映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「万寿子さんの庭」 黒野伸一

2010年08月31日 | 本(その他)
20歳と78歳の友情

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館


           * * * * * * * *

竹本京子、20歳。
就職を機に引っ越した先で、変わり者のお婆さん、杉田万寿子に出会います。
彼女のアパートの直ぐとなりに住む万寿子さん。
ご近所づきあいはちゃんとしなくちゃ、と思う京子は、
庭仕事をしていた万寿子さんに「おはようございます」と声をかけるのですが、反応なし。
そればかりか、「より目」とか「ブス」とか京子の一番気にしていることを言われて
大ショック。

こういう最悪の出会いをした二人なのですが、
なぜか次第に親しくなり、友人関係を結んでいく。
20歳と78歳の友情。
まあ、あまりないですね。
20歳から見た78歳は、一緒に遊ぶというよりは既に見守るべき存在。
万寿子さんは気持ちがとても若いので、年寄り扱いされるのがすごく嫌なのです。
だからむやみに近づいて、親切の押し売りをするような人には警戒心を抱いている。
始め、京子もそういう人だと思われてしまった、ということなのでしょう。

夫に先立たれ、一人暮らしの万寿子さんは、
毎日庭の花の世話をしています。
よくわからないうちに何故か手伝いをさせられている京子なのですが、
今まで知らなかった植物のことなども覚え、この作業は案外嫌いではないと思う。

そんな中で時折万寿子さんの意識が、遠くへ行ってしまうことがある。
惚けというヤツです。
ある時から急にその惚けの時間が増えていき、何も解らない状態が続く。
部屋は荒れ放題、汚物はまき散らす・・・。
これまでのかくしゃくとした様子を知っているだけに、ショックの大きい京子。
彼女は、唯一の友人である私が何とかしなければ・・・と、
会社を仮病で休み、万寿子さんに付き添う日が続くのですが・・・・・・


このように人格の崩壊する"老い"は辛いですね。
本人も意識の途切れた間のことは恐怖だと思います。
でも、このようなときに、親しい家族や友人が付いていれば、
それは嫌かも知れないけれどでも安心には違いない。
どうも、今の社会は若い人と老人を隔離する方向にあるような気がするのです。
ケア付きのシルバーマンションというのがありますが、
どうしてあのように老人ばかり固めてしまうのでしょう。
私は若干のお助け要員という感じで、
若い人も同じマンションにやや低価格で入ってもらうといいのに、と思ったりします。
隣近所のおつきあいなどほとんどない昨今、
こういうことを期待するのは無理なことなのかなあ・・・。


この本の帯には感涙のロングセラーとありましたが、私は泣けませんでした。
切実過ぎて、泣けない・・・?
京子の奮闘はすごいと思いますが、
会社をサボってまでして一人で抱え込んでしまうというのも
何だか違うような気がしてしまったのですが。
どうなのでしょう。
でもこんなことまでは期待しないものの、
是非隣近所のお年寄りとの自然な交流がもっとあるといいですね。
昨今は肉親でさえあてにならないようなので・・・。

満足度★★★☆☆

クレイジー・ハート

2010年08月29日 | 映画(か行)
見かけはしょぼくれでも、歌とギターはいぶし銀



        * * * * * * * *

昔は名を馳せたカントリー歌手で、
現在は落ちぶれ、ドサ回りでやっと食べているバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)。
アル中。
そんな男ではありますが、ギターの腕と歌声は衰えてはいない。
酒場はかつての彼のファンでうまり、ささやかながらも盛り上がりを見せる。
そんなある日、女性ジャーナリスト、ジーンのインタビューを受けたことがきっかけで、
二人はつきあい始めるのですが・・・。



ストーリー自体は良くあるパターンですよね。
割と最近見たものでは「レスラー」も同様の話でした。
一人の男。
若い頃から何か一つのことに打ち込んできたけれど、年を取ってそれも下降気味。
食べるのもやっと。
結婚はしたことはあるけれど、妻には愛想を尽かされてとっくに離婚。
なにやらしょぼくれた毎日。
でも、愛に仕事に、再起を図ろうとするのだけれど、そう簡単にはいかない。

これって、結構万人向けのテーマですね。
中高年を過ぎれば誰でも若い頃のようにかっこよくは決まらないし、
でもまだ人生は捨てきれない。
まだまだやれると思っている。
こういうところが妙に共感を呼ぶわけです。



そんなわけでこの作品、ありがちではあるのですが、
どこかひと味違う。

まず音楽がいいです。
カントリーはほっこりと心にしみますね。
音楽はT=ボーン・バーネットによるものですが、
歌もギターもちゃんとご本人ジェフ・ブリッジスがやっています。
実際聞き惚れてしまいます。
私は早速、サントラCDを買ってしまいました!!
しょぼくれた、おっさんだけれど、
音楽にかける熱意は本物。
この一本の芯が見事に決まっているから、心地いい。
事故で、病院のベッドで意識を取り戻したバッドの第一声は
「俺のギターは?」
でした。
バッドが、かつての弟子(コリン・ファレル)の前座を務めるハメになってしまうという
シーンがあるのですが、この二人のデュオがまたすばらしい。
良く気遣いができる、カッコイイ奴なんです、コリン・ファレル。



そしてアル中の彼は、せっかく彼女とうまくいきそうだったのに、
お酒で失敗してしまいます。
そうした後の彼の行動が実に潔い。
何というかしょぼくれた中にも、凛とした歌手としてのプライドと、
男のハートがあるんですね。
ステキでした。
アカデミー賞主演男優賞は納得です。



