作品2時間40分もあるでしょう。
私はジャズにさほど興味があるというわけではないので、ちょっと苦痛だった・・・。
うむ。さほど刺激的シーンがあるわけでもないので、
よほどのジャズファンでなければ寝てしまう可能性も結構ありそうね・・・。


フォレスト・ウィテカーと言えば、最近「ラストキング・オブ・スコットランド」に出ていたよね。
こんな時から活躍してたんですねー。
にっこり顔だと、なんだかとても人の良さそうなおじさま・・・という感じです。
でも、ちょっとチャーリー・パーカーのサックスには興味が出てきました。
CDでなく、レコードで聴いてみたいなあ・・・。

1988年/アメリカ/160分
制作・監督:クリント・イーストウッド
出演:フォレスト・ウィテカー、ダイアン・ベノーラ、マイケル・ゼルニカー、サミュエル・ライト

ナルニア国物語 第二章:カスピアン王子の角笛  

2010年03月27日 | 映画(な行)


さて、この前作第一章は劇場で見たのですが、
正直、さほどすばらしいという思いはなかったので、
続きは観にいっていなくて、ようやくレンタルでの鑑賞となりました。
第一章の方はまだブログを始める以前だったみたいです。









前作で「伝説の4人の王」となったペベンシー兄弟。
元の世界へ戻っていった彼らの約1年後から物語は始まります。
地下鉄の駅で・・・何かが彼らを呼び寄せる。
いつしか地下鉄駅は洞穴となり、
その向こうには真っ青な海が広がっている。
崖の上を見上げるとなにやら廃墟のようなものが。
それこそは彼らが住んでいたナルニア国王宮の跡地であり、
なんとここはその頃から数えて1300年後の世界だったのです。


テルマール人に占領され、ナルニアの民は迫害の末森の奥深くで息を潜めていた。
そんなとき、テルマール人の王子カスピアンが王位を狙う叔父に暗殺されそうになり、
森へと逃げ込んできます。
彼は魔法の角笛を吹き、“伝説の4人の王”を呼び戻します。
本来ナルニア国を滅ぼした仇のテルマール人、カスピアンであるわけですが、
4兄弟と協力関係を結びます。
ファンタジー世界を具現するナルニア国とその住人たち。
敵対すべきカスピアンと手を結ぶという展開はなかなかいいですね。



私の第一章を見た後のメモにはこんなことが書いてあります。

ライオンのアスランはキリストを象徴していると
以前、ゴスペルの牧師さんが言っていたのですが、これを見てとてもよくわかりました。
死ぬことが解っていても逃げ出さない。
自らその運命に身を投じる。
辱めを受け、苦しい死。
しかし、その後に復活。
これがキリストでなく、なんでありましょうや。
ここのシーンには胸をうたれました。



そうそう、ライオンのアスランというのは、すなわちキリストなのでした。
この第2章でも、
ナルニア国がこんなに虐げたれているというのにアスランの助けはない。
彼を信じている者には姿が見えて・・・
しかしやがて最後には奇蹟が起こり、そのありがたみを知る・・・。
やはりアスランは神の位置づけなんですね。


夢と愛と勇気。
それは正しい信仰に支えられて、より際立つ。
そんな思想がバックボーンとなっているようです。
まあ、わざわざ映画館に行くこともないと思いますが、
やはり気になって、さらに続編は見ることになりそうですね。
けなげな4兄弟のファンになってきました。


2008年/アメリカ/145分
監督:アンドリュー・アダムソン
出演:ベン・バーンズ、ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル、スキャンダー・ケインズ




「ねにもつタイプ」 岸本佐知子

2010年03月26日 | 本(エッセイ)
偉大なる夢想

           * * * * * * * *

ねにもつタイプ (ちくま文庫)
岸本 佐知子
筑摩書房

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ええと、この著者は・・・。翻訳家なんですね。
でも、それには惜しいというべきでしょう。
すばらしいイマジネーションといいますか、空想、夢想がふくらみまして、
ものすごいストーリーに発展します。
翻訳よりもむしろ、自分でストーリーを紡ぎ出す、小説家になるべきなのでは?
と思ってしまいました。


この本の裏表紙の紹介文。

「・・・・読んでも一ミクロンの役にも立たず、教養の一切増えないこと請け合いです。」

おやまあ、なんとひどい言いよう・・・。
でも、ちょっと言えてるんですよね。
ではありますが、
世の中には無用の用というものがある。
皆様、どうぞ心を広く自由に持って、この壮大な夢想を楽しみましょう。

