映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ラオスにいったい何があるというんですか?」村上春樹

2018年05月31日 | 本(エッセイ)

ラオスにはラオスにしかないものがある。

ラオスにいったい何があるというんですか? (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋

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そこには特別な光があり、特別な風が吹いている
――ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの雄大な自然、
「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島々、フィンランドの不思議なバー、
ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、
そして熊本の町と人びと
――旅の魅力を書き尽くす、村上春樹の紀行文集、待望の文庫化!
カラー写真を多数収録。

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「ラオスに一体何があるというんですか?」という不思議な題名。
このことに、あとがきで著者自身が触れています。
ヴェトナム、ハノイで著者がこのあとラオスに行くと言った時に
ヴェトナムの人がこのように問うたというのです。
「ヴェトナムにない何が一体、ラオスにあるのですか?」と。
そこで一瞬返答に詰まった著者なのですが、
実際に行ってみると、ラオスにはラオスにしかないものがあった・・・と。
つまり旅とはそういうものではないかと、著者は言うのです。
そこに何があるか前もって知っていたら誰もわざわざ旅行に出たりはしない、と。


そもそも私はラオスってどこ?という状態だったので、
それを知っただけでも収穫でしたが、
多くの寺院があって、鮮やかなオレンジ色の僧衣をまとった僧侶がたくさんいて、
人々に大切にされている・・・。
メコン川に沿った山間の小さな国。
人々の暮らしはメコン川と共にあり、
その時の流れは日本の私達とはずいぶん違いそう・・・。
その地の空気感、音とか匂いとか光の具合とか・・・
村上氏の文章から感じられる気がするのはさすがですねえ・・・。


アイスランド、ギリシャの島・・・、
めったに行くことができなさそうな地への憧れをかき起されました。
そうそう、熊本を訪れたことと、
その後あの震災の後にも、また訪れたことが記されているのも良いですね。

「ラオスにいったい何があるというんですか?」村上春樹 文春文庫
満足度★★★★☆


薔薇の素顔

2018年05月30日 | 映画(は行)

無駄にエロティック

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ブルース・ウィリス主演のサイコサスペンス。


精神分析医キャパ(ブルース・ウィリス)は、
女性患者が高層ビルの彼のオフィスから飛び降り自殺をしたことにより、心に傷を負っています。
仕事への意欲も自信も失った彼は、
ロスの同じく精神分析医の友人ボブのもとでしばらく暮らすことにしました。
キャパは、気が進まないながらもボブの患者たちのグループセラピーにも参加。
ボブは自分が何者かに狙われているようだと語っていたのですが、
そんなある日、ついに惨殺されてしまいます。
キャパはセラピーに来ていた患者たちの中に犯人がいると思い、
彼らのことを探り始めますが・・・。

偶然のように現れてキャパと恋仲になるローズが、いかにも怪しく映ります。
やたらと積極的で、そのシーンの描写も濃密。
実のところ、このエロティック描写の過激さ故に物議を醸し、
公開延期やら再編集やらと手のかかった問題作のようです。
で、そんなところ以外は特に見るべきところもないような・・・?
この時期すでに「ダイ・ハード」も2作目までできていて、
そのブルース・ウィリスのイメージからすると本作は繊細に過ぎて
違和感があったかもしれません・・・
というか、今見てもある。

薔薇の素顔 [DVD]
ブルース・ウィリス,ジェーン・マーチ,ランス・ヘンリクセン
パイオニアLDC



<WOWOW視聴にて>
「薔薇の素顔」
1994年/アメリカ/121分
監督:リチャード・ラッシュ
出演:ブルース・ウィリス、ジェーン・マーチ、ルーベン・ブラデス、レスリー・アン・ウォーレン
サスペンス度★★★☆☆
満足度★★.5


ボストンストロング ダメな僕だから英雄になれた

2018年05月29日 | 映画(は行)

本当のヒーローとは

 

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2013年、ボストンマラソン爆弾テロ事件で両脚を失うという被害を受けた実在の人物、
ジェフ・ボーマンについての映画化です。


ジェフ(ジェイク・ギレンホール)は別れた恋人エリン(タチアナ・マズラニー)とよりを戻したくて、
彼女の出場するボストンマラソンの応援に駆けつけます。

ところが、ゴール地点付近で発生した爆弾テロに巻き込まれ、
両脚を失うという大怪我を負ってしまうのです。
手術を終え意識を取り戻したジェフは気丈にも警察に協力。
やがて彼の証言をもとに犯人が特定されます。
このことで、ジェフは一躍ヒーローとして脚光を浴びるのですが・・・。

この事件については先に映画「パトリオット・デイ」にもありました。
そしてそれは捜査側の物語なのですが、こちらはその負傷者側のストーリーです。
一躍脚光を浴び、ヒーローとなったジェフ・ボーマン。
多くの人が知っている。
けれどその内情を知る人は極めて少なかったでしょう。
そういう所にスポットを当てた本作は、なかなか意義深いものでした。

