映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「教科書の詩をよみかえす」 川崎洋

2011年04月30日 | 本(その他)
詩を読んで想像の翼をひろげよう

教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫)
川崎 洋
筑摩書房


           * * * * * * * *

この本は教科書に採用された詩を取り上げ、
あらためてまた、その詩を味わってみようという趣旨。
でも、この著者自身詩人なので、この本はいわゆる「教科書」的な詩の解説ではなく、
うんと想像の翼を広げ、自由で楽しい本となっています。

取り上げられた詩は
草野心平、中野重治、室生犀星、まど・みちお、
萩原朔太郎、谷川俊太郎、三好達治、中原中也・・・
そもそも、私が『詩』の本など紐解いた最後の日はいつだったのかも思い出せませんが、
そんな私でも名前だけは知っているという方も多いですね。
私も遠い昔に教科書で見たものだったのか、見知っている作品も。


紙風船
      黒田三郎

落ちて来たら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも打ち上げよう

美しい
願いごとのように



この詩を見て、あれ?と思いました。
私はこの詩のメロディを知っている。
フォークソングが全盛の頃、私が好きだった「赤い鳥」が歌っていた曲の一つ。
この方の詩だったんですねえ。
何十年もたって知りました。
川崎氏はこの詩をこのように言います。

この詩を読むと、いつも光さす空を見ていよう、
紙風船がおちてくるのに目をとめるより、
何度もうちあげるそのことに生きる証をみつけよう、
というような祈りに似た詩の心が伝わってきて、励ましさえ感じます。


そうですね。
私たちは希望を失ってはいけない。

次の詩は是非声に出して朗読したい詩です。


あめ
           山田今次

あめ あめ あめ あめ
あめ あめ あめ あめ
あめは ぼくらを ざんざか たたく
ざんざか ざんざか
ざんざか ざんざか
あめは ざんざん ざかざか ざかざか
ほったてごやを ねらって たたく
ぼくらの くらしを びしびし たたく
さびが ざりざり はげてる やねを
やすむ ことなく しきりに たたく
ふる ふる ふる ふる
ふる ふる ふる ふる
あめは ざんざん さがさん ざかざん
ざかざん ざかざん
ざんざん ざかざか
つぎから つぎへと ざかざか ざかざか
みみにも むねにも しみこむ ほどに
ぼくらの くらしを かこんで たたく



この詩が書かれたのは敗戦の翌々年といいます。
焼け野原にたてた掘っ立て小屋を無情の雨がたたきつける・・・
なんとも殺伐とした厳しい状況ではあるのですが、
著者はこのようにいっていますよ。

この詩は黙読するより声に出して朗読する方が、
よりまっとうに詩に込められた作者の気持ちが伝わってきます。
音読すると暗さや惨めさより、
むしろ激しい雨を跳ね返して生きていこうという
したたかなたくましさが胸にしみ込んできます。


まさしく、その通り。

今の私たちが口ずさみたい2編をご紹介しました。


この本のような解説を小中学校の国語の時間に聞いていたら、
もっと国語が好きになっていたかもしれませんね・・・。
もちろん、詩とか物語とか、本は大好きでしたが
「国語」の時間が好きとは思えなかった私です・・・。

「教科書の詩をよみかえす」 川崎洋 ちくま文庫
満足度★★★★★

そして、私たちは愛に帰る

2011年04月29日 | 映画(さ行)
ドイツ・トルコ、それぞれの親子愛



            * * * * * * * *

「ソウル・キッチン」に魅了された私は、
さっそくまたファティ・アキン監督作品を見てみました。
監督はドイツのトルコ移民2世。
そういう出自の事情が色濃くこの作品に現れています。



ここには三組の親子が登場します。
年金暮らしの父アリ。
トルコからの移民です。
なんと彼は娼婦(彼女もトルコ人)イェテルと同居を始める。
その息子ネジャッドは大学の講師で、
娼婦と暮らし始めた父に驚きあきれるけれども、
特に彼女に偏見がないのはいい感じです。
彼女は学生の娘アイテンに仕送りをするためにお金を稼いでいるというのですが、
現在、その娘からの音信が途絶えているのが気がかりだという。

さて、場面は変わって、その娘アイテンの方です。
彼女はトルコで反政府運動に加わっていて、
危険を逃れるためにドイツにやって来ました。
母を頼ってきたのですが、その母も娘に靴屋で働いているなどと偽っていたために、
探し当てることができません。
お金もなく困り果てていたところをドイツの女学生ロッテに救われる。

そのロッテの家にすまわせてもらうことになったアイテンですが、
ロッテの母スザンヌはそれが気に入らない。
ところが密入国がばれたアイテンはトルコに強制送還され、
反政府運動に加わったことでトルコの刑務所に収監されてしまう。
アイテンを心配したロッテはイスタンブールへ・・・。