どれもみじかい話ですが、この楽しさをこれ以上かいつまんではお伝えできないので
・・・たとえばこんな一文はどうでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「桃」より
昔むかしあるところにお爺さんとお婆さんがおりました。
お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川へ選択に行きました。
お婆さんが川に行くと、大きな桃がドンブラコッコスッコッッコ、と流れてきましたが、
お婆さんは
①桃を拾う、
②桃を拾わない、
のうち②を選択したので、桃はそのまま流れていってしまいました。   
おしまい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここの下りがいくつもいくつも、ちょっと違うバージョンで並んでいるのです。
つい、笑ってしまいます。

そして、この本を読み進むうちに、この著者の夢想のパターンが見えてきます。
すなわち、
翻訳の仕事に行き詰まってニッチもサッチも行かなくなってきたときに、
彼女は仕事とは全く関係のない夢想を繰り広げてしまうらしいのですね。
明らかな逃避行動なのですが、
我が身にも思い当たります。
片付けなければならない仕事、
やらなければならない勉強、
それが目の前にあればあるほど、どうでもいいことが逆にしたくなってしまうんですよねえ。
あるいはどうでもいいことを頭の中に思い描いてしまう。

そうしてできあがった、実に偉大な成果がこの本なのであります。
この本のおかげでどれだけ著者の貴重な仕事時間がつぶれたことでしょう・・・。
私たちはありがたく読むべきですね・・・!!


それと、この本の表紙を見て、あっと思ったのですが、
このイラストはクラフト・エヴィング商会ですね。
この上なきコラボレーション。
満足満足。

満足度★★★★★

ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場

2010年03月25日 | クリント・イーストウッド
百戦錬磨の老軍曹と若い兵士たちの“戦争”

                 * * * * * * * *

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えーと、これは戦争映画ですが二次大戦ではないんだね。
はい。生涯を海兵隊に捧げてきたタフで呑んだくれの老軍曹ハイウェイというのが、
ここでのイーストウッドの役どころです。
舞台は1983年。
まあ、ソ連とは冷戦関係ですが、アメリカはとりあえずどことも戦争はしていない。
年齢から言うと、もうとっくに退役しているか、
または幹部となっているはずというところなのですが、
なにしろ素行の悪いハイウェイなので、
軍曹程度の地位で若い兵士の訓練役となるわけですね。
かつての様々な武勲によって、勲章をたくさん持っているにもかかわらず・・・ということです。
上官は彼より若いし、実戦経験がなかったりする。
で、彼の受け持つ部隊の若者たちは、むろん戦場に行ったこともないし、
だらけきって規律も何もあったものではない、と。
そこで、老軍曹のきびしい訓練に反発しながらもたくましさを身につけていき、
絆も生まれていく・・・ということなんですね。
そういった部分ではなかなか気持ちのよいドラマではあります。


ハイウェイもただの鬼軍曹なのではなくて、
呑んだくれでけんかっ早く、どうも札付きの人物だ。
でも、それ故か、家庭には恵まれなかったようで孤独。
昔なじみだったらしい女性には冷たくされ・・・といった私生活での弱みをたっぷりみせるあたりもいいですよね。
それで、訓練ばかりでいくらたくましくなったって、どうなのよ・・・と思い始める。
そこが1983年という背景の意味なんですけどね。
なんと実戦があったのですよ。
アメリカのグラナダ侵攻という。
ほえ。・・・よく知りませんが。
えーとですね、カリブ海の島国グラナダでクーデターがあって、
そこへソ連・キューバによる共産主義の影響を食い止めるため、
アメリカが武力介入したという事件。
ああ、いつもの手ですね。
そこでこのハイウェイの部隊が大活躍するという・・・。
ストーリー的にはめでたしめでたしなんですが。
一歩離れてみるとあまり釈然とはしませんね。
この作品が1986年作品なので、
各国から非難を受けたこの侵攻の擁護をしているとも思われてしまう・・・。
時代が時代・・・というところもありますが。
まだ、イーストウッド監督の昨今に見られるような反戦の思想はない
ということなんですね。
まあ、それを別とすれば、彼の年齢相応の渋みと、
全く衰えない格好の良さを感じる、いい雰囲気の作品ではありますね。
そういったイーストウッド監督の変遷を知る上では、意味のある作品・・・
ということにしておきましょう。

1986年/アメリカ/130分
制作・監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、マーシャ・メイスン、マリオ・バン・ピーブルズ

