映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

GODZILLA

2014年07月31日 | 映画(か行)
今だからできる味付けのリメイク



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1954年に第一作で誕生したゴジラ。
60年を経てハリウッドでリメイク。
近頃このようなCGたっぷりのSFアクション作品が苦手になってきている私ですが、
こればかりはやはり期待して見てしまいます。
IMAXシアター3Dで・・・ということで
実際、力を入れて見てしまいました!



しかしこの選択は正しかった。
見上げるゴジラの圧倒的迫力はもちろんですが、
津波やビルの崩壊するシーンの恐ろしさ・・・。
ただただ、「ほえ~」と口を開けて見ていたような気がします。
言ってはなんですが、9.11の世界貿易センタービルの崩壊や
東日本大震災時の津波、
そういう実際にあったシーンがずいぶん参考になっているのではないかと感じました。
それは不遜なことかもしれないけれど、
現実にまさる映像はないのだということなのでしょう。



さて本作は、予告編でもゴジラの姿がじっくりとは流されていませんでしたが、
ストーリーも詳しくは明かされていなかったですね。
だから私はひたすらゴジラがアメリカの街を破壊して回る話かと思っていましたが、
実は人類の敵は他にいる。
ネタばらしになるのであまり詳しく説明するのは避けますが、
MUTO(ムトー)という、不気味な姿をした怪獣が現れるのです。
哀れ米西海岸は3体の巨大生物に蹂躙されることに・・・。



が、決死の覚悟を持って上空から怪獣の暴れる地上へ飛び降りる
兵士たちの映像も素晴らしくカッコ良かった・・・。
(あのシーンはつい「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を思い出してしまいましたが、
無論こちらはリセット無しです。)



ここでゴジラは、人知の及ばぬなにか偉大なもの、
畏敬の念を払うべきもの
・・・それは自然そのものといってもいいのかもしれませんが、
そういう捉え方をしています。
英語で表記したGODZILLAの中にはちゃんと”GOD”が入っています。
善とか悪ではない。
人にとって時にはそれは災厄であり、
また時には恵みでもあるのですが、
ゴジラ自身にとってそれはどうでもいいこと。
彼には彼の本能があるだけ。
これはゴジラ誕生の時からそういう描かれ方をしてきたのだと思います。
それが単なるエイリアンものとは異なる所。
だから60年もの間、ゴジラは愛され続けているに違いありません。



しかしゴジラのあの迫力に満ちた咆哮は、
なんとも恐ろしいような懐かしいような・・・
不思議な感覚を呼び起こします。
今の世の環境破壊を続ける人間への怒りであるようにも聞こえます。
巨大津波や原発事故、
そんなことが生々しく起こった後であるからこそ描けた部分も多い、
まさに今だからできるリメイクということで意義のある作品だと思います。

「GODZILLA」

2014年/アメリカ/124分
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス
迫力★★★★★
日本のゴジラ感★★★★★
満足度★★★★☆

アルマジロ 

2014年07月29日 | 映画(あ行)
リアルを超えて非現実的



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2009年、アフガニスタン最前線アルマジロ基地に派遣された
若きデンマーク兵たちの7ヶ月に密着したドキュメンタリーです。
よくもこれほどまでの危険地帯に同行し、
撮影を続けられたものだと驚かされます。



それは彼らが、国の実家を発つところから撮影されていますが、
その時の彼らはただ冒険心に燃えるノーテンキな若者でした。
デンマークは国際治安支援部隊の支援国として、
彼らをアフガンに派遣したのです。
アルマジロ基地はタリバンの拠点までわずか1キロ。
死と隣り合わせの地です。
地元住民を守りながらタリバン軍を一掃するのが使命。
しかし、彼らにも地元民とタリバンの区別は容易ではないのです。
それを区別するのは武器を持っているか持っていないかだけ。
根底に緊張や恐怖をたたえながらも、
無為に退屈に過ぎていく日々。
しかしその合間に戦闘があります。
生死が紙一重という戦闘のなかで、
極度の興奮状態に陥っていく彼ら。
戦争が人をどう変えていくのか、納得の行く答えを私達に突きつけます。
7ヶ月が過ぎて帰国した彼らですが、
本作ラストで再びアフガンへ赴くものが多かったことを告げています。
その戦闘の興奮状態が、まるで麻薬のように彼らの心を蝕んでしまったかのようです。



現地住民の淡々とした様子も印象に残ります。
彼らにとってはタリバンも支援部隊も、どちらも迷惑で災難。
戦闘によって家や家族や家畜を失った彼らは、
しかし怒りを露わにもせず、
まるで自然災害にでもあったかのように諦めているようでした。
(実際は、支援部隊から被害の弁済金が支給されているのですが。)



本作でこの基地に来ているのはデンマークとイギリスの兵。
つい想像してしまいました。
そう遠くないうちに、日本もこのような場に武器を持った兵を送り出すのではないかと・・・。
そうではなく、もっと違う形で現地の人々を助ける方法があるような気がします。



アルマジロ アフガン戦争最前線基地 [DVD]
ドキュメンタリー映画
角川書店


「アルマジロ」
2010年/デンマーク/105分
監督:ヤヌス・メッツ

緊迫度★★★★☆
満足度★★★★☆

「キネマの神様」 原田マハ 

2014年07月28日 | 本(その他)
映画愛が感じられるブログを・・・

キネマの神様 (文春文庫)
原田 マハ
文藝春秋


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無職の娘とダメな父。
ふたりに奇跡が舞い降りた! 
39歳独身の歩(あゆみ)は突然会社を辞めるが、
折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。
ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに、
歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。
"映画の神様"が壊れかけた家族を救う、
切なくも心温まる奇跡の物語。
第8回酒飲み書店員大賞受賞作!