トルコとドイツを行き来しながら、
それぞれの愛のあり方を浮かび上がらせていきます。
突然にあっけなく訪れる人の死。
そして、もつれていく人物関係。
もどかしいすれ違い。
けれど、描写は実に淡々としていて静か。
その淡々とした描写の中から、
次第に人が人を思う強い気持ちがにじみ出てきます。
親が子を思う気持ち。
子が親を思う気持ち。
それは憎しみにも勝る。
どことなく感じる無常感は、日本人のそれに通じるような気もしました。



2007年、カンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞受賞。
うなってしまうような登場人物の交差。
変にうまくまとまらない妙。
うん、さすがです。

そして、私たちは愛に帰る [DVD]
ファティ・アキン
ポニーキャニオン


「そして、私たちは愛に帰る」
2007年/ドイツ・トルコ/122分
監督・脚本 ファティ・アキン
出演:バーキ・ダブラク、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ、トゥンジェル・クルティズ

ダンシング・チャップリン

2011年04月28日 | 映画(た行)
舞台裏を知ることで一層の興味と理解が



            * * * * * * * *

フランスの名振付師ローラン・プティによる
チャールズ・チャップリンを題材としたバレエ「ダンシング・チャップリン」舞台を
映画化したものです。
私は特にチャップリンに思い入れがあるわけでもなく、
バレエも漫画はよく見ますが、
ホンモノの舞台はあまり縁がないといった体たらく。
主に周防監督とその奥様草刈民代さんに興味を持って、
というミーハー的動機で見に行きました。


第一幕「アプローチ」は、この作品の撮影を始めるまでの過程を描いた記録。
特に、このプティ氏はいかにも頑固そうで全く食えない感じ。
周防監督も苦笑い。
プティ氏はあくまでも「舞台」の記録のイメージを抱いているようなのですが、
監督は記録ではありつつも、あくまでも「映画作品」に仕上げたい。
そういう二人、表面にこやかではありながら
見えないところで火花が散っているようです。
それから、このチャップリン役のルイジ・ボニーノ氏のキャラクターが何ともステキ。
なんと60歳なのだとか。
もともとこの作品、プティ氏がボニーノ氏のために作ったのですね。
だから役柄がぴったりなのは当然なのですが、
彼がいると場の雰囲気が違う。
まさにイタリアの方らしくて陽性ですね。
そして長年の経験によるどっしりとした安定感と包容力。
彼がいるととても安心感があります。
すごいオーラを持った方です。
黒いバックに黒い衣装を着て踊ると、手がすごく目立ちます。
その手の動きのなんとやさしくしなやかで美しいこと。
その指はよく見ると結構ブコツだったりするのですが。
この手の平に包まれたら赤ちゃんのように安らかな心地になりそう・・・。


そうして5分間の休憩を経て、いよいよ「バレエ」の本番。
堪能しました。
草刈民代さんの動きもなんて美しい・・・。
この2部構成は、特に私の様なバレエのドシロウトにはありがたいです。
私などは、バレエは美しくて当たり前なんてつい思ってしまいますが、
そのためにどれだけの練習があるか、
どれだけの人のいろいろな場での努力があるのか、
そういうことが解っていればまた感慨もひとしおです。
バレエのリフト一つとっても、ただ持ち上げればいいというモノではない。
いかに相手が動きやすいか、
それをわかっていなければダメなんですね。
プティ氏が反対していた野外の公園で警官が踊るシーン。
結局監督は自分の意志を通したのですね。
これぞ監督の矜持というものでしょう。
これがまたやはり新鮮でとてもいいシーンでした。


「ダンシング・チャップリン」
2011年/日本/131分
監督:周防正行
出演:ルイジ・ボニーノ、草刈民代、ジャン・シャル・ベルシェール、リエンツ・チャン、ローラン・プティ

007/ロシアより愛をこめて

2011年04月27日 | 007
ロシア美人と仕掛け鞄

            * * * * * * * *

さて007二作目です。
実は前回、このシリーズは失敗なのではないか・・・と
ちょっと思ってしまった。
だって、何だか退屈だったんだもの・・・。
しかーし、これを見て安心しました。
いい感じに楽しくなってきていますね。
ここでは犯罪組織スペクターの名前がしっかり出てきまして、当面、ジェームズボンドは彼らと敵対することになるんですね。
彼らのボスは顔が出てこない。
いつも白い猫を抱いていて、冷徹。
彼らは、前回のドクター・ノオの事件を根に持っていて、今回は始めからボンドがターゲットです。
暗号解読器と美女タチアナを餌に、ボンドがおびき寄せられ・・・、
さあ、どうなる?!