シャーロック・ホームズ

2010年03月24日 | 映画(さ行)
ホームズ&ワトソン、しゃれっ気のある友情に支えられる推理とアクション



* * * * * * * *

お待ちかね。名探偵シャーロック・ホームズの登場です。
ここのところ所用が立て込んでいまして、やっと見ました。
見たい作品は目白押しなのですが、
この先年度末・年度初めの超多忙期なので、あまり見られそうにありません・・・。
早くゆったり過ごせる時期になるといいなあ・・・


19世紀末のロンドン。
この時期のロンドンって好きです。
石畳の街を馬車が行き交う。
産業革命で文化は転換期。
その街や人々の猥雑なエネルギーは、それだけで何かドラマを感じさせます。

そんな中に登場する、このたびのホームズ&ワトソン。
これまでのイメージとしてはちょっと茶目っ気のある英国紳士・・・というところなのですが、
ここでは現代風に、すっかりアクション&エンタテイメント作品になっております。
今時、安楽椅子探偵では映画にはなりにくいということもあるのでしょうか。
老舗の名探偵も例外ではありません。
自らアクション。
危機一髪の一つや二つ乗り越えなくては・・・!



ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は天才であるが故に、
常人では計り知れないところがあるのです。
行動は明らかに変だし、なんと武術に長けた格闘家でもある・・・。
この変人を通常の世間とつなぐ役割をしているのがワトソンなんですね。

ワトソン(ジュード・ロウ)は、
結婚し医師として当たり前の生活をしたい、ホームズなんかとは縁を切りたい、
・・・といいつつも、
実はホームズが持ち込んでくる冒険が大好き、と見えるあたりがとてもいいのです。


さて、事件はまずブラックウッド卿の逮捕から始まります。
彼は怪しい黒魔術を使い、若い女性を次々に殺害していた。
ホームズの手柄により捕まった彼は絞首刑になるのですが、
なんとその後墓場からよみがえり、
また新たな事件が勃発する。

黒魔術という論理を超えた事件をにおわせながら、
しかし産業革命という科学技術の進歩の時代性を汲んで、
実はもっと現実的な方向へ話が進む。
まさに、今だから繰り広げられる、シャーロック・ホームズストーリーですね。
なかなかよくできています。


そして、このストーリーのバックボーンはこのコンビ。
お互い、気に入ったそぶりは見せず、邪険にしながらも、
実は信頼しあっていて、とても好き。
ある解説には「明日に向かって撃て」のブッチとサンダンスを思わせる・・・とありまして、
これも頷けるところです。

この二人の雰囲気が何ともしゃれていて、
私のように、特にジュード・ロウのファンという方でなくても
十分楽しんでいただけるのではないかと思います。

2009年/アメリカ/129分
監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、マーク・ストロング、エディ・マーサン




グリーン・カード

2010年03月22日 | 映画(か行)
夫婦であることの証明

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ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント

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グリーン・カードはアメリカの永住権のための許可証ですね。
フランス人ジョージはアメリカ人と結婚することで、このカードを得ようと考えました。
一方園芸家のブロンティは、ある温室付きアパートが気に入ってしまい、
是非そこに住みたいと思うものの、
独身者は入居できないということで困っていたのです。
そういう関係を取り持つ人がいて、
全く見ず知らずの二人は紙切れだけの偽装結婚をすることになりました。


しかし、入国管理局は甘くない。
この結婚を偽装結婚ではないかと怪しみ、
二人は面接調査を受けることになってしまいます。
夫婦であることを証明するために、やむなく二人は同居してお互いの身上を教えあうことに。
そうしているうちに次第に2人の心が寄り添って・・・
という、まあ、先が読めてしまうストーリーではありますが、
なかなか楽しいロマンチックな作品です。
しかし、面接試験がパスするのかどうかは別物ということで、
是非ご覧になって確かめてくださいね。


私たちはアメリカ人もフランス人も
同じ欧米人としてひとくくりに考えてしまうところがありますが、
これはたぶん当人たちに言わせればとんでもないことなのでしょう。
この作品中にも、フランスとアメリカの文化の違いがそこここに現れていたような気がします。
アメリカ人が見れば、そうそう・・・と頷いてしまうところがあるのでしょうね。
ブロンティは、ニューヨーカーの中でも特に自然愛好家。
食べ物もフランス料理のようにこってりしたものは苦手なそうで・・・。
せっかくジョージが本場のフランス料理を披露しても、手をつけなかったりするんですよ。
もったいない。
ブロンティのカレシなどは菜食主義で肉も魚も食べない。
これはアメリカ映画でありながら、
若干昨今のそうした極端な趣向を皮肉っている部分もありそうです。


さて、夫婦であることの証明。
これって実際むずかしいですよね。
偽装結婚を見破るために2人を別々に面接する、
というのは何か他の映画でも見たことがありますので、
実際に行われていることなのでしょう。
実際にはどんな質問をするのでしょうね?