ジェフは、周囲の称賛の声とは裏腹に、心は沈んでいくのです。
痛む傷口、不自由な体、見えない将来。
進まないリハビリ・・・。
次第に気力も失くしていきます。
いらついたジェフはついに、付き添ってくれるエリンに
「君のために僕はあの場所に行ったんだ。」
と、決して言ってはならない言葉まで投げかけてしまうのです。


でもジェフのこの有り様は当たり前のことですよね。
誰だって、そんなに強くはない。
ある日突然自分の足を失ったら・・・と考えただけで身がすくみます。
けれどそこからどうして前向きに生きる力を見出していくのか。
そこが問題なのです。
それはやはり、自分ひとりではなくて周囲のいろいろな人々の後押し。
そしてほとんど偶然とも言えるほんの一筋の光のようなもの・・・。
これって意外と重要なのではあるまいか。
ジェフが見た光は、恋人のエリンではなくて、
彼が負傷した時に真っ先に手当をしてくれた命の恩人との再会でした。
どこにどんなきっかけがあるかわからない。
だから人の世は面白い・・・。
もちろん恋人の存在はその後のジェフのリハビリのための力になったのですけれど。



義足をつければ誰もがすぐにでも歩けるわけではないのですね。
そのために必要な筋力をつけ、バランスをとり・・・、
車椅子でいいや、と諦める人も多そうです。
その辛いリハビリを乗り越えた人こそが、「ヒーロー」の名に値するということなのでしょう。
感動的な物語でした。



<ディノスシネマズにて>
「ボストンストロング ダメな僕だから英雄になれた」
2017年/アメリカ/120分
監督:デビッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイク・ギレンホール、タチアナ・マズラニー、ミランダ・リチャードソン、リチャード・レイン・Jr、ミエイサン・リッチマン

事件の裏側度★★★★☆
満足度★★★★☆


フィッシュストーリー

2018年05月27日 | 映画(は行)

とあるバンドの売れなかった曲が・・・

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伊坂幸太郎作品の映画化。
原作は読んでいるのですが、映画は見ていませんでした。

1975年。
早すぎたパンクバンド「逆鱗」。
世間に理解されぬまま最後に「FISH STORY」という曲を残して解散。
しかしこの中に何故か1分間の無音の部分が。
時は流れて2012年。
彗星激突の危機に見舞われた地球を救った影には「FISH STORY」の存在が・・・。

 

本作の冒頭は、世界の終わりまであと5時間。
とある中古レコード店内のシーン。
ここで緊迫感を出して、私達をひきつけて・・・と言いたいところですが、
この店長には緊迫感もなにもなく、まあ、そんなところから伊坂幸太郎ワールドが始まるわけです。
1975年 逆鱗の「FISH STORY」
1982年 気の弱い大学生。
1999年 世界の終わりの予言
2009年 シージャック事件
そして2012年 中古レコード店内
これらのエピソードが、一つの曲と関わり合いながら絡み合い
因果関係を結びつつ、収束する様、まさに伊坂幸太郎の原作世界を再現しています。
セルフ引用で申し訳ないですが、原作本の感想が、
今にしても的を得ていると思うので、再掲。


「いくつかの章立てがしてありまして、
二十数年前
現在
三十数年前
十年後
という風に、時系列が正しく並んでいないのです。
そこがこの作品のおもしろいところ。
だから、話はそれぞれ独立していて、一見脈絡がないように思える。
でも、最後まで読むと、ああ、そういう話だったのかと、
ジグゾーパズルが完成したみたいに、最後に全体像を見渡すことができる。
これがなんだか快感なのです。
ストーリーとしては、たとえば「風が吹けば桶屋が儲かる」そんな風。

ある売れないロックグループが、解散寸前にレコーディングをする。
その中の一曲、なんと数十秒もの無音部分ができてしまったのだけれど、
どうせ売れないし、解散だから・・と、
やけくそのようにそのまま発売されてしまいました。
確かに全然売れなかった曲なのですが、
その曲が後々地球を救うことに貢献するという、これは壮大なお話なのです。
そんなことある~? なんて野暮なことはいいっこなし。
だって、これはフィッシュストーリーなんですから。
やはり、井坂幸太郎。
短編でもあなどれませんねー。」



それにしても、本作のキャスト、今にしてみればやけに豪華ではありませんか。
パンクバンドのリーダーに伊藤淳史、
ボーカルが高良健吾、

シージャックされた船の乗客に多部未華子、

気弱な学生に濱田岳、
正義の味方になるため修行を積んだ男に森山未來、

レコード店長に大森南朋・・・
いずれも主役クラス。
こういう価値が出てくる作品もアリなんだなあ・・・。

フィッシュストーリー [DVD]
伊坂幸太郎,林民夫
ショウゲート



<WOWOW視聴にて>
「フィッシュストーリー」
2009年/日本/112分
監督:中村義洋
原作:伊坂幸太郎
出演:伊藤淳史、濱田岳、森山未來、大森南朋


「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」江國香織

2018年05月26日 | 本(その他)