どこまでもまっすぐな一本道、
バッドがつい居眠り運転で事故を起こしてしまうシーンがあります。
先日のアメリカでの日本人を乗せた観光バスの事故を連想してしまいました。
場内、一瞬皆さん、はっとした様子でした。
北海道にも多いですが、あの原野の中につづく直線道路は、
実際眠気が来て危険ですね。
気をつけましょう・・・。

2009年/アメリカ/111分
監督:スコット・クーパー
出演:ジェフ・ブリッジス、マギー・ギレンホール、ロバート・デュバル、コリン・ファレル、トム・バウアー

クレイジー・ハート~オリジナル・サウンドトラック
ミュージック・シーン
ミュージック・シーン


パコと魔法の絵本

2010年08月28日 | 映画(は行)
カエル王子は奇跡を起こせるか



            * * * * * * * *

なにやら賑々しく、怪しげで、ど派手のこの画面が問題です。
良い作品だと聞いてはいるものの、
どうもこの雰囲気に苦手感があって、今まで見損ねていたのですが・・・。
でもやはりきちんと見てみるものですね。
食わず嫌いは行けません、という見本の様な作品。


元々は、後藤ひろと原作の舞台「MIDSUMMER CAROL ガマ王子対ザリガニ魔神」。
それなので、舞台はなにやら怪しげな病院内だけで、
演劇的雰囲気がたっぷりです。
とにかく登場人物が皆濃いのですが、
極めつきは偏屈な大富豪の老人、大貫氏(役所広司)。
「ミッドサマーキャロル」なので、この人物は
クリスマスキャロルのスクルージを意識しているわけです。
彼はこれまで自分の会社を大きくすることだけを考えてきたので、
人と親しく心を交わすなんてとんでもないと思っている。
周りの人のやることなすこと、すべて気に入らない。
ところがそんな彼が唯一気になる女の子がいて、それがパコ。

この子は、交通事故で両親を亡くし、自らは記憶が一日しか持続しない。
つまり、毎日毎日が初めての日。
パコにとっては、毎日がお誕生日で、
いつも読んでいる絵本が、いつも初めて読むお話。
そして毎日会っている大貫老人がいつも初めてあう人。
何の懸念もなく大貫に話しかけてくるパコに、
大貫は次第に心を許していくのです。


パコが毎日読む絵本は「ガマ王子対ザリガニ魔神」。
ここには、人のいやがることばかりするわがままなカエル王子が登場しますが、
これもまた、わがままいっぱいの大貫老人を重ねてあるわけです。

大貫老人は、パコのために、この絵本を元にした劇を上演しようと提案します。
渋っていた他の入院患者や病院スタッフも次第に気持ちが一つになって・・・。

この劇のシーンに、カエルやザリガニ、タニシにメダカ・・・CGも挿入されていて、
思い切り楽しめます。

またそれとは別に、大貫氏はたびたび心臓発作を起こし、
こんなに一生懸命だけれど、最後まで劇を続けられるのか・・・? 
そんなことも気がかりなのですが・・・。
ちょっとショックな“だまし”もあるので、ご用心を。


この作品、おかしいのやら悲しいのやら、
自分でもよくわからない涙があふれます。
こんなに濃い人たちばかりなのだけれど、
結局、心温まる物語・・・と言うのも不思議ですねえ。
また、確かに画面はど派手なのですが、
光と影のアクセントが付いた極彩色の世界、
この作品は、この色調でなければダメなんです。
いたずらに派手なわけではない。
おもちゃ箱をひっくり返したように、何でもあり、どんな色もあり。
役所広司のカエル王子のコスチュームは、
ダイワマンどころじゃなく、ハズカシイですけどねえ・・・。
昔、子役で売れたきり落ち目の青年役、妻夫木聡もナイスでした!!
(始め妻夫木くんとは、わからなかったです・・・。)
そして、このパコちゃんがなんてかわいい!!
時にはこのようにファンタジックな極彩色世界に遊ぶのも悪くありません。

2008年/日本/105分
監督:中島哲也
出演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、阿部サダヲ、加瀬亮

「舞姫 テレプシコーラ 第2部 4」 山岸凉子

2010年08月27日 | コミックス
作者はまだ主人公をいじめ足りない・・・?

テレプシコーラ(舞姫) 第2部 (4) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
山岸 凉子
メディアファクトリー


          * * * * * * * *

ローザンヌ国際バレエコンクール本戦。
六花(ゆき)は風邪で体調を崩しながらも
何とか持ちこたえ準決選まで勝ち残りました。
しかし、ここへ来てとうとう発熱。
熱をおして準決選に出場するのですが・・・。

ううむ。
ここまでも、ずっと体調との戦いで、ずいぶんがんばっていた六花ちゃんなのですが、
意外にも作者はまだ彼女をいじめ足りなかったのですねえ・・・。
いくら何でも、もうこの辺で
"おめでとー!"ということになるのかという期待は裏切られました・・・。
つまりはどう考えても無理という最悪の体調で、
演技中転倒してしまい、
準決選の後半コンテンポラリーを踊らないまま棄権となってしまったのです。
そのため、オファー(バレエ学校・バレエ団からの留学や研修の許可)も
もらえなかったという、最悪の結果に・・・!