本当の夫婦でも、お互い知らないことってあると思うのですよ。
それぞれの生年月日や生い立ちくらいは
いくら何でも知らないでは済まされないでしょうけれど。
奥さんの使っている化粧品のメーカーまで答えられる夫がどれだけいるでしょう? 
気持ちでは一日も離れられないほど愛し合っていても、偽装夫婦なのか。
結婚していて南極と北極ほどに心が離れて冷え切っていても、本物の夫婦?
う~む。難しい。
宗教的には神の前で愛を誓えば本物の夫婦。
法律的には婚姻届けさえ出せば夫婦。
同棲と結婚の違いも含めて、とても微妙なものですねー。

1990年/アメリカ/107分
監督・脚本:ピーター・ウィアー
出演:ジェラール・ド・パルデュー、アンディ・マクダウェル、ベベ・ニューワース

「チャンネルはそのまま! 2」 佐々木倫子

2010年03月21日 | コミックス
ドジとピンぼけが呼ぶ好展開

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チャンネルはそのまま! 2 (ビッグ コミックス〔スペシャル)
佐々木 倫子
小学館

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第2巻がでていて、はりきって購入。
さてさて・・・。
「バカ枠」採用でテレビ局に採用となった雪丸。
実は、私「1」の時にこんなことを書いております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この「バカ枠」ですが、何も本当に頭が悪いというのではなくて、
なんだか規格はずれ、というか変わっているというか、
思考や行動が普通じゃない。
まあ、大抵はピンボケであり、ドジであるわけですが、
時としてこれが思わぬ好展開を見せる。
そんな役回りの雪丸さんです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それで、この巻を見て思ったところが、
どうもこの雪丸さんに生彩を欠くといいますか・・・。
なんだか本当にただの「バカ」に思えてしまいまして。
単に私の思い過ごしでしょうか。
・・・非常に微妙なところではありますが、
大事なところでもあると思います。
ピンボケでもいいけれど、どこか光るところがないと・・・。
では前巻では光っていたのかというと・・・う~む、
やっぱりただの思い過ごしでしょうか・・・?


さて、そんな中で私が好きなのは、
同期採用で年齢も同じなのに、なぜか皆に敬語を使われてしまう北上さん。
23歳なのに見かけがすっかりオジサンなので、
同期どころか他のスタッフにまでベテランと思われて頼られてしまう。
四苦八苦しながら地味な努力でこつこつ・・・って、
こういうキャラ、なんかいいですね。
こういう人は今時貴重です。


「海幸・山幸」
ここでは、市町村合併がテーマとなっています。
これは北海道が舞台の作品ですが、昨今日本中で起こっている話ですね。
海の町と山の町との合併話。
果たして勝算はあるのか。
TV局としては双方の住民の話を平等にインタビューし、まとめるだけですが、
雪丸が現れると何かが起こる・・・?!
あのカレーライスが妙においしそうなんだなあ・・・。
今度、北海道物産展で出してほしいくらいです。


というところで、この佐々木倫子さんの職業シリーズ。
TV局篇は・・・どうも、あまり長くは続かないのでは???
というのが私の勝手なる予想です。

満足度★★★☆☆

いけちゃんとぼく

2010年03月20日 | 映画(あ行)
早く大人になりたい

                * * * * * * * *

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バンダイビジュアル

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癒し系、不思議な生き物いけちゃん。
この映像で、もっとほんわかしたファンタジーのようなストーリーを想像していました。
ところがこれは、不条理な不幸・重圧の中で、“大人”になっていく少年の物語です。

ある海辺の小さな町。
映画の冒頭は、ヨシオが海でおぼれかけ、死にそうになるシーンから始まります。
「もうだめだ・・・死ぬんだ・・・水上に見える光は・・・あれが神様???」
ところが実はそこはとても浅くて、
あっさりと立ち上がってみれば、相も変わらずのどかな海辺。
そこでヨシオはひどくショックをうけるのですね。
もし自分が死んでも、世界は全く変わらない。
世界の中心は自分ではなくて、
自分は世界に何の影響も持っていないちっぽけな存在なんだ・・・。
こういう世界と自分の認識をまず冒頭に持ってくるというのがすごいです。
このストーリー上の、ヨシオの大人への第一歩ですね。