* * * * * * * * * *

映画ブログが登場するので、個人的には非常に興味をそそられます。
本作でブログ記事を書くのは、79歳、円山郷直。
趣味はギャンブル。そして映画。
とにかく子供の頃から無類の映画好き。
同じく映画好きの娘である歩(あゆみ)は、
父の何気なく書き散らした「ニュー・シネマ・パラダイス」の感想めいた文章に心惹かれます。
そんなことが発端で、老舗の映画雑誌「映友」の運営するブログに郷直の文章を載せることに。
実のところブログが何ぞやも知らない郷直氏であったのですが。


郷直氏の文章は、「評論」とは違うのです。
著者は娘・歩の視点を借りて、これは淀川長治さんのようだと述べています。
淀川さんのような評論こそが映画ファンの心にも届くのではないか。
「解釈」ではなくて、「理解」だ。
映画に対する深い愛情が伺える。
ここのところで私は、ウン、それそれ、と思わず膝を叩くのです。
私も何も難しい評論を書きたいのではない。
淀川長治さんのように、愛を持って映画を語り、
その映画の良い所を人に知ってもらいたい・・・
そんな気持ちから始めたのでした。
しかし近頃本当にそうなっているだろうかと自戒の念も湧いてきます。
自らの原点を振り返るための良い機会となりました。


本作中のブログは国内でも多くの人の共感を呼びましたが、
なんと米国にも羽を広げます。
そして、謎の米国人とのやり取りがまた評判を呼び・・・。


やっぱり映画はいいなあ・・・。
毎日映画浸りで暮らせたらいいのに・・・。
そんな風に思ってしまう本なのでした。

「キネマの神様」原田マハ 文春文庫
満足度★★★★☆


パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

2014年07月27日 | 映画(は行)
悪魔に魂を売り渡した男



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予告編の時から、激しくも美しいパガニーニのヴァイオリンの音色に魅了され、
絶対見ようと思っていました。


1830年イタリア。
敏腕マネージャーウルバーニ(ジャレッド・ハリス)の働きで
富と名声を得た天才ヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ(デイビッド・ギャレット)。
ロンドンの指揮者ワトソン(クリスチャン・マッケイ)の尽力で、
ロンドン公演を行うことになります。
ロンドンに来たパガニーニはワトソンの娘シャーロット(アンドレア・デック)の
美しく清廉な歌声にうたれ、心を通わすようになりますが・・・。



本作はもちろんパガニーニその人を描く作品ではありますが、
パガニーニの気まぐれ、わがままに振り回され、
財産をも失ったワトソン一家の物語でもあります。
音楽を愛する善良な、そしてまたある意味凡庸なワトソンの、
滑稽なほどの一生懸命さ。
こういう部分がなければ本作はもっとつまらないものになっていたでしょう。

でもラストは結構したたかな面もみせます。
とはいえ、ここのところは返ってホッとしてしまうのですね。
パガニーニに踏みつけにされるばかりでは気の毒になってしまいます。


パガニーニの人並み外れたヴァイオリンの技量は
「悪魔に魂を売って得た」などと当時噂されたそうですが、
本作、マネージャーのウルバーニ(ジャレッド・ハリス)こそが
その悪魔でもあるような描き方をしているのも興味深いところです。
初めてウルバーニがパガニーニの部屋を訪れた時、
「3回come inと言われないと入らない」などと言っていましたし、
契約を交わすシーンもやけに意味深。
いつも黒いマントを身にまとう。
もっとも実際は「悪魔に魂を売った」ことを
あえて吹聴しウリとしていたようなのですが。
パガニーニのコンサートでは彼の影が悪魔のシルエット。

ヴァイオリンコンサートをこのようにエンタテイメントのショーに仕立てたというのが、
成功の秘訣だったのかもしれません。



当時の穏やかで美しく流れるような音楽こそが「音楽」と思われた時代に、
パガニーニの曲はあまりにも革命的だったのでありましょう。
「ロック」が誕生した時に
それを熱狂的に受け入れた人と、白眼視した人がいた。
そういうことと似ています。



さて、シャーロットとパガニーニの恋。
ウルバーニは言っていました。
「初めて真実の恋をしたと思っているかもしれないが、そうではない。
これまでの堕落した自分を否定したかっただけだ」と。
女・酒・ギャンブルにまみれたパガニーニは、
彼女がそうした世界から自分をすくい上げてくれるような気がしたのかもしれません。
が、「悪魔」はそれを許さないのです。
「契約」がありますから・・・。
まさに卑劣・悪魔の技としか思えない
汚い手を繰り出すのです・・・。