いくらがんばっても、必ずしも報われることはない・・・
というのは現実ですけれど・・・。
いくら何でもこれはかわいそうですねえ。
とくにいじけ虫の六花ちゃんにとっては・・・。
彼女はむしろクラシックよりもコンテンポラリーが得意そうですし。
著者はどのようにこれ以上の試練を彼女に与えようとしているのでしょうか。
そして依然謎のままのローラ・チャン。
郡を抜く実力、
六花は以前に知っている誰かを思い出さずにいられないのですが、
いったい彼女は何者??
まだまだ目が離せません。
待たれる次巻。

満足度★★★☆☆
(気持ち的にがっかりー・・・ということで。)

「インシテミル」 米澤穂信

2010年08月26日 | 本(ミステリ)
歓迎されない名探偵

インシテミル (文春文庫)
米澤 穂信
文藝春秋


         * * * * * * * *

ひんやり硬質なムードの漂う米澤穂信作品が若干苦手といいながら、
懲りずにこの本を手に取ってしまったのは、
この物語の設定が、むちゃくちゃがちがちの本格ミステリ風だったからであります。
「ある人文科学的実験の被験者」ということで
破格の時給のバイトとして集まった12人の男女。
ある施設に監禁状態となった彼らのその実験の内容は、
参加者同士が殺し合い、その犯人を当てること・・・。

とんでもなくダークです。
まさに殺人のための殺人。
「告白」がどうも好きになれないと言って、
こういうのを読むのはどうなのか・・・と思わなくもありません。
しかし、このストーリーについては、始めからはっきり架空の謎解きゲーム。
そもそも生首が平気で転がっていたりする本格ミステリ好きの私なので、
今さら躊躇しても仕方ありません・・・。
この本については、著者はすごくフェアです。
冒頭にきちんと「警告」があります。

この先では、不穏当かつ非論理的な出来事が発生し得ます。
それでも良いという方のみ、この先にお進みください。


なーるほど。
では覚悟の上、読み進みますか。


参加する12人の中で、主に結城という学生の視点で物語は語られてゆきます。
彼はあえてあまり目立たないように行動しているようなのですが、
実はミステリサークルに所属しており、そういう推理は得意。
異様に死角の多い廊下、
鍵のかからない部屋、
窓もない地下の完全密室
・・・この殺人事件のために作られた舞台で起こってしまう事件を何とか解こうとします。

彼らの時給はなんと112,000円! 
どう見ても、情報誌の印刷ミス?
いえ、確かに112,000円なのです。
7日間の拘束時間すべてを計算に入れるということなので、
なんと総額1800万円にもなる。
彼らは現地に集合して初めてこの恐ろしい実験内容を聞くことになるのですが、
彼らは考えるのです。
何もしなくても7日間ここにいれば、とにかく1800万円手に入る。
わざわざリスクを冒して殺人を行う必要がどこにある。
そうだろう。
馬鹿なことは止めて、おとなしく7日間をすごそうぜ・・・と。
ところが、みなその意見に納得したはずなのに、何故か早速死人が出てしまう。
さあ、どうなる・・・!!


この物語は、本格ミステリでありながら
これまでの本格ミステリとは一線を画しています。
たとえば終盤、結城が論理を尽くしてある事実を指摘します。
しかし、それは生き残った皆の意に沿わない。
結城の指摘する事実よりも、
彼らの望むストーリーの方が安心できるからです。
名探偵が謎解きをしたのに歓迎されない。
そればかりか空気の読めないヤツということで疎外されてしまう。
・・・こんなことは今までではあり得ませんでした!!

それとヒロインとも言うべき須和名の性格・・・。
超お嬢様。
お高いというのではありませんが、恐るべき冷静さ。
このひんやり冷たい硬質さ、まさに米澤作品キャラ。
どうもそれが苦手だったはずなのですが、
何だか私、だんだん快感になってきました。
今さらですが本格ミステリのニューウェーブをおぼろげながら感じ、
これも悪くないような気がしてきました。
・・・恐るべき作品です。


さてところでこの作品の題名、「インシテミル」。
作品中どこかにこの言葉が出てくるのだろうと思っていたのですが、
とうとう最後まで出てきませんでした。
それで巻末の解説でようやく解ったのですが、
これは「淫してみる」なのだというのです。
淫する・・・すなわち度を過ごして熱中する。
しかもちょっぴり後ろめたく、
あまり大きな声で言えないようなことに対して、という意味合いですね。
これは作中の人物たちのことを指していながら
また著者自身の思いでもある訳なんですね。

伝統的な本格謎解きミステリの世界に淫してみる反面、
そうした振る舞いをする者たちを突き放しても見る、という・・・。

このどこか一歩、熱中の輪から離れて冷めている感覚。
それですね。
私が常にこの米澤作品に感じるものは。
まさに現代のミステリというべきなんでしょうねえ・・・。

そういえば、映画のコピーは「inシテミル?」になっていたような・・・。
なるほど。
そういうのも面白いですね。

満足度★★★★★

※著者の警告の通り、
無意味に死体が転がる話が好きでない方は、読まない方が無難です。

キャタピラー

2010年08月24日 | 映画(か行)
戦争という名の狂気に駆られて・・・


             * * * * * * * *

この作品はものすごく強烈で、
見た直後は、しばらく言葉が出ないという感じです。

CATERPILLAR とは芋虫とか毛虫の意味ですね。
中国戦線から戻ってきた夫、久蔵は、
顔は焼けただれてケロイド、そして四肢を失っていた。
つまりその姿をキャタピラーと称しているわけです。
それを見た妻シゲ子はショックのあまり家を飛び出してしまう。
「あんなのは久蔵さんじゃない!」