壊れてゆく母と、成長してゆく息子と

ヤモリ、カエル、シジミチョウ (朝日文庫)
江國香織
朝日新聞出版

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虫と話をする幼稚園児の拓人、
そんな弟を懸命に庇護しようとする姉、
ためらいなく恋人との時間を優先させる父、
その帰りを思い煩いながら待ちつづける母―。
危ういバランスにある家族にいて、拓人が両親と姉のほかにちかしさを覚えるのは、
ヤモリやカエルといった小さな生き物たち。
彼らは言葉を発さなくとも、拓人と意思の疎通ができる世界の住人だ。
近隣の自然とふれあいながら、ゆるやかに成長する拓人。
一方で、家族をはじめ、近くに住まう大人たちの生活は刻々と変化していく。
静かな、しかし決して穏やかではいられない日常を精緻な文章で描きながら、
小さな子どもが世界を感受する一瞬を、ふかい企みによって鮮やかに捉えた野心的長篇小説。

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さて、なんとも料理しにくい本、というべきでしょう。
ポイントとなるのは拓人。
両親と小学生の姉とともに暮らす幼稚園児。
言葉の発達が少し遅れている。
けれど彼の内面は豊かで、自然の中で生きる虫や小さな生き物たち、
ヤモリ、カエル、シジミチョウなどと心を通わすことができるのです。
というか、人が本当は持っていたその力をなくしていないというべきなのかも。
彼らと心を通わすためには言葉は必要ありません。
そんな彼も、人の社会で生きていくために、ほんの少しずつ人の世の成り立ちを見知り、
理解していく過程にあるようです。
本作はこの拓人の心中を表す部分がすべてひらがな表記になっているのですが、
その効果を理解はしますが、正直読みにくくてちょっとイライラしました・・・。


一見平和な家族のようで、実は崩壊寸前。
というのも、拓人の父親は外に恋人がいて、
それはほとんど妻にも明らかになっているのです。
ウソで塗り固めようとはしていない。
そして仕事だ出張だといいながら、幾日も家に戻らないことが多い。
というより戻ってくることのほうが稀。
しかし妻は離婚しようとは決して思わない。
じっと夫の帰りを待ち続け、帰ればつい刺々しい態度になってしまう。
まあ、それは当然のことなんですけどね。
この妻は、夫の恋人を呼び出したりまでするようになり、ほとんど狂気の淵のように感じられ、
私は非常に薄ら寒い思いをさせられました。
夫はこんな妻よりも、恋人といるほうがずっと自然な自分でいられて安らぎを感じるのですが、
それでいてやはり別れるつもりは全くなさそう。
子どもがこの2人をつなぎとめているのでしょうか・・・? 
あまりにも不健全なこの夫婦生活に暗澹とした気持ちになってしまいます。
そして、表面上は取り繕っていても、
このひび割れた夫婦間のことが子どもたちに影響しないはずがありません。
大人びてしっかりしているように見える姉、唯一弟を守ろうとしている姉もまた、
この不安定な家庭の中で常軌を逸していくようにも見受けられます。
この家では唯一、自然体で大人なのが拓人ということなのか・・・。


起承転結のないこの物語は、
なんだか私にはひどく後味が悪いものに思えました・・・。

図書館蔵書にて(単行本)
「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」江國香織 朝日新聞出版

満足度★★★☆☆


TEAM NACS COMPOSER~響き続ける旋律の調べ

2018年05月25日 | 舞台

絶望の果に、一体彼は何を見出したのか?!

TEAM-NACS COMPOSER ~響き続ける旋律の調べ [DVD]
TEAM-NACS
アミューズソフトエンタテインメント

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2005年 脚本・演出 森崎博之、TEAM NACS


この舞台の主人公はベートーヴェン。
前回の新選組とは全く違った世界観にワクワクします。
ベートーヴェン(大泉洋)は、亡き弟の息子を自分の息子として育てます。
音楽家としては名前も売れ、世間的にも認められている時期。
ベートーヴェンは息子にも音楽の道へ進ませようとしますが・・・。
また、その裏側に登場するのが、モーツァルトの亡霊(安田顕)。
モーツァルトは、まだ自分の音楽の道を極めたと思わないうちに、妻に毒殺されて亡くなっており、
名だたる音楽家のもとに亡霊となって現れては、
呪詛の言葉を吐き、暗く陰鬱な運命に導こうとします。
自分の音楽とは全く逆の陰鬱なメロディにこそ、モーツァルトは憧れていたのかもしれません。