さてさて、そのパガニーニを演じたのは独のヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレット。
これがまたカッコイイのですわー。
彼がいたからこそ成り立った映画のように思えますが、
本作のサウンドトラックはもちろんですが、彼個人のCDもほしくなってしまいますねー。
クラシックばかりでなくロックとコラボしたものなど。
「image」シリーズファンの私としては最も好きなジャンルの一つ。

愛と狂気のヴァイオリニスト(初回限定盤)(DVD付)
デイヴィッド・ギャレット,スティーヴ・モーズ
ユニバーサル ミュージック


「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」
2013年/ドイツ/122分
監督:バーナード・ローズ
出演:デイビッド・ギャレット、ジャレッド・ハリス、アンドレア・デック、クリスチャン・マッケイ
音楽性★★★★★
ストーリー性★★★★☆
満足度★★★★☆

武士の献立

2014年07月25日 | 映画(は行)
自分の進みたい道を変更せざるを得ないとき



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本作、単に武家の料理方としての成長物語と思ってみたのですが、
意外と骨太。
楽しみながらも結構見入ってしまいました。
実在した加賀の料理方をモデルにしています。



江戸時代加賀藩。
料理方の舟木家に春(上戸彩)が嫁いできます。
彼女の優れた味覚と料理の腕を見込まれたのです。
そこの跡取り息子・安信(高良健吾)はしかし、
全く料理に身が入らない様子。
というのも彼は次男。
だから家の後を継ぐ必要はなく、もっぱら武芸に励みそれなりの成果を上げてきていたのでした。
しかし急に長男が病で亡くなってしまったのです。
となると話は変わって、次男である彼が料理方を継がねばなりません。
しかも彼には想い人が居て・・・。



春の指導で安信の料理の腕は上がっていくのですが、
やはり今ひとつ心が入っていない感じ。
そんな時、歴史にも残る加賀のお家騒動が・・・。



いきなり家の後を継がなければならなくなった次男坊の事情というのが、切ないですね。
その心情は十分納得できます。
また、そのことを胸の奥にしまいながら起こす春の最後の行動には胸を突かれます。
こんなにも夫や家族の幸せを願う芯の強い女性像・・・、泣けました。
“戻り鰹”だの“古狸”だの言われてたんですけどね。
夫婦はあまりにもよそよそしくて、
これでは子ができないのも無理はない・・・と思いましたが、
それはまあ、最後で盛り上げるためでしたか。





春の作る日々の食事も美味しそうですが、
作中メインで出てくる「饗応料理」というのが素晴らしく美味しそうでした。
今どきでもとてもかなわぬグルメです。
当たり前ですが化学調味料・添加物なし。
和食が世界遺産というのもうなずけますね。
でもあの量はどう見ても食べきれない。
もったいない・・・。

武士の献立 [DVD]
上戸彩,高良健吾,西田敏行,余貴美子
松竹


「武士の献立」
2013年/日本/121分
監督:朝原雄三
出演:上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子、夏川結衣

グルメ度★★★★☆
歴史折込度★★★★★
満足度★★★★☆

「普通の教師が普通に生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて」小野田正利

2014年07月24日 | 本(解説)
どこでボタンの掛け違いをしてしまうのか

普通の教師が“普通に"生きる学校―モンスター・ペアレント論を超えて
小野田 正利
時事通信社


* * * * * * * * * *

学校の先生、保護者のみなさん、
「相手が分かってくれない」と思っていませんか? 
全国津々浦々をまわって、先生たちを元気づける講演を行っている、
小野田正利・大阪大教授が、豊富な事例とともにトラブル回避の方法を伝授! 
学校と保護者の間に生じる「トラブル」や「紛争状況」を、どうやって解決していくか。
双方の間の意識の「ずれ」を解消するために、互いに何ができるのか。
本来であれば、子どもの成長をともに喜びとし、目的とする学校と保護者は
どこでボタンの掛け違いをしてしまうのか。
豊富なエピソードを基に、
学校の先生が、生き生きと活躍できる学校環境をつくりあげる秘訣が満載です。


* * * * * * * * * *

以前、尾木直樹氏の
バカ親って言うな!-モンスターペアレントの謎 という本を紹介しました。
その頃はマスコミ等でも盛んに
「モンスターペアレント」という言葉が使われていたようですが、
尾木ママはさすがにその風潮を危惧しておられました。
相手を「モンスターペアレント」と呼んでしまったら、
それはもう既に「相容れない」「敵」とみなしてしまっているということで、
どうしたって話し合いの余地がなくなってしまいます。
本作はそうではなく、
もっと保護者の言うことの背景を汲み取り、
穏やかに解決に向かうための秘訣が書かれています。
どちらかと言えば教師向けなのですが、ぜひ保護者の側も読むべきではないかと感じました。
教師が日々どのようなストレスに晒されているか、
そういうことを知っていれば、モノ申す時に多少の配慮もできるのではないかと・・・。