久蔵は、「生ける軍神」として勲章を受け、村の人々からは崇められることになる。
しかし、実態は自分では身動きもママならず、
異様に食欲と性欲ばかりに絡め取られた肉の塊と化してしまっている。
そんな夫を嫌悪しながらも、
軍神の貞淑な妻という立場に自らの存在意義を感じ始めるシゲ子。



久蔵もシゲ子も変わり果てた姿を、勲章を受けたことで納得しようとするのですが、
次第にむなしさを感じ始めます。
こんなものをもらうために、手足を投げ出したのか・・・。
シゲ子は若い健康な青年たちを見かけたときに、そんな思いが爆発してしまう。


初めのうちは、奉仕させるものと、奉仕するものという関係であったのが
次第にその位置が反転していき、シゲ子が優位に立っていくわけです。
そんな中で、ついに終戦。
負けた戦争で、軍神はもう軍神でいることはできません。


きわめて特異な題材をとりあげつつ、
戦時中の日本のグロテスクな滑稽さをえぐり出していると思います。
また、エンドロールの歌は、
原爆で亡くなった少女の語りとなっていまして、
これがまた何とも強烈で、気持ちをずっしり重くさせます。
覚悟して見たつもりですが、やはり重く圧倒されてしまう作品でした。



第60回ベルリン国際映画際で最優秀女優賞を受賞した寺島しのぶ。
それには全く納得です。
体当たりの演技とはこういうことを言うのだなあ・・・。

作品中、知的障害らしき男性がさまざまな場面で登場します。
彼はそれ故に兵役にも就かず、
いつも村人が集会や防火訓練などするのをのんびり眺めている。
彼は唯一この狂気の日本社会から自由なのです。
正常であるが故に狂気の渦に巻き込まれ、
異分子であるが故にそれからは免れている、
というこの大いなる皮肉もなかなか効いていましたね。


2010年/日本/84分
監督:若松孝二
出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五

「雷桜」 宇江佐真理

2010年08月23日 | 本(その他)
出会うはずのない二人が出会う、歴史ロマン

雷桜 (角川文庫)
宇江佐 真理
角川書店


        * * * * * * * *

この秋公開の映画となっているこの作品、一足先に読みました。
時代物ですが、これはいつもの宇江佐作品とはやや趣が異なっていまして、
数奇な運命の女性を軸とした歴史ロマンとなっています。


江戸から三日を要する山間の瀬田村。
そこで生まれて間もない庄屋の一人娘、遊が何物かにさらわれてしまう。
手を尽くして探しても見つからず、でも、あきらめられない父母、2人の兄。
そしてなんと15年後に遊が狼少女となって帰還。
いえ、ご心配なく。
何も狼に育てられて、口もきけないケモノのようになってしまったというのではありません。
実は遊は、彼女をさらった男に育てられていたのです。
その辺はまたこの村を取り巻く複雑な事情も絡んでいたのですが。
山の中でろくにかまわれもせず育ったため、
身なりも言葉使いも少年のよう。
全くの野生児でたくましい。
それを口さがない村人たちが「狼少女」と称したのです。

さて一方そのころ、遊の次兄助次郎は、
江戸の御三卿、清水家に中間として仕えています。
若き当主斉道(なりみち)は、心の病を抱えていました。
この斉道は実在の人物で、当時の将軍家斉の17男(!)にあたります。
斉道は静養のため、助次郎の故郷である瀬田村へ行きます。
助次郎の生家で、初めて邂逅するふたり。
そのときの会話はこんな風です。

「そちは誰だ」
「ぬしは礼儀知らずだの。
 おれが誰かと問う前に、ぬしから名を名乗れ。
 おれが応えるのはその後だ。」
「予はのどが渇いた。水など汲め。早く汲め!」
「ぬしは手が不自由であるのか?・・・
 そうではないらしい。
 ならば自分で釣瓶を落として水を汲め。
 おれが湯飲みを持ってきてやる」


毒気を抜かれた斉道が不器用な手つきで井戸から水を汲んでいると、
そこへ慌てて兄助次郎がとんでくる、という一幕。

誰からもちやほやとしかされたことがない斉道には、
この礼儀も何もない率直な娘が新鮮でならなかったのですね。
実は助次郎から、こういう妹がいるとは聞いていたのです。
そんな出会いから、次第に2人の心が接近していきます。
しかし、それは全く身分違いの恋。
たった一度体を合わせただけで、
お互い心の奥で、生涯愛する人はこの人ただ1人、と決めて、別れ行く・・・。


実はこの2人の出会いは、この本の3分の2ほども進んだところにあります。
そこまでは兄、助次郎と斉道との関わりなどがきめ細かく描かれている。
そこも非常に読み応えがあり、満足感があります。
我が儘でかんしゃく持ちの斉道なのですが、
時に無邪気で心もとなげで、つい周囲ではかばってあげたくなる、
そういうところも見えて、憎めません。


「雷桜」とは遊が育った山の中にある、桜の古木です。
それが不思議なことに根元が銀杏で、そこから桜が伸びている。
身分違いの2人がひとつになる、そういうことを暗示しているわけです。
物語のラストはそれから25年もの後です。
時の無常とそして人の絆の不思議さに胸が打ち震える気がします。
なんとドラマチック。
映画の主演は岡田将生と蒼井優。
う~ん、楽しみですね!