その呪いであるのかどうか、やがてベートーヴェンは失聴。
その絶望感の中でやがて第9を作曲します。
聞こえない耳で、第九の指揮を振るベートーヴェンのシーンには戦慄しました。
聞こえずとも、音楽の全ては彼の中に息づいている・・・。
(もっとも、これにはタネがあったのですが・・・)
そしてその後ろで、モーツァルトが驚愕しているのです。
「絶望の果に、一体彼は何を見出したのだ?!」
ベートーヴェンの過酷な運命に反して、
その交響曲は、まばゆい歓喜の光に満ちているのです。
生きること。
愛すること。
この歓びに比べたら、聞こえないことなど何の問題があろうか・・・と言うかのように。


もともと第九が大好きな私としては、すごく楽しめる作品でした。

満足度★★★★☆


モリーズ・ゲーム

2018年05月24日 | 映画(ま行)

この覚悟の決め方を、見習ってほしい・・・

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モーグルの選手として五輪出場も有力視されていたモリー(ジェシカ・チャステイン)。
しかし競技中の事故による怪我のため、アスリートの道は断念しなければなりませんでした。

ロースクール進学を考えていた彼女は、その前に一年間休暇のつもりでロスにやって来ます。
そしてウエイトレスのバイトで知り合った人のつながりで、
ハリウッドスターや大企業の経営者が法外な掛け金でポーカーに興じるゲームの運営アシスタントにつきます。
そしてついにはその才覚で、自分のゲームルームを開設しますが・・・。

ある日突然FBIに逮捕されるモリー。
モリーの弁護士チャーリー(イドリス・エルバ)は
打ち合わせを重ねるうちに彼女の意外な素顔を知ることになります。



セレブを相手にカードゲームで儲ける女性・・・といえば、
いかにも世間ずれしてしたたかな女性を連想します。
けれど意外にお硬いというか、ピュアなんですね。
あくまでもアメリカの法律では、ということなのでしょうけれど、
このような場合、掛け金から手数料を引くと違法になるとのこと。
では何で収益を上げるかと言うと、客からのチップ。
相手がセレブなのでチップと言ってもかなりの金額ということなのでしょう。
しかし、それでもついにはまかないきれず、ある期間手数料を引いてしまうのです。
これだけが、彼女の罪といえば罪。
あとは、彼女が麻薬常習者となっていた、ということはあるのですが・・・。
しかしまた、彼女は自らの罪状をまるごとかぶるつもりで、
顧客の個人情報を死守。
ここの覚悟の決め方がスバラシイ! 

さて、なぜアスリートの彼女がこのような道を歩んだのか。
その答えのようなものが、ラストのモリーと彼女の父との会話の中で明かされます。
がしかし、このような形で簡単に答えを示してしまうのは
サービス過剰なような気もしました。
薄っすらと、彼女と父親との関係が影響しているのかなあ・・・というくらいでよかった。
まあ、この二人の会話が必ずしも正解とは限らないわけですが。



ケビン・コスナーがこんなふうに厳しすぎて娘を抑圧するダメ父親って、
ずいぶんなハンパな役と思っていたら、
最後の最後に聡明で娘思いのところを見せるなんて、ちょっとズルいけど、
これぞケビン・コスナーの面目躍如ということですね。



<ディノスシネマズにて>
「モリーズ・ゲーム」
2017年/アメリカ/140分
監督:アーロン・ソーキン
出演:ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケビン・コスナー、マイケル・セラ、ジェレミー・ストロング
鮮烈な生き様度★★★★☆
満足度★★★★☆


はじまりの街

2018年05月23日 | 映画(は行)

多感な少年の、新たな生活の始まり

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アンナと13歳の息子ヴァレリオは、夫のDVから逃れるため、
ローマから親友カルラが暮らすトリノへ移り住むことになりました。
さっそく仕事を探し始めるアンナ。
ヴァレリオは友だちもできず、一人寂しく過ごす毎日。
本作はこのヴァレリオの視点を基調として、この母子を見守ろうとする人々に支えられながら、
2人が新しい生活を自分のものとしていく様子を描きます。

ヴァレリオは、父が母に暴力を振るっていることを知らないで過ごしていたのです。
はじめてその場を目撃してしまうまでは。
だから、母が父の元を離れて新生活を初めなければならないことは理解している。
けれども、住み慣れた街、親しい友人たちから、突然去らなければならなくなったことに納得はできない。
彼自身は父に暴力を振るわれたことはないので、父親のことを慕う気持ちはある・・・。
様々な思いに囚われ、彼自身どうして良いかわからないのです。
そんなところへヴァレリオあての父の手紙が届くのですが、
アンナはそれを隠していて、それをヴァレリオが見つけてしまうのです。
思いが爆発してしまうヴァレリオ。



ただでさえ多感な年頃、こんな息子の扱いに戸惑ってしまうアンナでもあります。
でもこんな母子に、周りの人々が手を差し伸べていきますね。
決して押し付けがましくなく、おずおずとした距離感で。