・教師は理屈で説明するが、保護者は思いで行動する。

・教師への不満ではなく「親も不安なのだ」と理解する。

・「隠さない」「うそをつかない」姿勢が、危機管理の鉄則。

・教師の性として、どこか最後は優位のまま終わりたいという感覚がある。
 それが関係して、話がまとまりかけたにも関わらず、
 余計なひとことで事態を振り出しに戻してしまう場合もある。

・学校側が一呼吸おいて
 「主たる訴えはなにか」「怒りの背景に何があるか」
 を探ろうとすると出口が見つかる場合も多い。


非常に具体的な例を上げてわかりやすく解説してあるので、読みやすい。
この本は各校に一冊常備すべきなのかもしれません。
しかし、こんなマニュアルなどなくても、
普通に話し合って理解し合えることが一番なのですけれど。
学校の側も保護者の側も、多忙で様々なストレスを抱え気持ちにゆとりがない
・・・そんな世の中であることが一番の問題なのかも、と思ったりします。

「普通の教師が普通に生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて」
  小野田正利   時事通信社

満足度★★★★☆

マダム・イン・ニューヨーク

2014年07月23日 | 映画(ま行)
ツボのど真ん中



* * * * * * * * * *

インドの中流階級の専業主婦シャシ。
夫と2人の子供がいますが、
家族には自分がお菓子を作ることだけがとりえと思われていることに傷ついています。
夫も娘も流暢にこなす英語なのに、
自分だけが全く苦手なのもコンプレックスの一つ。
そんな彼女がニューヨークで暮らす姉の娘の結婚式の準備を手伝うため、
単身ニューヨークへ行くことになるのです。
家族と離れるのも寂しいし、一人旅は不安。
まして英語もできないとなれば・・・。
ニューヨークのカフェで英語ができないために悲しい事態に遭遇し、
すっかり落ち込んでしまう彼女。
けれどこのままではいけないと一念発起、英会話の教室に通い始めます。



私だってたった一人でニューヨークへ行ったりしたら、絶対こうなる!!
と思うあたりですっかり彼女に感情移入してしまいます。
彼女の夫や子どもたちとの関係、うんうん、わかる、わかる。
専業主婦ではない私だって、
家にいれば完全にただの『家政婦』と思われてる気がしますもの。
いやーなんというか、彼女の心情一つ一つがリアルに胸に迫ります。
家を出て、妻でも母でもなく、一人の人間として他の人と接すれば
今までと違う世界が見えてくる。
そしてそんな中から、自分への自信が生まれてくるのでしょうね。



だけれど、やっぱりインド作品は、深刻になりすぎないのがいい。
初めてのニューヨークの不安さはもちろんですが、
心浮き立つ感じを描くことももちろん忘れません。
英会話教室で、人種のルツボとしてのニューヨークの片鱗を描いているのもいい。
スパニッシュ系・アフリカ系・東洋系、
ちょっといかしたフランス青年まで!! 
そうそう、そしてゲイもあり。
実にいろいろな人がいろいろな事情で夢を持ちながらそれぞれの生活をしている。
多様性を受け入れるニューヨークっていうのがなんとも魅力的。
ところどころ挿入される歌やダンスに泣かされたり笑わされたり、
うーん、まさにツボのど真ん中を突かれました。
こんなに心底楽しんでしまった作品も珍しい。



シャシ役のシュリデビさんは、インドでも人気NO.1の女優さんらしいですが、
あのこぼれるように大きな目。
・・・美しいですねー。
スリム過ぎないところも女ざかりの感じがして、またいい。
彼女はニューヨークに行ってもジーンズなど身につけず、ずっとサリーを着ていますが、
その色鮮やかな衣装が素敵で、それを見るのも楽しみでした。
最後に着る真紅の衣装がまたよく似合っていて素晴らしかった。
その衣装を誰が用意したのか、というところも本作のポイントでもあります。
おかしな不倫話にまでいかないところがまた気に入っています。





ところでシャシの作るあのお菓子“ラドゥ”は、どういうものなのか、気になります。
調べてみたら、ベサンというヒヨコ豆の粉やアーモンドなどが材料。
ものすごく甘いのではないかと想像しますが、
食べてみたいですね・・・。



「マダム・イン・ニューヨーク」

2012年/インド/134分
監督・脚本:ガウリ・シンデー
出演:シュリデビ、アディル・フセイン、アミターブ・バッチャン、メディ・ネブー、プリヤ・アーナンド

笑いと涙度★★★★★
元気が出る度★★★★★
満足度★★★★★★←あれ?