満足度★★★★★

マラソンマン

2010年08月22日 | 映画(ま行)
歯医者に行きたくなくなります・・・

マラソン マン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
ウィリアム・ゴールドマン
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


        * * * * * * * *

ユダヤ人とナチスの因縁をベースとした、サスペンスです。
マラソン好きの大学生ベイブ(ダスティン・ホフマン)。
彼の兄はアメリカの特殊機関に属し、
元ナチスの宝石商ゼル(ローレンス・オリビエ)の運び屋を務めていました。
ここのところはざっとした説明しかなかったのですが、
ゼルは戦犯で指名手配となっており、ウルグアイに潜伏中。
アメリカは、そんな彼に協力することで、
他のナチの残党の情報を得ようとしていた、
・・・と、そういうことのようです。
ゼルはニューヨークで弟が死亡したため、
身の危険を押して自らニューヨークへやって来ました。

そんなことは全く知らないベイブだったのですが、
いつしか兄の関係するやっかいごとに巻き込まれていくのです。


この作品、見たことはないと思っていたのですが、
ベイブの拷問シーンで思い出しました。
このシーンは当時も話題になったものですね。
健康な歯を、ドリルで痛めつけようというもの・・・。
歯医者で痛い目にあったことのある人なら、
想像しただけで顔をしかめますね。
昨今の歯医者さんは、極力痛くないようにやってくれますが、
それでもあの、ウィ~ンという機械音を聞いただけで緊張感が走ります。
映画の内容は覚えていなかったのですが、
このシーンだけ覚えていたというのは、
やはり相当印象が強烈だったのですね。
ベイブは兄からは何も聞いておらず、
どんなに痛めつけられても白状のしようがない。
う~ん、悲惨です。
危険から逃げても、
待っているのは罠・・・、また罠。
誰も信用できません。

ラスト、ダイヤモンドを詰め込んだ鞄を持ったゼルと、
ベイブの対決シーンもまた見物でありました。

ダスティン・ホフマンが若い!!


1976年/アメリカ/125分
監督:ジョン・シュレシンジャー
出演:ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリビエ、ロイ・シャイダー

「しがみつかない死に方」 香山リカ

2010年08月21日 | 本(解説)
結局は、今生きている自分のために

しがみつかない死に方 孤独死時代を豊かに生きるヒント (角川oneテーマ21)
香山 リカ
角川書店(角川グループパブリッシング)


          * * * * * * * *

以前、同じ著者で「しがみつかない生き方」を読みました。
この度は、なんと、「しがみつかない死に方」。
精神科医である著者の元に、最近孤独死を非常に恐れる人が多く訪れるそうなのです。
飯島愛さんなど著名人の孤独死がマスコミによって伝えられたときに、
一人暮らしの女性たちは皆恐ろしくなってしまった様なのです。
「お一人様の老後」の本でも、
死をどう迎えるかは大きな問題として取り上げられていました。
私は今のところ家族と同居ですが、やはり気になってしまうのは、
結局、ほとんどの女性は最終的に「お一人様」であることが多いためです。
平均的には男性の方が寿命が短いですし、
しかも夫婦であれば男性が年上の場合が多い。
必然的に夫に先立たれることが多いということです。
子供たちも、当てになどできない。
はい、むしろこれは当てにしてはいけない、
と「お一人様の老後」では言っていましたね。


この本では「孤独死」にならないため、
また、仮に一人でいるときに不幸があってもなるべく早く気づいてもらうために、
いろいろな手立てが書かれています。
また、自分の死後の葬儀とか財産の始末の仕方なども・・・。
しかし、これらで万全を期そうというのはつまり、
結局は「まだ生きている今のため」ということになるのではないかと、著者は言います。
どんなに完璧に準備をし、計画を立てても、
いざというときや自分亡きあと、
それが確実に実行されるかどうかはまったくわからない、と。

その通りですね。
実際なるようにしかならないだろうし、
たとえ思ったようにならなくても、自分では解らないですからね。


まあ、そこで私は考えるわけですが、
やはり、なにがしか自分の死後の準備はしておきたい。
それは確かに自分の心の安定のためであります。
自分で満足できればいいので、完璧を期す必要も無い。
葬儀はごくごく内輪に簡潔に・・・。
(その費用だけは残しておきたいものです!)
部屋の荷物は極力少なく片付けておいて・・・。
ある程度の財産の処分は遺書として書き留めておくけれども、
まあ、希望としてうけ止めてもらって、それがダメならどのようにでも・・・。
あえて正式な「遺言状」までは必要ありません。
(そんな大それた財産もないし)
・・・と、こんな感じ?

しかし、問題はその日がいつ来るかわからないということですね。
こんなことを書きながら、私はそれが明日だとは思っていない。
だから部屋はぐちゃぐちゃだし、
まだ遺書を書いておこうなどという気にもなっていません。
が、それが甘いのですよね。
その日は明日かも知れないというのに・・・。
いやはや、結局全然覚悟ができていない私なのでした。

でも、皆さん長患いはしたくないと言うじゃありませんか。
人に気づかれず突然死できたら、
それは意外とラッキーの様な気もしますが・・・。

満足度★★★★☆

きな子 見習い警察犬の物語

2010年08月19日 | 映画(か行)
きな子もあん子もけなげではありますが・・・



            * * * * * * * *

警察犬を目指すラブラドール・レトリーバーのきな子と、
見習訓練士杏子(通称あん子)の物語。

これは実際に見る前に、実話であると知っていた方がいいですね。
香川県で、現在6回警察犬試験に挑戦し、
不合格を続けているラブラドール・レトリーバーきな子と
見習訓練士、川西智紗さん。
ある試験の時に、きな子が障害物を超えられず、
顔面着地したというのが有名になり、
その後も試験を落ち続けているにもかかわらず、
めげずに挑戦を続けているということで、地元では大変人気者。
その映画化ということです。