今回の舞台はトルコのイスタンブール。
これは異国情緒があってなかなかいいな。
敵側の殺し屋との列車内での対決。
ボートの追撃戦。
ヘリコプターからの銃撃戦。
・・・と、アクションも前作よりグンと増えました。
つまり、私たちのよく知っている007シリーズは、
実はこの2作目から始まるといってもいいくらいなんだね。
そうだね、2作目からシリーズ化に当たって、
しっかり設定を見直したんだろうな。
予算もずいぶん大きくなったんだろうね!
それはいえるな。
今作では、ボンドは仕掛けのある鞄を持つんだね。
そう、ナイフが飛び出したり、中に金貨が隠されたりしているだけではなくて、
この鞄、きちんと手順を踏んであけないと催涙ガスが吹き出す!
期待通り、終盤でばっちりのシチュエーションで使うことになるね。
痛快であります。
タチアナはもともと敵側の女で、ボンドを騙す役どころだったのだけれど・・・
まあ、ベタな展開ではありますが、しだいにボンドにほだされていきますねえ。
そんなところも面白い。


1964年日本公開時のタイトルは「007/危機一髪」
原題は”From Russia With Love”
「ロシアより愛をこめて」、やっぱり直訳のこっちの方がステキだな。
そのテーマソングもいい曲だよねえ。
よし、これでまたこの先も少し楽しみになってきました。

ロシアより愛をこめて (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ショーン・コネリー,ロバート・ショー,ダニエラ・ビアンキ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


1963年/イギリス/115分
監督:テレンス・ヤング
出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ロッテ・レーニャ


わんこ3

2011年04月26日 | 工房『たんぽぽ』
コーギーの開き?

               * * * * * * * *

さて、今回はコーギー犬のバリエーション。



これがそれぞれのパーツ。
これを組み立てると・・・



コーギーの開き?
こんな風に、ぺったりとうつぶせのポーズ、
コーギーがいっそうかわいらしく見えるポーズの一つです。



前から見ても、ちょっとかわいいいでしょう?

もっといろいろ作りたいという気持ちばかりはあるのですが、
なかなか作る暇がないというのが現実。
この次はもう少し小物を作ります。


月の輝く夜に

2011年04月24日 | 映画(た行)
月の魔力で恋は始まる

           * * * * * * * *

舞台はニューヨーク。
夫と死別した独身ロレッタ(シェール)は、イタリアからの移民家族の一員。
彼らはとてもファミリーを大事にしますね。
だからアメリカの映画では、これくらいの年の女性で独身なら
たいてい一人暮らしなのですが、
彼女は両親とおじいちゃんと同居です。
映画の冒頭で、彼女はジョニーにプロポーズを受けて承諾。
しかし、彼は母親が危篤というので、すぐにシチリアへ発ってしまいます。
絶交状態の弟ロニー(ニコラス・ケイジ)に
「結婚式に出るよう伝えてくれ」と言い残して。

さて、人の心を狂わせるという満月の夜。
しかもそれはいつもより大きく異様に光り輝いている。
ロレッタは人生に希望をなくしているロニーと共に一夜を過ごしてしまいます。
夜が明けると激しく後悔してしまうロレッタ。
ジョニーと婚約しているというのに・・・。
さあ、この恋の顛末は・・・?


このストーリーは、この二人だけではなく、
彼女のお父さんとお母さんのそれぞれの思い、
叔父夫婦の思いも描かれているのがいいのです。
特にお母さんは、夫の浮気に気がついていて落ち込んでいる。
「どうして男は女を追いかけ回すの? しかも同時に何人も・・・」
こうした疑問を身の回りの男性に投げかけるのですね。
「それは死を恐れているから・・・」
彼女が腑に落ちた解答でした。
さぞかし昔は美人だったと思わせる、このお母さんもステキです。

また、ここのおじいさんも楽しい。
もうかなりのお年で、よぼよぼなんですが、
毎日たくさんの犬を連れて散歩に出ます。
このおじいさんが昔、
大きな夢を抱えて家族と共にこのアメリカへ渡ってきたのでしょうね。
家族の絆と愛について語る、ゆったりと安心して見られるロマンチックコメディです。
ニコラス・ケイジが若い!

月の輝く夜に [DVD]
シェール,ニコラス・ケイジ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 
「月の輝く夜に」
1987年/アメリカ/102分
監督:ノーマン・ジュイソン
出演:シェール、ニコラス・ケイジ、オリンピア・デュカキス、ビンセント・ガーディニア

「阪急電車」有川浩

2011年04月23日 | 本(その他)
ローカル電車の中のドラマ

           * * * * * * * *

阪急電車今津線を舞台に繰り広げられる、連作短編集。
宝塚駅から西宮北口駅まで駅は8つ。
まず往路で乗客となる様々な人に焦点を当てていきます。

よく図書館で見かける女性と隣り合わせになった男子。

恋人をとられた相手の結婚式に真っ白なドレスで乗り込んだ女性。

すぐキレて、暴力をふるう彼氏と別れようと決意する女子。

初々しい恋の予感の出会いをした二人・・・

西宮北口から折り返し、今度は復路となるのですが、
それがすぐにではなくて、半年以上たってから。
だから同じ登場人物のその後を知ることになる、
という構成がとってもしゃれています。