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

2014年07月21日 | 映画(あ行)
感傷的にすぎる・・・



* * * * * * * * * *

アニメはほとんどジブリアニメと細田守監督作しか見ないこの頃ですが、
本作に手が出たのは、この、詩的な題名ゆえと言ってもいいでしょう。
2011年4月~6月フジテレビ系深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送された
アニメの劇場版とのことで、もともと人気はあったのでしょう。
しかし、私は見たハナから失敗だった・・・と思ってしまいました。



“じんたん”“めんま”“あなる”“ゆきあつ”“つるこ”“ぽっぽ”、
この6人は小学校6年の仲良しグループ。
秘密基地に集まり、「超平和バスターズ」と名乗って
いつも一緒に遊んでいました。
そんな時“めんま”が事故で亡くなり、グループは散り散りになってしまいます。
時が過ぎて、彼らか高1のとき、
死んだはずの“めんま”が“じんたん”こと仁太のもとに現れる。
彼女の姿は仁太にしか見えないのですが、
どうも何かの願いを叶えて欲しいらしい。
再び秘密基地に集結する彼らですが・・・。





うんと子供の頃のトラウマを抱え、悩み多き青春のただ中にいる彼らが、自分を見つめる
というコンセプトは良いのですよ。
ただねえ、私はいかにもアニメ的“めんま”の
はかなげで、男子の保護欲を掻き立てるような、
甘えた声の少女・・・というのがどうにも受け入れられません。
もし、身の回りにこんなコが実際にいたとしたら、
まあ、仲間づきあいはしますが、決して好きにはなれないだろうと思えてしまうのです。
だから、本作でも“あなる”と“つるこ”が嫉妬ではあれ、
彼女に向けた複雑な心境を覗かせるあたり、
そこが一番リアルに感じた部分。
ラストで「私達みんなあなたが大好きだった」みたいなセリフがありますが、
そこはどうにも納得出来ない。
・・・男性の感想は多分違うと思いますが。





そして一番の盛り上がりらしき場面では、
彼らがみな滂沱の涙。
両目から流れた涙がアゴの先で合流して、
なお滴り落ちるほどの(しかも全員!!)。
うわーって思いましたね。
長く生きてすっかりひねくれてしまったオバサンは
この過剰な感傷についていけない。
あまりのことに逆にしらけてしまいました。
・・・でも、本来「泣ける」作品なのでしょうかね・・・???





本作は小6と高1、そしてさらにまたその一年後・高2という
3つの時期のことが錯綜して出てくるのですが、
小学校時代はともかく、後の高校時代の時系列がわかりにくい。
そこも残念なところです。
また本作を見る限りは“めんま”は自殺のように思えてしまったのですが、
そうではないのですね? 
そうであるのと、ないのとでは彼らの抱えるトラウマに影響することでもあるわけなので、
はっきりさせるべきでした。

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(通常版) [DVD]
入野自由,茅野愛衣
アニプレックス


「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」
2013年/日本/99分
監督:長井龍雪
出演(声):入野自由、茅野愛衣、戸松遥、櫻井孝宏

オセンチ度★★★★★
満足度★☆☆☆☆

「我が家の問題」奥田英朗

2014年07月20日 | 本(その他)
相手の気持に寄り添うこと

我が家の問題 (集英社文庫)
奥田 英朗
集英社


* * * * * * * * * *

夫は仕事ができないらしい。
それを察知してしまっためぐみは、
おいしい弁当を持たせて夫を励まそうと決意し――「ハズバンド」。

新婚なのに、家に帰りたくなくなった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれる妻に感動していたはずが――「甘い生活?」。

それぞれの家族に起こる、ささやかだけれど悩ましい「我が家の問題」。
人間ドラマの名手が贈る、くすりと笑えて、ホロリと泣ける平成の家族小説。


* * * * * * * * * *

奥田英朗による「家族」のストーリー。
どこにでもありそうな家族ですが、それぞれに『問題』を抱えています。

新婚でよく気のつく妻なのに、夫は帰宅恐怖症。

夫が実は会社では仕事のできないダメ社員だと知ってしまった妻。

両親が離婚しようとしているのに気づいてしまった娘。

夫がUFOを見たと言い出し、困惑する妻。

札幌と名古屋に実家がある東京の新婚夫婦の帰省は?

ランニングに夢中になる作家の妻。


本作でいいなと思うのは、
それぞれの問題に気づいた人々が、
決してそれを投げ出したり、逃げ出したりせず、
真摯に何とかしようとする所。


例えば夫がダメ社員と知った妻は、夫の職場での居心地の悪さを察し、
せめて食事のときだけでも美味しく楽しく過ごして元気をだして欲しいと、
お弁当作りに励みます。


両親の離婚の危機に直面する娘は、友人たちをリサーチ。
親の夫婦仲は?
実際に親が離婚している人の気持ちは? 
いろいろな家族の形があって、たとえ離婚しても子供はそれを受け入れ、乗り越えていく。
彼女は離婚阻止のために必死になったりはしませんが、
親もまた感情のある人間ということがわかってきて、
親の離婚を理解する気持ちを持っていきます。


夫がUFOをみた、と突然言い出したら?
しかも毎日のように交信しているなどと・・・
妻はそれが夫の職場でのストレスによるものだということを突き止め、
ある夜思い切った行動に。


それぞれが問題を持つ相手の気持ちに寄り添い、
理解して、包み込もうとする・・・。
愛を感じますねえ。
結局、本当に夫はダメ社員なのか。
本当に両親は離婚しようとしているのか。
そういう結論めいたことは書かれていないのですが、
それはどうでもいいことなのでしょう。
問題に対して、家族がどのようにアクションしたのか。
そこが大切なストーリーなのです。
こんな風に受け止めてくれる・・・家族。
読後感も心地よい、おすすめの一冊。