こんなふうに見知らぬ街で新しい生活を始めるふたり。
何かしら希望も見えて心温まる作品となりました。
ヴァレリオの初恋めいた部分が語られるのもいいです。
相手は年上の商売女。
遊園地のデートはステキでした。
しかし多くの場合そうであるように、初恋は実らないものですよね・・・。



はじまりの街 [DVD]
マルゲリータ・ブイ,ヴァレリア・ゴリーノ,アンドレア・ピットリーノ,ブリュノ・トデスキーニ,カテリーナ・シェルハ
TCエンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「はじまりの街」
2016年/イタリア・フランス/107分
監督:イバーノ・デ・マッテオ
出演:マルゲリータ・ブイ、バレリア・ゴリノ、アンドレア・ピットリーノ、カテリーナ・シェルハ、ブリュノ・トデスキーニ
少年のナイーブ度★★★★★
満足度★★★★☆


「ダンジョン飯 6」九井諒子

2018年05月21日 | コミックス

個人的に読了

ダンジョン飯 6巻 (ハルタコミックス)
九井 諒子
KADOKAWA

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信じろ! 同じ釜のメシを食った仲間を!!

狂乱の魔術師を退けたライオス達の前に、
かつての仲間・シュローが現れる。
凄腕剣士の合流で、ファリンの救出も楽勝…!と思いきや!?

一緒に食事をすれば仲直り?
雪と氷の地下6階層で問われる、パーティーの絆。
新たな仲間が加わる第6巻!

* * * * * * * * * *


6巻を買うのが少し億劫でした。
しかしせっかくここまで読んだのだから・・・ということで、購入しましたがやはり・・・。


新しい登場人物が、一度に出すぎです。
私にはついていけない。
以前までのように、ダンジョンで新たな魔物と出会い、
それを調理して、
仲が良いのか悪いのかよくわからないパーティーのユーモラスな友情を交えながら進んでいく・・・
というパターンを続けてほしかった。


新しい展開に深みがあって良いと思う方ももちろんいらっしゃるでしょうけれど、
私はもう満腹状態。
これ以上は余計と思えてしまうので、今後は読まないと思います・・・。
ファリンの無事を祈りつつ・・・・。
無理に連載を伸ばさず、ファリンが助かったところで終了すべきだったのではないかなあ・・・・。

「ダンジョン飯 6」九井諒子 ハルタコミックス
満足度★★☆☆☆


女は二度決断する

2018年05月20日 | 映画(あ行)

衝撃的結末に言葉を失う

* * * * * * * * * * 

ファティ・アキン監督作品。
なので、ドイツ作品ですが登場人物はトルコ系移民に関係します。
特に今回はそこのところが重要。

 

ドイツ、ハンブルグ。
トルコ系移民のヌーリと結婚したカティヤは、子供が一人いて、しあわせな家庭を築いていました。

ある日、爆発事件で夫ヌーリと一人息子ロッコが犠牲となり命をなくします。
やがてこの事件は、人種差別主義者(ネオナチ)のドイツ人夫婦よるテロらしい、と判明。
カティヤの目撃談から、犯人女性が逮捕され、裁判となりますが・・・。
相手の弁護士が憎らしくも有能ではありました・・・。
結局証拠不十分となり・・・。
 

最愛の家族を亡くし、生きる意味を見失ってしまったカティヤ。
その彼女が下した決断とは・・・?


彼女らしくはありますが、あまりにも衝撃的結末に言葉を失いました。
カティヤは腹部になんと日本の武士の絵姿のタトゥーを入れていたのですが、
考えてみるとそのことは、この結末を暗示していたのかもしれません。


無差別テロではなくて、人種差別主義者による、トルコ系移民であるがゆえの標的となってしまった夫。
犯人の女には後悔も罪の意識もなく、自分の正当性を疑わない。
こうした現代社会の歪みの中で起こってしまった理不尽な殺戮に対して、
法の力で何もできないとなれば、こんな手段しかないのか・・・。

 

やはりファティ・アキン監督。
いつも何かしら私の心を揺さぶります。

 

<シアターキノにて>

「女は二度決断する」

2017年/ドイツ/106分

監督:ファティ・アキン

出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、サミア・シャンクラン、ヌーマン・アチャル

 

法廷理不尽度★★★★☆

結末の衝撃度★★★★★

満足度★★★★.5


家族はつらいよ2

2018年05月19日 | 映画(か行)

血の繋がりがないほうが、冷静。

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「家族はつらいよ」の第2弾。
家族の物語ではありますが、中心となるのは熟年世代、平田家のトップ、周造夫妻です。
これは山田監督ご自身の年齢のことを考えると、やはりそうなりますかね。
まあ、私もその年代に近いわけで異論はありませんが。