そのことを知っていないと、この作品、何だか中途半端な感じがしてしまいます。
つまり、たいていの映画は、努力と挫折の末に成功がある。
でもこの作品に結果はないわけですから・・・。
元々私は、さほどのストーリーを期待していたわけではないのです。
単に犬好きで、とにかく犬のしぐさや表情が見たかった・・・と、それだけで。
でも、実際に見てみると、
ちょっと物足りないというか、ぴんとこない感じがしてしまったんですね。
きな子は十分にかわいかったのですが。




なんだろう、結果を出さないことが前提ならば、
頂点に立たないことも、生き方の一つ
・・・というような着地の仕方をしても良かったのではないかと思うんですよね。
けど、実際はまだ試験に挑戦中なので、そうもできなかったということかな。
無理に何が何でも警察犬にならなくても・・・
「しがみつかない生き方」の愛読者である私は
つい、そう思ってしまうわけです。
警察犬になれなかったら、
これが本当に「負け犬」って・・・、そうなのかな?

あん子の見習訓練士としての仕事は、ほとんど雑用ばかりで超多忙に一日がくれていく・・・
というのはよくわかったのですが、
実際、警察犬の訓練としてどんなことをどんな風に進めていくのか。
そういうところが全く見えてこなかったのも、リアリティに欠けてしまった部分。
(実話なのに、実話に見えてこない!)
また、所長さんの、放任主義もわかりますが、
何一つ指導もしないのではね・・・。
精神論だけではいくら何でも無理。
うどん屋さんを継ぐことになった、先輩の描き方も中途半端です。
「天然コケッコー」の夏帆さんは、
田舎のおっとりした雰囲気を持ちつつ、それでも微妙な女心が良く出ていて
すごく良かったのですが、
今回はこれが夏帆さんでなければならないという確信も得られません。
本当に犬のかわいさだけの作品になってしまったようで、ちょっと残念。

ただ一つ光っていたのは、女の子、新菜(にいな)ちゃん。
あの憎まれ口が快感です。
傑作です。
いつも憎まれ口しかきかない彼女だからこそ、終盤の行動が光りますね。


このように見ると、以前にみた「クイール」はすばらしかったです。
崔洋一監督作品。
同じくラブラドール・リトリーバーの盲導犬の物語ですが、
人と比べるとかなり短い犬の一生を描いていて、
犬のかわいさ、けなげさ、
そしてあっという間に老いて去ってしまう、その切なさが見事に描かれていました。
勤めを引退し、故郷に帰った老クイールの散歩道、満開の桜。
風が吹いて花びらが降り注ぐ。
そんなシーンを今も思い出します。

教訓:かわいい犬とかわい子ちゃんだけ揃えればよいというものではない。

2010年/日本/
監督:小林義則
出演:夏帆、寺脇康文、戸田菜穂、山本裕典、浅田美代子、広田亮平、大野百花

美瑛の青い池

2010年08月18日 | インターバル
神秘的なターコイズブルーの池

            

               * * * * * * * *

美瑛と言えば、お馴染みのこういう風景。





なだらかな丘に、お花畑。
私が行ったのは8月の始め。
既にラベンダーは咲き終わった時期ですが、
観光客の立ち寄るファームは、あでやかな花で彩られています。



お花畑ではなくても、ずーっと向こうの丘まで続く畑の風景はまさに北海道ならではで、
札幌に住む私もこういう光景は大好きです。
人と自然がうまく調和している感じがしますね・・・。
今回は特に中国の方々が大変多く訪れていました。
もはや北海道の観光は中国の方々に支えてもらっているようなものです。
札幌の街も中国の方々は全然めずらしくなくなりました。
以前から北海道の施設の接客態度がなっていないなどと言われるのですが、
お客様は大事にしなければ・・・。
中国語を習おうかと、思ってしまいましたよ。
でも今はどうもそれだけの余裕はなさそうです・・・。


さて、最近美瑛でこんな新名所があります。
青い池、というのですが。



本当に、青いというか、ターコイズブルーの池です。

美瑛川の水も青い。
水の成分の関係なのですね。
ちょっと神秘的。

この日は曇っていたので、晴れていればもっと鮮やかに美しいのかも知れません。
この近辺のお花畑ツアーにも、今年あたりからこの「青い池」も組み込まれています。
お近くにお寄りの際は、是非一度ご覧ください。
・・・とてもささやかなものではありますが。