私が一番好きだったのは、
真っ白なドレスで、モトカレとその彼女の結婚式に討ち入りを果たした翔子さん。
なんといっても鮮烈です。
まあ、よくありそうな話しですが、すごく勇気がいりますね・・・。
この気の強い彼女は、
電車に乗り合わせた小さなオンナノコが彼女を見て「花嫁さん」とつぶやいたとき、
涙があふれてきます。
そう、本当は花嫁さんになりたかった・・・。
緊張が解けてすなおな感情が垣間見えるシーンはなかなかいいですね。
やはり有川浩さんらしく、
男女の会話はほんのり甘酸っぱく、楽しく読めます。
この路線は片道15分ほどだそうです。
駅ごとに町の表情があるというのもいいな。
今度そちらの方面に行くことがあれば、是非乗ってみたいものです。


ところで、以前にも少し思ったのですが、
有川作品は、善悪というか敵・味方がきっぱりしすぎている気がするのです。
今作では翔子さんと相手の男女。
一人の女性と乱暴な男。
若い女性と傍若無人なオバサンの群れ。
対立関係が多いのです。
こちら側とあちら側の溝はとても深くて相容れない。
あちら側の人間は容赦なくバッサリ。
こちら側同士は、甘い蜜月なのですが。
これでは「戦争」にもなるわな。
なんというか、この頑固な境界にほころびができれば
もう少し全体が深まるのではないかなあ・・・などと思う。

さてこの作品も映画化されまして、まもなく公開。
見に行くかどうかは・・・微妙なところ。

阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川 浩
幻冬舎


「阪急電車」有川浩 幻冬舎文庫
満足度★★★★

シリアスマン

2011年04月22日 | 映画(さ行)
運命をありのままに受け止めるとは?



             * * * * * * * *

コーエン兄弟監督作品、ということで楽しみに見ましたが、
これは結構考えさせられてしまう作品です。
舞台は1967年、アメリカ中西部。
撮影はミネソタ州ミネアポリスで行われたそうですが、
これはコーエン兄弟の出身地。
彼らの子供の頃のその地をイメージしているようです。


大学の物理学講師をしているラリーは、ごく平凡でまじめ。
妻と娘・息子、これもまた平凡な家庭であったはずなのですが・・・。
突然に、次から次へとラリーに不幸が訪れる。



・まずいきなり妻から別れ話。
妻が一緒になりたいというのはラリーの友人。
・落第点をとった学生から賄賂を渡されるが、
そのことを逆手に逆に名誉毀損で訴えるなどと言われてしまう。
・大学に舞い込むラリーの中傷の手紙。
・隣人が境界を無視して、こちらの庭に入り込む。
・妻と友人はラリーに家を出るようにと迫り、
ラリーとその居候の兄がモーテル暮らしをするハメに。
etc・・・ etc・・・

ユダヤ人であるラリーは神に救いを求めようと、
ラビ(司教)に助言を求めに行くのですが、全くらちがあきません。
「身に降りかかるすべてをありのままに受け入れよ・・・」
そのようにいわれたって、どうしろと言うんだ!
なんの希望もなく途方に暮れ呆然としてしまうラリー。
自分にはなにも落ち度などないと思うのに、
どうしてこんなによくないことばかりが重なるのか。
そうして私たちは、この作品のラストで
またさらに不条理の大海に投げ出されてしまうのです。



踏んだり蹴ったりのラリーに、同情しつつも笑ってしまう、
そういう側面は確かにあるのですが、
この作品の主題は別のところにある。
私たちの実人生、実はこんなことばかりです。
特に今の日本人なら、この作品を見るとつい連想してしまうのではないでしょうか。

信じられないほどの大きな地震に加えて大津波。
多くの犠牲者が出て、その上放射能がいつ果てるともなく漏れ出てくる。
そこに追い打ちをかけるようにまた大きな余震。
一体何で自分たちにばかり、こんなよくないことが続くのか。
正に答えなどありません。
作品冒頭の「悪霊」のエピソード。
そして中盤「歯」のエピソード。
どれもオチも答えもないですね。
結局各自がそれをどのように受け入れて消化していくのか、
それがそれぞれの人生感ということになるのかなあ・・・。

不幸ばかり続くというラリーですが、実はいいこともありましたよね。
アンテナを直すために屋根に登ったら、
となりの奥さんのきれいなヌードが見えた、とか。
ある夜、兄が一人でさめざめと泣いている。
「俺は病気持ちで住むところも仕事も家族もない・・・」と。
ラリーは離婚寸前とはいえ、結婚し家族がいて、
終身雇用ではないけど仕事もあって、
息子は無事にユダヤ教の成人の儀式をこなした・・・。
この状態を不幸というのは贅沢だ。



幸・不幸はあくまで私たちの主観であって、
実はさまざまな事象がただ複雑にあるだけなのかもしれません。
そこに何らかの意味を見いだそうとしてはいけないのか・・・・・。
運命をありのままに受け止めるとは、そういうことなのかも。
でも、やっぱり私たちには、それはむずかしい。
だからこそ、あの皮肉なラストにつながるのでしょう。