さてヨシオは、いつも体の大きな同級の2人に殴られているのです。
「クラスの他のヤツはみんな泣いたのに、何でおまえだけ泣かないんだ。泣くまで殴ってやる」
“力で人の心は操れない。”
・・・そうつぶやくヨシオだけれど、いつも殴られっぱなし。
本当は逃げ出したい。
そんなある日、ヨシオのお父さんが急死。
お母さんは生活を支えるために仕事を増やして、ヨシオはいつもひとりぼっち。


そんなヨシオにいつも寄り添って慰めるのが、この変な生き物、いけちゃん。
いけちゃんはヨシオにしか見えません。
いじめっ子。
父の死。
おまけに友達とけんかまでして、八方ふさがり。

子供は純真で夢いっぱいなんて誰が言ったのか。
苦悩の固まりじゃないですか。
早くこんなことで動揺しないように、たくましくなりたい。
早く大人になりたい。
そう思うヨシオ。
いけちゃんは、実際には何の手助けも出来ないのだけれど、
いつもヨシオに寄り添って話を聞いて、認めてあげている。
こういう存在が、子供のよりどころとなるのかもしれませんね。

この結末は、ヨシオがいじめっ子2人をやり返し、殴り倒すのでしょうか?
いえいえ。
ちょっと想像のつかない顛末になります。
強いヤツには、それより強いヤツがいて、そのまた上にもっと強いヤツがいる。
いじめの連鎖は断ち切らなきゃだめなんだ。
そう考えるヨシオは・・・・。
なんてすばらしい発想と行動力。
いつの間にかすっかり大人びています。
しかし、この成長したヨシオには、もういけちゃんを見ることが出来ない・・・。


大人になるということは、子供の頃持っていた何かを失うことでもあるわけです。
これは決して子供向けのファンタジーではありません。
是非ごらんいただきたい感動作。

それにしても、本当に私は少年少女がけなげにがんばる成長ストーリーが好きなんですよね-。
今時の草食男子でなく、こういうがっしりした頼りがいのある男子がいいなあ。
ヨシオはどんな青年になるのか、それも見てみたかったです。
ほんのちょっぴり、大学に入学したてのシーンはありましたけど。

2009/日本/107分
監督・脚本:大岡俊彦
原作:西原理恵子
出演:深澤嵐、ともさかりえ、萩原聖人、(声)蒼井優

グッドナイト・ムーン

2010年03月19日 | 映画(か行)
理解といたわりで紡ぐ家族の絆


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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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            * * * * * * * *

家族がテーマの物語です。
若い才能ある写真家のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は、弁護士のルークと恋人同士。
しかし、彼には別れた妻ジャッキー(スーザン・サランドン)がいて、二人の子どももいる。
アンナとベンの姉弟はまだ小学生で、ジャッキーとルークの間を行き来している。
そこへ邪魔者のようにイザベルが現れるわけですね。
反発する二人の子ども。
そして夫ばかりでなく、子どもたちまで奪われてしまいそうで、穏やかではないジャッキー。
でも、イザベルは若さが武器! 
仕事が忙しいながらも、何とか母親役も勤めようと必死。
少しずつ、子供たちとも仲良くなっていくのです。

そんなところで、ジャッキーはガンに冒されてていることがわかります。
夫も子どもたちも失った上に、命までも・・・。
これは確かに恐怖です。
病に冒されたとき。
やはり必要なのは家族の支えなのじゃないかと思います。
一人ではつらいです・・・。
心配をかけまいと病気のことは隠していたジャッキーなのですが、
いつまでも隠し通すとはできません。
それが知れたとき。
このアンバランスな人々は一つの家族になるのです。

イザベルは、この先、ジャッキーが亡くなって
いつも子供たちに自分とと比較されてしまうのが恐ろしい。
ジャッキーは、自分が死んでしまったら、
すぐ忘れられて思い出してももらえないのではないかと恐怖する。

けれど、子供たちは二者択一する必要なんかないのです。
どちらもお母さんには違いない。
そう理解したときに、2人の反発は消え、友愛に変わっていく。
理解といたわり、そういうものでつながった人々こそ「家族」に違いありません。
血のつながりがどうこうではなく、心のつながりが大事ですね。