さて、周造(橋爪功)は、マイカーの外出をささやかな楽しみにしていましたが、
最近車に傷が目立ち始めます。
高齢者の危険運転を心配した家族は、周造に運転免許を返上させようとするのですが、
この頑固な父親が、素直にいうことを聞くはずがない。
全く話を受け付ける気配がないので、例によって家族会議が招集されます。
そんなある比、周造は高校時代の友人・丸田(小林稔侍)と偶然に出会います。
音信不通となっていた彼は、暮らし向きが苦しそう。
旧交を温めるため周造は丸田を飲みに誘いますが互いに酔っ払い、
周造は勢いで彼を自宅に招き、一晩泊めることになりますが・・・。

まずは高齢者の危険運転のテーマ。
そして、不遇の友人・丸田については驚きの展開があります。
事業に失敗し、妻に去られ、70を過ぎても工事現場の警備の仕事をしなければならないという孤独な男・・・。
老いと孤独というシビアな現実を生きる人物は、
この作品には通常出てこないですものね・・・。
でも確かに、こういう最期は、幸せなことであったかもしれない・・・と、
そう思えてきました。
それに対して周造はあまりにも恵まれています。
立派な家があり、彼を心配する多くの家族がいる。
まあ、口には出さずとも、彼はそのことを実感したに違いありません。
それにしても、あれだけ車を擦るようになっているのなら、
絶対車の運転はやめたほうがいいと思うけど・・・。

こんなできごとの間中、周造の妻富子はサークル仲間と北欧のオーロラ見物ツアーで旅行中。
富子からかかってきた電話に
「いやあ、こちらは何事もなく皆元気ですよ~」
と返す長女のムコ泰蔵さん、さすが卒なくナイス。
また、この家で一番しっかりして頼りになるのは次男の嫁・憲子(蒼井優)というのもいいですね。
つまりは、血の繋がりがないほうが若干傍観的に冷静に判断ができるということなのかもしれません。



この家族にもすっかりおなじみになったので、
このノリで、近く公開される第3弾も見ることになりそうです。





家族はつらいよ2 [DVD]
橋爪功,吉行和子,西村雅彦,夏川結衣,中嶋朋子
松竹

<WOWOW視聴にて>
「家族はつらいよ2」
2017年/日本/113分
監督・脚本:山田洋次
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中島朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍

老いを考える度★★★★☆
満足度★★★☆☆

 


フレンチ・ラン

2018年05月18日 | 映画(は行)

CIAとスリのコンビ

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ブライアー(イドリス・エルバ)は、CIAきってのアウトロー捜査官。
行動があまりにも過激なので、若干持て余されています。
ある時、テロ容疑者マイケル(リチャード・マッデン)を確保しますが、
彼はスリで、たまたまホンモノの爆弾の運び屋からスリとった荷物が爆弾だったのです。
マイケルのスリの腕前を買ったブライアーは、テロ犯人捜査のため、マイケルに協力を要請。
2人は真犯人を求めて、パリの街を駆け回る・・・。

CIAとスリ。
このコンビがなんと言ってもいいですね。
このテロ事件、実はテロに見せかけて街に暴動を引き起こし、
そしてさらなる意外な目的を果たそうとする陰謀なのでした。
一筋縄ではいかない巨悪に対峙する2人。
非常に興味深いストーリーでした。



ブライアーが初めにマイケルを捕まえる時の、屋根伝いの追いかけっこは、
スピーディーかつスリル満点で面白かったなあ・・・。
ここでもう、見るものの心をギュッとわしづかみにしてしまいます。
このシリーズ、もっと続きがみたいです!!



フレンチ・ラン [DVD]
イドリス・エルバ,リチャード・マッデン,シャルロット・ルボン,ケリー・ライリー,ジョゼ・ガルシア
ギャガ



<WOWOW視聴にて>
「フレンチ・ラン」
2016年/イギリス・フランス・アメリカ/92分
監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:イドリス・エルバ、リチャード・マッデン、シャルロット・ルボン、ケリー・ライリー

陰謀度★★★★☆
バディームービー度★★★★★
満足度★★★★☆


「鬼の橋」伊藤遊

2018年05月17日 | 本(SF・ファンタジー)

「喪失」の後に・・・

鬼の橋 (福音館創作童話シリーズ)
太田 大八
福音館書店

* * * * * * * * * *

平安時代の京の都。
妹を亡くし失意の日々を送る少年篁は、
ある日妹が落ちた古井戸から冥界の入り口へと迷い込む。
そこではすでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、
いまだあの世への橋を渡れないまま、鬼から都を護っていた。
歴史上の人物、小野篁の少年時代を描いた第三回児童文学ファンタジー大賞受賞作。

* * * * * * * * * *

児童文学ですが、素晴らしいファンタジーです。
ときは平安時代、主人公は少年時代の小野篁(おののたかむら)。
さて小野篁、聞いたことはあるような気がするけれど、誰?
ということになりますが、平安時代4代の天皇に仕えた有能な官僚。
漢詩文に優れ、また、井戸を使って冥府と行き来したなどという不思議な伝説も残っています。
遣唐副使に任命されたおり、壊れた船をあてがわれたことに腹を立てて乗船拒否。
そのことを咎められて隠岐の島に島流しになったことも。
しかし二年後には許されて戻っておりますので、
やはり相当に有能で、天皇からもあてにされていたことが伺われます。