劇中歌ジェファーソン・エアプレインの「あなただけを」が非常に懐かしかった・・・。
当時、意味もわからず
「ドンチュー、ニッサンバジツロー♪」
と聞こえていたのが
Don’t you need somebody to love
だと、初めて解りました(^^;)

2009年/アメリカ/106分
監督・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:マイケル・スタールバーグ、リチャード・カインド、フレッド・メラメッド、サリ・レニック、アーロン・ウルフ


わたしの可愛い人―シェリ

2011年04月20日 | 映画(わ行)
あまりの年の差がもたらしたもの



              * * * * * * * *

20世紀初頭ベルエポックのパリ。
ベルエポックとは19世紀末から第1次世界大戦勃発まで
パリが繁栄した華やかな時代を指します。
それは、ココット(高級娼婦)たちがその美貌と文化教養を武器に
パリ社会の中で輝かしいセレブとして生きていた時代でもある。
この作品はこの時代背景なくしては成り立ちません。
レアはそんなココットの中でも、最も美しく名を馳せた一人。
でももう40代となり、そんな生活に倦んできた。
そんな時、元同業のマダム・プルーの一人息子シェリに会います。
シェリは19歳というのに、もうすっかり女遊びにも飽きているという遊び人。
二人には年の差も問題ではなく、ほんのひとときの遊びのつもりが、
なんと6年もの間、共に楽しく甘い時を過ごすことに。

さて、25歳になったシェリに結婚話が持ち上がる。
潔く、もう関係を解消しましょうと身を引くレア。
でも新婚生活を始めたシェリも、気晴らしに旅に出たレアも、
互いが恋しく、ひとときも忘れられない。


背景はベルエポックという特殊な時代でありながら、
その男女の愛の有り様、心の不可思議な移り変わりは、
いつどんなところにでもある普遍的なもので、
哀しい共感を呼びます。
彼らは辛い別離の時を経て、
再会の時を迎えますが・・・。

シェリにとってレアは母であり姉であり、自分を庇護してくれる者だったのでしょう。
19歳での出会いは、早すぎた。
結局シェリの心はそのときの少年のままで、大人として熟成していかない。
レアと離れたシェリは自分を「孤児」のようだと思います。
そして6年もの間共に暮らすうちに、
シェリをそのようにしてしまったのは自分であるとレアは悟るのです。


美しく哀しい物語ですね。
このシェリを演じているのが先日「クレアモントホテル」でみたルパート・フレンド。
う~ん、いい。
金髪の彼もいいですが、黒髪もまた一段とステキです。
今後は彼の出演作は外せません!!

わたしの可愛い人-シェリ [DVD]
ミシェル・ファイファー,ルパート・フレンド,キャシー・ベイツ,フェリシティ・ジョーンズ,イーベン・ヤイレ
オンリー・ハーツ


「わたしの可愛い人―シェリ」
2009年/イギリス・フランス・ドイツ/90分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ミシェル・ファイファー、ルパート・フレンド、フェリシティ・ジョーンズ、キャシー・ベイツ

アントニー・ジマー

2011年04月19日 | 映画(あ行)
元祖「ツーリスト」

              * * * * * * * *

アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップ、
豪華競演の「ツーリスト」の元になった作品です。
「ツーリスト」は若干消化不良のようなできだったので、
こちらに興味がわいて、さっそく見てみました。


金融犯罪の天才、アントニー・ジマー。
警察ばかりでなくロシアン・マフィアも躍起になって彼の行方をさぐっています。
しかし、彼は整形手術を受け、今の彼の顔をだれも知らない。
そこで、警察やマフィアは、ジマーの愛人キアラに張り付き、
彼女に接触を図る男を待つのです。
キアラの方は、ジマーから捜査攪乱のため適当な男を見つけて行動を共にするように
との連絡をうける。
そこでキアラは、バカンス地へ向かう列車TGVの中で、
一人の男フランソワ・タイヤンディエに目をつける。


筋立て、舞台設定、人物設定、そっくりそのまま。
ただ、こちらの作品の方が、サスペンス味が強いですね。
大人向け、スタイリッシュな作品。
さすがフランス作品。
つまりは、「ツーリスト」は、
この作品に豪華キャストと豪華観光地ベネツィアをあてて、コミカル風味をプラス。
すっかりお祭り仕立てに仕上げたというわけ。
まあ、素直に楽しめばいいと思います。


しかし、このフランス作品を先に見るべきでしたね。
すっかりネタバレ状態で見ると、やはり興味は半減です。
「ツーリスト」を後にすれば、
ネタが割れていても、アンジーとジョニデでそれなりに楽しめたかな・・・。

アントニー・ジマー [DVD]
ソフィー・マルソー,サミー・フレイ,イヴァン・アタル
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「アントニー・ジマー」
2005年/フランス/89分
監督:ジェローム・サル
出演:ソフィー・マルソー、イヴァン・アタル、サミー・フレー