アメリカ映画では良くあるシーン。
子どもたちが学校から帰る時間には誰かが必ず迎えに行くんですよね。
車で。
(もちろん朝の送り届けもですが)
仕事で忙しいパパやママが時間に間に合わず、
子どもたちを長く待たせてしまって怒らせてしまう。
そんな悪戦苦闘のシーンが出てくるドラマって多いです。
アメリカでは絶対に子どもを一人で出歩かせない。
家に子どもだけで置くこともしない。
日本ではまだそこまで行っていませんが、近頃は次第にそれに近づいていますね。
小学校では日常茶飯事のように、不審者情報を流し、
ほとんどの子が防犯ブザーを携帯し、
本当に一人歩きは危険という認識も深まっています。
いやな世の中ですが、仕方ないですね・・・。

1998年/アメリカ/125分
監督:クリス・コロンバス
出演:ジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン、エド・ハリス、ジェナ・マローン、リーアム・エイケン


パレード

2010年03月17日 | 映画(は行)
原作を超えた恐怖・・・でもホラーじゃありません!!



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さて、原作本を読んだ次の日、映画を見に行きました。
そもそもこのストーリーは、ラストの驚きに意義があるのであって、
それを知っていて見る映画なんて興味半減かそれ以下・・・と、思ったんですよね。
でも、つい引き込まれて見てしまった。
これはキャスティングの良さのためかもしれません。
それぞれ、なかなかの味が出ています。



スポーツヒーロー役の多い林遣都くんは、見事な転身ぶりでサトルを演じきっています。
金髪の少年。
誰に対しても調子よく話を合わせ、その実、誰もが話の合わないタイプとうそぶいたりする。
ここの部屋には最も似つかわしい人物なのかもしれません。
他人の部屋に忍び込んで怪しげな行為にふけったりする。
よくもまあ、彼にこんな役を振りましたよねえ。
その英断に拍手。



琴ちゃんのどこか茫洋とした感じ、
未来さんの退廃ぶり
・・・それぞれにいい味が出ていました。
藤原竜也・・・? 
彼はどうも地の個性が強すぎて、なんか違う気も・・・。

そして「ふぬけの大学生」の良介役は小出恵介くんなんですが、
「風が強く吹いている」では、面倒見のいい頼りになる先輩で、
そのイメージが残っているせいか、やや違和感がありました。
まあ、そんなことを思うのは私だけでしょうけれど。



などといろいろ楽しめるのも、先に本を読んでいたおかげなんですが。
そして、問題のラストです。
もちろん基本は同じ。
でも、映画のラストは本よりも一段と怖いです!!
原作を踏まえてさらにひねりがある。
思わず、ぞっとしてトリハダがたってしまいました。
まさに現代の、空虚な心を抱えた人と人のつながりの問題点をえぐる衝撃作。
ここには甘さはありません。
孤独に世界と戦う心の闇があるだけ。

ちょっと考えすぎかもしれませんが、
結局この部屋は
「彼」が頭の中で作り出した幻想だったのかも・・・
というような気さえしてくるのです。
本当の自分と向き合うことを避けてきた「彼」。
闇には目をつぶり
表面的なこと、軽いことだけを見るようにしている。
元々そこは彼の部屋なのですし・・・。



サトルが未来さんの大事にしているビデオの上に
別なものを録画してしまう、というエピソードがあります。
私は始めこの話は、
サトルがこんなモノを見て暗く沈む未来さんを救おうとしたのかと思いました。
でも、この映画を見た後ではちょっと考えが変わりました。
この家では、そうして暗く思い沈んでいてはいけない。
深刻さはタブー。
だから、あえて上からつまらないドラマを録画してしまったのですね。
実は原作では、ここはピンクパンサーのアニメでつぶすのです。
そのコミカルさが、先の私の思いの原因のようです。
この作品の毒にも薬にもならない「ドラマ」
というところに、また何か冷ややかさを感じるわけです。

と、いうようなことを考えると、
このストーリーについては、本を先に読んだのが正解だったように思います。
順番から考えても原作があって映画があって・・・
だから本を先に読むのが自然なのか・・・???