「我が家の問題」奥田英朗 集英社文庫
満足度★★★★☆

私の男

2014年07月19日 | 映画(わ行)
氷に閉ざされた地で



* * * * * * * * * *

禁断の衝撃作・・・ともいうべき作品です。


「地獄でなぜ悪い」と「ヒミズ」で
二階堂ふみさんには衝撃を受けていたので、
本作もきっとやってくれるに違いないとほぼ確信を持っていました。



北海道出身の熊切和嘉監督らしい前半部分の舞台。
奥尻島の災害で10歳にして孤児となった少女・花が、
遠縁の男・淳吾(浅野忠信)に引き取られます。
この子供時代の花は山田望叶さんが演じているのですが、
イメージとして確かに二階堂ふみさんの子供時代っぽいばかりでなく、
魂が抜けたように表情がないのがスゴイと思いました。
特に、淳吾のあるセリフに反応した時の目が、忘れられないのですが、
あとから思えばなるほど、
少女はその時にすべてを見抜いていたということになるのです・・・。
う~ん、これだからぼんやり見ていられない。



二人は北海道紋別の田舎町で暮らします。
冬には流氷が訪れ、流氷がこすれあってギシギシ音を立てている。
・・・というか流氷は見に行ったことはありますが、
こんなに間近で見たことはないので、こんな音は初めて聴きました。
この臨場感はスゴイ。
成長した花に、二階堂ふみさん、バトンタッチ。
この町で、孤独な二人が、互いの心の隙間を埋めるように
心ばかりか体をも寄せあっていく。
男が幼女を引き取り成長すると男女の関係になっていく
・・・というのはそれだけでも隠微なのですが、
実はそれ以上のインモラルが潜んでいます。
血の雨が滴るシーンは、やはり衝撃的でした。





やがて町の世話役的老人が流氷の上で死体で発見され、
その後この二人は東京に出ます。
しかし、生活は荒び、家の中はほとんどゴミ屋敷。
花は服装だけは身ぎれいにし、普通にOLとして仕事に出ていますが・・・。


「私の男」という題名でもわかる通り、
本作、実は二人の関係を支配しているのは女のほうなのです。
いみじくも幼い花に向かって淳吾はこういっていた。
「今日から俺はおまえのものだ。」
決して「おまえは俺のものだ」ではなく。



女は自分のために流氷の海に飛び込むこともいとわない。
そうした“生きる”ことに貪欲な彼女の怪しい魔力に、
男はなすすべなく絡め取られ魂を抜かれていくしかない・・・。
氷に閉ざされた地で起こる隠微で悲惨な出来事。
インパクト大。
そして怖いですね・・・。


「私の男」
2013年/日本/129分
監督:熊切和嘉
原作:桜庭一樹
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、モロ師岡

インパクト★★★★★
満足度★★★☆☆
(作品のデキと好みは別ということで、ご勘弁を・・・)

マラヴィータ

2014年07月17日 | 映画(ま行)
痛快・過激な“ファミリー”の話



* * * * * * * * * *

マーティン・スコセッシ製作総指揮、
監督リュック・ベッソン、
出演がロバート・デ・ニーロにトミー・リー・ジョーンズと、
なんとも贅沢なこの作品。
それも力が入りすぎず、それぞれのこれまでの経験を踏まえて、
痛快かつユーモアに満ちた作品となっているのは、ウレシイ限り。



FBIの証人プログラムにより保護されている、元マフィアのブレイク一家。
元のシマであるニューヨークを離れ、フランスの各地を点々としています。
というのも、当主フレッド(ロバート・デ・ニーロ)、
その妻マギー(ミシェル・ファイファー)、
長女ベルに長男ウォレン、
みな似たもの家族で、キレるととんでもない事になってしまう。
それでご近所とすぐに揉め事が起こってしまい、転居しなければならないハメになるのです。
彼らを監視し保護するのがFBIのスタンフィールド(トミー・リー・ジョーンズ)。
いつも苦労が絶えません。
本作は彼らがフランスの片田舎ノルマンディーの町へやって来たところから始まります。
この一家の滅茶苦茶に過激な生活の様子が描かれていきますが、
そんな時、フレッドに恨みを抱くマフィアのドンが、
ついに彼らの居場所を突き止め、殺し屋軍団を送り込んでくる・・・。



非常に暴力的でやり過ぎの感のある一家ではありますが、
何故か痛快。
というのも、彼らがキレる場面というのが、
相手が自分たちの悪口を言ったり、プロ意識のない仕事をしたり、
だれでもが「ムッ」と来る場面だから。
でも大抵の人ならじっとこらえるか諦めるかするところを、
彼らはキレて、相手をボコボコにしてしまうのです。
これが実はチョッピリ痛快だったりする。
しかしさすがにフレッドは我慢するということを学んだようで、
時に、相手を打ちのめす妄想だけに留めることも。
はい、その努力は認めます・・・。
またサブストーリー的に、この町で問題となっている
「水道水の濁り」をフレッドが解決するというエピソードがまたいいのです。
やってくれます。