トゥルー・クライム

2010年08月17日 | クリント・イーストウッド
タイムリミット12時間。無実の証明。

          * * * * * * * *

今回のクリント・イーストウッドは新聞記者です。
鋭く鼻がきき、真実を暴く腕利き。
けれどその強引さからいつも問題を巻き起こしている。そしてひどい女たらし。
同僚の奥さんと関係してしまい、それがばれてしまう、
なーんていうのが冒頭からあったりするのね。
本人、きれいな奥さんとまだ幼い娘もいるんだよー。それはダメでしょ・・・!
まあ、まあ・・・。
そういうダメ男が仕事だけはずば抜けている、
というのがクリント・イーストウッドの良く演じるパターンなんだからさ。
さて彼エヴェレットは、ある死刑囚からインタビューを取ることになる。
その死刑囚は、コンビニで妊娠した女性を殺害したということで死刑が確定し、
その日夜12時に死刑執行が決まっている。
別の担当のピンチヒッターでインタビューの役を振られたのが正午。
インタビュー予定が午後4時。
インタビューの役を受けて、事件の資料を見たエヴェレットは、何かを感じるんだね。
・・・つまり、本当にこの男フランクが犯人なんだろうか、と。
12時間後に死刑執行が決まっている。
今さら事件を調べても無駄・・・と、彼エヴェレットは思わないわけだ。
そう、タイムリミットは12時間。
それでも、人の生死がかかっているのだから・・・。
カンだけでは、人は説得できないからね。
何か証拠がなければ。
裁判でいろいろ調べ尽くされているはずではあるのだけれど・・・。
それでもヤルのが、男の意地だ!!
しかし、娘と動物園に行く約束をしていた彼は、とりあえずそれはさっさと済ませてしまえとばかり、
ベビーカーに娘を乗せて超特急で園内を駆け巡る。
・・・・が、そのあげくに娘を怪我させてしまい、奥さんは激怒。
タイムリミット12時間。
その間に職を失い、離婚されるハメになる・・・という、悲惨な彼なのでした。
4時。刑務所でフランクのインタビューをした彼は彼の無実をさらに確信。
6年前のその事件の時にいた、
これまでの捜査では上がってこなかった、一人の少年の存在が浮かび上がるけれど・・・・。


生活は破綻しているけれど、自分の生き方にはりんとした筋がある。
こういう男の姿を描いた作品、イーストウッドには多いですね。
この作品中の、幼い娘は実際のイーストウッドの娘でフランシスカ・フィッシャー=イーストウッド。
あ、やっぱりー。何だかそうなんじゃないかと思ったんだ。
イーストウッド監督は良くその手を使うし。
それだけじゃないよ。
その子の母で元恋人のフランシス・フィッシャー、
そしてイーストウッドの妻ダイナ・イーストウッドまでもこの作品に出演しています。
う~ん、つまりこの方、どれだけの女性と付き合って、結婚して、子供がいるんですか~???
さあ・・・、誰かゴシップ好きの人に聞いてよ。
映画は少しは詳しいけど、俳優のゴシップにはてんで疎いんです。私は!!
ほとんど映画も見たことがない人から、スター同士の恋愛関係を聞いて「へ~、そうなの。知らなかったー。」なんてことがよくあるよ・・・。
とにかく、この記者エヴェレットの女性好きな性格は監督本人そのままってこと?
かどうかは知らないけどね、こんなに作品中に自分の身内やら彼女やらをどんどん出しちゃう感覚って、私にはよくわからん・・・。
少なくとも日本人の感覚からは遠いかもね・・・。


死刑囚役は、イザイア・ワシントン。彼はもう、何を言っても無駄・・・とあきらめ、神の元へ行こうと覚悟を決めている。
以前は本当に悪いこともしたけれど、奥さんと知り合ってからは、
信仰にめざめ心を入れ替えていた・・・という設定ですね。
何だか魅力的な人物でしたね・・・。
これでこの作品がすごくしまっていました。

トゥルー・クライム 特別版 [DVD]
クリント・イーストウッド,アイザイア・ワシントン,ジェームズ・ウッズ
ワーナー・ホーム・ビデオ


1998年/アメリカ/127分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ジェームズ・ウッズ、デニス・リアリー、イザイア・ワシントン

「ちょんまげぷりん 2」  荒木 源

2010年08月16日 | 本(その他)
友也くんの大冒険、そして安兵衛さんは・・・

ちょんまげぷりん 2 (小学館文庫)
荒木 源
小学館


            * * * * * * * *

お楽しみ、「ちょんまげぷりん」の続編です。
あれから8年が過ぎて、幼稚園児だった遊佐友也くんが中学2年になっています。
8年前はあんなに素直で頑張り屋さんだったのに、
茶髪のちょっとすねて無気力な・・・今時の中学生(?)になってしまっています。
ある日、コンビニで万引がバレて逃げ出したのですが・・・
謎の水たまりに引き込まれ、気がつくとそこは江戸時代!!
安兵衛さんのことがあったので、
たぶん、この時代に安兵衛さんがいるに違いないと思い、
とりあえず安兵衛さんを探すことにするのですが・・・。

何しろ友也くんのスタイルがいけません。
Tシャツにカーゴパンツ。
そこまではまだいいとして、茶髪はまずかったですね。
いるはずのない異国人、と怪しまれてしまう。
それでも、どこにでも親切な人はいるものです。
彼を匿い、世話してくれる人もいて、
なんとか、安兵衛さんのお菓子屋さんがあるはずの場所まで行ってみたのですが、
なんと、経営不振でつぶれていて、安兵衛さんの行方もわからない。

そこからの展開もすごいですよ~。
まあ、それは読んでのお楽しみということにしましょう。
とにかく、この本は、友也の大冒険版でありまして、
彼にとっては大変な試練の数々。
でも、これを乗り越えることで、見違えるように大人になっていきます。
一方、安兵衛さんも、実はとんでもないことになっています。
・・・これもまた凄まじい。
二人はいったいどこで巡り会うのか。
安兵衛さんのお菓子作りはどうなるのか。
これらが気になってしまって、
これもまた途中で止められず、一気読みとなりました。


こちらもタイムトラベルものらしく、実在の人物が何人か登場します。
その人たちは、未来から来た友也と出会うことで、
後世に名を残す偉業を果たすことになる
・・・といった当たりも、満足感が高い。

「ちょんまげぷりん」を観た方なら必読です。

満足度★★★★★


ちょんまげぷりん

2010年08月14日 | 映画(た行)
タイムスリップしてきたお侍がプリン作り!?