結局よくわからなくなってしまいました。
成り行きに任せるしかありませんね。
将来の映画化を予期せずに本を読むことだってありますしね。
お騒がせ・・・というか勝手に話題を振って勝手に訳がわからなくなっている私。
お許しを・・・。


2010年/日本
監督・脚本:行定勲
出演:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介

2010年2月公開『パレード』予告編



「パレード」 吉田修一

2010年03月16日 | 本(その他)
「本当の自分」の行き場を見失ったとき・・・

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パレード (幻冬舎文庫)
吉田 修一
幻冬舎

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映画を先に見るべきか。
本を先に読むべきか。
近頃悩んでしまうのですが。
最近一つの結論に達したように思いました。
映画を見てから本を読むべし。

映画はとりあえず、本を読んでいない人でもわかるように出来ているわけですから、
エッセンスが凝縮して、入りやすいことは確かです。
それで、納得してから本を読む。
すると映画にはなかったエピソードなどが出てきてまた楽しめる。
映画で登場人物のイメージがはっきりしているので、わかりやすい。
映画との違いなども見つかるとそれはそれで興味深い。
・・・と、結構利点はあります。

これが逆だと、
膨大なストーリーを2時間足らずの映画にまとめたことの欲求不満や物足りなさを感じたり、
自分の中のイメージと映画のイメージの差にとまどいを覚えたりすることが多いですね。

でもなおかつ、このような障害を乗り越えて、よいと思えるものもあります。
「風が強く吹いている」とか・・・。
「のだめ」とか・・・。
・・・で、この本、自分で先に映画を見る方がいいと言いつつ、
結局本を先に読んでしまいました。


前おきばかり長くなってすみません。
とりあえずはどうでもいい話なのですが、
映画の「パレード」の記事で、続きをお話ししますね。


さて、このストーリー。
都内の2LDKのマンションに暮らす男女4人プラス1人のストーリーです。
この部屋はネット上のチャットとか掲示板のようなもの。
と、彼らの一人は言います。
決して本当の自分は出さない。
うわべだけうまく合わせて生活している。
それが嫌なら出ていくしかないし、居たければ笑っていればいい。


物語中のサトルの言葉によれば、この部屋の住人はこうです。

ふぬけの大学生。良介。

恋愛依存気味の女。琴美。

自称イラストレーターのおこげ。未来。

健康おたくのジョギング野郎。直輝。

かくいうサトルは、なんと宿無しの男娼。

彼らは冗談めかして軽く笑える失敗なら話はできるけれど、
本当の自分の芯にあるつらさや悩みは口に出すことが出来ないのです。
いえ、それを口にしてはならない、という不文律を守っている。
だから表向きは楽しく揺らめいている・・・。
けれども、風穴を求める心の行き所がない。
その行き場のない心が積もりに積もった時・・・・。
思わぬところにほころびが出る。

この文庫の解説で川上弘美氏が
「怖い小説だ。」と評しています。
まさしく、その怖さは最後の最後までわからないんですよ。
えっ?! この小説って、こういう話だったの???
予期せぬラストに驚愕し、そして次には心が冷えていきます。

途中では、「上辺だけの付き合い」と言いながら、
実はこれは互いの友情あるいは疑似家族的な絆を育てていくストーリーなのか、
と思ってしまっていたくらいでしたので・・・。

そんな甘さとは無縁でした。
まさしく、「怖い小説」です。

満足度★★★★★

ラブ・アクチュアリー

2010年03月15日 | 映画(ら行)
恋する群像劇・・・クリスマスに是非



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この作品は公開時に見ていまして、
すごく好きで、サントラ盤CDも持っていたりするのですが、
久しぶりにまた見たくなってしまいました。
本当はクリスマスに見ようと思っていたのですが、時期がずれ込んでしまい、
こんな季節外れになってしまったのですが、お許しを・・・。
「ブリジット・ジョーンズの日記」や「ノッティッグヒルの恋人」の脚本・制作をした
リチャード・カーティス監督作品。
現代の女心をくすぐるロマンスとしては、最高ですね。




ストーリーはクリスマス前のロンドンが舞台です。
何人もの男女のラブストーリーを平行して描いていますが、
これがヒュー・グラントを始めとした豪華メンバー。
登場人物が大勢なので,誰が誰やらわからなくなるのではと,
ちょっと心配だったのですが,大丈夫でした。
個性あふれる皆さんでした。
ストーリーもこんなにいろいろな話が入り乱れていたら,
散漫になるのではと思ったのですが、
同時に導入があって、
切ないシーンがあって、
そしてラストに向けてどーんと盛り上がるという相乗効果。
否応なく、それぞれの人々に感情移入してしまいます。