わたしを離さないで

2011年04月18日 | 映画(わ行)
カゲロウのようにはかない生だけれど・・・



           * * * * * * * *

カズオ・イシグロ原作の映画化です。
世間と隔絶されたヘールシャム寄宿学校。
徹底された健康管理が行われているこの学校で過ごすキャシー、ルース、トミー。
この学校の存在意義と彼らの残酷な運命は、限りなくSF的です。
たとえば「アイランド」の世界のよう・・・。
でも、この作品はそうしたセンセーショナルな部分は極力控えめです。
だから、彼らの哀しい運命については割と早い部分で明らかにされます。
この作品で訴えるのは、そんな中でも、はかない生を精一杯生きようとするこの3人の
微妙な愛と友情について。



キャシーはちょっと他の子とは違うトミーが気になっていて、
仲間はずれになりがちなトミーの話し相手になったりしていたのです。
ところがそこへルースが割り込んできて、さっさとトミーの彼女の位置を得てしまう。
キャシーはそんな二人の共通の友人として、
仲良し3人組の付き合いが続いていきます。
18歳になるとヘールシャムを出て、コテージでの生活が始まるのですが、
そこでも3人は一緒。
キャシーのトミーへのはかない思いが、とても切なく、私たちの胸を締め付けます。
彼女はとても優しいですね。
すぐそばにいるのに届かないトミー。
けれど彼女はルースとトミーが幸せならそれでいいと思っているのでしょう。
というのもやはり、自分たちのはかない生を意識しているからなのです。
キャシーの中には、常に生に関しての諦観がある。
だから強引にトミーを奪おうとしたりしないのだな・・・。
また、この作品ではキャシーとトミーの心で結ばれた愛が、
肉体関係以上に強く美しい。
そういうところがまた、胸を打ちます。
自分の感情を極力押し隠すキャシーの心の有り様は、
何だかとても日本的な感じがします。
やはり、カズオ・イシグロの感性の中に
日本の血が流れているのでしょう。
そしてまた、そういうところが、海外の読者にも感銘を与えたというのは
なかなか感慨深いものがありますね。



・・・というところでこの作品、
ミステリアスで、静かな緊張感、
そして何故か何だか懐かしい感じがする、
そんな原作の雰囲気を見事に再現できていました。

でもなおかつ、私は人には、やはり本の方をオススメします。
というのは、本の方がもっと細やかなエピソードに満ちています。
もっと、じっくりこの3人に付き合って、そうしてラストを迎えたい。
映画は2時間足らずですから、やはり凝縮されすぎです。
このストーリーについては、もう少し時間をかけて味わいたい。
特にそう思います。


さて、このトミー役のアンドリュー・ガーフィールドは
先の「ソーシャル・ネットワーク」にも出ていましたし、
次の「スパイダーマン」シリーズでは
トビー・マグワイヤの後を継いでのスパイダーマン役。
人気急上昇中。
キャリー・マリガンのやさしく切ない微笑も、とても印象的でした。
才能あふれる若き俳優さんたちの、
記念碑的な作品となるかもしれませんね。


「わたしを離さないで」
2010年/イギリス・アメリカ
監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ
出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリン

007/ドクター・ノオ

2011年04月16日 | 007
もはや古典のスパイ映画

                * * * * * * * *

えーと、お久しぶりです
クリント・イーストウッドシリーズを終えて、しばらくお休みしていました。
今度は、007/ジェームズ・ボンドシリーズに行こうと思いま~す。

なるほどね・・・。
これは時代を感じる部分もあるだろうし、
俳優も入れ替わっていくから面白いかもしれないね。

何しろ有名なシリーズであるけれど、
実はまともに見たことなかったんだよ。
なんと、きちんと見たのはダニエル・クレイグ版最新の2作だけかも・・・。

ということで、まあ、ぼちぼちと行きましょう・・・。


それで、これが記念すべき第一作なんだね。
1962年作品です。
1963年日本公開されたときの邦題は「007は殺しの番号」。
ああ、そういえばそちらの方が聞き覚えがある・・・。
ほとんど50年前なんですねえ・・・。
あの、今でも使われているジェームズ・ボンドのテーマが、
この時から続いているというのはすごいよね。
うん、007にこの曲は外せないし、やっぱりかっこいいよね。


さて、この作品、舞台はジャマイカ。
イギリス秘密情報部ジェームズ・ボンドが
ジャマイカにあるドクター・ノオの秘密要塞に潜入します。
ドクター・ノオはミサイル誘導の妨害波の研究をしていたらしい・・・。
うん、それから、アメリカの月ロケットの進路妨害も企んでいたね。
この当時は実際にはまだアポロは飛んでいないけど・・・。
映画としては少し先を読んだのでしょう。
宇宙ロケットの米ソの先陣争いを視野に入れた設定なわけだね。