           * * * * * * * *

原作本の「ちょんまげぷりん」があまりにも面白かったので、
さっそく映画の方も見てきました。
ストーリーは、本とほとんど変わりませんので、こちらをどうぞ。
            →「ちょんまげぷりん」

それで原作と映画の最も大きな違いは、主人公安兵衛さん自身。
映画では錦戸亮が演じています。
・・・といいつつ、私、TVドラマはほとんど見ないので、
このヒトは誰???と、実は思っておりました。
すみません、ファンの方には怒られてしまいますね。
NEWS、及び関ジャニ∞のメンバーであり、TVドラマの出演も多々・・・、
ということで、知らない方がハズカシイくらいだったのか・・・!
でもでも、そのカッコ良さはよ~くわかりました!!
チョンマゲも、お侍姿も、とてもよく似合ってかっこよかったですよ~。
こんな人がご飯作って家で待っていてくれたりしたら、
ものすご~く幸せでござるなあ・・・。
いつまででも居候していてほしいですよね。

えーと、あ、そういう話ではなくて、
これが原作では、安兵衛さんはちっともかっこよくありません。
昔の人なので背もあまり高くなく、顔もブコツ・・・。
イケメン安兵衛さんを見られるだけ、映画の方がお得かも知れません。



全体的にはやはり映画的にほんの少し違っているところもありませが、
雰囲気はそのまま。
意外な展開に驚かされ、楽しくって、ちょっぴり切ない。
そして最後には時間ものならではのオチもあり、大変満足できる作品だと思います。


ところで、なんとこの映画を見た同日、
書店で「ちょんまげぷりん2」の文庫新刊を見つけて、購入しました。
こちらは「ちょんまげぷりん」の8年後、
今度は中学生となった友也くんが、江戸時代にタイムスリップしてしまいます。
さあ、うまく安兵衛さんに会えるかな?
こちらでは、友也くんには大変な試練が待っています。
乞うご期待。

2010年/日本/108分
監督・脚本:中村義洋
出演:錦戸亮、ともさかりえ、今野浩喜、佐藤仁美

バティニョールおじさん

2010年08月13日 | 映画(は行)
勇気ある愛すべきお節介

バティニョールおじさん [DVD]
ジェラール・ジュニョー
パンド



           * * * * * * * *

舞台はナチス占領下パリ。
肉屋のバティニョール(ジェラール・ジュニョ)の隣にユダヤ人一家が住んでいるのですが、
彼の娘婿の密告により、ナチスに連行されてしまいました。
バティニョールにはそんなつもりはなかったのですが・・・。
3日ほど後、そこの息子シモンが途中で逃げ出し、1人で戻ってきました。
家も家具もすべてナチスに没収されて、もう住む場所もありません。
不憫に思ったバティニョールはシモンを匿うことになってしまいました。

フランスにとってドイツは元々敵。
国がドイツの占領下になったとしても、
そう簡単にドイツに忠誠を示すことなんかできるわけがありません。
だからたいていの人は、我が物顔のドイツ軍を忌々しく思っていたに違いないのです。
でも、それは心の奥にしまっておかなければならないこと。
しかしこの作品中の娘婿(正確にはまだ結婚していません!)のように、
中にはあからさまにドイツ軍に取り入って
うまい汁を吸おうというものもいたということか・・・。

この時代、こんな風な様々な人間模様があったのでしょうねえ。
しかし、人間性がはっきりと出てしまいますね。


バティニョールは特別正義感に燃えた人物ではありません。
ごく平凡な肉屋のおじさん。
帰ってきたシモンを見たときも、
本当はやっかいごとに巻き込まれるのはごめんだと思ったのですね。
でも、このような子供をナチスに引き渡すことはもちろん、
外にほおり出すこともさすがにできない。
そういう普通の優しさを持ったヒトなわけです。
何とかシモンを他の人に押しつけてしまいたいバティニョールは、
シモンの心当たりを訪ねてみるのですが、
なんとそこにも取り残されたユダヤ人の少女が今度は2人!
ほんのお情けのつもりが次第にのめりこんでお節介の域に入り込んでいくのですが、
勇気ある愛すべきお節介です。
そのため自らもずいぶん危ない目に遭うわけですが、
3人の子供とおじさんの旅は、微笑ましくもあるのでした。
それぞれ好き勝手にぶつぶつ文句を言いながらスイスをめざす。

最後の方で、バティニョールがシモンの父親に成り代わって
警察に答弁するシーンがあります。
もうそこでは、ほとんど彼らがユダヤ人であることがばれているのですが。
自分自身がユダヤ人になったつもりで話しているうちに、
ユダヤ人であるというだけでどんなに彼らの生活が制約され、
そして生命が脅かされているのか、
本当に理解するのです。

しかし根が正直者のおじさんは、全くウソが下手ですね。
結局、これまでの自分の平和でそこそこ豊かな生活もかなぐりすてて、
3人の子供たちを守ることになる。
そういうことをこれ見よがしの正義感を振りかざすことなく、
ほんのり温かく描かれていて、何だか幸せな気持ちになります。
聡明だけれども、子供らしくすねてしまうところもあるシモン少年にも好感が持てました。

この作品は主演のジェラール・ジュニョの制作・監督・脚本となっています。
この丸っこいおじさんは、何だか見ているだけで癒される感じです・・・。

2002年/フランス/103分
制作・監督・脚本:ジェラール・ジュニョ
出演:ジェラール・ジュニョ、ジュール・シトリュック、ミシェル・ガルシア、ジャン=ポール・ルーブ