なるほど・・・反骨精神もあり、興味深い人物なのですね。
・・・恥ずかしながら、知りませんでした。
そのうち大河ドラマで扱っていただけないものか。
遣隋使の小野妹子の子孫で、絶世の美女・小野小町の祖先でもあるとか・・・?
ホンマかいな?
ちなみに空海が行った遣唐使はこれよりも少し前のことでした。

余談が過ぎました。
その小野篁の少年時代。
12歳、元服前の多感な年頃です。
前述を聞くといかにも悧発で心優しい・・・という姿を想像してしまうのですが、
ここではもっと普通の少年です。
良い家柄の子どもですから善悪はわきまえている。
けれども、それと感情とは別。
ごく普通の少年のように、ちょっとずるかったり意地悪だったり、弱気だったり、時には尊大だったり。
等身大です。
特に冒頭、ちょうど彼の妹(義理)が事故で亡くなっているのですが、
それは多分に篁にも責任のあることだった。
大好きな妹で、けれどその死の責任は自分にもあるという大人でも耐えきれない重圧の下で、
無気力であったり苛ついたり・・・とにかく常の状態ではありませんでした。
その彼が、京の五条橋を乱暴に渡った時、
橋の下からみすぼらしい少女が飛び出してきて、篁を咎めるのです。
「私の父親が作った大事な橋を蹴飛ばすな」と。
その場は無視して通り過ぎ、篁は妹が亡くなった井戸のところに行きます。
そしていつしかその井戸の中に入り込み、底に降り立ちます。
そこには誰もおらず大きな川が流れているだけ。
川沿いを歩いていくとやがて川に掛かる橋が見えてきます・・・・。
つまりその井戸は冥界へ通じる井戸。
その川はいわゆる三途の川ということでしょう。
篁はそこで鬼に遭遇しますが、
すでに死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が現れ、助けてくれるのです。
無事に井戸の上へ戻ることができた篁は
不思議な縁で橋の袂に住む少女と彼女を守る鬼・非天丸と交流するようになります。
そんな中での体験により、篁は人として成長してゆく。
これもまた「ゆきて帰りし物語」ではありますね。

この三人は、皆大切なものを欠いているのです。
片方のツノをなくした鬼の非天丸。
父親をなくした少女・阿子那。
「それぞれ、もぎとられたもののかわりに相手をもとめ、傷口をいたわりあっていた。」
この時篁は「自分もまた、かたツノをもがれた鬼であることを思いだし」ます。
このような思いに至ることができたのはもう篁もおとなになった証。
大きな喪失を経て、それを人と分かち合うこと・・・。
人の成長段階に必要なことなのかもしれません。


ちなみに本作は「絵本・児童文学研究センター」主催による児童文学ファンタジー大賞の第3回大賞受賞作。
実は「大賞」は今に至るまで毎年募集し、選考されていますが、
第1回梨木香歩さん「裏庭」と、第3回の本作、2つしか大賞の受賞作がありません。
妥協を許さない選考をしているようです。
ここらで、ど~んと次の大賞作を読んでみたいものです・・・。

図書館蔵書にて
「鬼の橋」伊藤遊 福音館書店
満足度★★★★★


TEAM NACS 「LOOSER~失い続けてしまうアルバム」

2018年05月15日 | 舞台

TEAM NACSを見よう!

LOOSER 失い続けてしまうアルバム [DVD]
TEAM-NACS,森崎博之,安田顕,佐藤重幸,大泉洋
アミューズソフトエンタテインメント

* * * * * * * * * *


北海道が地元のTEAM NACSですが、
恥ずかしながら、私はこれまでその舞台を見たことがありません。
このゴールデン・ウィークにWOWOWで特集を組み放送していたので、見てみました。


まずは本作、「LOOSER~失い続けてしまうアルバム」
2004年公演のもの。
さすがに皆さん若い!
脚本・演出:森崎博之。

現代、生きる意味を見失った青年が150年前にタイムスリップ。
新選組や長州藩の人々の鮮烈な生き様を目の当たりにします。


チョンマゲもチャンバラもなし。
あくまでも出演者はチームの5人のみなので、一人何役もこなします。
大勢の敵は、いる「つもり」。
“新しい世”のために命をかける、その時代の若者たちの熱い思い・・・。
幕末の物語はいずれにしても胸が熱くなりますねえ・・・。
本作中では大泉洋さんが新選組の土方歳三と坂本龍馬の二役をこなしますが、
なんとこの二役、実はそもそも同一人物が二役を担っていた、
という設定になっていたところがミソです。