でもねえ、正直言ってこの作品、今見て特別面白いってわけではないよね・・・。アクションは地味だし、ジェームズ・ボンドはおじさんだし。
いやいや、こんなに若いショーン・コネリーを
「おじさん」と言ってはなんですが、
確かに、昨今のアクション映画から見るとおじさんだねえ・・・。
しかしまあ、おじさんといわずにせめてダンディと言ってよ。
007は、そこがウリなんだから。
とにかく、やはり50年前ってことは考慮しないと。
今作では特別な「マシン」は登場しないけれど、
アクションあり、お色気あり、で、
大人の男性が楽しめる画期的な作品だったのは間違いない。
やたら女好きのジェームズ・ボンドだものねえ。
たしかに、白いビキニの水着で登場するウルスラ・アンドレスのシーンは
なかなかセクシーで、ちょっとどきっとしたな。
パソコンなし。通信手段は電話と無線。
こんなスパイ映画はもはや古典ではありますが
時代の移り変わりをもろに感じる、そういう意味ではやはり面白いのです。
まあ、一作目としてはこんなもんでしょう。

ドクター・ノオ (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ショーン・コネリー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「007/ドクター・ノオ」
1962年/イギリス/110分
監督:テレンス・ヤング
出演:ショーン・コネリー、ジョゼフ・ワイズマン、ウルスラ・アンドレス


「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」 萩尾望都

2011年04月15日 | コミックス
人の心を癒すのは、やはり人の心

ここではない★どこか 春の小川 (Flowersコミックス)
萩尾 望都
小学館


             * * * * * * * *

待望の第3巻が出ました。
萩尾望都さんの短編集ですが、
お馴染みの登場人物たちのその後も描かれています。


「水玉」、「シャンプー」、「海と真珠」と続く
舞(マイ)と夜羽根(ヨハネ)のシリーズ。
派手で軽い夜羽根に翻弄される舞の心情が、初々しいですね。
でも、こんな風に内気でお堅い少女は、
まあ、私の様なオバサンにとっては、とても身近です。
内気で自信のない(?)遠い昔の自分の少女時代を思い起こすような気がして・・・。
「好きだ、かわいい」と、彼女をなんのてらいもなく
オモチャのように扱う夜羽根に思わず舞はビンタ。
「あなたのことを今キライになりました!」
身の程知らず、王子に恋をしてしまった人魚。
それが舞なのです。


「百合もバラも」では、生方ご夫妻、奥様がご懐妊。
産めば息子サトルとは15歳離れた子供ということになるけれど・・・。
二人は相手が
「タタミに両手をついて頼むから、産むことにした」
というのをオマジナイにすることにします。
実際、いい年をして子供を作って・・・などと、世間の人は無責任に言いますよね。
その家の事情は当人にしかわからないもの。
細々そんなことを説明するより、こういう説明をする方が簡単、
と割り切ることにしたわけです。
何だか結構リアルな話です。
母の妊娠を聞いた思春期の娘と息子が、
ポッと顔を赤らめるところが微笑ましい。
・・・ということはこの先赤ちゃんの誕生のシーンがあるのでしょうか。
それもまた楽しみですね。


表題の「春の小川」は、
小学校6年から中学生になろうとする光(コウ)が、
母親を亡くし、その死をなかなか受け入れられない状況を描いた作品。
一番身近にいた絶対的な存在を亡くすというのは、
大変な喪失感を伴うものなのでしょう。
それを現実のこととして受け入れられない光は、
時々母の姿を見、会話を交わす。
満開の桜の下、卵色の着物を着た母親の姿が心に残ります。
彼が現実を受け入れるきっかけは、友人の言葉でした。
悲しみの共有。
人の心の痛みを癒すのは、やはり人の心なのですね。
母の死を語り、初めて涙を流す光。
涙は心の解放にとって必要なのだなあ・・・。

「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」萩尾望都 小学館fsコミックス


満足度★★★★☆


探偵~哀しきチェイサー

2011年04月14日 | 舞台
ダンディな探偵と笑いと涙と・・・

           * * * * * * * *

さあ、待ってました。沢田研二さん主演の音楽劇。
この作品は沢田研二アルバム「今度は華麗な宴にどうぞ」の収録曲である
「探偵~哀しきチェイサー」をモチーフに、
マキノノゾミが書き下ろした台本によるもの。
2009年に東京・大阪で上演され、この度はその再演となります。
札幌ではこの4月9日と10日、
札幌市教育文化会館にて上演されました。
またこの後、4月15日~17日に仙台の上演が予定されていたのですが、
この度の震災により中止となった様です。
仙台のファンの方は、がっかりされているでしょうね。
でも実際、それどころではないでしょうし、仕方ありません・・・。


音楽劇。
そうですね、ミュージカルではない。
普通のお芝居にジュリー等の歌と軽いダンスが入っているというところです。
舞台は1998年、神戸。
何故1998年かというと、
一番ラストにそれから約10年後のシーンがあるためです。
元町の小さなバーのマスター兼私立探偵、花山新太郎というのがジュリーの役どころ。
彼は以前警官で、何かトラブルがあって辞めたらしいのですが、
詳しいことは黙して語らず。
また、妻子を交通事故で亡くしており、目下独身。
そんなところへ、娘の自殺に関する調査の依頼に一人の女性が現れる。
始め乗り気でなかった新太郎だが、
美人の依頼人に興味を持ち、引き受けてしまった。
ところがこの事件をたどると、
なにやら警察内部の恥部をつついているようで、捜査の妨害が始まる・・・。
このようにいってしまえば社会派のドラマなのですが、
バーの常連客たちの人情話を交え、
笑いながらもほろりときてしまう会話が実に楽しくて、
とても惹きつけられました。