また、ある日マギーが教会で告解をします。
つまり彼らのハチャメチャな生活をありのまま話して懺悔をするわけですが、
その神父の態度がいけ好かない。
無論それを他の人に言いふらしたりはしないのですが、
何かの集まりに彼女が現れた時に彼女を追い出すのです。
まるで悪魔が現れたかのように。
普段気の強い彼女なのに、その時は何もできず、ただ傷つくのですね。
また、長女ベルは数学の教師に恋い焦がれますが、
彼の方は一度はその気になったくせに逃げてしまう。
彼女なら彼のもとに飛んでいってボコボコにのしてしまうだろうと思えたのですが、
そうはならない。
こんな風に、この一家のハチャメチャながらもちょっぴりナイーブな面を覗かせるところが、
またしびれるのです。
・・・なんというか、さすが職人技を思わせるユニークな作品。



ところで、マラヴィータというのは、この家族が飼っている犬の名前。
いやさすが、やっぱり犬までもが“ファミリー”でしたね。
納得。

マラヴィータ [DVD]
ロバート・デ・ニーロ,ミシェル・ファイファー,トミー・リー・ジョーンズ,ディアナ・アグロン,ジョン・ディレオ
Happinet(SB)(D)


「マラヴィータ」
2013年/アメリカ・フランス/111分
監督:リュック・ベッソン
製作総指揮:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズ、ダイアナ・アグロン、ジョン・ドレオ

痛快度★★★★☆
満足度★★★★★

「海街diary6  四月になれば彼女は」吉田秋生

2014年07月16日 | コミックス
「人の生き死に」と「お金」の話は切っても切れない

海街diary(うみまちダイアリー)6 四月になれば彼女は (フラワーコミックス)
吉田 秋生
小学館


* * * * * * * * * *

待望の新刊がでました。
最近本作の実写映画化が発表になったところで、盛り上がります!
公開は2015年初夏ということで1年ほども先なのですが、
監督は私も大好きな是枝裕和氏ということで、今からもう楽しみです。

キャストは・・
香田幸:綾瀬はるか
香田佳乃:長澤まさみ
香田千佳:夏帆
浅野すず:広瀬すず
ということで・・・
サチねえに綾瀬はるかさんというのはどうもイメージが違う気もしますが・・・。
まあ、お手並み拝見。


さて、映画の話はそれくらいにして、本巻。
冒頭は、すずのお母さんの実家、金沢でのお話。
今は亡きすずのお母さんは、金沢の老舗の呉服屋の娘でしたが、
昔気質で頑固な母(すずのお祖母さん)は
妻子ある男との不倫をした娘を許さず、絶縁状態だったのです。
このたびそのお祖母さんが亡くなったので、
すずは叔父・叔母に招かれ、姉たちとともに金沢を訪れます。


「人の生き死に」と「お金」の話は切っても切れないものらしい。
あまりにも現実的な話ですが、そういう問題が絡んできます。
このテーマは本作の別の側面にも出てきていて、
私達の生活と実はとても密着した話なのですね。
家族の死を悲しむよりまず欲得に走ってしまう人の心が悲しいですが、
これもまた現実。


後半は、すずの将来の話になっていきます。
女子サッカーのチーム新設を予定している高校から、すずに特待生の話が来るのです。
色々な思いがあって、悩めるすず。
彼女の決断を尊重しようと、そっと彼女を見守る姉たち、
そして風太をはじめとする友人たち。
生きていく限りは人は一処にとどまっていることはできません。
そこがどんなに居心地のいいところでも。
・・・となれば4月になれば彼女はやはり
この街を出て行くことになるのでしょうか・・・?
本巻ではまだその答えは出ていないのですが、
その結論が出たあたりでこのストーリーは幕が下りてしまいそうで、
今からチョッピリ寂しい思いがしてしまいます。


本巻初登場、すずの従兄弟にあたる直人がいいですね。
チョッピリチャラ男系。
超方向音痴。
けど彼のチャラ男系には理由がある。
そういう造形がとてもいい。
そして、これまでベールに包まれていた千佳の想い人、スポーツ店店長の過去が、
次の巻くらいには明るみに出るのかな・・・?


というあたりで、「つづく」です。
この本は次の巻が出るまでが長いのだなあ・・・。
ひたすら待ちます。
映画はどのあたりまでの話になるのかな?


「海街diary6  四月になれば彼女は」吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★★

オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014年07月15日 | 映画(あ行)
死と覚醒のループ



* * * * * * * * * *

ハリウッドのSF系アクション作品はどうも見る気がしない
・・・などと言いながら性懲りもなく本作を見たのは、
原作が日本のライトノベルということと、
まだやっぱり、すっかり諦める気にはならない・・・ということで。
もともと、好きなジャンルなんですよね、考えてみると・・・。



舞台は近未来。
ギタイと呼ばれる謎の侵略者と人類の闘いが続いています。
軍の広報担当官であるウィリアム・ケイジ(トム・クルーズ)は、
口ばかり達者で決して危険な最前線には近寄ろうとしません。
そもそも戦闘経験もゼロ。
それなのに、最前線に送り込まれてしまい、あっという間に戦死。