親友の新妻に密かに思いを寄せる男性。
長年の片思いを弟のためにあきらめる女性。
超人気の少女に片思いの悩める少年。
思いを伝えられずに悶々とする英国首相!!
やっぱりこのヒュー・グラントは良かったですね。
しかし,この人がどうやって首相になったのか、ナゾですが。







さてイギリスも我が国同様、
いつも強引なアメリカに対しては複雑な感情があるようで、
英国首相がハリーポッターやベッカムの自慢をするところなんか、笑ってしまいます。
「アメリカへ行けば絶対もてる!!」と単純に思い込むプータロー青年が、
実際にアメリカに乗り込んで、
簡単に頭の悪そうなアメリカ娘をモノにしてしまう
・・・という予想を裏切る展開がなかなか皮肉をきかせています。


とにかく「気の毒」にも「ハッピー」にも、
泣けて泣けてぼーっとさせられてしまう作品なのです。
で、ミーハーといわれようがなんだろうが、
やっぱり女性としてはこれは「超良」です。
やっぱり。

2003年/イギリス/135分
監督・脚本:リチャード・カーティス
出演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、コリン・ファース、ローラ・リニー、キーラ・ナイトレー、ローワン・アトキンソン、ビル・ナイ


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「5」 佐藤正午

2010年03月14日 | 本(その他)
「必ず冷めるもののことをスープと呼び、愛と呼ぶ。」「ほえ。」

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5 (角川文庫)
佐藤 正午
角川書店(角川グループパブリッシング)

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この物語の主人公は作家津田伸一。
その彼が書いた小説の一文にこんな言葉があります。

「必ず冷めるもののことをスープと呼び愛と呼ぶ」

彼は実生活の中でもこれを真理と思っています。
というのは、彼は二度離婚経験があるのですね。
それで、現在も恋人だか愛人だかよくわからない交際相手が何人かいる。
もう永遠の愛などハナから信じてはおらず、
そのときそのときが楽しく過ごせる相手がいればたくさん。
そう思っているかのようです。

さて、このストーリーはそうした交差した人間模様と愛の真理を描くものではあるのですが、
この著者のこと。
何とも不思議な展開になっていきます。

津田の恋人の一人、中真智子。
実は彼女は人妻で、その夫が中志郎。
中志郎は、すっかり妻に興味をなくしてしまっていて、もう何年も夫婦の営みもない。
ところがある時イシバシと名乗る女と手を合わせると熱い何かが通い、ほんのしばらくの間失神。
その後彼は、突然激しい愛おしさを妻に感じ、実に情熱的な愛を交わす。

この現象というのは、
つまり中志郎は妻と出会った頃の情熱の「記憶」を取り戻したのです。
イシバシと手のひらを合わせることによって。
ところが、その記憶は一ヶ月ほどしか持たず、
また再度イシバシと手を合わせることにより、復活。
そんなおかしな出来事があった・・・というのが、まず一つ。

この話を聞いた津田は、彼自身もイシバシと手を合わせてみることになるのですが・・・。
現象の現れ方は、個人個人で異なるのです。
彼は若い頃の誰かへの思いを取り戻したりはしない。
でもその代わりに・・・・。


結構長い話で、なかなかストーリーのキモが見えないんですよ。
それで、この素行が悪くてついには仕事もなくしてしまう津田さんに、
やれやれ・・・とあきれた思いすら涌いてきてしまうのですが、
終盤になってようやくミラクルな展開が現れるのです。
ああ、そういう話だったのか。
なんだか感動してしまいました。
うん面白い。

以前にこの著者の「ジャンプ」を読んだときの感覚がよみがえった気がします。
通常あり得ない、へんてこな展開を見せながら、
そこにあるのはやはり普遍的な「人」の複雑な感情なのですよね。
へんてこな展開をすることによって、そういった感情がより際立って感じられる。
よいストーリーでした。


津田のセリフは、妙に冷めていて皮肉っぽく淡泊で、なかなか味があります。
私は、中でもよく出てくる「ほえ」という感嘆詞(?)が気に入ってしまいました。
何故か彼と付き合う女性たちにも移ってしまうのでしょう。
時々彼女たちも「ほえ」。
ニュアンスとしては「へえー」に近い。
相手の言ったことにほんのちょっと驚き感心しつつ、
でも、どうでもいいや、あきれた、という感覚もほんのちょっとにおわせるような感じ。
私も、この先つい使ってしまいそうです・・・。

満足度★★★★★