堪能しました。

満足度★★★★☆


春琴抄(1976)

2018年05月14日 | 映画(さ行)

マゾヒズム・・・

 

* * * * * * * * * *

山口百恵文芸シリーズ。
明治初期の大阪。
明治の世ではあるけれど、まだまだ人々は封建的。
老舗薬問屋の次女・お琴(山口百恵)は子供の頃に失明。
以後一心に琴の修行に励んできました。
奉公人の佐助(三浦友和)は、お琴の身の回りの世話を任され、
お琴の教えるままに三味線の稽古をするようになります。


ちょっとびっくりするんだけれど、ここでのお琴はかなり高飛車の上から目線。
いや上から目線ってさ、家の使用人に対してのことだからそれが当然の訳だね。
気位が高くて、目が見えなければ人を使うのが当たり前。
まあ、いばるだけあって、琴の腕は確かで、師匠があとを継がせたいと思うほどなんで・・・。
でも今までのシリーズを見てきたので、百恵ちゃんのこの変わりようにはしばらく馴染めなかったなあ・・・。
大抵は貧乏で気持ちが優しくて、ひたすら男に尽くすって感じだったもんね。
だよねー。まあだからこそ、全く別のタイプの話をもってきたのかもしれない。
それでね、佐助はしかしそんなお嬢様に憧れ、近づきたいと思い、
始めは誰にも内緒で夜な夜な三味線の練習をしていたりしたんだね・・・。
いじましいわあ・・・。
やがてお琴は師匠がなくなったのを期に、春琴として琴の師匠となり、佐助と共に新居に移り住みます。
しかし変わらずあくまでも主人と奉公人。
さて、しかしここに春琴に横恋慕してくるやつが登場。
春琴目当てに琴を習いに来ている美濃屋(津川雅彦)。
しかし見事に振られるわけだけれど、その腹いせに春琴の顔半分に大やけどを追わせてしまうんだね。
そして春琴は佐助に「この顔を絶対に見ないで」と命じる・・・。
みにくくやけどを負った顔を、佐助に見られたくないという女心・・・。
まあ、もちろん彼女なりに佐助に思いを寄せていたわけだからね・・・
でも、自分の立場として、同情を買いたくないというプライドもあったんだろう。
それをまた、まっすぐに受け止めちゃうんですよ、この佐助が。
嫌な予感がしたんだけれど、ホント、正視に耐えられないシーンになります・・・。
究極のマゾヒズムだよこれ~。
そこまでやるか・・・?
うーん、好きにはなれない作品だった、私には。
谷崎潤一郎だねえ・・・。


けど、一つ謎のことがあってさ。
お琴は父親のしれない赤ん坊を産み落とすんだよね。
当時私生児なんてあまりにも外聞が悪いので、
こっそり生んだ子どもはすぐにどこぞにもらわれていった・・・。
お琴の家族は佐助の子どもだろうと思ったんだよね。むしろそれならそれでかまわない、と。
でも当然私達は知っているけれど、佐助とお琴にははじめから最後までそういう関係はなかったわけ。
じゃ、一体誰の子ども???
本作中にはヒントも何もなかったよねえ・・・。
お琴が盲目なのをいいことに誰ともしれないヤツに乱暴されたとか・・・?
そんな感じかもしれない・・・。
でもこのエピソードの意味は何なんだろう。
あまりにも唐突で関連性がないようにも思えるけれど・・・。
うーん思うに、最後まで肉体関係がなかった2人なんだけど、
それは春琴の処女としての潔癖性からそうなったわけではない、と言うことをいいたかったのかもしれない。
好きな相手に決して許さない・・・というのは、これもまたある意味マゾヒズムだよね。


えーと「春琴抄」は2008年にも映画化されていて、主演が斎藤工と長澤奈央。
ひゃー、斎藤工には非常に心誘われるのだけれど、でもこのストーリーはもう二度と見たくないわあ・・・。
確かに・・・。


えーと、山口百恵文芸シリーズはこの後にもまだあるのですがWOWOWの特集がここまでだったので、
私たちが見るのもここまでにします。
というか、やっと終わってホッとした~。
なんだか見るのが苦痛になってきていたもんね・・・。
まあそれにしてもこんなふうに何度も何度も命がけの恋を演じれば、
いつしか本気になってしまうのは当然のように思えるね。
そだねー。
それこそほら、何度も生まれ変わってまためぐりあう、運命の恋人みたいな感じ。
まあ、百恵ちゃんにとっては確かに幸いな出会いだった・・・のかな?


春琴抄 [DVD]
西河克己,堀威夫,笹井英男,衣笠貞之助
ホリプロ

<WOWOW視聴にて>
「春琴抄」
1976年/日本/97分
監督:西河克己
原作:谷崎潤一郎
出演:山口百恵、三浦友和、津川雅彦
マゾヒズム度★★★★★
満足度★★☆☆☆