それから私がすごい!と思ったのは、
舞台の背景というか、セットというか、舞台美術・・・
(スミマセン、ろくに演劇用語を知りません)
見るからに「場末のバー」というセットもいいのですが、
たとえば、そのバーのドアのガラスからさし込む光。
夜はもちろん暗く沈んでいます。
朝になるとそこから傾いた光が差し込んでくる。
単に明るくなったのではなく、正に朝の光なのです。
お酒を飲んだ翌朝の、シラケ感、けだるさ・・・。
また、時にはちらほらと雪が降っているのが見えたり、
その窓だけで、すばらしい雰囲気を醸し出しています。
そして、神戸の港の夜景の美しいこと!!
私もその舞台に立って、記念写真を撮りたいくらいでした。
舞台美術・・・
私がうんと若ければ、
こういう仕事に付きたい!!
と、思ったでしょうね。


さて、私はタイガースの頃のジュリーの大ファンで、
それはそれは胸をときめかせてTVなどを見ていたのです。
ちょうどその頃、グループサウンズは保護者同伴じゃなければダメ(んな、馬鹿な!!)
などということがありまして、
ついに私はナマのジュリーは見ないで終わってしまっていました。
独立してさらに活躍したジュリーの時代も結構長かったんですけどね。
その頃はさほどの熱も冷めていたんで・・・。
それがこの年になって、初めてジュリーのステージをみるなんてねえ・・・、
変な感慨に浸ってしまいました。

まあ、それにしてもそのジュリーはもう還暦も過ぎてますから・・・。
悪いけど、もうトキメキは覚えないですね・・・。
でも観客もオバサンばっかりなので、おあいこです。
けれど、声は変わらずステキでした!!
そして、ダンディな探偵という役どころとストーリーがとても面白かったので、
大満足。
つまりこの舞台は、ジュリーファンであってもそうでなくても楽しめます。
皆様も、機会がありましたら見て損はないと思います。

今度は、華麗な宴にどうぞ。
阿久悠,船山基紀,宮川泰
ユニバーサルミュージック




「探偵~哀しきチェイサー」
出演:沢田研二、高泉淳子、富岡弘、若杉宏二



ラスト サムライ

2011年04月12日 | 映画(ら行)
土着の文化 VS 近代化



            * * * * * * * *

公開時に見たきりだったので、改めて見ました。
トム・クルーズの武士姿、刀さばき。
カッコいいですね。
改めてまたそう思いました。

1800年代後半。
オールグレン大尉は南北戦争や、先住民との戦いの明け暮れで
心が傷つき、アルコールに浸り、身を持ち崩していました。
そんな時、近代化を目指す日本の軍隊の教官として、日本に招かれます。
彼は、近代化の波に反し“武士”としての生き方を貫こうとする勝元と出会い、
しばらく彼の元で暮らします。
実際には捕虜の身なのですが、
オールグレンは村を自由に歩き回り、
武士道、剣術、日本語などを学んでいきます。

アメリカにおける開拓と先住民との軋轢。
結局先住民を抹殺し滅ぼしてしまったアメリカの近代。
近代化が恐ろしいスピードで推し進められる日本。
古来守られてきた日本の心、武士道。
それが近代化の波に飲み込まれていこうとしていること。

土着の歴史・伝統VS近代化という構図が
日米二重合わせになっているのです。
近代化がすべてなのか。
自国の伝統・文化は尊く、守るべき物なのではないか。


アメリカから見た日本の精神性、それがよく表されていますね。
異国人に対して寡黙。
ひっそりとした食事風景・・・。
うまく日本人の特徴が表されています。
武士道がかっこよく表されすぎているキライもありますが。


いろいろ見たトム・クルーズ出演作で、一番カッコいいのがこの作品。
私はそう思います。
この作品中重要な役割の少年役、池松壮亮くん。
最近人気急上昇中ですね。
すばらしい演技です。
トム・クルーズと息もぴったり。
そして何より、渡辺謙さんの存在感が光る。
さすがです。
ラスト付近の戦闘シーンがやや冗長に感じられましたが・・・、
米国が本気でホンモノに近い日本を描くようになった
エポック的作品かもしれません。

ラスト サムライ [DVD]
エドワード・ズウィック,マーシャル・ハースコビッツ,ジョン・ローガン
ワーナー・ホーム・ビデオ


「ラスト サムライ」
2003年/アメリカ/154分
監督:エドワード・ズウイック
出演:トム・クルーズ、ティモシー・スポール、渡辺謙、真田広之、小雪、池松壮亮