これまでのトム・クルーズには見られない、へなちょこ腰抜け男。
そんな意外性でまず私達を驚かせます。
さてところが、彼が目覚めると戦闘前の時間に戻っているのです。
そしてまた同じことが繰り返される。
彼は学習します。
どうすれば生き延びられるのか。
何度も何度も繰り返される覚醒と死のループの中で、
彼は次第に逞しく変わっていくのです。
そして同様にタイムループの経験を持つ女性兵士リタ(エミリー・ブランと)との出会いが大きなポイント。
ケイジは彼女に訓練を受け、戦士として成長。
そしてギタイを滅ぼす方法の糸口をつかむのです。



本作はこの二人のラブストーリーでもあるので、
またそこでも楽しめます。
リタはかつてタイムループの能力を持っていたのですが、
あることから、もうそれはできません。
それゆえ戦闘での死は彼女にとっては本当にそれが最後なので、
ケイジはなんとか彼女を守ろうと必死になるわけです。
また、ケイジが覚醒して彼女と出会う時、
彼女の方は常にケイジと会うのが“初めて”なのです。
なかなか前途多難。
だがしかし、だからこそ面白い。



本作のあらすじを見た時に、
死が簡単にリセットされてしまうというところにちょっと抵抗を感じたのですね。
本当の命にはリセットなどない。
今どきの子どもたちが命の重さを理解しないのは
TVゲームのせいではないのか・・・などと言われることもありますし。
本作の発想はやはりゲームなのでしょう。
とは言え、こんなにも数えきれなくて途方に暮れるほどのリセットと
彼自身の努力でやっと自体が改善していく。
そこの部分が非常に重く、決して命を軽く扱っているわけではないところも納得できていくので、
始めに抱いていた危惧は解消されていきました。
予測不能の展開と、仄かなラブストーリー、そしてアクション。
見どころたっぷりです。


機動スーツというのは将来実用化しそうな感じですね。
・・・いや、戦争には用いてほしくないですが、いろいろな作業には役に立ちそうに思います。
ケイジの「本気」で周りの人たちまで変わっていくというところもナイスでした。

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
2014年/アメリカ/113分
監督:ダグ・リーマン
原作:桜坂洋
出演:トム・クルーズ、エミリー・ブラント、ビル・パクストン、ブレンダン・グリーンソン

ワクワク度★★★★☆
満足度★★★★☆

ポスター犬24

2014年07月14日 | 工房『たんぽぽ』
蜩ノ記


今楽しみなのはこれ。
葉室麟さんの原作も素晴らしかったので・・・。
黒田官兵衛ではない岡田准一さんも楽しみです。



このにゃんこは完全オリジナル。
普段はキットを購入したり、本を見ながら作るのですが
私だけのものを作りたくなり・・・。


うんとユニークなものを作ってみたい・・・。


「先生のお庭番」 朝井まかて 

2014年07月13日 | 本(その他)
しぼると先生とコマキ

先生のお庭番 (徳間文庫)
朝井 まかて
徳間書店


* * * * * * * * * *

出島に薬草園を造りたい。
依頼を受けた長崎の植木商「京屋」の職人たちは、
異国の雰囲気に怖じ気づき、十五歳の熊吉を行かせた。
依頼主は阿蘭陀から来た医師しぼると先生。
医術を日本に伝えるため自前で薬草を用意する先生に魅せられた熊吉は、
失敗を繰り返しながらも園丁として成長していく。
「草花を母国へ運びたい」先生の意志に熊吉は知恵をしぼるが、
思わぬ事件に巻き込まれていく。


* * * * * * * * * *

オランダから長崎の出島に来たシーボルトと
庭師の熊吉らの交流を描いています。
シーボルトの発音で熊吉は「コマキ」、
日本人妻お滝さんは「オタクサ」だったりするのが臨場感あります。


本作で惹かれるのは、この15歳熊吉のひたむきさ。
異国の医師しぼると先生を敬愛し憧れ、
少しでも彼の望みに答えようと、一心に仕事に励みます。
薬草園を作り、日本にある多くの植物を生きたままオランダへ運ぶための工夫をこらす。
私もガーデニングに興味があったりするので、
様々な草花の描写にも心惹かれました。
ヨーロッパには植物にあまり多くの種類がなかったというのです。
日本の多種多様の植物に驚いたシーボルトは
なんとかこれを本国に持ち帰り、増やしたいと思った。
シーボルトといえば蘭学ではありますが、
本作ではこのように植物を中心にしているところもまた、興味深いところです。


そして、シーボルトといえば避けて通れない「シーボルト事件」。
葉室麟「オランダ宿の娘」でも取り上げられていましたが、
帰国直前のシーボルトの所持品の中から日本地図が見つかったと言うもの。
熊吉もその中に巻き込まれていきますが・・・。


熊吉の目を通し、ただ敬愛する人物というだけではなく、
どこかひんやりと相容れないところを持つ異国人シーボルトの人物像を浮かび上がらせます。
悲しみをバネにしてなお逞しく生きようとするお滝さんの描写もステキでした。

「先生のお庭番」朝井まかて 徳間文庫
満足度★★★★☆